平成15年度 医学生物学概論 中間試験

 

平成15年11月27日実施


問題1.動物細胞において、糖からATPを生成する過程を簡単に述べよ。[10]

解答例)消化により生じた単糖は細胞質に入り、酸化を受け始める。
細胞質では例えば、1分子のグルコースではいくつかの中間体を経て2分子のピルビン酸に分解され2ATPを生じる。
この過程を解糖といい、細胞質で行われる。
続いてピルビン酸はミトコンドリア内に運ばれピルビン酸脱水素酵素複合体によりアセチルCoAとなる。
次にアセチルCoAのアセチル基は、オキサロ酢酸に転移し、クエン酸となり8個の反応を経て徐々に参加され、オキサロ酢酸が再生される。この一連の反応をクエン酸回路といい、ミトコンドリアのマトリックスで行われる。この過程で1分子のピルビン酸からNADHが3分子、GTPが1分子、FADH2が1分子、CO2が2分子生じる。
最後にNADHやFADH2に蓄えられた高エネルギー電子はミトコンドリア内膜の電子伝達系に渡され、プロトン勾配を作る。このエネルギーを利用してATPが合成される。電子はプロトンや酸素と結合し水を生じる。この過程は酸化的リン酸化と呼ばれる。
全体としては1分子のグルコースから約30分子のATPができる。



問題2.活性化エネルギーについて説明せよ。[10]

解答例)ある反応が起こるとき、エネルギーを外から与えなければ反応は進行しない。この時反応物が生成物になるときに乗り越えねばならないエネルギー障壁を越えるために必要なエネルギーを活性化エネルギーという。



問題3.次に揚げるDNAの複製に関与するタンパク質の1つを規定する遺伝子に変異が生じて、細胞内でその酵素が不活性化した。このタンパク質が無い状態で細胞がDNAの複製を試みた場合には、どのようなDNAが作られると予想されるか述べなさい。[5X315]
(1)DNAリガーゼ  (2)DNAヘリカーゼ  (3)プライマーゼ

Essential問題6-5と同じ
引用)
(1)DNAリガーゼはラギング鎖にできるDNA断片を繋ぎ合わせる。これがないと複製された新しいDNA鎖は断片のまま残るが、ヌクレオチドが欠失することはない。
(2)DNポリメラーゼは鋳型DNAの2本の鎖を分離できないので、DNAへリカーゼがないと立ち往生してしまい、新しいDNAはほとんど合成されない。
(3)プライマーがないとリーディング鎖でもラギング鎖でもRNAプライマーが合成されず、DNA複製は始まらない。


問題4.次の文章の誤りについて、理由を説明しなさい。[5X315]
(1)リボソームの大と小のサブユニットはいつも結合しており、結合相手を交換することは無い。
(2)リボソームは細胞質に存在する細胞器官で、1枚の膜で包まれている。
(3)DNAの2本鎖は相補的なので、ある遺伝子のmRNAを合成するには、2本鎖のどちらの鎖を鋳型として使用しても良い。

Essential問題7-8と同じ
引用)
(1)翻訳を1巡終えるたびに、リボソームのサブユニットの結合相手は入れ替わる。リボソームは、mRNAから離れたあとは2つのサブユニットに解離し、遊離の小サブユニット、大サブユニットとして待機する。新たなmRNAの翻訳が始まるときに、この待機していたサブユニット集団から新しいリボソームが形成される。
(2)リボソームは細胞器官だが、膜に包まれてはいない。
(3)プロモーターの位置によって、転写がどちらの向きに進むか、どちらのDNA鎖が鋳型に使われるかが決まる。転写が逆向きに行われると、まったく別の(おそらく意味の無い)配列を持ったmRNAができてしまう。



問題5.次の文章の内、誤っているものを2つ選び、その理由を述べなさい。[5X210]
(1)制限酵素はDNAを特定の部位で切断するが、その部位は必ず遺伝子と遺伝子の間に存在する。
(2)電気泳動をすると、DNAは陽極に向かって移動する。
(3)cDNAライブラリーから単離したクローンには、プロモーター領域の塩基配列が含まれるので、大腸菌の中で遺伝子を発現させるのに適している。
(4)PCRでは、各増幅サイクル毎に2本鎖DNAを熱によって変性させる必要があるので、高温で増殖可能な細菌から単離したDNAポリメラーゼを利用する。
(5)cDNAライブラリーの調整には、DNAポリメラーゼと逆転写酵素の両方が必要である。
(6)PCRによるDNA指紋法は、ゲノム内のVNTR領域に存在する反復配列の数が個人によって異なることを利用している。
(7)ある遺伝子のコード領域について、肝臓組織から調整したゲノムライブラリーには存在するのに、その同じ肝臓組織から調整したcDNAライブラリーには含まれないことがある。

(1)(3)
Essential問題10-8と同じ
引用)
(1)制限酵素の切断部位はDNA中いたるところにあり、遺伝子と遺伝子の間にも、遺伝子の内部にもある。
(3)cDNAライブラリーから単離したクローンには、プロモーターの塩基配列はまったく含まれていない。プロモーターは転写されず、cDNA合成の鋳型となったmRNAには含まれないからである。



問題6.多くの遺伝子調節タンパクは、DNA上で同一のタンパク質やわずかに異なるタンパク質と2重体を形成する。この利点は何か。DNAとの結合によく利用される3種類の構造モチーフについて説明せよ。これらのモチーフがDNAとの結合に適しているのは、どのような特徴によるのか。[10]

Essential問題8-12と同じ
引用)
DNA結合タンパクが二量体を形成する利点は2つある。(1)単量体に比べて生じる結合の数が2倍になるため、結合の親和性が高くなることと、(2)いくつかのタンパク質を組み合わせることによって、細胞に備わるDNA結合の特異性の種類を増やせることだ。DNAとの結合にかかわるタンパク質のドメインとして最も多い3種類といえば、ロイシンジッパー、ホメオドメイン、ジンクフィンガーである。どれもタンパク表面の適当な位置にαへリックスが来るように安定に折りたたまれ、αへリックスがDNAらせんの大きい溝にはまり込んで塩基対の側鎖と接触できるようになっている。



問題7.1個体を構成する分化した細胞はすべて、同一の遺伝子をもっている(この原則の数少ない例外の1つは、哺乳類の免疫系細胞で、ゲノムのわずかな再編成によって特殊化した細胞が形成される)。この原則を実証する実験を考え、その根拠を説明せよ。[10]

Essential問題8-15と同じ
引用)
組織からとった分化した細胞1個から、生物体全体が再生できることを示す実験をすればよい。これによって、その細胞に、生物体全体(特殊化した細胞すべてを含む)をつくるのに必要な情報が含まれていることが証明できる。


問題8.次の文章について考えを述べよ。”ウィルスは寄生体で、宿主生物にとって有害であり、宿主を進化の過程で不利にする。”[10]

Essential問題9-11と同じ
引用)ウィルスには細胞から細胞へヌクレオチド配列を移動させる力があるため、宿主の進化に重要な役割を果たしてきたことは確かである。多くのウィルスは宿主の染色体の一部をランダムに取り込み、別の細胞や別の生物へ運ぶ。つまりウィルスは、遺伝子プール間の混合を促進し、進化を加速する。個々の生物体には有害なことが多いが、種全体にとってはおそらく有益だろう。



問題9.染色体を4本もつ有性生殖する動物がいて、各染色体は減数分裂の際に3カ所の特定部位でしか交差できないとする。この動物が作り出せる、遺伝的に異なる配偶子は何種類あるか。[10]

Essential問題9-20と同じ
引用)染色体の交差がなければ、この動物は2の4乗=16通りの遺伝的に異なる配偶子を作る。限定的な交差の影響を考えに入れると(各染色体について2の3乗通りの組み合わせが可能)、可能な配偶子の数は2の7乗=128種類となる。実際の生物でのように、染色体交差の起こる部位が限られていない場合(すなわち、交差が相同染色体の全長にわたってどの部分でも起こり得る場合)には、可能な配偶子の数はさらに膨大なものになる。

 

 

 

 

 

 

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