平成16年度 細胞システム生理学(2生理) 後期試験

 12月10日(金)実施

(1枚目)
1.モルモットの腸管を切り出しマグヌスの実験方法を用いて消化管平滑筋の収縮について調べた。
まず1gの分銅を吊るした腸管をNormalリンガー液、TTX溶液、Ca-free溶液につけてそれぞれにACh溶液、高K溶液、nicotine溶液を入れ、その時の収縮度を測定した。
下表はその結果をまとめたものである。空欄のCa-free溶液にnicotine溶液をいれたときの収縮度を予想しそう判断した理由を答えよ。

 

ACh

高K溶液

nicotine

Normal

7,0

7,1

6,0

TTX

6,5

6,3

Ca-free

6,4

 


A:
ニコチンは節後線維のニコチンレセプターに結合することで節後線維に活動電位をもたらす。そしてインパルスが伝わってシナプス前末端において電位依存性Caチャネルが開口してシナプス前末端に入り、シナプス小胞に収められているAChを放出することが通常溶液にニコチンを加えた実験結果から分かる。細胞外液をCa-freeにするとシナプス前末端に入るCaが存在しないためAChが放出されることはない。そして平滑筋に存在するACh受容体はムスカリン受容体でこれはニコチンには反応しない。筋肉の収縮は細胞内Ca濃度が上昇することでもたらされる。細胞外からCaがはいることはなく、細胞中のSRのチャネルが開いてCaが放出されることもないので平滑筋は収縮しない。



(2枚目)
2.食後はあるホルモンが分泌され、血糖値が下がる。
1)なぜこのホルモンは食後に分泌されるのか。
2)このホルモンを放出を促進するホルモンを1つ答え、その作用機序を答えよ。

A:
1)このホルモンはインスリンであり食後の血糖値上昇によりインスリンの分泌が増す。
2)ホルモン:グルカゴン。機序:インスリンの放出機序は、脱分極によりL型CaチャネルからCaが流入し、Ca濃度上昇によりインスリンが開口分泌される。さて、cAMPはこのCa電流を増大させる作用があるが、グルカゴンはこのcAMPを増大する作用がある。
その他胃抑制ペプチド(GIP)もグルコース存在条件下でインスリン分泌促進作用があるのですが、作用機序が分かりませんでした。(静脈内投与よりも経口投与したグルコースの方が早く血糖値を下がるのはこのGIPのおかげです。)


(3枚目)
3.胃酸分泌の機序を述べよ。

A:
胃酸分泌は脳相、胃相、腸相の3段階で調節される。脳相では条件反射、味覚、嗅覚などの刺激により迷走神経が直接あるいはG細胞、ガストリンを介して胃底の胃酸分泌を促進する。胃相では幽門線のG細胞が食塊のアミノ酸に反応、または伸張によりガストリンを分泌し、胃酸の分泌を促進する。腸相ではセクレチンによるペプシノゲンの分泌促進、HCl抑制、ソマトスタチンやCCKによる抑制作用などがある。


4.ビリルビンの生成から排出までについて述べよ。

A:
溶血によって生じたHbが肝臓のクッパー細胞などのマクロファージで分解されると、CO、鉄、グロブビン、ビリベルジンが生じる。このうちビリベルジンは遊離ビリルビン(間接型ビリルビン)となってマクロファージから放出され血漿中のアルブミンと結合し運ばれる。遊離ビリルビンは肝臓でグルクロン酸に抱合され抱合型ビリルビン(直接型ビリルビン)となり、腸管に排出される。腸管では腸内細菌叢によってウロビリノゲンとなり、さらにステルコビリノゲンを経て、ステルコビリン(大便の黄色)となり大便中に排出される。ここで、ウロビリノゲンの一部は腸管で吸収され大部分が肝臓を経てウロビリノゲンとして胆汁中へ排泄される。これを胆汁色素の腸管循環という。また血液中のウロビリノゲンの一部や、肝臓で一部毛細血管に入った抱合型ビリルビンは腎臓を経て尿中に排泄される。ただし血中の遊離ビリルビンはアルブミンと結合しているので腎臓で濾過されない。



(4枚目)
5.八木式心臓灌流法を用いて心臓の収縮について調べた。Ca-free溶液、高K溶液、高Mg溶液を流した時、どれも心臓の収縮が停止した。この時の電位変化は下図のようになった。それぞれどの溶液を流したものか、またそう判断した理由について述べなさい。
1)

2)

3)


A:
.(1)Ca-free溶液:筋肉の収縮にはCaが必要である。しかし細胞外液がCa-freeであるので外部から流入するCaが存在せず収縮しない。しかしCaチャネルは普段は特異的にCaしか通さないが、Caの濃度が極端に下がるとNaやKを通すという性質をもつ。よって活動電位は発生するが収縮は起こらないという状況が生じる。

(2)高K溶液:細胞外液のK濃度が高くなると静止電位が上昇していく。静止電位が上昇することで心筋のNaチャネルが不活化し活動電位が発生しなくなる。よって収縮が起こらなくなる。静止電位が上昇している(2)が高K溶液である。

(3)高Mg溶液:MgはCaチャネルを競合的な阻害剤でCaが外部から流入するのを阻害する。洞房結節は電位の立ち上がりがCaで発生するためペースメーカーが働かなくなる。よって心臓の収縮も活動電位もストップする。




(5枚目)
6.ラットの頸部を切開し、頚動脈より血圧を測定し迷走神経を結紮する実験を行った。
この実験で結紮したとき血圧が周期的に上下する現象がみられる。それについての考察を( )埋めで答える問題。


血圧曲線を観察すると、ピークに達してから下降する際に切痕が見られた。この切痕は駆出期から弛緩期に移行する際に(  )が閉じたために生じたものである。
迷走神経切断後に血圧のベースラインが周期的に変動した。この周期は(  )と一致した。これは神経切断により(  )が消失して呼吸が(  )なり、胸腔内圧が大きく変動したためと考えられる。胸腔内圧が陰圧になると、肺の血管抵抗が(  )して肺循環系に血液が(  )する。その結果、左心拍出量が(  )するため血圧が(  )する。


A:
血圧曲線を観察すると、ピークに達してから下降する際に切痕が見られた。この切痕は駆出期から弛緩期に移行する際に(大動脈弁)が閉じたために生じたものである。
迷走神経切断後に血圧のベースラインが周期的に変動した。この周期は(呼吸周期)と一致した。これは神経切断により(へーリング・ブロイエル反射)が消失して呼吸が(深く)なり、胸腔内圧が大きく変動したためと考えられる。胸腔内圧が陰圧になると、肺の血管抵抗が(減少)して肺循環系に血液が(貯留)する。その結果、左心拍出量が(減少)するため血圧が(減少)する。



(6枚目)
7.血液中のCO2の運搬について以下の(  )中に適するものを語群から選び、記号で解答欄にこたえよ。


CO2
の溶解度はO2より(a)、単純溶解CO2量は(b)である。残りの数%は(c)などのアミノ基と反応してカルバミノ化合物として存在する。多くのCO2(d)中の炭酸脱水素酵素によって(e)となり、(f)によって血漿中へと流出する。血漿中の(e)の濃度は約(g)に達する。

語群:
(1)
二倍高く (2)20倍高く (3)2倍低く (4)20倍低く (5)数% (6)30% (7)mM (8)30mM (9)60mM (10)ヘモグロビン (11)拡散 (12)アンモニア (13)白血球 (14)ATP (15)赤血球 (16)血小板 (17)HCO3- (18)CO32- (19)COO- (20)輸送体


A:
CO2
の溶解度はO2より(20倍高く)、単純溶解CO2量は(数%)である。残りの数%は(ヘモグロビン)などのアミノ基と反応してカルバミノ化合物として存在する。多くのCO2(赤血球)中の炭酸脱水素酵素によって(HCO3-)となり、(拡散)によって血漿中へと流出する。血漿中の(e)の濃度は約(30mM)に達する。



(7枚目)
8.
1)次の語句を用いて、腎臓について説明せよ。
皮質、髄質、ネフロン、ボーマン嚢、遠位尿細管、糸球体、近位尿細管、ヘンレ係蹄

腎臓は皮質と髄質からなる。腎臓の構造および機能上の単はネフロンである。ネフロンはボーマン嚢と尿細管で構成される。血管も1個の機能的単位となってネフロンに随伴しており、ボーマン嚢の中では糸球体を形成している。尿細管は近位尿細管、ヘンレ係蹄、遠位尿細管、集合管からなりボーマン嚢から1層の上皮細胞によって連結している。


2)次の語句を用いて、GFRの調節について述べよ。
毛細血管圧、血圧の変動、メサンギウム細胞、交感神経、ホルモン

輸入細動脈の収縮により毛細血管圧が減少し、血流も減少するのでGFRが減る。逆にこの血管の拡張でGFRは増大する。一方輸出細動脈の軽度の収縮は糸球体毛細血管圧を上昇させGFRを増す。しかし大きな収縮では血流量が低下し、これによって毛細血管膠質浸透圧が増大するのでGFRは減少の方向に向かう。
血圧の変動は腎血流の自己調節作用によって腎血流量やGFRに比較的影響しない。
メサンギウム細胞は糸球体の血管ループの根元にあり、収縮(ANGⅡ、バゾプレッシン、ノルアドレナリンなど)によって濾過係数Kfを減少してGFRを低下させる。弛緩(ANPなど)では逆にGFRを増大させる。
交感神経刺激では輸入・輸出細動脈を収縮させる。血流は減るが、血圧が増すためGFRに変化は少なく、腎機能を維持しながら血流を他の器官に分配できる。
ホルモンとしてはANGⅡは平滑筋収縮によりGFRを増大し、ANP、糖質コルチコイド、NO、プロスタサイクリンは弛緩によりGFRを増す。


3)以下の語句を用い、腎臓での再吸収について説明せよ。
Na
Cl、水、グルコース、アミノ酸、バゾプレッシン、アンンジオテンシンⅡ、共輸送体、チャネル
Na、Cl、水、グルコース、アミノ酸の再吸収は主に近位尿細管で通して行われる。具体的にはグルコースやアミノ酸とNaの共輸送、HとNaの逆輸送、Naチャネルなどである。またアンジオテンシンⅡは近位尿細管での再吸収を促進し(遠位尿細管や集合管でのNa再吸収はアルドステロンによって促進される。)、バゾプレッシン(ADH)は集合管での水の再吸収を促す。(集合管ではADHがないと水を再吸収しない。)

 

 

 

 

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