平成15年度「放射線基礎医学」最終試験問題

(獲得)

平成16年2月23日(月)実施

 

 

1.     光子のエネルギーに密接に関係のあるのはどれか。[5]

(A)波長、(B)スピン、(C)質量、(D)電荷、(E)速度。

 

答え:(A) E=hν=hc/λ(ν:振動数、λ:波長)

 

 

2.     正しいのはどれか。[5]

(A)1H2D3Tの関係は同中性子体である。

(B)重たい元素になるほど陽子数に比較し中性子数が多くなる。

(C)放射線の相互作用の過程で物理的過程はおよそ10^(-2)秒程度である。

(D)原子核のサイズはおよそ10^(-6)m程度である。

(E)60Coの半減期はおよそ約5年である。10年後には放射能の強さは1/3になる。

 

答え:(B) (A)同位体(C)10^(-15)秒程度(D)10^(-15)m程度(E)1/4

 

 

3.次の文章で正しいのはどれか。その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]
(A)電磁放射線は直接電離放射線に分類される。
(B)中性子は放射損失でエネルギーを失う。
(C)γ線は放射性同位元素の崩壊で発生する。
(D)コンプトン効果は光子のエネルギーが完全に電子に与えられる現象である。
(E)中性子の遮蔽には鉛が適している。

      答え:(C) (A)間接電離放射線の間違い

(B)中性子は軽い核との衝突でエネルギーを失う。

(D)光電効果の話。

(E)遮蔽は水がよい。

 

4.     正しいのはどれか。[5]

(A)X線は原子核内から発生する。

(B)中性子および光子は電荷を持っていないが、質量がある。

(C)電子の静止質量はエネルギーで表現すると1.022MeVである。

(D)X線は連続スペクトルである。

(E)X線の遮蔽には水が適している。

 

答え:[] (A)電子殻から。

(C)0.511MeVです。

(D)制動X線はそうだが特性X線は連続スペクトルではない。

            (E)鉛が適している。

 

 

5.     同じ強さの放射能を持つ放射性同位体X(半減期=10時間)とY(半減期=20時間)がある。XとYの原子の個数の比(NX/NY)を求めなさい。[10]

 

      答え:A(放射能)=λN、λ=ln2/T、

         N=A・T/ln2

         よってNX/NY=(A・10/ln2)/(A・10/ln2)

                 =1/2

 

 

6.比放射能6000 Bq/mg14Cエタノール(CH3CH2OH)を酸化して得られる14C酢酸(CH3COOH)の比放射能(Bq/mg)を計算しなさい。安定同位体による希釈はないものとし、原子量はH=1,C=12,O=16とする。[10点]

 

      答え:エタノール中の14Cの質量の割合は 28/50

         酢酸中の14Cの質量の割合は 28/64

         つまり、エタノールから酢酸になることで比放射能は(28/64)/(28/50)倍になった。

         よって酢酸の比放射能は6000 x (28/64)/(28/50) = 4687 (Bq/mg)

 

7.放射能治療の利点として正しいものには○、間違っているものには×を記入しなさい。[10点]

(1)形態と機能とが保持される。

(2)高齢者や全身状態不良者にも適応できる。

(3)感受性が高い腫瘍では広い範囲の病巣にも適応できる。

(4)組織による感受性の差はなく、すべての組織に適応できる。

(5)早期の反応はあるが、晩期の反応は無視できる。

 

      答え:(1)○  (2)○  (3)○

(4)× そんなことはない。感受性の低い組織には不適。

(5)× 無視できない。発ガン性など。

 

 

8.X線CTの特徴についての以下の記述について、正しいものには○、間違っているものには×を記入しなさい。[10点]

(1)X線CTやMRを含めたいわゆるデジタル画像が現在の画像診断の主役である。

(2)X線を目的とする体の部位に一括して照射し、その範囲のX線吸収値をまとめてデジタルデータとして記録し、断層画像をコンピューターで再構築する。

(3)わずかなX線吸収値の違いを画像化でき、人体の鮮明な横断像を得ることができる。

(4)最近のX線CTでは短時間で人体のボリュームデータを得ることができるようになり、矢状断、冠状断など各種3次元画像も作成できるようになり、臨床に役立てられている。

(5)最近の技術的発達により、X線CTは解剖学的情報だけでなく組織での物質代謝、脳の働きなど機能的な情報の解明にも役立てられている。

 

      答え:(1)× 主役というのはちょっと厳しい。

(2)○ (3)○ (4)○

(5)× 物質代謝まではいかないだろう。

 

 

9.次の文章中の(①)~(⑤)の中に入る最も適当な語句を下記の単語群から選びなさい。[10点]

 

放射線の細胞に対する影響の中で最も顕著なものは細胞死の誘導である。癌の放射線治療は放射線による癌細胞の細胞死を誘導することで成り立っており、また放射線の大量被曝による個体死は血管系や腸の幹細胞な等の細胞死によりもたらされる。

細胞死には形態的・生化学的に区別される2種類がある。傷害により直接的に細胞構造あるいは機能が破壊されて引き起こされる受動的な細胞死は(①)と呼ばれる。それに対して、損傷あるいは生理的な“死のシグナルに”応答して、細胞内の代謝反応の結果として引き起こされる能動的な細胞死は(2)と呼ばれている。(②)を起こした細胞には、(③)の断片化、核内クロマチンの凝縮、細胞の分裂化等の形態的特徴が観察される。このような細胞のゲノムDNAをアガロースゲル電気泳動にかけると、約180塩基対の整数倍の長さのDNA断片が規則的に並んだ、いわゆる“DNAラダー(梯子状に並んだDNA断片)”が観察される。これは(②)を起こした細胞内では、特異的に活性化される(④)がゲノムDNAを(⑤)単位で切断するからである。

 

<単語群> 塩基、ヌクレオチド、ヌクレオソーム、染色体、核、突然変異、細胞周期、チェックポイント、間期死、増殖死、ネクローシス、アポトーシス、界面活性剤、ミトコンドリア、クロロプラスト、チロシンキナーぜ、タンパク質分解酵素、RNA分解酵素、DNA分解酵素、DNA修復酵素

 

      答え:(①)ネクローシス (②)アポトーシス (③)核

(④)DNA分解酵素 (⑤)ヌクレオソーム

 

 

10.次の文章中の( )の中に入る最も適当な語句を、下記の語群(イ)~(ミ)のうちから選びなさい。[20点]

 

 放射線によって引き起こされる人体障害の現れ方には、障害の現れる線量に( ① )のある( ② )と障害発生率が線量の( ③ )となる( ④ )とがあるが、放射線の( ⑤ )と( ⑥ )の関係には明らかでない点も多く、特に( ⑦ )被曝が長期に渡る場合にどうなるかについては不明な点が多いことから、放射線の管理・取り扱いを行う場合には、あらゆる被曝線量はできるだけ低くおさえるよう努力する必要がある。

 放射性物質を取り扱う場合、取扱者の被曝を防ぐことが重要であるが、( ⑧ )や( ⑨ )によって放射性物質が拡散して他の人の被曝につながる可能性もあるので、放射性物質や汚染物質の安全な( ⑩ )は重要な問題である。

 放射性物質の安全取り扱いには」( ⑪ )と( ⑫ )を考慮すべきである。密封されている放射性物質を放射線源として用いる場合には主に( ⑪ )が問題であり、非密封の放射性物質の場合には主に( ⑫ )が問題となる。ただし、必ずしもそれだけでない場合もあるので、他の被曝の可能性も十分に考慮する必要がある。

 放射性核種から放出されるβ線は最もエネルギーの大きいものでも( ⑬ )であるから、( ⑭ )には厚さ1.21.5 cm程度の密度が約1のプラスチック等で十分である。従って体外被曝の危険性を問題にする場合には透過力の大きな( ⑮ )に注目すべきである。ただしβ線の( ⑯ )は空気中で( ⑰ )に達するものもあるから、多量のβ放射体を使用する場合には注意が必要である。またβ線は物質との相互作用で( ⑱ )を放出するから、( ⑲ )の高いβ線が原始番号の( ⑳ )物質を通過する時は( ⑱ )の遮蔽を考慮しなければならない。

 

[語 群]

(イ)            数MeV (ロ)数10MeV (ハ)遮蔽 (ニ)排水 (ホ)効果 (へ)高線量

(ト)最大飛程 (チ)時間 (リ)軟X線 (ヌ)γ線 (ル)数10cm (ヲ)関数

(ワ)数m (カ)骨 (ヨ)体内被曝 (タ)確率的影響 (レ)遺伝的影響 (ソ)身体的影響

(ツ)特性X線 (ネ)確定的影響 (ナ)制動X線 (ラ)筋肉 (ム)低線量 (ノ)大きい

(オ)小さい (ヤ)エネルギー (マ)全身被曝 (ケ)排気 (フ)廃棄 (コ)線量

(エ)皮膚 (サ)体外被曝 (キ)α線 (ミ)閾値

 

      答え:①ミ ②ネ ③ヲ ④タ ⑤コ ⑥ソ ⑦ム ⑧ニ ⑨ケ ⑩フ

⑪サ ⑫ヨ ⑬ト ⑭ハ ⑮ヌ ⑯ト ⑰ル ⑱ナ ⑲ヤ ⑳ノ

 

 

11.放射線による細胞損傷作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。その番号を書きなさい。[5点]

(A)放射線の線質によらず、その機構は常に同一である。

(B)低LET放射線の場合は、遊離基の生成を介して生じる割合が大きい。

(C)損傷の成立に対して、細胞の核と細胞質は同程度に寄与する。

(D)高LET放射線の場合は、細胞構成分子に対する直接作用により生じる割合が大きい。

[1]A、B [2]A,C [3]B,C [4]B、D [5]C、D

 

      答え:(4) 直接作用と間接作用の話。

 

12.マウスにX線を全身1回照射し、その後の経過を観察したところ、1日あたりの個体死亡率は10日前後が最も高かった。この場合の、考えられる吸収線量(Gy)と放射線障害を起こして個体死亡の原因となった主な臓器との組み合わせのうち、正しいものはどれか。その番号を書きなさい。[5点]

 

   <吸収線量(Gy)>  <臓 器>

(1)    8      骨 髄

(2)   15      骨 髄

(3)   25      腸 管

(4)   25      肝 臓

(5)  250      中枢神経

 

      答え:(1)  吸収線量   ~10  10100  100

              死因臓器   骨髄  腸管   中枢神経

              致死時間   長い  35日  短い

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送