平成16年度「放射線基礎医学」最終試験問題
(獲得)
平成17年2月21日(月)実施
1. 下記のうちで、光子エネルギーに関係する量はどれか。正しいものを選んで、その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)光速度
(2)周波数
(3)質量
(4)電荷
(5)上記のすべて
答え:(2) E=hν=hc/λ(ν:振動数、λ:波長)
2. 下記のうちで、高LET放射線はどれか。正しいものを選んで、その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)電子
(2)陽電子
(3)α線
(4)β線
(5)γ線
答え:(3) 他は低LET放射線。LETが高いほど透過力は低いが影響力は大きい。
3. 同じ放射能を持つ無担体の放射性核種AとBがある。AとBの質量の比WA/WBの値を求めなさい。ただし、A、Bの半減期をTA、TB、原子量をMA、MBとする。[5点]
答え:A(放射能)=λN、λ=ln2/T、N=6×10^23×W/Mより
WA=(MA・A・TA)/(ln2・6×10^23)
よってWA/WB=(MA/TA)/(MB/TB)
4. 原子量M、放射化断面積2 x 10^-24 cm^2の単核元素のターゲットwgを中性子束密度f個/cm^2secで生成核の半減期の時間だけ照射した時、照射終了直後の生成放射能(Bq)を求めなさい。アボガドロ定数を6 x 10^23/molとする。[10点]
答え:A=Nfσ(1-e^(-λt))
=w/M x 6 x 10^23 x
f x
2 x 10^-24 x (1-e^(-ln2/T x T))
=w/M x 6 x 10^23 x
f x
2 x 10^-24 x (1-1/2)
=(0.6 x wf)/M
5. 放射線治療の利点が生かされる癌はどれか?正しいものを[a]~[e]から選んで、その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)胃癌
(2)顔面の皮膚癌
(3)喉頭癌
(4)膀胱癌
(5)膵臓癌
[a](1)(2)、[b](2)(3)、[c](3)(4)、[d](4)(5)、[e](1)(3)
答え:[e] (2)表層にはあまり利用しない。(4)生殖器が危険。(5)脾臓が危険。
6. 下記の(1)~(5)の検査のうち、X線・γ線の医学利用の例として適切な組み合わせを[a]~[e]から一つ選んで、解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)CT検査
(2)MRI検査
(3)超音波検査
(4)核医学検査
(5)消化管造影検査
[a](1)(2)(3)、[b](2)(3)(4)、[c](3)(4)(5)、[d](1)(3)(5)、[e](1)(4)(5)
答え:[e] (2)磁場を用いる。
7. 下記の(1)~(5)の検査のうち、核医学検査の特徴として最も適切なものを一つ選んで、解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)空間分解能が高い。
(2)被曝がない。
(3)形態診断に優れている。
(4)機能診断に優れている。
(5)検査時間が短い。
答え:(4)
8. 次の文章の( )の部分に入る最も適切な語句または数値を、解答群から1つだけ選び、数字で答えなさい。[1 x 10 : 10点]
細胞は、内因性および外因性の侵襲に常にさらされている。このうち、内因性侵襲としては、細胞内の(A)や生理作用で生じる(B)が重要である。一方、生物が体外からの放射線に曝された時には、細胞核DNAに様々な変化が生じることが知られている。細胞は、DNAに生じた変化を(C)し、その変化にどう対応するかを選択して実行して、最終的に(D)を(E)する機構を備えている。これが(F)である。γ線よりも、波長が(G)紫外線がつくる生物学的に重要なDNAの変化は(H)の生成である。DNAのこのような変化は(I)として細胞に認識され、細胞が本来備えている修復機構のうち(J)が作動して損傷を修復する。
[解答群]
1.アポトーシス 2.DNA損傷 3.DNA修復 4.p53遺伝子
5.幹細胞 6.活性酸素 7.ピリミジンダイマー 8.遺伝情報
9.代謝 10.短い 11.長い 12.探知 13.保全
14.塩基除去修復 15.ヌクレオチド除去修復
答え:(A)9 (B)1 (C)12 (D)8 (E)13 (F)3 (G)11 (H)7
(I)2 (J)15
9. 次の文章の( )の部分に入る最も適切な語句または数値を、解答群から1つだけ選び、数字で答えなさい。[1 x 10 : 10点]
X線やγ線のような波長が(A)電離放射線は、細胞の核内DNAに(B)をおこし、これがその生物作用である細胞死、発がんや(C)の原因であると考えられている。生じた(B)の(D)は、その切断端が(E)的に(D)される場合と、(F)的に組換えられ(D)される場合とがある。前者は、非相同末端結合修復と呼ばれ、DNA-PK、Ku70やKu80等のタンパク質が関与している。一方後者は(G)と呼ばれ、Rad52等のタンパク質が関与しており、その修復特性から、(H)セットの(F)な(I)を必要とする。従って、この修復機構は、細胞周期のS期と(J)期で作動する。また相同的に組換えられるので、修復に伴う誤りは少ない。
[解答群]
1.1 2.2 3.G1 4.M 5.G2 6.相同組換え修復
7.悪性化 8.突然変異 9.2本鎖切断 10.相同 11.非相同
12.2本鎖DNA 13.2本鎖RNA 14.短い 15.長い
16.再結合 17.複製
答え:(A)14 (B)9 (C)8 (D)16 (E)11 (F)10 (G)6 (H)1
(I)12 (J)5
10.放射線感受性に関して、学習したことを整理して記述しなさい。[10点]
答え:次の3点が大事。
・
細胞分裂が盛んなほど感受性が高い。
・
組織の再生能力が高いほど感受性が高い。
・
形態的にも機能的にも未分化なほど感受性が高い。
11.放射線感受性を示すヒト遺伝病として、毛細血管拡張性小脳失調症(ataxia telengictasia: AT)と色素性乾皮症(xeroderma pigmentsum: XP)が知られている。下の語群からそれぞれの疾患および原因遺伝子産物に関連する語句を5つずつ選び、記号を各疾患名の解答欄に記入しなさい。尚、同じ語句を両疾患に選んでもよい。[10点]
(1)毛細血管拡張性小脳失調症(ataxia telengictasia: AT)
(2)色素性乾皮症(xeroderma pigmentsum: XP)
<語群>(A)電離放射線高感受性 (B)紫外線高感受性 (C)不定期DNA合成能の低下
(D)放射線抵抗性DNA増幅 (E)染色体不安定性 (F)タンパク質リン酸化酵素
(G)ヌクレオチド除去修復 (H)8つの遺伝的相補性群 (I)高発ガン性
答え:(1)・・・(A)(C)(E)(I)
(2)・・・(B)(D)(G)(I)
※(F)(H)はよくわかりませんでした。すんません。
12.下の文章の(1)~(5)に入る適切な単語を下記の単語群から選びなさい。[10点]
放射線の細胞に対する影響の中で最も顕著なものは細胞死の誘導である。癌の放射線治療は放射線による癌細胞の細胞死を誘導することで成り立っており、また放射線の大量被曝による個体死は血管系や腸の幹細胞な等の細胞死によりもたらされる。
細胞死には形態的・生化学的に区別される2種類がある。傷害により直接的に細胞構造あるいは機能が破壊されて引き起こされる受動的な細胞死は(1)と呼ばれる。それに対して、損傷あるいは生理的な“死のシグナルに”応答して、細胞内の代謝反応の結果として引き起こされる能動的な細胞死は(2)と呼ばれている。(2)を起こした細胞には、(3)の断片化、核内クロマチンの凝縮、細胞の分裂化等の形態的特徴が観察される。このような細胞のゲノムDNAをアガロースゲル電気泳動にかけると、約180塩基対の整数倍の長さのDNA断片が規則的に並んだ、いわゆる“DNAラダー(梯子状に並んだDNA断片)”が観察される。これは(2)を起こした細胞内では、特異的に活性化される(4)がゲノムDNAを(5)単位で切断するからである。
<単語群> 塩基、ヌクレオチド、ヌクレオソーム、染色体、核、突然変異、細胞周期、チェックポイント、間期死、増殖死、ネクローシス、アポトーシス、界面活性剤、ミトコンドリア、クロロプラスト、チロシンキナーぜ、タンパク質分解酵素、RNA分解酵素、DNA分解酵素、DNA修復酵素
答え:(1)ネクローシス (2)アポトーシス (3)核
(4)DNA分解酵素 (5)ヌクレオソーム
13.次の記述の(a)~(f)に適切な語句をいれなさい。[10点]
(1)体外被曝を防ぐため考えられる手段は(a )、(b )、(c )である。
(2)γ線の線源を点とみなしうる場合、ある場所での線量は線源からの(d )に反比例する。
(3)放射線の強さを半分にする遮蔽材の厚さを(e )という。
(4)非密封放射性同位体を取り扱う場合に使用するゴム手袋は、(f )線を完全に遮蔽するので手の被曝を防ぐことができる。
答え:(a)遮蔽 (b)距離 (c)時間 (d)距離の二乗 (e)半価層 (f)α
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