平成16年度「放射線基礎医学」中間試験問題

(獲得)

平成16年12月6日(月)実施

 

 

1.    以下のうちで、γ崩壊の電離放射線と物質の相互作用による現象を選んで、その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]

(1)光電効果
(2)コンプトン効果
(3)制動放射
(4)電子対生成
(5)衝突損失

 

答え:(1)(2)(4) γ線は電磁放射線に分類される。正解以外は粒子放射線の話。


2.Which characteristic increases with increasing photon energy?[5点]

1)Wavelength
2)Frequency
3)Mass
4)Charge
5)All of the above

 

答え:(2) E=hν=hc/λ(ν:振動数、λ:波長)

訳)次のどれが増加したら光子エネルギーは増加するか?

 


3.(出題ミスにより全員正解になった)体重63kgの人の全身に4Gyのエックス線を照射した。エックス線のエネルギーが全て熱になり、熱の放散が無いと仮定した時の体温の上昇は何か。但し、人体の比熱は4,2x10の3乗J/(kg・)とする。下記の中から正しいものを選んで、解答欄に記入しなさい。[5点]

(1)60
(2)6
(3)0,6
(4)0,06
(5)0,006


4.次の文章で正しいのはどれか。その番号を解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)電離放射線は直接電離放射線に分類される。
(2)中性子は放射損失でエネルギーを失う。
(3)連続X線は放射性同位元素の崩壊で発生する。
(4)光電効果は光子のエネルギーが完全に電子に与えられる現象である。
(5)中性子の遮蔽には鉛が適している。

      答え:(4) (1)「直接電離放射線は電離放射線に分類される」の間違い。

(2)中性子は軽い核との衝突でエネルギーを失う。

(3)γ線の話。

(5)遮蔽は水がよい。


5.1.0 x 10^10Bqの131I(半減期:7.0 x 10^5秒)の質量(g)を計算しなさい。アボガドロ数を6 x 10^23とする。[10点]

答え:A(放射能)=λN、λ=ln2/T、N=6×10^23×W/Mより

         W=(M・A・T)/(ln2・6×10^23

          =(1311.0 x 10^107.0 x 10^5)(0.6936 x 10^23)

         =2.2 x 10^(-6)  g

 

 

6.ある放射性核種200Bqを含む溶液5.0mlがある。半減期の2倍の時間経過後に丁度20Bqを含む水溶液をつくるのに必要なこの水溶液の量(ml)はいくらか。[10点]

      答え:半減期の二倍の時間がたつと、放射能は1/4になっている。

従って始めは80Bqを含む水溶液を作ればよいので、

5.0 x 80/200 = 2.0 ml


7.次の文章の( )の部分に入る最も適切な語句または数値を、解答群からひとつだけ選び、数字で答えなさい。[2x10:20点]

 細胞は、内因性および外因性の侵襲に常にさらされている。このうち、内因性侵襲としては、細胞内の(A)や生理作用で生じる(B)が重要である。一方、生物が体外からの放射線に曝された時には、細胞核DNAに様々な変化が生じることが知られている。細胞は、DNAに生じた変化を(C)し、その変化にどう対応するかを選択して実行して、最終的に(D)を(E)する機構を備えている。これが(F)である。γ線よりも、波長が(G)紫外線がつくる生物学的に重要なDNAの変化は(H)の生成である。DNAのこのような変化は(I)として細胞に認識され、細胞が本来備えている修復機構のうち(J)が作動して損傷を修復する。

[
解答群]
1.アポトーシス   2.DNA損傷   3.DNA修復   4.p53遺伝子
5.幹細胞   6.活性酸素   7.ピリミジンダイマー 8.遺伝情報
9.代謝   10.短い   11.長い   12.探知   13.保全
14.塩基除去修復   15.ヌクレオチド除去修復

      答え:()9 ()1 ()12 ()8 ()13 ()3 ()11 ()

(I)2 ()15

 

 

8.放射線を照射した時に標的分子が受ける放射線の作用は、直接作用と間接作用が知られている。これらについて、説明しなさい。[10点]

答え:放射線によって、生体に吸収されたエネルギーが細胞内の分子・原子を電離・励起させるが、その反応が標的そのものに起こることを直接作用といい、標的ではなく、周辺の水に起こることを間接作用という。後者では遊離基、遊離電子、励起分子などの不安定物質が精製され、それらが標的を攻撃する。低LET放射線では、間接作用が主になる。

 


9.生物はDNA損傷に対して様々なDNA修復系を有している。ヌクレオチド除去修復系について大腸菌を用いた解析を基にして提唱されているモデルを概説し、合わせて遺伝性疾患との対応で、ヒトにおけるヌクレオチド除去修復系に冠する知見を説明しなさい。[20点]

答え:大腸菌UvrABC機構によるDNAの除去修復では、①UvrAの2量体とUvrBとの複合体によりDNA上の損傷が認識される。②UvrCにより損傷の両側でDNA鎖の切断が起こる。③UvrDが、損傷部位を含む12塩基の断片を解きほぐす。④DNAポリメラーゼⅠにより新しい鎖が合成される。⑤DNAリガーゼにより、DNA鎖が連結される。という過程を経て修復がなされる。

色素性乾皮症患者は、エンドヌクレアーゼが欠損しておりヌクレオチド除去修復を正常に行えない。そのため、紫外線でできたピリミジンダイマーを除去することができず、皮膚癌を発生する。

[
出席点:10点]

 

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