平成16年度「遺伝学」最終試験問題

(獲得)

平成17年2月24日(木)実施

 

1.   次の問題に指示されたことを解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)ゲノムの生物学的役割を2点記しなさい。(2点)
(2)遺伝医学の特性について3点記しなさい。(3点)

A:
(1)遺伝情報の保持、遺伝情報を子孫に伝えること。
(2)選択交配、長い世代、少ない子孫数、優性致死効果、から3つ。(ダーウィンの進化論、メンデルの法則、ワトソンクリックのセントラルドグマとする意見もありましたが、授業プリントにこのように書いてました。)


2.次の記述について正しいものに○、誤りに×をつけなさい。[5点]
(1)複数の遺伝要因と環境要因が発症に関わる疾患を多因子疾患という。
(2)単一遺伝病の遺伝要因を同定する遺伝学的解析にはパラメトリック連鎖解析が適する。
(3)血縁関係が互いに無い個体(例:健康人100人と患者100人)においても、疾患の原因遺伝子を同定するために連鎖解析が実施されている。
(4)100人の一塩基多型を調べたところ、95人が遺伝子型TT、5人が遺伝子型TGであった。この集団における対立遺伝子Gの遺伝子頻度は5%である。
(5)常染色体劣勢遺伝の特徴の一つは、その表現型が世代を超えることである。


A:
(1)○
(2)○
(3)?
(4)×
(5)○

解説:
(1)遺伝病は大きく4つに分類される。
染色体異常:染色体の一部分または1本全体に欠損や挿入を生じた結果発生する.各染色体は数千の遺伝子を担っているので,その異常の現れ方は発育阻害,精神障害,運動障害などきわめて多様である.染色体1本丸ごとの欠損や挿入は生存に不利な場合が多く,自然流産spontaneous abortionの主な原因になっている.染色体異常は新生児のほぼ1%に生じ,入院患児の1%,小児期死亡の2.5%を占める.典型的な染色体異常はダウン症候群(21
トリソミー)で新生児800人に1人の割合で起こり,母親の年齢とともに頻度が高まる.同様に13トリソミーや18トリソミーが知られ,いずれも精神障害や臓器異常を示す.さらに,ディジョージ症候群(22番)など染色体数の減少するものもある。
単一遺伝子病:特定の遺伝子の突然変異に起因するもので,メンデルの遺伝形式を示すためメンデル型疾患ともいわれる.単一遺伝子疾患は約3,000種類知られており,常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖に分けられる.これらの疾患は小児の入院,死因の510%を占めている.まれにしか起こらないものも多いが,家族性高コレステロール血症のような冠状動脈疾患は500人に1人の割合でみられる.鎌状赤血球貧血は黒人の400人に1人であり,嚢胞性線維症cystic fibrosisは白人の2,000人に1人である.単一遺伝子病の原因遺伝子とその変異は,近年次々と明らかにされている.
多因子疾患multifactorial disorder:糖尿病,高血圧,精神分裂症や種々の先天性欠陥,口唇裂,口蓋裂,先天性心臓病などがある.複数の遺伝子が相互作用し,さらに環境因子が働いて生じるが,その仕組みは明らかでない.小児の死因の2535%を占め,成人では慢性症状を示すためさらに深刻となる.現在,遺伝要因の同定,疾病に対する感受性の個人差などが研究されている.
体細胞遺伝疾患:特異的な体細胞の遺伝子に異常が起った場合をいい,癌がその主な例である.

(2)形質マッピング手法としては、大きく2つあり、1つは分子の機能を基礎データにし知識に基づく分子生物学的なアプローチをとる手法で、もう1つは多型を基礎データにし、統計学に基づくアプローチを取る手法である。この遺伝統計学の手法は大きく分けて連鎖解析と連鎖不平衡を用いた解析に分けられる。前者は家系情報を必要とし、メンデルの法則を中心とした遺伝法則を直接用いる手法であり、後者は家系を必ずしも必要とせず、遺伝法則を間接的に用いる手法。さらに連鎖解析を大きく分けるとパラメトリック連鎖解析とノンパラメトリック連鎖解析に分けることができる。パラメトリック連鎖解析は、大家系でメンデルの遺伝形式に従う疾患の解析に適している。染色体上のマーカー遺伝子(SNPなど)と疾患原因遺伝子の連鎖(独立でない)を利用して、疾患原因遺伝子座位の存在領域を絞り込んでいくので疾患原因遺伝座位が一つであり、疾患原因遺伝子の浸透率(遺伝子を持つと疾患となる割合)が1に近い場合(メンデル型遺伝)に有効である。その他求め方の例などいろいろあったけど読むのメンドイので知りたかったら調べてください。。。

(3)

(4)5/200で2,5%

(5)その他、血族結婚の子孫に多い、幼少期から重篤になる、代謝性疾患が多いなど。
常染色体優性遺伝の特徴としては不完全浸透、表限度に個体差がある、遅発性、突然変異で起こり発端者となることが多いなど。


3.21トリソミーを原因とするダウン小女児の核型について正しいものを選択し、解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)47、XY,+21
(2)46、XX
(3)47、XXY
(4)47、XX,+21
(5)46、XY

A:
(4)
解説:
ダウン症:21番染色体が3本ある21トリソミー。新生児期には,筋低緊張,Moro反射の減弱,関節の過伸展,平坦な顔面中央部,眼瞼裂斜上,耳介異形成,第5指中節短縮,手掌横断皺などを認める.その後,開いた口,舌の挺出,知能障害,短頭,内眼角贅皮,鼻橋の低下した小さい鼻などを認めるようになる.また40%に先天性心疾患を合併する.知能はIQ 2550(まれに75)。発生頻度は母の年齢1529歳で11,500,3034歳で1800,3539歳で1270,4044歳で1100,45歳以上で150である.再発危険率は1%である.妊婦の羊水検査(=羊水分析)による胎児診断が可能で,転座保因者や35歳以上の高年妊婦がその適応となる。昔は蒙古症と呼ばれた。40歳で100人に1人の発生頻度は試験にも大事。


4.主要組織適合抗原(MHC)に関する記述のうち、正しいものを選びなさい。回答は必ずしも1つとは限らない。[5点]
(1)ヒトでは第6番染色体上に存在する。
(2)ヒトではクラス
分子としてHLA-DR,DQ,DP分子が存在する。
(3)その遺伝子領域は連鎖不平衡にある。
(4)対立遺伝子排除を受ける。
(5)MHCの種類によって、ペプチドを収容する溝の構造が異なる。
(6)MHCクラス
分子の多型は主にα2、β2ドメインに存在する。
(7)クラス
分子もクラス分子もすべての有核細胞に発現している。
(8)MHCクラス
分子は、MHCクラス分子と比較して結合ペプチドの長さ(アミノ酸残基の数)が長い傾向にある。

A:
(1)、(3)、(5)
解説:
MHC(主要組織適合遺伝子複合体)は免疫に関わる大事な領域で、ヒトやマウスなど多くの動物で確認されている。その中でヒトのHLA(6番染色体)、マウスのH-2(17番染色体)、ラットのRT 1(第14染色体),ウサギのPLAなどがよく解析されている。
(1)6p21.3にある。6は6番染色体、pは短腕(長腕はq)、後ろの番号は遺伝子にセントロメアから端部(テロメア)にむかって順番にふってある。ちなみにp11はいちのいちと読み、じゅういちではない。
(2)クラス
はA,B,Cなどがあり、α1,2,3、β2鎖が結合してできている。クラスDP,DM,DQ,DR,LMP/TAPなどがありα1,2、β1,2が結合してできている。
(3)(4)覚えておきたいこと:MHCの特徴:多重遺伝子族multigene family 、遺伝多型genetic polymophosy 、連鎖不平衡。 TCR(T細胞受容体)の特徴:遺伝子再構成rearrange 、対立遺伝子排除allelic exclusion 、N-region addition 。←授業中先生が絶対覚えておけと言ってた。
(5)(6)MHC分子の多型により生じる多様性はペプチド収容溝を構成するドメインであるアミノ末端領域にある。クラス
分子ではα1とα2ドメイン、クラス分子(HLA-DRまたはマウスE)ではβ1ドメイン。
(7)クラス
はそうであるが、クラスB細胞,マクロファージ,活性化T細胞,胸腺上皮細胞,表皮ランゲルハンス細胞などに発現している.マクロファージ,B細胞,ランゲルハンス細胞は抗原提示細胞として知られ,これらの細胞内のエンドゾームで部分消化された1524残基の外来抗原由来ペプチドがクラスII抗原と結合し細胞膜上に移送される.このペプチドクラスII複合体がヘルパーT細胞に認識され,ヘルパーT細胞の活性化が誘導されると考えられている.クラス分子ではα鎖でとくに顕著な遺伝的多型性を示すα1, α2ドメインで細胞内で部分消化されたウイルスなどの外来抗原由来ペプチド(89残基)と結合し,このクラスI抗原ペプチド複合体をキラーT細胞が認識して,キラーT細胞の活性化が誘導されると考えられている.
(8)クラス
分子は結合する抗原が短く、TCRは抗原に対して斜めに結合する。クラス分子は結合する抗原が長く、TCRは抗原に対して十字を描くように結合する。


5.αβT細胞受容体(TCR)につき正しいものはどれか。番号を解答欄に記入しなさい。正答は必ずしも1つとは限らない。[5点]
(1)TCRα遺伝子の場合N-region additionJ-C junctionにおこる。
(2)遺伝子再構成を受ける。
(3)TCRα遺伝子はTCRβ遺伝子より分化段階の早期に発現する。
(4)自己反応性TCRは負の選択により除去される。
(5)その多様性は理論上10^5に及ぶ。
(6)主にそのCDR3領域が抗原ペプチドの認識に関わっている。
(7)アビディティモデルによればMHC/ペプチド複合体の発現量が低い場合、高い場合と比較して、この複合体に対してよりアフィニティの高いTCRが選択されると考えられる。
(8)放射線照射したA型のMHCを発現したマウスに、(A×B)のMHC型を有する有髄細胞を移入したキメラマウスを作製すると、そのTCRはB型のMHCに拘束された免疫応答を示す

A:
解説:
(1)α遺伝子はVJCの順番で、N-reagion additionはVとJの間、β遺伝子はVDJCの順でN-reagion additionはVD間またはDJ間にある。
(2) 4.(3)(4)の解説参照。
(3)βの方が先
(4)○:自己のMHCを認識できるTCRは正の選択を受け生き残る(MHC拘束性を獲得)。自己MHCに結合した自己ペプチドに反応するTCRは負の選択により排除(アポトーシス)される。
(5)N-reagion additionを考えると理論上10^16にも及ぶ。考えないと10^6.
(6)
(7)アフィニティの低いTCRが選択されることで発現量が低くても活性化が起こると考えられる。アフィニティ:親和性,結合力
(8)

6.次の中から正しい文を5つ選び、それらの番号を若い順に解答欄に記入しなさい。[2×5=10点]
(1)丸い種子を持つエンドウの純系と、しわの種子を持つエンドウの純系とを交配して得られるF1は全て丸い種子を持つエンドウである。F1をさらに交配した場合、丸の種子をもつエンドウと、しわの種子を持つエンドウの頻度比は4:1となる。
(2)Hardy-Weinbergの法則においては、あるアレルの遺伝子頻度はホモ接合体の頻度にヘテロ接合体の頻度の半分を加えた値になる。
(3)4万人に1人罹患者が見られる常染色体劣勢遺伝病においては、ヘテロ接合体の頻度は0,02である。
(4)Hardy-Weinbergの法則によれば、親の世代での遺伝子頻度が雌雄で0,6と0,2と異なる場合、子供の世代ではこの遺伝子頻度の雌雄比は1:1になる。
(5)選択交配は親近交配に比べ、集団の遺伝的構成を変化させることが多い。
(6)親縁係数(coefficient of kinship)はある個体の持つ2個の相同遺伝子が、共通の祖先遺伝子に由来する確率である。
(7)いとこ婚の両親からの子供では、劣性遺伝子の頻度が0,01の常染色体劣勢遺伝病の危険率が、そうでない場合と比べると約15倍になる。
(8)集団サイズが小さくなると、その遺伝子構成は偶然的遺伝子頻度の浮動の影響を受けにくくなる。
(9)超優性によると致死的な遺伝子が集団内に高い頻度で維持されていることを証明できる。
(10)アデニンからチミンへの変化をtransitionと呼ぶ。
(11)transitionよりtransversionの方が頻度が高い。
(12)通常の遺伝子ではサイレント変異よりミスセンス変異の方が頻度が高い。
(13)コード領域内の3塩基の欠失や挿入ではフレームシフトが起こる。
(14)ヒトのゲノム上のCpA配列では突然変異がおきやすい。
(15)塩基の互変異体でG:TA:Cなどのプリン:ピリミジンのミスマッチが起きることがあるが、プリン同士のミスマッチが起きることは無い。
(16)遺伝子変換では通常供与側の遺伝子の塩基配列は変化しない。
(17)機能喪失変異では通常優性遺伝病となる。
(18)優性阻害変異では、遺伝子が欠失している場合に比べ症状が重くなる。
(19)イントロン内の1塩基置換でスプライシングの異常が起こることはない。
(20)トリプレット病は分散型反復配列のリピート数の増加により起きる。

A:(2)(9)
解説:
(1)3:1  (2)16年度中間5(1)参照。  (3)q^2=1/40000よりq=1/200,p=199/200 よって2pq=2*199/40000=0,01  (4)? (5)近親>選択>任意 近親交配ではホモ接合体の増加、ヘテロ接合体の減少という影響を与える。 (6)近交係数の話。15年度中間2の解説参照 (7)? (8)受けやすくなる。 (9)○環境的要因などによって劣性形質の表限度が優性形質の表限度を上回った場合。この場合この致死的な遺伝子を持っている方が生存に有利であったと考えられる。 (10)transversionのこと。transitionはプリン同士あるいはピリミジン同士の塩基置換のこと (11)逆。 (12)? (13)起きない。1や2だと起きてその部位から後ろがまったく意味が変わってしまう。 (14)? (15)? (16)受容側が変化する。 (17)劣勢 (18)重くない (19)ありうる。 (20)縦列型


7.ヒトのゲノムサイズは約3×10^9塩基対である。増殖期にあるヒト初代培養線維芽細胞一個に含まれるゲノムDNAの重量(X)は以下のどの範囲にあると期待されるか。(1)~(5)から適切なものを選び、解答欄に記入しなさい。但し、ヌクレオチドの分子量を300、アボガドロ数を6×10^23とする。また、1pgとは、10^-12gのことである。[5点]
(1)X
3pg
(2)3pg<X
6pg
(3)6pg<X
12pg
(4)12pg<X
24pg
(5)24pg


A:

8.次の記述の内、正しいものはどれか。[a][e]から選び、解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)常染色体劣性遺伝疾患は、突然変異によるものが多い。
(2)常染色体優性遺伝疾患は近親婚に多い。
(3)ヒトにおける常染色体遺伝疾患の経験的再発罹患率と、理論的再発危険率は良く一致する。
(4)性染色体連鎖劣性遺伝疾患は、女性よりも男性に多い。

[a]
(1)(3)(4)のみ [b](1)(2)のみ [c](2)(3)のみ [d](4)のみ [e](1)~(4)のすべて

A:[d]
解説:
(1)(2): 2.(5)参照
(3)しない。一致するのはメンデル遺伝病や染色体構造異常など
(4)性染色体は女性はXX、男性はXYであることを考えれば。


9.出生前診断法に関して次の記述の内、正しいものはどれか。[a][e]から選び、解答欄に記入しなさい。[5点]
(1)絨毛検査法は、羊水検査法に比べて胎児損傷のリスクが大きい。
(2)羊水検査法は、絨毛検査法に比べて多量の胎児細胞が採取できる。
(3)羊水検査法は、絨毛検査法に比べてモザイク、母体細胞混入などのアーティファクトが生じやすい。
(4)絨毛検査法は、羊水検査法に比べて妊娠早期に診断可能である。

[a]
(1)(3)(4)のみ [b](1)(2)のみ [c](2)(3)のみ [d](4)のみ [e](1)~(4)のすべて

A:[d]
解説:
絨毛検査法の特徴:早期診断(9~11週)、羊水検査法より多くの細胞が採取できる、あまりに早い時期だとモザイク(不良細胞)が混ざることがある
羊水検査法の特徴:15週以後、また遅くても胎児損傷の恐れがあり、羊水過多の場合なでを除き中期に行われる検査である。
その他、臍帯血検査法(1/100くらいで血が止まらないことがある)や母体血液検査法(胎児の血が少しだけ混ざっている)などがある。
ただし、自分が調べたものによると最近では超音波測定法の発達により両検査法ともあまり危険度は変わらず0,10,2%となっていた。

10.下記のそれぞれの文章の中で正しいものを10個選び、番号の若い順に解答欄に列記しなさい。[2×10=20点]
(1)癌細胞を正常細胞と人工的に融合した細胞は正常細胞の性質に戻ることが多い。この現象から「癌抑制遺伝子」の概念が生まれた。
(2)遺伝子治療で用いるベクターとしてはレトロウィルスベクターが最も多い。次いで用いられるベクターはアデノウィルスベクターである。
(3)p53遺伝子は一般の消化器癌の多段階発癌過程の中では比較的早期に変異を起こす。 
(4)ハーセプチンは癌遺伝子PTEN産物に対する抗体であり乳癌への臨床応用が始まっている。
(5)網膜芽細胞種は小児の癌腫瘍であるが、その原因となる癌抑制遺伝子はRbである。遺伝性網膜芽細胞種では2つのRb(2本の染色体上にある。)のうち1本は生まれながらに異常があるため散発性(非遺伝性)の網膜芽細胞種より早期に、しかも両眼性に発症することが多い。
(6)癌特異的免疫療法では腫瘍特異的な抗原ペプチドと組織適合抗原(HLA)タイピングが重要である。抗原ペプチドとしてはMAGEファミリーがよく知られている。
(7)細胞周期関連遺伝子サイクリン・ファミリーのなかで、細胞周期が開始されるときもっとも早く上昇するのはサイクリンAである。
(8)癌遺伝子rasの活性機序は点突然変異であり、突然変異であり、突然変異が見出される場所(コドン)は限定されている。rasの変異が多く認められる消化器癌として膵臓癌や肺癌が知られている。
(9)1mm^3の大きさの腫瘍を構成する細胞数は、大体1万個程度であると見積もられる。
(10)がんの遺伝子治療のために患者の癌組織に打ち込まれたベクターは、目的細胞の中で効率的に転写(mRNAが作られること)することが求められる。導入される遺伝子として代表的な遺伝子の一つは、癌抑制遺伝子p53である。
(11)細胞周期の各段階が正常に終了することを監視している遺伝子群がある。サイクリン遺伝子はこれらに属するが、これをピン・ポイント遺伝子群と呼び、その変異は癌化に関連する。
(12)サイクリンンE遺伝子が増幅している食道癌の予後(5年生存率など)は悪い。
(13)APCは遺伝性癌(常染色体優性遺伝)である家族性大腸ポリポーシスの原因遺伝子として発見された癌遺伝子であるが、その後、一般の癌でも変異していることが明らかになった。
(14)MSH2、MLH1は修復遺伝子でこれが遺伝的に変異を起こす疾患がHNPCCである。HNPCCは前癌病変としてポリポーシスを伴わない。
(15)不死化細胞には癌細胞株の他に線維芽細胞株があり、最も有名なものとしてNIH3T3が知られている。この細胞株は癌遺伝子発見のためのフォーカス形成アッセイに用いられてた。
(16)日本の肝臓癌の多くはウイルス発癌機構によるとされ、中でもC型肝炎ウイルスによるものが一番多い。肝臓癌の中には典型的な多段階発癌を示すものが多い
(17)クヌドソンが提唱した3ヒットセオリーのモデルとなった疾患は網膜芽細胞種である。
(18)細胞が突然変異を起こす場合、その多くは目に見える大きさに成長する前に生体から除去される。免疫系による監視機構や変異細胞の「プログラム化された死」(ネクローシス)によると考えられている。
(19)大腸癌の多段階発癌を抑制しようという予防的治療が試みられている。発癌の過程で発現が上昇するCOX-2を抑制する薬としてアスピリンを初めとするNSAIDsが有名である。家族性大腸ポリポーシスではアスピリン投与でポリープ発生数が減らせるという報告がある。
(20)肝臓癌や実験発癌モデル腫瘍を用い、各段階の腫瘍(正常、異形成、癌)の様々な遺伝子発現状態(プロフィル)を調べるのに、DNAマイクロアレイ法は有効である。

A:
解説:(1)○ (2)○(昔は逆だった) (3)後期 (4)PTEN→Her2/neu (5)○ (6)○ (7)サイクリンD (8)○ (9)大体百万個程度 (10)○ (11)チェックポイント遺伝子群と呼ぶ (12)サイクリンD遺伝子が増幅している食道癌の予後は悪い (13)APCは癌抑制遺伝子である。 (14)○ (15)○ (16)○ (17)2ヒットセオリー (18)「プログラム化された細胞死」はアポトーシス (19)○ (20)○


11.遺伝病の予防・治療として各レベルでどのようなことをするか[a][d]を具体的に説明しなさい。[5X4=20点]
(1)家族のレベル
  1.[a:          ]
(2)臨床的形質のレベル
  1.美容整形などの治療
(3)代謝のレベル
  1.回避
  2.制限 [b ]
  3.補充 先天性甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモン投与
  4.除去
(4)変異蛋白のレベル
  1.変異淡白の発現機能増強・分解抑制
  2.[c:          ]
(5)変異遺伝子のレベル
  1.遺伝子発現の増強
  2.細胞または臓器移植
  3.[d:具体例を2つ  ]

A:
a
:遺伝相談 b:フェニルケトン尿症において生後3ヶ月ミルク制限 c正常淡白の補充 d:遺伝子治療、



12.括弧の中に適切な語句または数字を記しなさい。[1x10=10点]
 ヒトゲノム計画はヒトゲノム約3000Mbの塩基配列を決定し、そこからヒトの遺伝子を同定する国際プロジェクトである。この計画は(1)年に公式に発足した。そして、2003年4月に約99%のゲノム配列が高精度に決定され、その解析結果が2004年10月にNature誌に発表された。その達成には、多くの技術たとえば基本的なシークエンス法である(2)法や自動機器の代表である(3)の開発、またデータ即時公開など従来にない国際協調体制があった。2001年に発表された概要版の解読では、ゲノム全体の約90%が解読され、ヒト遺伝子は約3~4万個などヒトゲノムの全貌がはじめて明らかとなった。しかし今回の完成版の解析では、タンパク質をコードするヒト遺伝子数は約(4)と大きく修正された。より正確な遺伝子数が得られた理由として、配列の高精度化、(5)の充実、多生物種ゲノム配列との(6)などによる遺伝子発見技術の向上があげられる。今回の結果から、フグからヒトに至る脊髄動物の遺伝子数はほぼ同じとなり、遺伝子数よりも、そのわずかな機能と組み合わせの違いが生物種の違いに関係することが示唆された。
 ヒトゲノム情報が明らかになったことから、従来の特定の遺伝子やタンパク質を対象とした研究に加えて、今後は多くの遺伝子を対象として網羅的また同時に解析する研究が可能となる。たとえば、転写調節を解析する(7)、タンパク質の相互作用を解析する(8)、多生物ゲノム配列を利用した(6)等が展開すると考えられる。また、(9)を指標とした生活習慣病などの多因子病の解明も重要となる。一方、これら膨大な生物情報が様々なウェブサイトに蓄積されることから、今後の生命科学の研究ではコンピュータを活用した(10)という分野/技術が重要となる。

A:
(1)1991 (2)サンガー (3)スラブ式orキャピラリ式自動シークエンサー。たぶんスラブ式自動シークエンサー (4)22000 (5)人材など (6)比較ゲノム解析 (7)ChllP-chip法 (8)Protein-protein interaction network法 (9)SNP (10)data-driven Biology
解説:
サンガー法:1)タンパク質のN末端決定法:2,4
ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を弱アルカリ性でタンパク質(ペプチド)と反応させαアミノ基またはαイミノ基を修飾した後,加水分解してジニトロフェニル化したアミノ酸を二次元濾紙あるいは薄層クロマトグラフィーにより検出しN末端アミノ酸を同定する方法. 2)DNAの塩基配列決定法:チェインターミネーター法とも呼ぶ.短鎖DNAをプライマーとして鋳型DNAにアニールanneal(アニーリング)させDNAポリメラーゼの伸長反応を行い,この伸長反応を塩基特異的に停止させ電気泳動によって塩基配列を分析する方法.
ChllP-chip
法:DNAチップ(マイクロアレイ)を用いたトランスクリプトーム解析法の1つ。細胞中で発現している全遺伝子をトランススクリプトーム、また遺伝子から生成される全タンパク質をプロテオームという。
SNP:スニップと読む。個人間の1塩基多型のことでヒトで約1キロベースに1つあると言われ、ヒトゲノム全体で約300万個あるということになる。
(5)はプリント、ヒトゲノム研究とゲノム科学 の ヒトゲノム解読が実現した背景 の項に自動機器の進歩、プロトコールの改良・開発、サンプルの並列処理化、コンピュータ能力アップ、情報ネットワークの発達、人材の育成、管理体制の確立、センター化、技術の標準化、競争的協同組織、があげられていました。

 

 

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