平成17年度 病理学 本試験

(復元)(解答作成Y.S氏。謝謝)

○ 実施日: 2005.9.20

○ 試験時間: 筆記試験120分、実習室に移動後、実習試験60分。

○ 問題用紙: 筆記試験・・・1病理は問題・解答共通でA4が2枚、2病理は問題A4が1枚、解答白紙のB4が1枚。実習試験・・・解答用紙はB5で2枚。

○ 不合格: 23

○ 総括: 筆記試験は傾向変わらず、過去問から多く出題されていた。しかしプレパ試験が難しく、実習でスケッチしたやつからしか出さんとか言ってたのに、スケッチしてないのもたくさん出してきた(オイ)。試験官10人。わらわら湧いて出てくるので、ちょっとウケた。

 

 

 

<1病理>

【1】 炎症の病理について、その基本的病変を列挙して説明せよ。(5点)

 

<解答>

 変質性炎…炎症の基本病変としての細胞・組織の変性・壊死が目立ち、滲出や増殖性変化が極めて弱い場合をいう。

 滲出性炎…滲出性変化が目立つ炎症をいい、滲出物の性状によって更に細分される。

  漿液性炎 …血清成分とほぼ同じ滲出物で細胞成分が少ない場合。

  線維素性炎…血管透過性の亢進が高度になり、滲出液のなかに多量の繊維素を含む場合。

  化膿性炎 …多数の好中球浸潤と黄色~黄緑色、不透明で粘調な膿と呼ばれる浸出液の産生を特徴とする場合。化膿性炎症は、好中球の浸潤様式の違いによってさらに峰巣炎と膿瘍とに分けられる。

峰巣炎…好中球が組織の間をびまん性に広がって浸潤する場合。

膿瘍 …限局性に多数の好中球が集まって、その中心部の組織が融解壊死を起こして膿が貯留したもの。

壊疽性炎…壊死に陥った組織がさらに腐敗菌によって腐敗した場合。

出血性炎…炎症巣において著しい出血がみられる場合。

 

増殖性炎…滲出反応にかわって組織の線維成分や実質細胞の増殖を主体とした炎症反応が目立つ炎症をいう。増殖性炎の特殊なものとして、肉芽腫性炎が区別される。

 肉芽腫性炎…ラングハンス型巨細胞をまじえた類上皮細胞の増殖を主体とする特殊な肉芽腫の形成を特徴とする。類上皮細胞とは、マクロファージが変化して上皮細胞に似た細胞になったものである。ラングハンス型巨細胞は、馬蹄状に配列した数個~十数個の核を有する多核の巨細胞である。結核結節や、サルコイドーシス、梅毒によるゴム腫などがこの腫の炎症を起こす。

 

 

【2】 次の事項について説明せよ。(各2点)

  1)非細菌血栓性心内膜炎

    <解答> 消耗性疾患の末期に血栓が発生することがあり、その際に細菌感染を伴わない弁着血栓を形成するものをいう。僧帽弁や大動脈弁の閉鎖縁に沿って、赤色調の25mm大の多発性の血栓が生じる。

 

  2)梗塞の分類と発生機構

     <解答> 終動脈の閉塞により、その支配領域全体が虚血性の壊死に陥ることを梗塞と呼ぶ。下記のように分類される。

     貧血性梗塞…通常の梗塞では、虚血により梗塞部は蒼白な貧血性となり、これを貧血性梗塞と呼ぶ。梗塞部と正常部の境界部には周囲から血液が流れ込み、逆に赤く充血性となり境界が強調される。

     出血性梗塞…吻合が多い臓器や血管の二重支配がある臓器では梗塞は起こりにくいが、ある特殊な状況下では梗塞部は暗赤色の出血性となり、これを出血性梗塞と呼ぶ。例えば腸捻転で小腸とともにその動静脈が同時に捻転し、動静脈が同時に閉塞するため、血液が局所に停滞したままとなる。すると血液を含む血管壁の壊死が起こり、出血が起こる。また肺では、肺動脈と気管支動脈の二重支配を受けているため、一方が梗塞を起こし、壊死を起こすと、もう一方の血管から血液が流れ込んでいるため、出血を起こす。

3)偽膜性炎症の病理像とその転機

   <解答> 偽膜性腸炎や鼻咽頭・咽頭のジフテリアでは、壊死に陥った粘膜の表層を被覆するように、線維素、粘液、壊死物質および好中球などからなる膜様物が形成される。これを偽膜という。粘膜自身の壊死が比較的少なく偽膜が剥離しやすいものや、壊死がより深層にまで及び剥離しにくいものがある。ジフテリアは後者に属し、咽頭や気道から軟口蓋、喉頭、気管に広がり、著しい呼吸障害を起こすことがある。

 

  4)終末感染症

     <解答> 終末期に免疫力が低下した際に起こる感染症のことだと思うのですが、うまく説明できませんでした。日和見感染とかぶる部分が多いとは思うので、日和見感染の説明で勘弁して下さい。

     日和見感染とは、感染抵抗力が低下することで普段は感染しないような常在菌の感染が起こることです。病原体としては緑膿菌、カンジダ、アスペルギルスなど多種に及びます。

 

  5)動脈血栓の転機

     <解答> 動脈血栓の運命は主に以下の5つの場合に分かれる。

     1)血栓が成長して血管腔を閉塞する。

        末梢流域への血流を遮断し、吻合枝の発達のない、いわゆる終動脈では同部の壊死を起こすことがある。

     2)軟化溶解する。

        線維素溶解系が働き、プラスミンによる血栓溶解が起こる。血栓中に化膿菌が感染した場合に、好中球の遊走、浸潤を伴って化膿性軟化を起こすこともある。

     3)遊離し、血流にそって流れ、塞栓症を起こす。

        血栓の一部、または全部が剥離して、血流に運ばれ、より末梢の動脈で塞栓症を起こす。

     4)器質化されて再疎通が起こる。

        血栓が肉芽組織と弛緩されて器質化し、また増生した毛細血管が器質化の過程で整理され、血液が再び流れ始めること、すなわち再疎通が起こる。

     5)器質化されて、内膜の限局性肥厚を残す。

 

  6)Ⅴ型アレルギーの発生機序

     <解答> 免疫現象、特に自己抗体との反応により臓器、組織、細胞の機能亢進が起こり、有害な症状を呈するものをⅤ型アレルギーという。

 

 

【3】 以下の(  )内に字句を記入して、文章を完成させよ。(各0.5点)

 

1)血管内皮細胞の代表的生物学的特性として、( a )、( b )、( c )、( d )、

3.以下の(  )内に字句を記入して、文章を完成させよ。(各0.5点)

 1)血管内皮細胞の代表的生物学的特性として、( a )、( b )、( c )、( d )、( e )が挙げられる。

 2)組織間の血漿成分増加を( f )といい、規定因子としてStarlingの法則より、( g )、( h )、( i )、( j )のそれぞれの圧が関与する。

 3)補体による細胞傷害には( k )経路と( l )経路があり、抗体により媒介されるアレルギー反応は( m )型と( n )型である。また糸球体腎炎は( o )型、ABO不適合輸血は( p )型のアレルギー反応が関与している。

 4)細菌の毒素は大きく分けて内毒素と外毒素があるが、このうち内毒素は、グラム( q )菌の細胞膜の( r )であり、外毒素には( s )毒素などがある。

 5)真菌感染症の原因となる真菌には、カンジダやアスペルギールス、ムコールやクリプトコッカスなどがあるが、このうちカンジダは主に( t )系、アスペルギールスやムコールは主に( u )系、クリプトコッカスは主に( v )系の臓器に疾患をもたらす。

 

<解答>a.選択的透過性、 b.抗血栓性、 c.止血・血栓性、 d.血管新生、 e.トーヌス調節 f.浮腫 g.毛細血管内圧、 h.組織圧、 i.血漿の浸透圧、 j.組織液の浸透圧、 k.古典、 l.副、 m.Ⅰ、 n.Ⅱ、 o.Ⅲ、 p.Ⅱ、 q.陰、 r.リポ多糖、 s.ボツリヌス、 t..消化器、 u.呼吸器、 v.中枢神経

 

 

【4】 以下の文章の正誤を、○×で記せ。(各0.5点)

 1)肺性心は左心不全の直接原因となる。

 2)骨髄由来内皮前駆細胞は肺葉期血管新生に特異的である。

 3)傍側循環の???

 4)塞栓症の原因として最も多いものは、骨折や外傷によって骨髄や脂肪が肺動脈に塞栓するものである。

 5)肺のうっ血水腫は左心不全、肝、腎、腸のうっ血は右心不全で見られる。

 6)わが国のウイルス肝炎のうち最も多いのはB型肝炎とC型肝炎であり、肝硬変や肝癌への移行が高率である。

 7)深在性化膿炎症には限局性蜂窩織炎とびまん性膿瘍がある???

 8)肉芽腫性炎は傷害組織の修復に特徴的である。

 9)敗血症の時の病理像としては、転移性微小膿瘍形成および毒血症による全身性網内系の活性化が特徴的である。

 10)NOは炎症時にはcAMPを介して多機能を発揮する。

 11)川崎病の血管炎は冠動脈に好発する。

 12)ケモカイン受容体はHIV-1ウイルスのCD8+リンパ球への感染に関与している。

 13)好酸球細胞結合IgEと抗原との結合を基盤として発生するアレルギーがⅠ型である。

 14)ANCA陽性血管炎には、ウェゲナー肉芽腫、顕微鏡的多発動脈炎やアレルギー性肉芽腫性血管炎などがある。

 

<解答>

1)× 肺性心は肺循環の抵抗が増大し、左心室に負担がかかるもの。

2)すみません、わかりませんでした。

3)?

4)× 塞栓の源としては遊離した血栓であることが最も多い。

5)○

6)× 急性肝炎の約5060%はA型肝炎であり、A型肝炎は慢性に移行することはない。

7)× 限局性の膿瘍、びまん性の蜂窩織炎

8)× 傷害組織の修復に特徴的なのは肉芽組織の増生。

9)○

0)× NOcGMPを介して作用する。

11)○ 

12)× HIVウイルスはCD4+リンパ球に感染する。

13)× Ⅰ型アレルギーは肥満細胞に結合したIgEと抗原との結合を契機に起こる。

14)○ ウェゲナー肉芽腫はc-ANCA、顕微鏡的多発動脈炎・アレルギー性肉芽腫性血管炎はp-ANCAに特異性がある。

 

 

 

<2病理>

【1】 癌の病理組織学的な予後不良因子を腫瘍実質側と腫瘍間質(宿主)側に分けて述べよ。(7点)

 

<解答>

腫瘍実質側の予後不良因子は、局所的影響、全身的影響、ホルモン作用の3つに主に分類される。

a.局所的影響:癌の発育に伴う周囲組織の圧迫や破壊、狭窄などによる要素。機械的圧迫、破壊、出血、病的骨折、神経痛、狭窄、閉塞、黄疸、腎不全、茎捻転、潰瘍、穿孔など。

b.全身的影響:癌の発育に伴う全身状態を悪化させる要素。全身栄養障害、貧血、黄疸、尿毒症、悪液質、と基礎ホルモン、DIC、感染など。

c.ホルモン作用:ホルモン産生腫瘍から産生されるホルモンによる影響。膵島腺腫、副腎皮質腺腫、下垂体腺腫など。

 

腫瘍間質側の予後不良因子は、ホルモン依存性のもの、宿主抵抗によるもの、の2つに主に分類される。

a.ホルモン依存性:宿主のホルモンによって予後を悪化させる。乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌など。

b.宿主抵抗:宿主の免疫による変化。滲出性間質反応によるリンパ球の浸潤。増殖性間質反応による結合組織の増殖。

 

 

【2】 次の事項について略述せよ。(各2点)

1)多段階発癌

2)代表的な癌遺伝子を3つ挙げ、それに随伴するヒト腫瘍を列挙せよ。

3)免疫組織化学染色で第1段階で腫瘍の鑑別に有用な抗体とその認識する腫瘍を列挙せよ。

4)原爆に起因して発生する悪性腫瘍

5)創傷治癒過程

6)上皮の化生

7)奇形の臨界期

8)Helicobacter pylori感染と胃・十二指腸病変の関連

9)肉芽組織

10)消化管アミロイド症

11)小児と成人に好発する軟部肉腫を各々2つ挙げよ。

12)アポトーシス(apoptosis)とネクローシス(necrosis)

13)褐色萎縮

14)閉塞性黄疸

 

<解答>

1)多段階発癌

   発癌物質や紫外線、放射線などが標的細胞に作用し、様々な原癌遺伝子や癌抑制遺伝子に多段階的に突然変異を起こすことによって発癌すること。

2)代表的な癌遺伝子を3つ挙げ、それに随伴するヒト腫瘍を列挙せよ。

   erbB2:乳癌をはじめとする腺癌

p53:乳癌,子宮頸癌,卵巣癌,肺癌など。

ras:大腸癌、膵臓癌など。

3)免疫組織化学染色で第1段階で腫瘍の鑑別に有用な抗体とその認識する腫瘍を列挙せよ。

   CD45:リンパ腫、cytokeratin:上皮性腫瘍、S-100:メラノーマ・シュワン細胞・グリア

vimentin:肉腫、placentalALP:胚細胞、chromograninA:神経内分泌、GFAP:グリア、

neurofilament:神経細胞

4)原爆に起因して発生する悪性腫瘍

   原爆の放射能により、細胞のDNAが傷害され、発癌する。放射線に対する感受性は、分裂、増殖が活発である未熟な細胞で高い。よって原爆に起因する悪性腫瘍は、造血組織から起こる白血病が多くなっている。

5)創傷治癒過程

   第一次的治癒(直接治癒)は組織欠損が少なく、感染もなく、縫合により創面が密着する場合に起こり、形成される肉芽組織の量も少なく、ほとんど瘢痕を残さず治癒する。

   第二次的治癒(間接治癒)は傷口が大きく、組織の欠損が多い場合の創傷治癒であり、多量の肉芽組織が形成され、これが広い欠損部を充填する。その後、肉芽組織は吸収されるが、残った部分は瘢痕となる。

6)上皮の化生

   分化を終えた組織が形態的および機能的にほかの分化した組織の性格をもつようになる現象を化生といい、そのうち上皮組織にみられるものには、扁平上皮化生、腸上皮化生などが多い。

7)奇形の臨界期

   受精後3~8週の間は、主要な臓器が形成され、この時期に胎児の発育が阻害されると奇形を起こしやすいので、この器官を臨界期という。

8)Helicobacter pylori感染と胃・十二指腸病変の関連

   H.pyloriの感染は胃炎の原因になり、また胃炎は胃癌の発生を促す。また胃十二指腸潰瘍を引き起こす。

9)肉芽組織

   治癒過程にある創,潰瘍,炎症組織の表面に肉芽隆起を形成する血管結合組織。

10)消化管アミロイド症

   アミロイドタンパクが、血管、組織の細胞間隙に沈着した状態をアミロイドーシスという。消化管では十二指腸で好発し、AAタンパクが粘膜固有層の血管周囲に沈着すると吸収障害を起こす。また固有筋層にALタンパクが沈着すると、運動障害により便秘となる。

11)小児と成人に好発する軟部肉腫を各々2つ挙げよ。

   小児:横紋筋肉腫、骨肉腫

   成人:悪性線維性組織球腫、平滑筋肉腫

12)アポトーシス(apoptosis)とネクローシス(necrosis)

   アポトーシスとはプログラムされた細胞死のことであり、細胞の縮小、クロマチンの凝縮、核の断片化、アポトーシス小体を経て、マクロファージに貪食される。

   ネクローシスは、プログラムされていない細胞死であり、核濃縮、核崩壊、核融解が見られ、自己融解を起こし、細胞室内のリソソームなどの酵素が放出される。

13)褐色萎縮

   リポフスチンと呼ばれる色素が、消耗性疾患(癌や結核など)の際に実質細胞の核周囲に異常に沈着し、臓器が萎縮した状態。心や肝に起こりやすい。

14)閉塞性黄疸

   胆石や胆管癌で胆道が閉塞されたり、先天性の胆道閉鎖で起こる黄疸。胆道に一度分泌された胆汁が血中に逆流して黄疸が起こるため、直接型ビリルビンが上昇する。

 

 

 

<プレパラート試験>

プレパは6枚。カンニングできないよう4パターンの問題がある。

解答は「臓器診断」「根拠」「病理診断」「所見」です。

以下にH17の試験問題を載せますが、確証はないです。

 

A・・・(1)肺結核

(2)心筋梗塞(新鮮)

(3)心筋梗塞(陳旧性)

(4)肝:ヘモジデローシス

(5)腎:血管筋脂肪腫

(6)乳腺:浸潤性乳管癌

 

B・・・(1)カリニ肺炎

(2)心筋梗塞(陳旧性)

(3)化膿性虫垂炎

(4)多発性骨髄腫?

(5)小腸:ポイツ・ジェガーポリープ

(6)肝細胞癌

 

C・・・(1)結核結節?

(2)腎:DIC

(3)カリニ肺炎

(4)転移性石灰化

(5)MFH?

(6)食堂:扁平上皮癌

 

D・・・(1)甲状腺:橋本病

(2)動脈血栓

(3)肺アスペルギルス症

(4)脂肪肝

(5)皮膚:異所性膵?

(6)小腸:ポイツ・ジェガーポリープ

 

 

 

 

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