平成17年度 臨床検査医学 本試験

(復元)

○ 実施日: 2005.9.26

○ 試験時間: 90

○ 問題用紙: 問題用紙と解答用紙共通でA3裏表1枚

○ 不合格: 34

○ 総括: 後ろ3分の2は例年通りノートからだったが、前半はちょっと見慣れない問題も。ノートだけだとギリギリ合格できるくらい。試験官は2人。

 

 

 

【1】 検査は絶食後何時間経って行われるのがよいとされているか?

 

12時間

 

 

【2】 その理由を述べよ

 

検査値は、病気の有無・種類・程度(病態)以外にも、食事、運動、採血日時(生体のリズム)、体位(横になった状態か立っている状態か)、服薬、その他、多数の因子によって影響される。そこで、検査値を解釈する上で病態以外の影響をなるべく無視できるように、多くの検査については早朝・空腹・安静の状態で検体(血液・尿など)を採取するのが理想とされているから。

 (ただし、それはあくまで理想であって、大部分の検査については、食事をしたからといって、即、検査が無意味になったり診断に支障をきたすようなことは起きないのが通常。また、血糖、中性脂肪など食後にあきらかに数値が上昇する検査についても、いつ食事をしたかという条件が判明していれば、食後の検査であっても、それなりに診断や治療に有用。採血のときに食事を抜いてきた方がいいかどうかは、ケース・バイ・ケース。薬については、検査への影響という意味では服薬前の方が望ましいが、薬を服薬しないで自宅から病院に来られることにより病気に悪影響が出る場合もある。)

 

 

【3】 基準範囲について、基準値と基準個体という語句を用いて述べよ。

 

◆ チェック用語

・基準固体: 基準範囲を求めるための個人。健康の状態が、適切に定義された基準に則って選ばれた個体。

・基準値:  基準標本群を基にして、それを構成する基準個体から得られた基準範囲を求める検査項目の計測値。

・基準範囲:  基準分布を基にして、基準個体の計測値の中央値を含む95%が含まれる範囲です。

・カットオフ値:  基準範囲を基本とし、これに各検査項目の特性を考慮したうえで正常とみなす範囲を決めます。この範囲を区切る値がカットオフ値とよばれる値です。健康な人の検査値の範囲と病気にかかっている人の検査範囲とが全く重ならない場合にはカットオフ値を決めるのは簡単ですが,多くの測定項目では境界があいまいです。

 

こんな資料もありました。参考までに。

1)基準個体: 基準範囲を求めるための個人。健康の状態が、適切に定義された基準に則って選ばれた個体。

2)基準母集団: すべての基準個体を含む集団。したがって。この母集団は性、年齢、飲酒、喫煙習慣、投薬などの健康に関する生活習慣が厳密に問診などで調査された集団である。

3)基準標本群: 基準母集団の中で、性、年齢、生活習慣などで厳密に分類された基準個体の集合であり、この標本群を母集団として基準範囲が計算される。

4)基準値: 基準標本群を基にして、それを構成する基準個体から得られた基準範囲を求める検査項目の計測値。

5)基準分布: 基準標本群の基準値の分布。

6)基準限界値: 基準範囲の上限値または下限値。

7)基準範囲: 基準分布を基にして、基準個体の計測値の中央値を含む95%が含まれる範囲である。統計学的に信頼性のあるn数から求めたものである。

8)観察値: 日常の検査で観察される個体の計測値。

9)パニック値(緊急検査値、緊急異常値):緊急時の病態を反映する基準

 

 

【4】 病態識別値、治療目標値、基準範囲の違いについて述べよ。

 

病態識別値:ある専門家集団により十分に検討して合意された診断基準があれば、それはしばしば病態識別値と呼ばれる。糖尿病、高脂血症、高尿酸血症については各診断のための基準値が設定されている。

治療目標値:病的に高い測定値を示す患者の場合に、治療でどこまで測定値を下げるかの基準が必要であり、そのような場合の基準値を治療目標値と呼ぶ。(例えば血清総コレステロールの治療目標値として220mg/dを日本動脈硬化学会が提唱しています。)

基準範囲:3参照。

 

 

【5】 検査結果の精確さには、「正確さ」と「精密さ」があるが、平均値と標準偏差は各々どちらに関与しているか。

 

平均値は正確さ、標準偏差は精密さ。

 

説明:


正確さとは実際は5という数字なのを、計測して5と出るか。(複数回試行してその平均が5であれば問題ない。)

精密さとは複数回試行しても同じ値がでるか。(上の例で、6とでても何度やっても6なら精密さは高いと言える。)

左図は精密さは同じ、右図は正確さは同じ。

 

 

【6】 尿沈渣で見られる円柱についてその成り立ちを答えよ。

 

円柱はまず、硝子円柱が、尿細管において分泌されるTammHorsfallのムコ蛋白とアルブミンが停留し、尿細管における強力な水分再吸収によりゲル化、尿細管腔を埋め、その鋳型により合成される。同時に細胞成分が存在したとき、それが円柱内に取り込まれ各種円柱を呈する。このことにより、硝子円柱以外の各種円柱の増加は、臨床的に確実に腎病変の存在を示唆していると考えて良い。

脂肪円柱:ネフローゼ症候群

顆粒円柱、白血球円柱:腎盂腎炎

赤血球円柱:糸球体腎炎

 

【7】 尿沈渣で見られる上皮細胞のうち、異常でないものは何か。

 

尿沈渣では正常でも尿細管由来の、尿細管上皮細胞、腎盂から内尿道口に由来する移行上皮細胞、外尿道付近の重層扁平上皮細胞が認められる。女性での扁平上皮細胞の多数の混入は、膣由来と考えられ、診断的意義はない。

 

 

【8】 代表的な抗凝固剤を3つ挙げよ。また、それぞれどのような検査に用いられるかを1つずつ挙げよ。

 

EDTA:赤血球数測定

クエン酸:凝固検査

へパリン:ChE活性検査

 

 

【9】 全血、血清、血漿の違いについて述べよ。

 

全血:採血された血液の全成分

血漿:全血から血球成分を取り除いたもの

血清:血漿から凝集素を取り除いたもの

 

 

【10】 逸脱酵素とは何か。またその臨床検査的意義を述べよ。

 

酵素の中にはある臓器特異的に産生される酵素が存在する。その酵素が組織障害などにより血中へ流出したものを逸脱酵素という。通常でも少量血中に存在するが、組織が傷害されると大量に血中へ漏れ出す。そして働きは同じでも作られる臓器によって構造が微妙に異なるアイソザイムと呼ばれる酵素の特定により傷害された組織の特定に役立つ。

 

 

【11】 アルカリホスファターゼアイソザイムの由来と、その出現病態を3つ挙げよ。

 

アイソザイム

産生臓器

疑われる疾患

ALP1

肝、胆道系

膜結合型、閉塞性黄疸

ALP2

肝・毛細胆管

健常者にも多い・細胆管炎

ALP3

骨、骨芽細胞

骨肉腫、骨髄腫およびそれらの転移

ALP4

胎盤

妊娠・肺癌・卵巣癌

ALP5

小腸

食事後(B型・O型の人)

ALP6

Ig結合型

特になし

 

 

【12】 代表的凝固能検査法を2つ挙げよ。

 

出血時間、PT、APTT、フィブリン量検査、血小板数検査

 

 

【13】 12のうち、第8因子の異常によって異常値を示すものを挙げよ。

 

APTT  (PTは正常)

 

 

【14】 Protein C / Protein S 制御系の機能を述べよ。

 

共に肝臓で産生されるビタミンK依存性の線溶系に大きく関わるタンパクである。凝固因子のひとつであるトロンビンは血管内皮のトロンボモジュリンと結合することにより不活化する。そしてこの複合体はProtein Cを活性化し、このActivated Protein C(APC)は血管内皮細胞や血小板のリン脂質に、Caの結合したγ―カルボキシグルタミン酸ドメインを介して結合。補酵素Protein Sの存在下にⅧa、Ⅴaを分解して不活化する。これにより凝固系の抑制。また、tissue plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)と反応してPAI-1のレベルを低下させ線溶系を亢進させる。

 

 

【15】 PCR-RFLPの原理を述べよ。

 

Polymerase Chain ReactonRestriction Fragment Length Polymorphism

ある特定の遺伝子領域またはDNAの領域を同一の制限酵素によって切断した場合に検出されるDNA断片の数とそれぞれの断片の長さについて,生物種間あるいは個体間,または同一個体のアリールallele(対立遺伝子)間で認められる遺伝的多型を指し、また転じてそれを検出する手法も意味する。DNAを採取してPCRでDNAを増幅、特定の制限酵素を用いてDNAを切断、電気泳動、紫外線によるDNAの可視化(サザンブロッティングなど)によって断片長の差でAlleleなどを識別する方法。ヒトの個体識別や血縁関係の鑑定,生態学における個体や系統,集団の識別などに用いられる.

 

 

【16】 遺伝子治療において、インフォームド・コンセントの重要性について自分なりの考えを述べよ。

 

現在でもまだ不完全な治療法であり、癌化などの危険性を含むこと。遺伝情報は本人の遺伝子・染色体に基づく体質、疾病の発症等に関する情報のほか、その血縁者に係わる情報でもあり、生涯変化しないものであること。などを絡めて書けばよいと思われます。

 

 

【17】 ミトコンドリアの閾値効果について述べよ。

 

ミトコンドリアゲノムは1細胞あたり数千コピー存在し、ミトコンドリア病患者の組織・細胞においては、変異型mtDNAと野生型mtDNAが共存している(ヘテロプラスミー)。変異型mtDNAの割合が一定の閾値を越えた場合にミトコンドリア機能異常がもたらされる。

 

 

【18】 ミトコンドリアDNA異常による電子伝達系の異常によってもたらされる代謝異常について述べよ。

 

代表的なものに高乳酸血症がある。電子伝達系の異常により、NADHをNAD+にできなくなり、解糖系のある段階が進まなくなる。代償として、ピルビン酸を乳酸にすることでNADHをNAD+にして解糖系をまわす。このため血中に乳酸が増える。(至誠より)

 

 

【19】 (表から感度と特異度を求める問題)

 

 

【20】 (感度と特異度の棒グラフからグラフを書く問題。やり方の例があるので問題見ればわかる)

 

 

 

 

 

 

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