平成17年度 臨床検査医学 追試験
(復元)
○ 実施日: 2005.10.29
○ 試験時間: 90分
○ 総括:
本試とまったく同じ問題でした。監督もカン先生1人で、試験中もアットホームな雰囲気が流れていました。
(以下は友人が作ってくれた解答です。)
【1】検査は絶食後何時間たってから行うのがよいとされているか答えよ。
(A)12時間
【2】1の理由を述べよ。
(A)食事は検査値に影響を与えうる因子の一つである。糖分や脂肪分を含んでいない食事ならば差し支えないが、それ以外の飲食物を摂取してしまうと、血糖や中性脂肪などが空腹時よりも高い結果になる場合がある。
【3】基準範囲について、基準値と基準個体という語句を用いて述べよ。
(A) 人種・性・年齢・生活習慣などを同じくし、かつ当該検査値に影響を与える因子や病態をもたない健康人を基準個体という。基準範囲とは、基準個体の集団を対象に行った測定値(これを基準値という)の分布のうち、中央値を含む95%が含まれる範囲のことをいう。
※健常者でも基準範囲外の値となる場合、病者でも基準範囲内の値となる場合があるため、従来用いられていた「正常範囲」は誤解を招くのでこの言葉が使われるようになった。
<参考>
基準固体:臨床検査の基準範囲を求めるために対象となる個人のこと。を可能な限り除外して選ぶ必要がある。
基準値:臨床検査領域では、人種・性・年齢・生活習慣が同じ健康人集団を対象に行ったある検査の測定値から定める基準範囲のことで、検査医学会では「基準範囲」を用いるように提案している(つまりは基準値=基準範囲?)。診療上検査値を評価する際の参考となる値。
しかし、実用上は次の3つの使い方がある。①基準個体から得られた個々の測定値のこと。この測定値の分布を用いて基準範囲が設定される。②基準個体における定性検査の代表値、または定量検査値において病態変動が低値側または高値側に限定される場合の基準範囲の下限値または上限値。③臨床判断値(カットオフ値あるいは治療閾値など)の意味での利用。
【4】病態識別値、治療目標値、基準範囲の違いについて述べよ。
(A)
病態識別値:検査測定値の分布に基づいて陽性/陰性(正常/異常)の判定をする際に判別点として利用する値。(=カットオフ値)
治療目標値:治療目標とは、医学的・時間的などの制約のもとで、治癒に至るまでの治療過程のどのレベルまでの達成を目指すかということで、そのとき目標とする値のことを治療目標値という。
基準範囲:3参照。
【5】検査結果には、「精確さ(accuracy)」と「正確さ(trueness)」と「精密さ(precision)」がある。このうちで、平均値と標準偏差と関係のあるものは?
(A)平均値は精確さ、標準偏差は精密さ。
説明:
①精密さは同じ ②精確さは同じ
「精確さ(accuracy)」とは、どれだけ真の値に近いかという尺度であり、「精密さ(precision)」とは、どれだけ細かく測定できるかという尺度(=ばらつきの小さい程度)である。すなわち、精密な測定とは、少数点以下にたくさん数字を並べることのできる測定であり、真の値に近いかどうかは問題ではない。したがって、精密な測定であっても、不正確な場合もある。
※文献によっては「accuracy=正確さ」ともあるので、どちらが正しいかは不明
【6】尿沈渣で見られる円柱について、その成り立ちについて述べよ。
(A)尿細管系で尿のうっ滞がおこる、沈殿が形成されて固化が起き、それが押し出されて、ネフロンの形をした沈渣となって尿中に認められる。これを尿円柱といい、次のようなものがある。
円柱 |
疾患 |
脂肪円柱 |
ネフローゼ症候群 |
顆粒円柱、白血球円柱 |
腎盂腎炎 |
赤血球円柱 |
糸球体腎炎 |
【7】尿沈渣で見られる上皮細胞のうち、異常でないものは何か。
(A)扁平上皮細胞、立方上皮細胞、移行上皮細胞
【8】代表的な抗凝固剤を3つ挙げよ。また、それぞれどのような検査に用いられるか。1つずつ挙げよ。
・EDTA:PCRを用いた遺伝子検査(他に血球測定など)
・クエン酸:凝固検査(PTやAPTTなど)
・へパリン:染色体検査
○参考:http://www.toamedical.co.jp/cd/rinsyou/demo/chapter06.html
【9】全血、血清、血漿の違いについて述べよ。
・全血:採血された血液の全成分
・血漿:全血から血球成分を取り除いたもの
・血清:血漿から血液凝固に関わる因子を取り除いたもの
【10】逸脱酵素とは何か。またその臨床検査的意義を述べよ。
(A)傷害を受けた組織・細胞から血中に出てきた、臓器特異的な酵素のこと。
酵素の臓器特異性・血中での半減期・アイソザイムの概念などを吟味することにより、由来臓器や組織の特定・障害の発症時期・損傷の大きさなどを推定することができる。
【11】アルカリホスファターゼのアイソザイムの由来と、その出現病態を3つ挙げよ。
(A)・由来:胎盤、小腸、肝臓、骨
・出現病態:胆管癌、肝硬変、骨肉腫
【12】代表的凝固能検査法を2つ挙げよ。
(A) PT、APTT(ほかに出血時間、トロンビン時間、フィブリン量検査など)
【13】12のうち、第Ⅷ因子の異常によって異常値を示すものを挙げよ。
(A) APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
【14】Protein C / Protein S による血液凝固制御の機能を述べよ。
(A)
(1) Protein CはⅤ因子、Ⅷ因子を分解することで、凝固系の亢進を阻害する。このとき必要な補酵素がProtein Sである。
(2) Protein Cは、Plasminogen
activator inhibitor-1(PAI-1)の活性を阻害する。これにより、Plasminogen
activator (PA)が活性化され、PAによりプラスミンが活性化される。プラスミンによりフィブリンが分解される(線溶系)。
【15】PCR-RFLPの原理を述べよ。
Polymerase Chain
Reaction-Restriction Fragment Length Polymorphism
(A)まず、PCRを用いて目的の遺伝子部位を増幅する。その後、DNAを制限酵素処理し、生じたDNA断片の大きさ(長さ)を比較検討することで、制限酵素部位の異常を検出することができる。
【16】遺伝子検査において、インフォームド・コンセントの重要性について自分なりの考えを述べよ。
(A) 遺伝子は検査を受ける人の個人情報であり、検査によって様々なことが分かる。よって、どのような検査を受けるか、また検査後の遺伝子はどうするか、などは検査を受ける人に決めてもらわねばならない。よって、インフォームドコンセントが重要となる。
【17】ミトコンドリアの閾値効果について述べよ。
(A) 閾値効果とは、異常ミトコンドリアDNAの割合が一定の閾値を越えた場合にミトコンドリア機能異常がもたらされること。
【18】ミトコンドリアDNA異常による電子伝達系の異常によってもたらされる代謝異常について述べよ。
(A)血中の乳酸の濃度が増える(高尿酸血症)。
電子伝達系の能力低下により、解糖系・乳酸発酵でATPを作ろうとする。このため、乳酸がたまってしまう。
【19】(表から感度と特異度を求め、診断的有用性について答える)
○腫瘍マーカーA
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
陽性 |
28 |
16 |
44 |
陰性 |
12 |
144 |
156 |
合計 |
40 |
160 |
200 |
(A)感度:0.7 特異度:0.9
○腫瘍マーカーB
|
疾患あり |
疾患なし |
合計 |
陽性 |
24 |
32 |
56 |
陰性 |
16 |
128 |
144 |
合計 |
40 |
160 |
200 |
(A)感度:0.6 特異度:0.8
(A)感度・特異度共に高い腫瘍マーカーAの方が診断的有用性は高い。
【20】(棒グラフから感度と特異度をもとめ、ROC曲線を書く問題。やり方の例があるので問題見ればわかる。最後に2つのマーカーの優劣を比べる。)
※ROC曲線が左上にあるほど、診断能は優れていると言える。
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