平成16年度 ウイルス学 本試験

 

 

 

1.インフルエンザの流行について述べなさい。

ただし以下の語句をすべて用いること。(順番はそのとおりでなくてもいい。)

A型インフルエンザウイルス、スペインかぜ、epidemic,pandemic, antigenic shift、antigenic drift、reassortment、H5N1、トリインフルエンザ

 

<解答>

A型インフルエンザの流行には、antigenic drift(連続変異)によるepidemicと、 antigenic shift(不連続変異)によるpandemicとがある。インフルエンザの抗原性は表面のHAとNAによるものが大きいが、これらにはそれぞれ15種と9種の亜型が存在する。連続変異はこの二つをコードする遺伝子に生じた突然変異により抗原性が変化するもので、変化の幅は比較的小さく、epidemicは毎年の流行のような小規模な流行である。これに対し不連続変異とは、自然宿主である鳥類の細胞に、違う亜型のウイルス粒子が同時に感染した場合などに遺伝子のreassortment(遺伝子再集合)がおき、HAとNAの違う組み合わせのウイルス粒子ができる変異で、変化の幅が大きく、pandemicは1918年のスペインかぜのような大きな流行となる。現在ヒトに感染しているものは低病原性のものであり、高病原性のH5N1型などのトリインフルエンザが将来ヒトに感染しやすくなり、pandemicを引き起こす可能性が懸念されている。

 

 

 

2.HIVの生活環を図示し、各ステップを簡単に説明しなさい。また、抗HIV薬の標的となっているステップ、および実用化されていないが標的となりうるステップを挙げなさい。

 

<解答>

T細胞表面のCD4を認識したウイルス粒子は、ケモカインレセプターを補助レセプターにして細胞に結合し、膜融合によりゲノムRNAを細胞中に放出する。このゲノムは、細胞質で逆転写酵素によりdsDNAになった後、核へ移行し、インテグラーゼの働きで宿主DNAに組み込まれる。そして、転写と蛋白合成、複製を受ける。ゲノムと蛋白が集合し、エンベロープをかぶって出て行く。このあと、さらにプロテアーゼにより遺伝子産物がプロセシングを受け、蛋白を開裂させることで、感染性の成熟粒子となる。治療薬には、逆転写、プロテアーゼによるプロセシングの阻害薬が用いられている。また、膜融合、インテグラーゼによるDNA組込みの阻害薬も考えられる。

 

 

 

3.ウイルス定量について

①段階希釈した麻疹ウイルス0.2mlを培養細胞に接種して、プラーク数を測定した。このとき原液のウイルス量はいくらか。計算式、単位もともに示すこと。

希釈

プラークの数(おのおの4回ずつ測定した)

103

>500、>500、>500、>500、

104

75,83,85,80

105

10,9,9,10

106

2,0,0,1

 

原液のウイルス量=4回の平均プラーク数×希釈率÷0.2

10^4   (75+83+85+80)÷4×10^4÷0.2=4.03×10^6(pfu/ml)

10^5   (10+9+9+10)÷4×10^5÷0.2=4.75×10^6(pfu/ml)

10^6   (2+0+0+1)÷4×10^6÷0.2=3.75×10^6(pfu/ml)

 

 

②ヘルペスウイルスをマウスの脳内に接種するを、脳炎を引き起こすことを用いて、ウイルス感染に関する実験を行った。ウイルス株Aとウイルス株Bを培養細胞に接種して、プラーク数が等しくなるように調整した後、段階希釈にておのおの20μlずつマウスに接種すると、接種後14日後のマウスの生死は次のようになった。このとき、ウイルス株A,Bのlethal dose 50(LD50)を求めよ。また、LD50/mlについてもそれぞれ求めよ。計算式、単位も示すこと。

 

 

生存マウス/接種マウス

希釈

ウイルス株A

ウイルス株B

10^3

3/6

6/6

10^4

1/6

6/6

10^5

0/6

3/6

10^6

0/6

2/6

10^7

0/6

0/6

 

A : LD50は   20×10^-3×10^-3=2.0×10^-5(ml)

        LD50/mlは 1÷(2.0×10^-5)=5×10^4(LD50/ml)

B  :   LD50は   20×10^-3×10^-5=2.0×10^-7(ml)

        LD50/mlは 1÷(2.0×10^-7)=5×10^6(LD50/ml)

 

 

ウイルス株A,Bのうち、in viboにおいて感染力が強いのはどちらか。また、培養細胞に接種した時と、動物に接種した時とで結果に違いが生じる理由としてどのようなことが考えられるか。

 

ウイルス株Aの方が感染力が強い。これは、この二つのウイルス株の、増殖速度や、細胞内への進入のしやすさなどが関係していると思われる。

 

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