平成17年度 ウイルス学 本試験

(復元)

○ 実施日: 2005.9.30

○ 試験時間: 90

○ 問題用紙: 問題用紙と解答用紙共通でA3が裏表1枚と、図のみ載ってるA4裏表1枚。

○ 不合格: 20

○ 総括: 「授業でやった演習問題やっとけば大丈夫」とか言いつつ、答え丸暗記では合格スレスレな問題だった。自分で理解して解いとけば大丈夫。ただ昨年に比べて量も3倍近くになったし図を見て答える問題が出るなど、近年変動が激しい科目。

 

 

 

1.   別紙の図を見て、それぞれの(1)ウイルス科、(2)ウイルス名、(3)主な病気(症状)を答えよ。(15点)

(おそらくこの5つが出ていたような・・・。5が微妙)

 


<解答>

a.(1).コロナウイルス科(特異なスパイクを持つウイルス)  (2).SARSコロナウイルス  (3).SARS

b.(1).アデノウイルス科(アンテナ様のペントンファイバー、左が完全なウイルス粒子、右がペントン)  (2).ヒトアデノウイルス (3).咽頭炎、肺炎、結膜炎

c.(1).ラブドウイルス科(砲弾型のウイルス粒子)  (2).狂犬病ウイルス (3).狂犬病(頭痛、食欲不振から最後に脳神経や全身筋肉の麻痺が起こり、死に至る)

d.(1).ピコルナウイルス科  (2).ポリオウイルス  (3).ポリオ(髄膜刺激症状の非麻痺型と弛緩性麻痺の麻痺型)

e.(1).フィロウイルス科(糸状、環状)  (2).エボラウイルス  (3).エボラ出血熱(発熱、頭痛から出血傾向が現れる)

 

 

 

2.適当なウイルスを一つあげ、そのウイルスの生活環(吸着から子孫の生成まで)について図示して説明せよ。(10点)

 

<解答>

とりあえずいくつか言葉で説明します。

(1)     インフルエンザウイルス

 

HIV

T細胞表面のCD4を認識したウイルス粒子は、ケモカインレセプターを補助レセプターにして細胞に結合し、膜融合によりゲノムRNAを細胞中に放出する。このゲノムは、細胞質で逆転写酵素によりdsDNAになった後、核へ移行し、インテグラーゼの働きで宿主DNAに組み込まれる。そして、転写と蛋白合成、複製を受ける。ゲノムと蛋白が集合し、エンベロープをかぶって出て行く。このあと、さらにプロテアーゼにより遺伝子産物がプロセシングを受け、蛋白を開裂させることで、感染性の成熟粒子となる。

ちなみに補助レセプターのケモカインレセプターは、感染初期にはマクロファージや抹消決のT細胞のCCR5(マクロファージ向性)、感染末期には活性化T細胞、樹立T細胞のCXCR4T細胞向性)が使われる。治療薬には、逆転写酵素、インテグラーゼ、プロテアーゼの阻害薬が使われる。

 

⑶ヘルペスウイルス

細胞表面のプロテオグリカンに結合し、膜融合を起こす。その後、脱殻しゲノムDNAが核に移行する。そして転写(宿主のRNAポリメラ-ゼⅡ)、複製(ローリングサークル様式)される。核内でヌクレオカプシドを形成し、細胞質の空砲に入ってエンベロープをかぶり、細胞外に出て行く。

ちなみにローリングサークルとは、環状になったゲノムを複製する際に一周ごとではなく、何周分も複製した後で一周分ずつ切断する方式を言う。

 

 

 

3.段階希釈したHSV-1ウイルス液(0.1mlずつ)をVero細胞(様々なウイルスに対して感受性が高い培養細胞)に接種して、プラーク定量を行い、表のような結果を得た。この結果に基づき、実験に用いたウイルス原液の感染力価を1mlあたりのプラーク形成単位で表しなさい。単位も忘れずに書くこと。(5点)    (数値はだいたいこんな感じ↓)

 

ウイルスの希釈

10~3

10~4

10~5

10~6

 

1ウェルのプラーク数

> 500

> 500

68

10

> 500

> 500

75

4

> 500

> 500

62

4

 

<解答>

プラーク形成単位=できたプラークの平均÷接種した液の量×希釈率

               =(687562)÷3÷0.1×105

               =6.83×107pfu/ml

★ちなみにこの計算の際にはできたプラークの数が100個ぐらいあったほうがプラークひとつあたりの影響が小さくなるため、計算に適している。また、ヘルパーウイルスを必要とするウイルスがいると、倍数希釈がうまくいきにくいので、低い希釈率で計算するほうがよい。

 

 

 

4.C型肝炎ウイルスは培養細胞中で増殖しにくいため、その同定は長い間困難だったが、1989年に分子生物学的な手法によってその遺伝子が同定された。その原理について述べよ。(10点)

 

<解答>

ウイルスを含んでいる検体から核酸を抽出する。このとき、逆転写酵素を作用させてRNAを安定なDNAに変換しておく。このDNAをクローニングのためのλgt11に挿入し、大腸菌に感染させる。λgt11DNAを特定の位置に挿入できる。この大腸菌を培養すると、挿入したDNAから転写、翻訳された蛋白が発現する。菌をフィルターに通すことでこの蛋白をフィルターに移す。このフィルターに、患者の血清、健常者の血清と作用させる。次に抗体と結合する蛍光色素でラベルし、オートジオグラフィーで観察し、比較する。このとき、患者の血清中には健常者には含まれないウイルス蛋白に対する抗体があるので、患者の血清を作用させたほうにはこの抗体が作用した蛋白が視覚化される。このようにしてウイルス蛋白を産生した菌中のDNAを調べることでウイルスゲノムがわかる。

 

 

 

5.ウイルスの潜伏感染と慢性感染について、その違いに注意して述べよ。またそれぞれの感染を起こしやすいウイルスを列記せよ。(10点)

 

<解答>

潜伏感染…ウイルスゲノムは潜伏感染細胞に存在するのに、その発現は抑制を受けているために、ウイルス粒子は産生されない状態を言う。時々急性感染様の症状を示すが、ほかの時にはウイルス粒子は検出されない。単純ヘルペスウイルス(神経節細胞)、水痘帯状疱疹ウイルス(後根神経節のサテライト細胞)などで見られる。

慢性感染…ウイルス粒子は常時検出されるが、無症状、または病気を発症するまでに長い期間が必要であるときを言う。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス(肝炎、肝硬変、肝臓癌)、などで見られる。

 

★ちなみに急性感染(ウイルスが増殖して発病し、治癒によりウイルス粒子が消滅する)や遅発性感染(プリオン病やHIV感染のように長い潜伏期の後に徐々に発病し、進行性に悪化していくもの)もある。

 

 

 

6.インフルエンザの流行について述べなさい。ただし、以下の語句をすべて用いること。(10点)

 

 パンデミック、antigenic shiftantigenic driftreassortment、亜型、H5N1、トリインフルエンザ

 

<解答>

インフルエンザの流行には、antigenic drift(連続変異)によるエピデミックと、 antigenic shift(不連続変異)によるパンデミックとがある。インフルエンザの抗原性は表面のHANAによるものが大きいが、これらにはそれぞれ15種と9種の亜型が存在する。連続変異はこの二つをコードする遺伝子に生じた突然変異により抗原性が変化するもので、変化の幅は比較的小さく、エピデミックは小規模な流行である。これに対し不連続変異とは、自然宿主である鳥類の細胞に、違う亜型のウイルス粒子が同時に感染した場合などに遺伝子のreassortment(遺伝子再集合)がおき、HANAの違う組み合わせのウイルス粒子ができる変異で、変化の幅が大きく、パンデミックは大きな流行となる。現在ヒトに感染しているものは低病原性のものであり、高病原性のH5N1型などのトリインフルエンザが将来ヒトに感染しやすくなり、パンデミックを引き起こす可能性が懸念されている。

 

 

 

7.ポリオウイルスに対する2種類のワクチンについて、それぞれの特性が分かるように表にまとめなさい。また、現在わが国ではどちらのワクチンが使われており、今後はどちらのワクチンの使用を考えているか述べなさい。(10点)

 

不活化ワクチン(IPV

生ワクチン(OPV

血中抗体ができる

腸管免疫が生じない

腸管でのウイルス増殖を押さえない

血中抗体価の減少が早く、ブースター投与が必要

皮下注射による接種

高価

免疫不全者にも仕える

ウイルスの排出がない

ほかの不活化ワクチンとともに使える

混合ワクチンができる

血中抗体ができる

腸管免疫ができる

腸管でのウイルス増殖を抑える

免疫は終生免疫となる

経口接種のため簡易

安価

免疫不全者には使えない

便中にウイルス粒子を排出する

二次感染が起こる

 

 

 

8.アルボウイルスや、ネズミなどの齧歯類がウイルスを媒介するメカニズムについて述べなさい。またそうした感染経路をとる代表的なウイルスを、アルボウイルスについて4つ、齧歯類に媒介されるウイルスについて2つ、列記しなさい。(10点)

 

<解答>

アルボウイルスは、蚊などの節足動物により媒介される。雌の蚊の唾液中に含まれるウイルスが直接血中に入ることで感染する。西ナイル熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルスなどがある。齧歯類が媒介するウイルスは、尿中や糞に排泄されたウイルス粒子がヒトに感染する。ブンヤウイルス、アレナウイルスなどがある。

 

 

 

9.HIVの感染について、特に体内免疫や臨床症状などを中心に述べよ。(5点)

 

<解答>

HIVに感染すると、一部のヒトは数週後に単核球症様の症状を示すことがあるが、特に症状のない人も多い。そして、感染八週目くらいまでに抗体陽性となる。この後、ウイルスの激しい増殖とそれに対抗するB細胞やCTLによる抗HIV免疫応答と新しいCD4T細胞の産生が行われている。この臨床的に無症状の時期は数年~10年くらい続くが、徐々にT細胞の減少による破綻が生じ始め、エイズ関連症候群(ARC)や、日和見感染症にかかるようになる。

 

 

 

10.麻疹の感染コントロールは体液性免疫(抗体)や細胞性免疫(CTL)によってどのように影響されるか述べよ。ヒント:新生児の感染、免疫不全児の感染。(5点)

 

<解答>

 

 

 

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送