平成17年度 「聴・嗅・味覚器」 卒業試験

 

1(1) 伝音系について間違っているのはどれか?

a.内耳腔のガス組成は静脈のガス分圧と同じである。

b.空気と鼓膜の音響インピーダンスはほぼ同じである。

c.耳管の役割は、中耳腔の圧調節と排泄、上咽頭からの逆流防止である。

d.伝音系の増幅機構のうちもっともgain(増幅率)が高いのはてこ比である。

e.内耳腔は10-12歳頃まで発達する。

(解答) d                   概説2003と同じ

a.○ b.○そのため音響伝達率は最大に近いc.○ d.×伝音系の増幅機構で鼓膜と前庭窓の面積比で25dB、てこ比で2.5dB、蝸牛窓の遮蔽効果で12dBの増幅効果がある。e.

 

(2)聴力検査につき正しいものはどれか。

1.自記オージオグラムの鋸歯状波の振幅縮小は補充現象陽性を示す。

2.気導聴力と骨導聴力(A-Bgap)とを比較すれば内耳性・後迷路性難聴を鑑別できる。

3.聴力脳幹反応(ABR)は主観的聴力検査である。

4.語音弁別能(語音明瞭度)は正常人では100%に達する。

5.聴神経腫瘍の患者では一過性閾値上昇(TTS)が認められる。

a)1,2,3  b)1,2,5  c)1,4,5,  d)2,3,4  e)3,4,5

(解答)c              

1.○感音難聴で見られる聴覚補充現象はわずかな音圧の変化に気づくことである。2.×

A-B gap(+)では伝音性、(-)では感音性難聴 3.×客観的に計測する 4.○話声域では少なくとも90%以上を示す 5.○自記オージオグラムで連続音が断続音に比べて聞こえが急激に悪くなっていることで、後迷路性難聴の特徴である。

 

(3)良性発作性頭位めまい症について間違っているものは?

a.中枢性である  b.耳石器の石が半器官内に浮遊しているものが大部分である

c.眼振に潜時、疲労現象がある  d.後半器官性と外側半器官性がある

e. Epley法などの理学療法が有効である

(解答)a

a.×末梢性である b.○卵形嚢や球形嚢の耳石が脱落して半規管に落ち込む c.○頭位変換で数秒の潜時で眼振が起こる。何度も頭位変換をすると次第に眼振が出なくなる(疲労現象)d.○眼振などで鑑別できる。理学療法が2つで異なる。 e.

 

(4)メニエール病について正しいものはどれか

 1.発症は発作性で反復性である。  2.発作の激しいときは意識障害を伴う。

 3.進行すると温度眼振検査で半規管麻痺(CP)を生じる。

 4.初期は低音域難聴が多い。  5.めまいのため、物が二重に見える

 a)1,2,3  b)1,2,4  c)1,3,4  d)2,3,4  e)3,4,5

(解答) c                   概説2004と同じ。

1.○発作が反復するうちに聴力が低下していく。2.×どんなに激しくてもありえない

3.○ 4.○発作時には一過性の低音域難聴が著しいが、慢性的には不可逆性の高音域難聴、さらに進行すれば低音域の不可逆性の難聴も合併する。5.×

 

 

(5)Bell麻痺の予後判定に有用な検査はどれか?

1.ウイルス抗体価  2.ティンパノグラム  3.神経興奮性検査(NET)

4.電気誘発筋電図(ENoG)  5.聴力検査

a) 1,2  b). 1,5  c) 2,3  d) 3,4  e) 4,5

(解答)

1.× 2.× 3.○耳垂下部で顔面神経管を刺激し攣縮を起こす閾値を測定する。4.NETと同じ方法で刺激し、筋電図を測定する 5.×

 

(6) 純音聴力図を示す。考えられる疾患は?(図は片側の感音難聴の所見です。

 a耳小骨離断  b耳硬化症  c突発性難聴  d加齢性難聴  e慢性騒音性難聴

(解答)c                概説2003に同様の問題あり

a. ×伝音性難聴b.×アブミ骨底の固着に起因し、伝音性難聴を呈するc.○突然の片側性難聴を呈するd.×両側の感音難聴で右下がりのオージオグラムになる e.×両側の感音難聴で4000Hz付近の聴力低下から始まり、幅が広くなっていく。

 

(7)7歳の男児。学校の健康診断で右耳の難聴を指摘され、精密検査目的で来院した。 自覚的に耳痛なく、局所所見で鼓膜の穿孔や耳漏もない。ティンパノメトリーでAd型であった。純音聴力検査を示す。最も考えられるのはどれか。

 

a.急性中耳炎

b.慢性中耳炎

c.耳小骨形態異常

d.突発性難聴

e.機能性難聴

(解答)c                 概説2005と同じ

耳痛,鼓膜穿孔,耳漏が無く、中耳炎は考えにくい。オージオグラムは片側性()の伝音性難聴を示している。(ABgapを認める)またティンパノメトリーでAd(大気圧下でのコンプライアンス異常上昇)であることは耳小骨連鎖離断による鼓膜の可動性の増大を示す

 

(9)鼓室硬化症について正しいものを選べ

1)中耳炎の後遺症である。  2)耳小骨の可動性が失われることがある。

3)中耳粘膜の石灰化が見られる。  4)アブミ骨の固着が認められることはない。

5)放置しておくと合併症の危険がある。

a)1,2,3 b)1,2,5 c)1,4,5 d)2,3,4 e)3,4,5

(解答)a

1.○慢性化膿性中耳炎で肉芽が硝子化して石灰化や骨化を生じたものである。2.○耳小骨の周囲に生じると可動性の制限から難聴を来たす。3.○ 4.× 5.×

 

 

 

 

(10)聴神経腫瘍について正しいものはどれか。

1.突発性難聴が初発症状となることがある。

2.Bruns眼振は聴神経腫瘍に特異的である。  3.眼振に潜時、疲労現象が認められる。

4.顔面神経障害を来たすことはない。  5.前庭神経から発生することが多い。

a)1,5  b)3,4  c)2,3,4  d)1,2,5  e)すべて

(解答)

1.○ 2.○患側注視で高振幅低頻度、健側注視で低振幅高頻度の眼振 3.×BPPVで認められる 4.×末期で障害される。 5.○前庭神経のシュワン細胞から発生する。

 

(11)側頭骨骨折について誤りのものを選べ。

a 縦骨折と横骨折がある。  b 難聴・めまい・顔面神経麻痺などが主症状である。

c 骨折部整復のため緊急に観血的処置が必要になることが多い。

d 難聴は伝音性が多い。  e 髄膜炎を併発することがある。

(解答)c

a.○骨折線が錐体稜を横切る横骨折と、錐体稜に沿って生じる縦骨折の2種類に分かれる。

縦骨折の方が多い。b.○ c.×安静にして髄膜炎の対策のために抗生物質の投与などを行う。 d.?縦骨折では伝音性もしくは混合性難聴。横骨折では感音難聴が多い。e.○髄液漏に注意する。

 

(13)耳痛をきたす疾患はどれか。

1.急性中耳炎  2.結核性中耳炎  3.滲出性中耳炎  4.慢性化膿性中耳炎  5.ハント症候群

 a)1,5  b)1,2,5  c)2,3,4  d)4,5  e)すべて

(解答)b

1.○鼓膜が穿孔すると軽快する耳痛 2.○痛みは軽い 3.×耳痛を訴えない。伝音性難聴、耳閉塞感。4.×限局性硬膜炎や脳膿瘍の併発でのみ耳痛が起きる。5.○発疹を伴う耳痛。

 

(14)内耳性難聴をきたすものはどれか。

1.アスピリン 2.アミノ配糖体抗生物質 3.砒素 4.ループ利尿薬 5.シスプラチンなどの抗癌剤

a)1,5  b)3,4  c)2,3,4  d)1,2,5  e)すべて

(解答)e

1.○ 2.○ストレプトマイシン、カナマイシンなど。3. 4.○ 5.○ ここで挙げられているものの他にはリドカインなどの麻酔薬による難聴も授業では強調されていました。

 

(15)乳幼児乳突洞炎について正しい組み合わせを選べ。

1.耳介從立  2.耳後部腫脹  3.高熱  4.耳痛  5.緊急乳突洞削開

a)1,5  b)3,4  c)2,3,4  d)1,2,5  e)すべて

(解答)e              卒試200416番と同じ

1.○ 2.○発赤腫脹を認める 3.○ 4.○ 5.○排膿を行う

 

(16)顔面神経麻痺の治療について間違っているものは?

a.早期治療と予後は密接に関係する。

b.ステロイド剤はウイルス感染を増悪させるので予後を悪くする。  c.抗ウイルス剤を使用する。

d.発症2ヶ月以上経過した症例に手術加療は無効なことが多い。  e.理学療法が有効である。

(解答)b

a.○顔面神経の絞扼が5日以上続くと不可逆的な変性が始まる。b.×ステロイドを初期に大量投与して漸減する c.○アシクロビルを投与する d.○ 5.○発症2週間以内は安静の方がよいが、その後はしばしばマッサージなどの理学療法が行われる。

 

 

 

(17)突発性難聴について正しいものをえらべ。

1.早期診断が重要。  2.内耳性難聴である。  3.めまいは伴わない。

4.両側性である。  5.顔面神経麻痺を伴う。

a)1,2  b)3,4  c)2,3  d)1,2,5  e)すべて

(解答)a

1.2週間以内にステロイドの全身投与を行う。2.○突発性難聴とは原因不明の内耳障害によって突発性に生じた感音難聴を指す3.×一部で末梢性めまい4.×片側性難聴5.×

 

(18)真珠腫性中耳炎で正しいものはどれか。

 1.再発がある  2.弛緩部穿孔が多い。   3.頭位によって誘発される眼振の向きは一定しない。

 4.感音性難聴を伴うことが多い  5.瘻孔症状を伴うことがある。

a)1,2  b)3,4  c)2,3  d)1,2,5  e)すべて

(解答)d

1.○手術で取り損ねると再発する 2.○鼓膜弛緩部の穿孔から炎症などで刺激された外耳道上皮が鼓室に侵入し、真珠腫を形成する。3.× 4.×典型的には伝音難聴 5.○骨迷路に.瘻孔を生じ、外耳道の圧の変化による気圧性眼振を起こす。

 

(19) 難聴を伴わないめまいを起こすのはどれか。

a.前庭神経炎  b.椎骨脳底動脈不全 c.メニエル病  d.外リンパ瘻孔

(解答)a,b

a.○突然の回転性めまいで発症するが蝸牛症状を伴わない b.○椎骨脳底動脈系の一過性虚血発作によりめまいなどを起こすが、蝸牛症状は通常伴わない c.× d.×突然の回転性めまいと感音難聴

 

(20)人工内耳について正しいものを選べ。

a.片側聾に有効である。  b.先天性聾では有効性が示されていない。

c.中枢性難聴でも言葉が聞き取れる。  d.内耳を直接電気刺激する装置である。

e.ペースメーカーと異なり体内に電池は必要ない。

(解答)d,e

a.×b.×生後4歳くらいまでの導入が目安c.× d.○外リンパ液中に電極が埋め込まれている。 e.○従って埋め込んだあとに交換手術などは必要ない

 

2】次の説明文の( )内に適当な語句を入れて文章を完成させよ。

1)誤嚥とは( )を越えて下気道まで異物が侵入することである。これによって起こる肺炎を( )肺炎という。

2)パーキンソン病における嚥下障害では、咽喉頭粘膜支配の知覚神経のトランスミッターである( )が減少している。

3Wallenberg症候群における嚥下障害では咽頭の( )が低下していることが多く、外科的治療としては( )の適応となる。

4)偽性球麻痺タイプの嚥下障害は( )型誤嚥である。

5)気道防御反射や咽頭期嚥下の惹起には迷走神経の枝である( )が重要な役割を果たしている。

(解答)(1)声門、嚥下性 (2)サブスタンスP (3)クリアランス、輪状咽頭筋切断術

(4)挙上期型 (5)咽頭枝

 

 

 

3(1)正しい組みあわせを選べ。

a.小児の声帯結節は難治性で手術適応である。

b.喉頭肉芽腫は声帯の膜様部中央が好発部位である。  c.声帯溝症は見た目ほど嗄声はひどくない。

d.特発性声帯麻痺は左側に多い。  e.急性声門炎は声門閉鎖良好で、嗄声も強くない。

1)a,b  2)c,d  3)a,b,e  4)b,c,d  5)すべて

(解答)2

a.×病変が高度でなければ声の安静と発声指導 b.×声帯の突起部に好発 c.?発声時の声門閉鎖不全により嗄声や疼痛を生じる d.○反回神経は左側が障害されやすいe.×発赤浮腫がひどく声門は十分閉鎖しない。

 

(2)正中頚嚢胞について正しいものを2つ選べ

a 甲状舌管の遺残物である  b 2鰓弓から発生する

c 本体はリンパ組織である  d 放射線感受性が高い  e 舌骨付近に好発する

1)a,b  2)a,e  3)b,c  4)c,d  5)d,e

(解答)2                       概説2005と同じ

a.○ b.×第2鰓弓から発生するのは側頚嚢胞 c.× d.× e.

 

(4)下咽頭癌について正しい組み合わせはどれか

a梨状後部癌は女性に多い  b組織的に扁平上皮癌が多い

c放射線照射は有効である  d頚部リンパ節には転移しにくい

1)a,c,d  2)a,b  3)b,c 4)すべて

(解答)3

a.×輪状後部癌が女性に多い b.○ c.○ d.×転移しやすい

 

(5)鼻腔腫瘍について正しい組み合わせはどれか

a.副鼻腔癌の亜部位で最も多いのは上顎洞である。

b.骨破壊を伴う一側性上顎洞炎では上顎癌を強く疑う。

c.上顎癌に対する治療は、放射線-化学療法は用いた集学的治療が一般的におこなわれる。

d.アレルギー性鼻炎は副鼻腔癌のリスクファクターである。

e鼻副鼻腔癌の病理組織学的に最も多いのは腺癌である。

1)a,b,c  2)a,b,e  3)a,d,e  4)b,c,d  5)c,d,e

(解答)1

a.○副鼻腔癌の90%以上が上顎洞に発生。b.○特に高齢者の片側性慢性副鼻腔炎 c.○動注治療、放射線照射の後に手術を行う三者併用療法が行われる。d.× e.×扁平上皮癌

 

(6)上咽頭癌で正しいのは

a.鼻出血を初発症状とすることがある b.EBウイルスが関与しているといわれている

c.頸部リンパ節転移は稀である  d.治療は手術が第一選択である

1)a,c,d  2)a,b  3)b,c  4)d  5)a,b,c,d

(解答)2

a.○初発症状は頚部腫瘤(リンパ節転移)や耳閉塞感が最も多いが、鼻出血、神経麻痺症状など多彩な初期症状を呈しうる b.○ c.× d.×放射線照射を行う

 

 

 

(7)58歳の男性、1年前から鼻出血と右耳の滲出性中耳炎を反復していた。2ヶ月前から右頸部に硬い腫瘤が出現し、次第に増大してきた。10日前から複視も出現してきた。最も考えられるのはどれか。

a.蝶形骨洞癌  b.上咽頭癌  c.中咽頭癌  d.上顎癌  e.中耳癌

(解答)b               概説2005と同じ

初発症状は頚部腫瘤(リンパ節転移)や耳閉塞感、滲出性中耳炎が最も多いが、鼻出血、外転神経麻痺、三叉神経麻痺など多彩な初期症状を呈しうる。特に本症例のように頚部腫瘤を主訴に来院する例は全体の30%に達する。

 

(11)頚部リンパ節転移について正しいものを選べ。

a.頚部リンパ節転移が疑われた場合、原発巣の検索より先に頚部リンパ節生検を行う。

b.USCTは頚部リンパ節転移の広がりや血管浸潤の様子を調べることができる。

c.悪性リンパ腫で頚部リンパ節転移が起こることがある。

d.頭頚部癌では、頚部リンパ節転移は起きない。

1)a,c,d  2)a,b  3)b,c  4)d  5)a,b,c,d

(解答)3  a.×まずは原発巣から検索する。b.〇 c.〇 d×頚部リンパ節転移は重要である。

 

4】以下の設問に答えなさい。

症例1.55歳、男性

主訴:鼻閉、鼻出血、眼痛  既往歴、家族歴:特記なし

現病歴:50歳ごろより鼻閉、鼻出血を自覚、徐々に悪化し、微熱、全身倦怠感、眼痛も出現してきたため、近医より紹介受診となる。体重減少は1ヶ月で3kg。近医での尿検査で尿蛋白、血尿陽性であった。初診時所見:鼻背中は発赤、腫脹し、鼻腔内では中鼻甲介が肉芽状で痂皮が付着していた。鼻中隔は穿孔し、粘膜に壊死性肉芽腫を認めた。

設問1.最も疑われる疾患をあげなさい。

設問2.診断に必要な検査をあげなさい。

(解答)Wegener肉芽腫が最も考えられる。

血算で白血球数(主に好中球)、血小板の増加が認められる。生化学では血沈の亢進、CRPの上昇、血清γグロブリンの上昇が認められる。C-ANCAの陽性率が本症では95%以上と感度がよいため早期発見に有力な検査である。

 

症例2.53歳、女性

主訴:くしゃみ、鼻閉、水様性鼻汁、目のかゆみ  既往歴、家族歴:特記なし  現病歴:8年前より毎年2月から5月にかけてくしゃみ、鼻閉、水様性鼻汁、目のかゆみが出現していた。2005年も2月下旬より上記主訴が出現してきたため当科外来を受診した。

設問3.最も疑われる疾患をあげなさい。

設問4.診断に必要な検査をあげなさい。

設問5.治療法をあげなさい。

(解答)花粉症が最も考えられる。

診断のためには以下の検査が有用である。

     鼻汁好酸球検査:鼻汁の塗抹標本で好酸球を同定する。 

     皮膚反応(皮内反応、スクラッチテスト):抗原を体内に投与して反応を見る。

     鼻内誘発テスト:抗原を含ませた濾紙片を鼻腔内に挿入して反応を見る。

     RAST検査:特異的抗原に対するIgEの量をラジオイムノアッセイで測定する。

治療法としては抗原の回避の指導、特異的減感作療法(抗原を低い濃度から長期間反復して皮下注射を行い、抵抗力をつける)、薬物療法(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド、抗コリン点鼻薬)などがある。

 

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