平成17年度 「内分泌・代謝」 卒業試験
全部で17セクターに分かれるのは例年通り。問題は解答用紙と一緒になっていて1人1人配るので獲得はやや難。前半に問題傾向が変わっているものがあり、やや難化。
※※ 1枚目 – 総括講義のような形式の症例問題 ※※
1. 69歳男性。若い頃は特に病気知らずで子供も2人いる。約6ヶ月前より全身倦怠感、脱力や眠気を自覚するようになり、最近では倦怠感強度のため臥床がちで日常活動も困難となり近医受診した。血圧88/52と低血圧であり、検尿は比重1015、糖(-)潜血(-)蛋白(-)ケトン(-)CRP(-)だった。末梢血は貧血無く、WBCは6400と正常、好酸球が12%と上昇しており、Na 132、血糖54と低値、Kは4.9と正常範囲内だった。精査を勧められ当科受診。嗅覚に異常を認めず、色素沈着も認められなかった。 A. 考えられる疾患または状態を3つ選び、記号を○で囲め。 1. 汎下垂体機能低下 2. 中枢性尿崩症 3. Addison病 4. ACTH単独欠損 5. 先天性副腎低形成 6. Kallmann症候群 7. Klinefelter症候群 8. ステロイド内服 |
【解答】1,4,8?
低血圧、電解質異常(Na↓、Kやや↑)、低血糖という検査結果から、症状はどうも副腎皮質機能低下によるものと考えられる。加えて色素沈着を認めないことから、視床下部、下垂体レベルの病変によるACTH分泌不全の可能性が高い。
1.○ : 視床下部や下垂体の腫瘍や炎症、加えて女性ではSheehan症候群(分娩後下垂体壊死)などにより下垂体前葉のホルモン全てが低下した状態。
2.×? : ADHの不足によって尿量増加、尿浸透圧低下が見られる。だがACTH低下を合併すると、尿崩症の症状がマスクされる仮面尿崩症となるので、現時点では完全に否定することは出来ない?
3.× : かつては結核性、現在は特発性(自己免疫性が疑われている)に原発性副腎皮質機能低下症を来す疾患。ACTH上昇により、顔面、頸部、歯肉、手指などに色素沈着が現れる。
4.○ : 中高年で見られる病態で、下垂体ホルモンのうちACTHのみ分泌が低下する。原因としては自己免疫性下垂体炎とする説が有力。中高年の低Na血症ではこの疾患も疑う。
5.× : 性分化因子であるDAX-1の異常により、先天性副腎皮質機能低下症(先天性Addison病)及び低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を来す疾患。発症年齢は生下時~8歳。
6.× : KAL遺伝子に異常があり、嗅覚低下及び視床下部性性腺機能低下を来す。
7.× : X染色体が2個以上、Y染色体が1個以上の男性。通常47XXY。ほとんどの症例で不妊となる。
8.○? : ステロイドの長期投与はCRH、ACTHを抑制し、ACTH刺激を受けない副腎が廃用性萎縮を来して続発性副腎皮質機能低下症となる。通常血圧、電解質は保たれることが多いらしい。この状態で急にステロイドを中断すると副腎クリーゼを来す。
B. 最優先で測る血中ホルモンを2つ記せ。 |
【解答】ACTH、コルチゾール 副腎皮質機能低下症を疑って、まず測るとすれば多分この2つ。
C. Bについて分泌予備能を調べるのに有用な負荷試験を2つ記せ。 |
【解答】以下の1.~3.が重要。1.はACTHのみ、2.はコルチゾールのみ。3.4.5.は両方わかる。
1. メチラポン(メトピロン)試験……コルチゾール産生↓→feedback→ACTH↑
2. ACTH負荷試験……ACTH↑→コルチゾール↑
3. CRH(CRF)負荷試験……CRH↑→ACTH↑→コルチゾール↑
4. インスリン負荷試験……低血糖による視床下部レセプター刺激?→CRH↑
5. バゾプレシン負荷試験……AVPにはCRH・ACTH分泌作用がある。
D. 画像診断として最適なものを選び、記号を○で囲め。 1.頭部CT 2.副腎シンチグラム 3.甲状腺エコー 4.頭部MRI 5.頭部血管造影 |
【解答】1?,4? 下垂体機能低下症と考えての画像検査ならどちらかだと……。
2.×:原発性アルドステロン症やCushing症候群では131I-アドステロール、褐色細胞腫では131I-MIBGを用い、副腎の機能が亢進していればその部分に集積が見られる。
3.×:甲状腺疾患(腫瘍)の形態学的検査には非常に重要。
5.×?:頸部及び脳血管の評価や、CT、MRでの異常をより詳しく調べるなどに使う。
2. 詳しい病歴聴取と精査の結果、血中LH、FSHの低値とテストステロンの低値も判明した。 E. LH, FSH分泌予備能を調べるのに有用な刺激試験を2つ記せ。 |
【解答】以下の1.と2.が重要。3.はLHのみわかる。
1. クロミフェン試験:視床下部からのLH-RH分泌↑。主に視床下部の検査。
2. LH-RH負荷試験:下垂体からのLH、FSH分泌↑。主に下垂体の検査。
3. エストロゲン負荷試験:エストロゲン大量投与が視床下部、下垂体を刺激してLH分泌↑
F. 甲状腺機能検査、TRH負荷試験の結果、甲状腺に軽度~中等度の機能低下をみとめた。甲状腺ホルモンの補充を開始するにあたって、全体の病像を考慮した上で注意すべきことは何か。1~2行で述べよ。 |
【解答】副腎皮質機能低下があると考えられるため、甲状腺ホルモンを補充する前に糖質コルチコイドを補充する必要がある。
★ 甲状腺ホルモンを先に投与してしまうと、副腎皮質ホルモンの代謝を促進してadrenal crisisを起こす。
G. この患者は最終的に続発性性腺機能低下症を有すると判明した。ホルモン補充療法について適切なものを次より2つ選べ。 1. LH-RHパルス療法を積極的に行う。 2. HCG/HMG療法により内因性テストステロン分泌を促進する治療を積極的に行う。 3. 患者が望めば、テストステロン補充療法を行う。 4. 患者が望まなければ、何もしない。 |
【解答】3,4?
1.×:理論的にはKallmann症候群の治療に有効のはずだが、まだ一般的でない。
2.×?:小児や挙児希望者には積極的に行うが、69歳で積極的に行うかは微妙。
3.○ 4.○?:特に症状があるわけでもないし、選ぶなら2.よりはこちらかと。
★ 続発性性腺機能低下症では、二次性徴の発現(小児)と妊孕性の回復を目標として、HCG療法あるいはHMG-HCG療法を行う。挙児希望がなければ性ステロイド(男性ならtestosterone、女性ならestrogen, progesterone)の補充を行う。
H. 以上のことを考えて、この症例の病因として考えられるものを全て記せ。(例:副腎腫瘍) |
【解答】本症例はおそらく下垂体機能低下症であり、考えられる病因を以下に示す。
・脳腫瘍(下垂体腫瘍・鞍上部腫瘍) ・感染症
・頭部外傷 ・特発性ホルモン欠損
・炎症、肉芽腫性病変 ・自己免疫性病変
【まとめ】本症例をまとめると以下のようになる。
1. 69歳男性、既往歴なし、6ヶ月前より全身倦怠感、脱力、眠気の症状で発症
2. 低血圧、低血糖、Na↓、Kやや↑、好酸球↑ → 副腎皮質機能低下
3. 尿検査正常 → 尿崩症はない? → 下垂体茎・視床下部病変ではない?
4. 嗅覚異常なし → Kallmann症候群はない
5. 色素沈着なし → ACTHの上昇はおそらくなく、続発性副腎皮質機能低下の可能性大
6. LH、FSH、テストステロン↓ → 続発性性腺機能低下(下垂体or視床下部性)
7. 甲状腺機能低下 → 原発性or続発性?。ただ、TSHについて触れていないことからTSHは正常範囲にあったのだと考えると、甲状腺機能低下にも関わらずTSHが上がっていないということになり、続発性(下垂体or視床下部性)が疑わしい。
以上より、下垂体(前葉)機能低下症が考えられる。GHも↓なら汎下垂体機能低下症となる。尿検査が正常であることを考えると、特に下垂体性が疑わしい。
診断には各種下垂体ホルモンの基礎値に加え、分泌刺激試験によりホルモンの欠損を明らかにし、また画像診断にて下垂体の腫瘍、構造異常を確認する必要がある。治療は原疾患の治療を行い、次いで欠落したホルモンを補充する。その際、機能低下が見られる標的内分泌腺の分泌ホルモンを補充するのが通常である。
鑑別疾患としては神経性食思不振症や慢性肝疾患、筋緊張性ジストロフィー、ヘモクロマトーシスなどがあり、通常は症状から鑑別が可能である。多発性自己免疫症候群では下垂体機能低下症と同様の症状が現れるが、その場合下垂体ホルモンは通常高値を示す。
★ 下垂体機能低下症の原因
1. 下垂体が主たる原因(一次性下垂体機能低下症)
a. 下垂体腫瘍(腺腫、頭蓋咽頭腫)
b. 下垂体の梗塞または虚血性壊死(ショック、Sheehan症候群、あるいは糖尿病)
c. 貧血におけるもの(血管血栓症または動脈瘤、出血性梗塞(下垂体卒中))
d. 炎症作用(髄膜炎、下垂体膿瘍、サルコイドーシス)
e. 浸潤性疾患(Langerhans cell histiocytosis(Hand-Schuller-Christian
disease)、ヘモクロマトーシス)
f. 特発性の単一あるいは複数の下垂体ホルモン欠損症
g. 医原性(放射線照射、外科的摘出)
h. 下垂体の自己免疫性機能障害(リンパ球性下垂体炎)
2. 視床下部が主たる原因(二次性下垂体機能低下症)
a. 視床下部腫瘍(松果体腫、髄膜腫、上衣腫、転移性腫瘍)
b. サルコイドーシスなどの炎症性疾患
c. 外傷(頭蓋底骨折をときに伴う)
d. 単一あるいは複数の視床下部神経ホルモン欠損症
e. 下垂体茎の外科的離断
3. 組み合わせとして適切なものを選び、例に倣って回答欄に記せ。ただし重複はない。[例(1, a)] 1. 骨粗鬆症 a. 45XO 2. 11deoxycortisol過剰(先天性) b. Cushing症候群 3. 男性仮性半陰陽 c. 原発性アルドステロン症 4. 低ゴナドトロピン性性腺低形成 d. 男性化、高血圧 5. 翼状頚 e. 高ゴナドトロピン性性腺低形成 6. LH-RHパルス療法 f. 結核感染後の副腎石灰化 7. インスリン抵抗性、多毛 g. インスリン分泌低下 8. 精細管 h. 精子産生 9. 色素沈着 i. 多嚢胞卵巣症候群 10. 47XXY j. 17α-hydroxylase欠損症 |
【解答】??? (4,6)、(c,g)と組み合わせればあとはうまくいく。
(1,b):Cushing症候群ではcortisolによる骨芽細胞活性↓、破骨細胞活性↑により骨粗鬆症を起こす。
(2,d):11-deoxycortisol過剰は11β水酸化酵素欠損症でみられ、androgen過剰による男性化、およびDOC(deoxycorticosterone)過剰による高血圧を生じる。
(3,j):17α-hydroxylase欠損症では性腺でのandrogen産生が低下するため、男性仮性半陰陽(性腺は男性、性器は女性)となる。
(5,a):翼状頚はTurner症候群(45XO)の主要な身体所見の一つ。
(7,i):多嚢胞卵巣症候群(PCOS)ではGn-RH、LH分泌亢進による高androgen血症のため男性化徴候
(多毛など)が現れる。インスリン抵抗性を示す症例が少なくなく、それに基づく高インスリン血症が病態の進行に関わっている可能性がある。
(8,h):精細管の中で、精祖細胞から精子が産生される。
(9,f):ACTHが高値となり、色素沈着を来すことで有名なAddison病は、かつては副腎結核によるものが多く、副腎石灰化像は診断に有用であった。
(10,e):Klinefelter症候群は47XXYあるいはその亜型の染色体構成を持つ。精巣発育不全を伴い、高ゴナドトロピン性性腺低形成となる。
(4,6):LH-RHパルス療法はDAX-1異常症などの低ゴナドトロピン性性腺低形成の治療に用いられる。
(c,g):原発性アルドステロン症では低K血症のために膵β細胞からのインスリン分泌が低下し、耐糖能異常を来すことがある。
※※ 2枚目 - 2004年の卒試と大体同じ ※※
1. 性腺機能低下症に属する以下の説明に該当する疾患名を挙げよ。 1) 染色体構成が47XXYを示し、女性化乳房や無精子症を呈する。 2) その完全欠損は精巣性女性化症と呼ばれ、外見は女性型、膣は盲端、子宮はなく、思春期以降に原発性無月経を主訴に病院を訪れ診断される。 |
【解答】1)Klinefelter症候群 2)アンドロゲン受容体異常症
2. 38歳女性。3年前から頭痛と胸部圧迫感があり、最近高血圧を指摘された。身長160cm、体重58kg、血圧182/110、脈拍80/分。胸腹部に異常所見はみられない。一般生化学ではNa 148mEq/L 、K 2.5mEq/Lと電解質異常がある以外特記事項なし。鑑別診断と、確定診断に必要な検査について述べて下さい。 |
【解答】Na↑、K↓の高血圧ではRenin-Angiotensin-Aldosterone系の関与が疑われる。以下低カリウム血症を伴う高血圧について、主なものを検査とともに挙げていく。
●血漿レニン活性が――
<高> ・腎血管性高血圧症 … 線維筋性異形成や大動脈炎症候群、動脈硬化などによる。血管
雑音あり。診断は腎動脈造影や腎静脈レニン活性の比較。
・レニン産生腫瘍 … エコーや腹部CTなどによる画像診断。
●血漿レニン活性が低値で、血漿アルドステロンが――
<高> ・原発性アルドステロン症 … 副腎CT、デキサメサゾン抑制アドステロール副腎シンチ
(131I-NP59)、選択的副腎静脈サンプリングで鑑別。
・Cushing症候群[病] … 身体所見が特徴的。デキサメサゾン抑制試験でスクリーニ
ングと診断、CTなどの画像所見で局在診断、癌の鑑別を行う。
<低> ・偽性アルドステロン症 … グリチルリチン製剤(甘草など)の使用の有無。
・先天性副腎皮質過形成 … 11β-OHlase及び17α-OHlase(こちらはAld↑かも)欠損症
で見られる。弱いAld作用を持つDOCが増えるため。
・Liddle症候群 … 遺伝子診断?
★ 本症例では年齢、所見を考慮すると、少なくとも下線を付した3つは鑑別する必要があるだろう(ひょっとするとCushingや偽性アルドステロン症もかも)。
3. 褐色細胞腫の臨床症状並びに高血圧の治療、禁忌薬剤に関して知るところを述べよ。 |
【解答】 褐色細胞腫では高カテコラミン血症に伴う多彩な症状が出現し、Hypertension (高血圧)、Hyperglycemia(高血糖)、Hypermetabolism(代謝亢進)、Headache(頭痛)、Hyperhidrosis(多汗)の5Hで表される。
高血圧の治療は、主としてα遮断薬により血圧の低下をはかり、頻脈、不整脈にはβ遮断薬が併用される。降圧にはCa拮抗薬も有効である。β遮断薬の単独投与は血圧の上昇を招くので禁忌であり、必ずα遮断薬と併用する。
★ pheochromocytoma(PC)は副腎外、悪性、両側、小児、家族内発生がそれぞれ10%の10% diseaseと呼ばれる。症状は5H、具体的には頭痛、動悸、発汗過多、手指振戦、めまい感、口渇、便秘、体重減少、頻脈などである。検査では、カテコラミンとその代謝産物の排泄増加を尿中カテコラミン5分画(Ad、NAd、MT、NMT、VMA)の測定でみる。また131I-MIBGシンチで腫瘍がhotに描出される。治療は外科的摘除のみ。手術に際して、血圧を安定させておく必要がある。
※※ 3枚目 : 副甲状腺・Ca代謝 – 新傾向? ※※
【3】検診でたまたま血中Ca 7.5mg/dlを指摘された患者が来院した。その他の検査値の情報は持参していない。正しい組み合わせを選びなさい。 1) 最初に知らなければならない測定値はなにか。 1. intactPTH 2. 尿中cAMP 3. PTHrP 4. 血中P 5. 血中アルブミン a) 1 b) 2 c) 3 d) 4 e) 5 |
【解答】e
数字だけ見れば低Ca血症である(Ca 正常値8.7-10.3mg/dl)。だが血中Caの評価にはAlb補正を考える必要がある ⇒ (補正Ca)=(測定Ca)+(4-Alb) (但しAlb≦4)
2) 血中アルブミン 2.8g/dl、血中P 3.0mg/dl、intactPTH正常であった場合、どのような画像検査を選択するか。 1.上腹部超音波 2.頭部CT 3.MIBGシンチグラム 4.頚部超音波 5.MIBIシンチグラム a) 1のみ b) 12 c) 123 d) 145 e) 345 |
【解答】a?
補正Caは8.7mg/dlで正常下限、PとintactPTHも正常であることから、低Alb血症が実際の病態である。まず考えられるのが肝障害、他にもネフローゼ症候群や栄養不良、悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症などでも低下する。
3) 血中アルブミン 4.2g/dl、血中P 5.4mg/dl、intactPTH高値であった場合、どのような画像検査を選択するか。 1.手骨写 2.頭部CT 3.MIBIシンチグラム 4.上腹部超音波 5.MIBGシンチグラム a) 1のみ b) 12 c) 123 d) 145 e) 345 |
【解答】b? 3.×:MIBIシンチグラムは副甲状腺腫瘍疑い(亢進症)の時に行う。
Alb>4で補正はなく、低Ca、高P、高PTHの状態。PTHが働いていない”偽性副甲状腺機能低下症(PHP)”を考える。PHPはEllsworth-Howard試験での尿中cAMPの増加反応、Albright徴候、Gsタンパク活性の3つによりIa、Ib、Ic、IIの4つに分けられ、頭部CTで大脳基底核等に異所性石灰化が見られる。手の骨X線ではAlbright徴候の一つである中手骨の短縮が確認できる?
4) 血中アルブミン 4.2g/dl、血中P 5.4mg/dl、intactPTH低値であった場合、合併の有無を検査すべき疾患はどれか。 1.褐色細胞腫 2.プロラクチノーマ 3.橋本病 4.副腎皮質機能低下症 5.早発閉経 a)1のみ b)12 c)123 d)145 e)345 |
【解答】e
低Ca、高P、低PTHであり、PTH分泌不全である”副甲状腺機能低下症”が疑わしい。原因を自己免疫性と考えたとき、ほかの内分泌腺に対しても症状を起こす可能性があり、甲状腺であれば橋本病、卵巣では早発閉経、副腎ではAddison病を合併する。これを多腺性自己免疫(Polyglandular autoimmune, PGA)症候群という。
※※ 4枚目 : 間脳・下垂体 -
これも新傾向?
2004年概説も参考に ※※
28歳女性。11歳で初潮を迎え、25歳で結婚した。妊娠歴はない。結婚以来月経不順で、3ヶ月前より無月経となり、近くの産婦人科に行ったが子宮、卵巣には異常認めなかった。診察にて乳頭より乳汁漏出を認めたため、以下の検査を行った。
上記の病態の鑑別疾患を挙げよ。その疾患である可能性についてもそれぞれ述べよ。 |
【解答】プロラクチンの過剰分泌と症状から乳汁漏出-無月経症候群が考えられる。エストロゲンは無月経のために低下する。主な鑑別疾患を以下に示す。
・PRL産生下垂体腺腫 … プロラクチノーマ、時に末端肥大症でも高PRL血症となる。後者ではGH過剰症状が出現する。頭部X線にてballoningやdouble floor、CT・MRで腫瘍を確認する。
・視床下部障害 … 頭蓋咽頭腫や結核、外傷などにより視床下部からのPIF分泌が抑制され高PRL血症を来す。各種検査、画像による鑑別が必要。
・薬剤性高PRL血症 …ドパミン拮抗薬やα-メチルドパ、ホルモン剤によって高PRL血症を来すことがある。問診で服用の有無を確認する。
・原発性甲状腺機能低下症 … TRHが高値となるためTSHだけでなくPRLの分泌も亢進する。本症例ではTSH、fT4が正常であるため考えにくい。
プロラクチノーマ以外による高PRL血症ではPRL 200ng/mlを超えることはほとんどない。そのため本症例ではプロラクチノーマが最も疑われる。
★ 高プロラクチン血症の鑑別診断 … 重要なのは1,2,5,7,8あたり。
1. 機能性下垂体腺腫(プロラクチノーマ(Forbes-Albright症候群)、先端肥大症)
2. 視床下部下垂体茎障害(頭蓋咽頭腫、胚細胞腫など)
3. 異所性プロラクチン産生腫瘍
4. 胸壁並びに神経路の刺激性障害
5. 原発性甲状腺機能低下症
6. 多嚢胞卵巣症候群
7. 薬剤性(ドパミン拮抗薬、経口避妊薬、ドパミン生成抑制薬)
8. 機能性高プロラクチン血症(Chiari-Frommel症候群、Argonz del Castillo症候群)
9. 精神疾患
10. 腎不全、血液透析
Chiari-Frommel症候群は妊娠歴がないことからは鑑別に入れていない。あと、もし検査して、下垂体腺腫がなく原因不明であればArgonz del Castillo症候群となる。しかし、これらとプロラクチノーマによって起こるForbes-Albright症候群の3つは、区別する意義はあまりないらしい。
※※ 5枚目 : 糖尿病 – 問題形式は同じで内容は若干違う ※※
2. 正しいものにはマル、誤っているものにはバツをつけよ。 ( ) 2型糖尿病は単一遺伝子によるものである ( ) 糖尿病性神経障害は非対称性末梢感覚神経障害である ( ) 網膜症の増悪した糖尿病患者にはインスリン療法により急速に血糖を下げる ( ) 糖尿病性昏睡はインスリン療法の絶対適応である ( ) 糖尿病では無痛性心筋虚血が多く、冠動脈造影にて多枝病変が多い ( ) インスリンは胎盤通過性であり、巨大児のリスクとなるため妊婦には禁忌である |
【解答】解答には上から1-6の番号を付した。
1.×?:明らかではないが、今のところ単一遺伝子異常は数%程度に留まり、大部分は複数の遺伝要因と環境要因に由来する多因子性と考えられている。
2.×:有名なのは四肢末端の左右対称性の知覚障害(glove and stocking type)。他にも自律神経障害や脳神経の単一神経障害も起こる。
3.×:急激な血糖コントロールや低血糖は網膜症をさらに悪化させるため×。
4.○:1型DM、糖尿病合併妊婦、外科手術時、SU薬アレルギーなども絶対適応。
5.○:神経障害のため症状に乏しく、またびまん性多枝病変で、予後不良である。
6.×:インスリンは胎盤を通過しない。一方、経口血糖降下薬は胎盤を通過し胎児に低血糖を起こすため使わない。巨大児のリスクがあるのは母体の高血糖。
※※ 6枚目 : 脂質代謝(中牟田先生担当分) –
抜けているところは2003、2004卒試を参考に ※※
1. 30歳女性が検診にて高脂血症を指摘されて来院した。家族歴として、母、姉に高脂血症があり治療を受けている。検査結果としては、総コレステロール350mg/dl(正常220mg/dl以下)、中性脂肪100mg/dl(正常150mg/dl以下)、HDLコレステロール60mg/dl(正常範囲内)であった。 1 この患者さんのWHOの高脂血症の分類はどれか。 1 I 2 IIa 3 III 4 IV 5 V |
【解答】2 参考:LDL=TC-HDL-TG/5=270mg /dl(但しTG<400)、正常値120未満
T.Cholが300を超えていたら、まず家族性高コレステロール血症(FH)を考える。本症例ではT.Chol↑、TG正常、LDLは270mg/dlと上昇しており、これはLDLレセプター異常であるFHの病態に矛盾しない。FHは通常IIa型(時にIIb型)に分類される。
6. 本症例のような高脂血症の鑑別診断として最も大事なものを一つ選ぶ。 a 甲状腺機能低下症 bネフローゼ症候群 c副腎機能低下症 d 糖原病 e 性腺機能異常症 |
【解答】a? IIa型つまりLDLだけが増えそうな疾患を選ぶ。
a.○:肝リパーゼ活性とLDL受容体発現が抑制され、IIa型(時にIII型)となる。
b.×?:Albと同時にapoB合成が亢進し、VLDLとLDL↑のIIb型(時にIIa、IV)となる。
c.×:Cushing(機能亢進)ならコルチゾールの作用でVLDL↑のIV型(時にIIa,b)となる。
d.×:von Gierke病ではTGを利用したVLDL合成が亢進し、IV型となる。
e.×?:それっぽい記述が見あたらなかった。
※※ 7枚目 :
甲状腺 - 2003年卒試と似た問題。多分 ”当てはまるものを全て選べ” ※※
1. バセドウ病のときに高値を示すものはどれか。 a. ALP b. T-Chol c. CK d. TSH受容体抗体 e. TSH |
【解答】a,d
Basedow病では、TSH受容体抗体による甲状腺刺激によって甲状腺ホルモンが過剰となり、代謝が亢進する。このため、脂質異化亢進によりT.Chol↓、骨代謝亢進によりALP↑となる。またTSHは抑制されTSH↓。CKは下がるらしい。
2. 無痛性甲状腺炎で高くなる検査値はどれか。 a. 遊離T4値 b. CRP c. 血沈 d. 抗TPO抗体 e. 甲状腺ヨード摂取率 |
【解答】a,d
無痛性甲状腺炎は、何らかの原因で甲状腺濾胞の破壊が起こり、ホルモンが漏れ出して甲状腺機能亢進を生じたもので、橋本病の経過中に多い。血中T4は上昇し、抗TPO抗体が50%以上で陽性、
また甲状腺が壊れているためヨード摂取率は低下する。炎症所見はあまりあてにならず、CRP、赤沈は大体正常らしい。
3. クレチン症の時、高値を示すのはどれか。 a 身長 b TSH値 c CK d 総コレステロール e 知能指数 |
【解答】b?,c,d
発育期以前に生じた甲状腺機能低下症をクレチン症と呼ぶ。巨舌、臍ヘルニア、蛙腹などの特徴的な外見に加え、成長発達遅延のため低身長、知能低下、骨年齢遅延を生じる。代謝が悪くなり、T.Chol、CK-MMが利用されずに増加する。TSHは甲状腺原発(全体の90%)では↑、下垂体・視床下部障害(10%)では↓となる。
4. 甲状腺の乳頭癌と濾胞癌の鑑別に有用なのはどれか? a血中サイロキシン値 b超音波 c甲状腺シンチグラム d細胞診 e CT f MR |
【解答】b,d
a.×:ホルモンを作らないためT4は増えないが、両方ともthyroglobulinは増える。
b.○:辺縁不整の低エコーに高エコー散在が乳頭癌、辺縁整の低エコーが濾胞性腫瘍。
c.×:両方とも、甲状腺の原発巣はcold、転移があれば転移巣はhotとなる。
d.○:乳頭癌では乳頭状の配列、すりガラス状の核、核内細胞質封入体が特徴的。
e.×, f.×:腫瘍の広がりや転移の評価に用いる。
5. 甲状腺分化癌の遠隔転移で多い部位は。 a.肝 b.腎 c.肺 d.脳 e.骨 |
【解答】c,e (aも?)
乳頭癌はリンパ行性、濾胞癌は血行性に転移。肺や骨に多く、肝、脳にも転移を来す。
6. チオナマイド系抗甲状腺薬の副作用として注意を要するものはどれか。重複可 a心房細動 b蕁麻疹 c肝障害 d白血球減少 e腎障害 |
【解答】b,c,d
薬疹や肝機能障害に加え、重篤な副作用として無顆粒球症があり、経過中の発熱や咽頭痛には注意が必要である。無顆粒球症が出現したら直ちに投与を中止し、無菌室に収容して抗生物質、ステロイドの投与を行う。
※※ 8枚目 : 乳腺? –
過去問に似た問題がある ※※
中から正解三問選択 1.乳癌の術後補助には内分泌療法を用いる 2.タモキシフェンは閉経後に有効 3.アロマターゼ阻害は閉経前には無効 4.LHRHアゴニストは抗癌剤に匹敵する 5.腋窩リンパ節転移がなければ化学療法は必要ない |
【解答】2,3,4? 1.×:化学療法。 2.○:ホルモン療法は主に閉経後。
3.○:乳癌細胞は閉経前、aromataseの関与しない卵巣由来のestrogenに依存するため。
4.○?:ER(+)であれば、奏功率60%で抗癌剤に匹敵する。
5.×?:転移陰性例に対する術後化学療法も、無再発生存期間を有意に延長するらしい。
※※ 9枚目 : 甲状腺・副甲状腺疾患の外科治療 – 過去問にあるものとないものが混在 ※※
1. 甲状腺悪性腫瘍について正しいものを選べ。 1.小児期の頚部放射線照射は甲状腺分化癌の誘因になる。 2.乳頭癌が大多数を占める。 3.未分化癌は分化癌に比べ若年層に多い。 4.髄様癌は血中カルシトニンが低値を示す。 A.1 B.1,2 C.2,3 D.1,3,4 E.1~4全て |
【解答】B
1.○:10歳以前の小児への頸部放射線照射は、甲状腺乳頭癌の危険度を増すとされる。
2.○:80%以上が乳頭癌、濾胞癌が10%程度、残りは未分化癌、髄様癌、悪性リンパ腫が1-3%ずつ。
3.×:60歳以上、男女比1:2ぐらいでやや女性に多い。全ての悪性腫瘍の中で最も予後が悪い。
4.×:髄様癌はcalcitoninを産生する傍濾胞細胞に由来するため、分泌が増加する。
2. 甲状腺癌手術の合併症について正しいものを選べ。 1. 反回神経麻痺は最も注意すべきものの一つである。 2. テタニーが出現した場合、副甲状腺ホルモンの補充を行う。 3. 術後出血によって、脳循環障害や気道閉塞を起こすことがある。 4. 喉頭浮腫も注意すべき合併症の一つである。 A.1 B.1,2 C.2,3 D.1,3,4 E.1~4全て |
【解答】D 2.×:低Ca血症に対してはCa製剤、時にVit.Dを用いる。
★ 甲状腺手術の術後合併症
・気道閉塞 … 後出血、両側反回神経麻痺、喉頭浮腫などによる
・テタニー、低Ca血症 … 副甲状腺機能低下による
・嗄声 … 反回神経麻痺による
・高音発声不良、長時間発声不能 … 上喉頭神経外枝麻痺による
・甲状腺機能低下
3. 甲状腺腫瘍の治療について誤っているものを選べ。 1. 甲状腺悪性リンパ腫は手術よりも化学療法や放射線療法を選択することが多い。 2. 甲状腺乳頭癌は予後良好であるためリンパ節廓清は必要ない。 3. 肺に多発転移がみられた場合でも基本は外科的切除である。 4. 未分化癌に対しては積極的な手術適応はない。 A.1 B.1,2 C.2,3 D.1,3,4 E.1~4全て |
【解答】C?
1.○:基本的に手術は行わず、放射線療法ないし化学療法によって約70%の症例は治癒する。
2.×:リンパ行性転移が多いため、患側頸部郭清を行う。
3.×?:分化癌についてであれば、甲状腺を全摘した上で131I治療を行うので○となる。
4.○:窒息のおそれがあるときなどに、局所コントロール目的で行うことはある。
4. 上皮小体機能亢進症について正しいものを選べ。 1. 原発性のものの大部分が腺腫によるものである。 2. 多発性内分泌腫瘍を考慮する必要がある。 3. 続発性の外科的治療は全腺摘出、一腺移植が基本である。 4. 診断には血中PTH測定が必要である。 A.1 B.1,2 C.2,3 D.1,3,4 E.1~4全て |
【解答】E
1.○:副甲状腺の単発性腺腫で、特に下部に多く、80%腺腫、15%過形成、5%癌とされる。
2.○:MEN1型(+下垂体腺腫、膵ラ島腫瘍)、MEN2A型(+甲状腺髄様癌、褐色細胞腫)。
3.○:活性型Vit.D3投与やリン摂取抑制など、内科的治療でコントロールできないときに行う。
4.○:分解される前の状態であるintact PTH(正常値10-65pg/ml)をはかるのが主流。
※※ 10枚目 : 肥満 – ○×形式は同じ。内容は新旧混在? ※※
○×で8問 (1) 肥満におけるインスリン抵抗性には肥満細胞からでるアディポネクチンが関与している。 (4) 高脂血症IIa型にはHMG-CoA還元酵素阻害薬を用いる。 (5) 経口糖負荷試験で境界型を示す人も動脈硬化のハイリスク群である。 (7) PCOSでは男性ホルモン、女性ホルモンは共に過剰状態を示す。 |
【解答】
1.○:アディポネクチンはインスリン感受性促進ホルモンとされており、肥満ではその濃度が低下するため、その結果インスリン抵抗性を生じると考えられている。
4.○: IIa型はLDL↑によるT.Chol↑なので、コレステロール合成を抑制するこの薬を使用する。
5.○:動脈硬化の危険因子の項目では、”糖尿病(境界型を含む)”、とされている。
7.×:多嚢胞卵巣症候群(polycystic ovary syndrome, PCOS)は、GnRH分泌亢進とそれに伴うLH分泌亢進によってandrogen産生が亢進し、無月経、不妊、男性化徴候等の臨床症状、卵巣の形態的変化、内分泌異常を来す疾患である。卵胞一つあたりのestrogen分泌は低下するが、卵胞数増加とandrogenからの変換のため血中estrogenはほぼ正常となる(E1/E2比は上昇する)。
※※ 11枚目 : タンパク質・アミノ酸 一内科 下田慎治先生 – 形式は同じで内容は過去問とは少々違う ※※
○×問題 (2) 続発性アミロイドーシスのアミロイド蛋白はAL蛋白であり、遺伝性アミロイドーシスではAA蛋白である。 (3) ポルフィリン症は大きく肝性、骨髄性、および腎性ポルフィリンに大別される。 (4) Wilson病では一過性に溶血性貧血をきたすことがある。 (5) アミロイドーシスではコンゴレッド染色が有効である。 (6) ポルフィリン症ではポルフィリン体が大便や小便に大量に排泄される。 (8) Wilson病は原因不明の肝臓疾患の場合に鑑別が必要であり劇症肝炎の原因となりうる。 (9) アミロイドが心臓に沈着した場合のもので注意が必要な病態は虚血性心疾患である。 (10) アミロイドーシスの確定診断には肝生検がよく施行される。 (11) Wilson病では銅のレンズ核への沈着が起こるためパーキンソン様症状をきたすことが多い。 (12) Wilson病では血中セルロプラスミン高値となる結果、銅の排泄が促進される。 (14) 晩発性皮膚ポルフィリン症はアルコール性肝障害を含めた肝臓疾患の原因となる。 (15) 日光過敏は造血プロトポルフィリン症や晩発性皮膚ポルフィリン症にあるのに反し、急性間欠性ポルフィリン症ではないことが多い。 |
【解答】
2.×:原発性や多発性骨髄腫合併アミロイドーシスがAL蛋白。続発性や遺伝性がAA蛋白。
3.×:ヘム合成系の酵素異常によるポルフィリン体過剰産生が原因。元々合成が盛んな肝臓・骨髄が過剰産生の場となり、それによって肝性、骨髄性、(骨髄肝性)と分類される。
4.○:銅イオンが赤血球膜を破壊して溶血性貧血を起こすことがある。多くは一過性。
5.○:アミロイドが特異的に橙赤色に染まる。また偏光顕微鏡で緑色の複屈折を呈する。
6.○:尿への大量排泄の結果、尿が赤色~暗赤色(ブドウ酒色)となる。
8.○:Wilson病はほとんどが肝障害で発症する。障害の程度は慢性肝炎や劇症肝炎、肝硬変など様々。
9.×:心肥大や心伝導障害を起こし、うっ血性心不全を呈する。
10.×:原則は直腸粘膜か胃粘膜であり、血が止まりにくいためむやみにやると危険である。
11.○:肝レンズ核変性症とも呼ばれ、基底核への銅の沈着により錐体外路症状が現れる。
12.×:セルロプラスミン(Cp)合成障害→Cp↓↓→AlbとCuがくっつく→結合が弱いので離れやすい→尿中Cu排泄↑。血清Cuは下がる。
14.○?:晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda, PCT)は肝障害による肝酵素(UROD)異常が原因となって皮膚症状が出現するもので、肝硬変などの肝障害を引き起こすとされる。
15.○:日光過敏はAIP(acute intermittent porphyria)とHCP(hereditary coproporphyria)以外で現れる。日光照射によって皮下のポルフィリン体が活性化し、遊離酸素やfree radicalを放出することで、水疱、色素沈着などの皮膚症状を生じるものである。
※※ 12枚目 : 尿酸・ビタミン(1)
– 2005年概説と類似 ※※
A. 正しい組み合わせを選べ。 (1) プリン、ピリミジン体は核酸の構成成分として遺伝情報を伝達する媒体であり、プリン体は6員環、ピリミジン体は5員環と6員環を有している。 (2) DNA、RNAを構成するヌクレオチドは、プリン体についてはde novo合成系とsalvage合成系がある。 (3) アデニンとグアニンはピリミジン体からつくられる。 |
【解答】???
1.×:プリン体(A,G)は5員環と6員環を、ピリミジン体(C,T)は6員環のみを有する。
2.○:PRPPをもとにプリン環を1から作るのがde novo合成系、プリン環に既存のアデニン・グアニンを使いそれとPRPPとくっつけるのがsalvage合成系。
3.×:原料はPRPP(5-phosphoribosyl 1-pyrophosphate、5-ホスホリボシル1-ピロリン酸)である。
B. 正しい組み合わせを選べ。 (1) 痛風は、関節リウマチが女性に多いのに比して、中年以降の男性、女性に同じくらいの頻度で見られる。 (2) 急性痛風性関節炎は、第一足基関節に疼痛、発赤、腫脹することが多く、大部分が片側性である。 (3) 痛風結節は耳介部軟骨に好発し、ピロリン酸カルシウムからなる。 (4) 痛風の発作期にはコルヒチンは効果がないが、発作の前兆期に使用することで予防効果が期待される。 (a)1,2 (b)3,4 (c)1,3 (d)2,4 (e)4のみ |
【解答】(d)
1.×:95%以上男性(estrogenが尿酸排泄に関与)でピークは30歳代。女性も閉経後は増加する。
2.○:白血球が壊れて出てきたリソソーム酵素が原因で、通常は単関節炎が起こる。
3.×:痛風結節は皮下や軟骨などに析出した尿酸結晶を肉芽組織が取り囲んだもので、母趾基関節周囲の他、肘、足首、手指、耳介に好発。ピロリン酸Ca結晶は偽痛風で見られる。
4.○:白血球の炎症部位への遊走を阻害するため、遊走後である発作時に使用しても意味がない。
※※ 13枚目 : 尿酸・ビタミン(2)
※※
3. 以下の文章で正しいものの組み合わせはどれか? (1) ビタミンD は骨粗鬆症の治療に使用されている (2) ビタミンB2欠乏により結膜炎を起こすことがある (3) 新生児の出血傾向ではビタミンK欠乏を疑わなくてはならない (4) 脚気の発症は年々急激に減少しつつある (5) 葉酸欠乏によって末梢神経障害をきたすことがある a)135 b)145 c)123 d)235 e)125 |
【解答】c 1.○:活性型Vit.D3が用いられる。
2.○:Vit.B2は皮膚粘膜の機能維持に関与し、欠乏で口角炎や結膜炎、脂漏性皮膚炎などを起こす。
3.○:母乳にはVit.Kが少ないため、母乳栄養児ではVit.K補充を行わないと欠乏しやすい。
4.×:Vit.B1を含まないインスタント食品の過剰摂取や偏食により、近年増加している。
5.×:葉酸とVit.B12の欠乏では巨赤芽球性貧血が重要。通常葉酸欠乏では神経障害は来さない。
4. 次のうち正しい組み合わせはどれか。 1) ビタミンB ―― 慢性アルコール症 2) 葉酸 ―― 脂溶性ビタミン 3) ビタミンD ―― トリプトファン 4) 骨粗鬆症 ―― ビタミンE 5) アスコルビン酸 ―― 壊血病 a)124 b)145 c)125 d)235 e)234 |
【解答】???
1.○:Vit.B群はアルコールの代謝に重要で、慢性アルコール中毒ではその欠乏症状が現れることがある。特にVit.B1欠乏のWernicke脳症とアルコールの関係は重要。
2.×:脂溶性ビタミンはVit.A、D、E、K。葉酸はVit.BやCと同じく水溶性ビタミン。
3.×:トリプトファンはナイアシンの原料。トウモロコシを主食にすると欠乏することがある。
4.×:骨粗鬆症といえばVit.DやVit.Kが有名。Vit.Eは抗酸化作用による老化防止が有名。
5.○:Vit.C(L-Ascorbic acid)欠乏により血管が脆くなり、壊血病を起こす。
※※ 14枚目 : 脳外-下垂体疾患の外科治療 松角先生担当 – 2004概説と類似 ※※
(1) 下垂体腫瘍の外科治療についての記載で正しいものを1つ選べ。 1. 下垂体腫瘍の手術法としては、開頭手術と経蝶骨洞手術とがある。 2. トルコ鞍上部に進展する腫瘍は、開頭手術の絶対適応である。 3. プロラクチン産生腫瘍は必ず手術治療が必要である。 4. 経蝶骨洞手術は、手術視野が広く浅い利点がある。 5. 経蝶骨洞手術は、視神経障害、尿崩症や内頚動脈損傷は起こりえない。 |
【解答】1
1.○:経蝶形骨洞手術(Hardy’s operation)を行うことがほとんど。
2.×:大きく進展していれば開頭法を選択することもあるという程度で、絶対適応ではない。
3.×:第一選択は薬物療法。治療に抵抗または副作用などで治療が困難な時に手術。
4.×:術野が深くて狭いのが欠点の一つ。術野が広いのは開頭法の利点。
5.×:周辺組織の損傷はゼロではないため、これらの合併症を考えておく必要がある。
(2) 下垂体腫瘍と診断されていた患者が、突然、頭痛、嘔吐、冷や汗、眼球運動障害、視野視力障害をきたした。何が起こった可能性が最も高いか。 1.急性硬膜外血腫 2.急性硬膜下血腫 3.クモ膜下出血 4.小脳出血 5.下垂体卒中 |
【解答】5
下垂体腫瘍内に出血や梗塞が起こると、腫瘍容積が急激に増大し、上記のような症状が現れる。これは下垂体卒中と呼ばれ、眼症状があれば緊急手術にて速やかに減圧する必要がある。下垂体負荷試験(特にTRH)で誘発されうる。
※※ 15枚目 : 骨粗鬆症 高杉先生 – 過去問にはない、でもわかりそうな問題 ※※
1. わが国の骨粗鬆症治療薬として誤っているものを一つ選べ。 aビスフォスフォネート bエストロゲン cビタミンD dビタミンC eカルシウム |
【解答】d
★ 骨粗鬆症治療薬は8種類(1998のガイドラインより)。evidenceがあるのは下線を付けた3種のみ。
○高回転型骨粗鬆症(骨吸収が増える。ex.閉経後骨粗鬆症)に対しては骨吸収抑制
→ estrogen、bisphosphonate、Ipriflabone、calcitonin
○低回転型骨粗鬆症(骨形成が減る。ex.老人性骨粗鬆症)に対しては骨形成促進
→ 活性型Vit.D3、Vit.K2、Ca製剤、蛋白同化ホルモン(あまり使われない)
他にも、最近ではSERM(selective estrogen receptor modulator)という薬があるらしい。
2. 転倒骨折の予防対策として誤っているのはどれか。一つ選べ。 a. 住居のバリアフリー化 b. 下肢筋力の強化 c.バランス機能訓練 d. ヒッププロテクター e. ベッド上安静 |
【解答】e.
過剰な安静は体力低下を招き(廃用症候群など)、そこから寝たきりの状態になってしまうこともある。
※※ 16枚目 : 骨粗鬆症 神宮寺誠也先生 – 2003概説、2004概説を参考に ※※
1. 骨粗鬆症について誤っているものを2つ選べ。 a. リモデリングの異常である。 b. 原発性と続発性がある。 c. 退行性骨粗鬆症には閉経後骨粗鬆症と老人性骨粗鬆症がある。 d. 閉経後骨粗鬆症では骨皮質の萎縮が顕著である。 e. 椎体圧迫骨折では神経症状は起こらない。 |
【解答】d,e
a.○:リモデリングにおいて骨吸収>骨形成となるために、骨量が減少する。
b.○, c.○:原発性=退行期(閉経後+老人性)+特発性。骨粗鬆症のほとんどがこの退行期骨粗鬆症。
d.×:エストロゲン減少による高回転型骨粗鬆症で、海綿骨が著明に萎縮する。
e.×:圧迫骨折により神経が圧迫され、腰痛、背部痛を起こすことがある。
2. 誤っているものを2つ選べ。 a. 骨の形成は主に骨細胞からなる。 b. 骨芽細胞は破骨細胞の分化を促す。 c. 骨のリモデリングにおいて骨の形態変化を伴わない。 d. 骨型アルカリフォスファターゼは骨形成マーカーである。 e. ビスフォスフォネートは骨芽細胞のアポトーシスを誘導する。 |
【解答】a,e
a.×:骨芽細胞が骨形成を行う。骨芽細胞が骨の基質に埋もれると骨細胞へと分化するらしい。
e.×:破骨細胞のアポトーシスを促進することで、骨吸収を強力に抑制する。
★ 骨代謝マーカー …… 下線を付したものは重要。
骨形成マーカー(以下全て血中):骨型ALP、オステオカルシン、PICP、PINP
骨吸収マーカー(尿中が多い):尿中デオキシピリジノリン、尿・血中NTX、尿中CTX、血中ICTP
※※ 17枚目 : 乳腺 ※※
2. 日本人の乳癌について、正しいものをえらべ。 a. 乳管内にとどまり、乳腺への浸潤も狭い範囲にとどまるものを非浸潤癌という。 b. 乳癌の多くは筋上皮細胞由来である。 c. 浸潤性発育をするものを硬癌、膨張性発育をするものを充実腺管癌、管内発育をするものを乳頭腺管癌という。 d. 乳腺粘液癌は手術後の予後が悪い。 1. c 2. d 3. b,c 4. a,c,d |
【解答】1?
a.×?:乳管・小葉内に留まり、基底膜を破っていないものを非浸潤癌という。表現が曖昧だが”狭い範囲”でも基底膜を破っていれば分類上は浸潤癌となるはず。
b.×:乳癌はほとんどが乳管上皮細胞から発生し、筋上皮との二相性を喪失する。
c.○:3つとも分類は浸潤性乳管癌である。
d.×:浸潤癌特殊型に分類される粘液癌mucinous carcinomaは予後良好で、10年生存率90%以上。
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