平成16年度 「精神医学」 概説試験
1.各文章の[ ]内に最も適切な語句を記入しなさい。 1)精神保健指定医の診察の結果、入院治療が必要と判断されたが、患者は病識を欠き、同意する能力が不十分であるため、保護者の同意を得て[ ]入院となった。 2)米国精神医学会の診断基準DSM-IVによれば、気分障害のカテゴリーには「大うつ病」、「双極性障害」、「気分循環症」および[ ]がある。最後のものは、かつて抑うつ神経症と呼ばれたものに該当する。 3)「大うつ病」ではほとんど一日中、毎日みられる[ ]と興味、関心の著しい減退が2週間の間存在する。 4)うつ病にみられる妄想は微小妄想と呼ばれ、貧困妄想、心気妄想、および[ ]妄想が代表的である。 5)メランコリー型の身体症状としてとくに重要なものは、食欲低下、体重減少、性欲減退および[ ]である。 6)躁病にみられる思考障害のうち、いろいろな考えが次々に湧いてきて話題がポンポン飛んで話の脈絡がなくなることを[ ]という。 7)双極性障害に対する気分安定化薬として、我が国では[ ]と抗てんかん薬でもあるカルバマゼピン、およびバルプロ酸が使用できる。 8)[ ]が抗コリン副作用を生じやすいのに対して、近年、臨床での使用が可能になった選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)は消化器症状が副作用として生じやすい。 9)アルコール依存症の離脱症状のうち、意識障害を基盤に幻覚妄想状態を呈し、不安や恐怖の色彩が強いものを[ ]と呼ぶ。 10)ロールシャッハテストは、代表的な[ ]法による心理検査である。 |
解答 (類)15年度概説大問1
1)医療保護 「精神保健・法と精神医学」プリント3枚目
2)気分変調症 2)~8)は「6/4、14 気分障害」 3)抑うつ気分 4)罪業
5)早朝覚醒 6)観念奔逸 7)リチウム 8)三環系抗うつ薬 あわせて「6/3 精神障害の治療-薬物療法」も参照 9)振戦せん妄 「6/15 アルコール・薬物関連障害」プリント2枚目 10)投影 「6/16 精神保健・法と精神医学」プリント1枚目
2.次の文章のうち、正しい内容には○を[ ]内につけよ。 1)[ ]WHOの統計によれば、疾患をその障害のために個人や社会に与える損失の程度(Disability Adjusted Life Year)によって評価した場合、現在、人類に最も大きな負担をもたらしている精神障害はうつ病である。 2)[ ]1970年代以降、日本を含む先進諸国では精神科病床数が著しく減少した。 3)[ ]我が国の精神科入院患者のうち、条件が整えば退院可能な者は7万5千人もおり、彼らを地域で受け入れるためには援護寮、福祉ホーム、グループホームなどの社会資源をもっと増やす必要がある。 4)[ ]大うつ病の生涯有病率は1%である。 5)[ ]うつ病の患者にはできる限り気分転換を勧め、自信を持たせるために叱咤激励する。 6)[ ]モルヒネ型依存では身体依存を生じる。 7)[ ]アルコール幻覚症では意識は清明である。 8)[ ]血中アルコール濃度250mg/dl以下ではふらつきは生じない。 9)[ ]急性覚醒剤中毒の離脱期には疲労感が強く、食欲が低下する。 10)[ ]Mini Mental State Examination(MMSE)は、痴呆の症状評価によく用いられる。 |
解答 (類)15年度概説大問2
1)○ 「6/16 精神保健・法と精神医学」プリント5枚目
2)× 「6/16 精神保健・法と精神医学」プリント2枚目(日本以外)
3)○ 「6/16 精神保健・法と精神医学」プリント4枚目
4)× 「6/4、14 気分障害」(5~15%)
5)× 「6/4、14 気分障害」あくまで支持的・受容的に。
6)○ 「6/15 アルコール・薬物関連障害」プリント1枚目(身体依存はモルヒネ・アルコール)
7)○ 「6/15 アルコール・薬物関連障害」プリント2枚目
8)× 「6/15 アルコール・薬物関連障害」プリント1枚目
9)× 「6/15 アルコール・薬物関連障害」プリント4枚目(食欲は亢進)
10)○ 「6/16 精神保健・法と精神医学」プリント1枚目
3.下記について正しいものには○、誤っているものには×を記せ。 1)( )神経症は心因の関与が大きいと考えられる器質性の精神障害である。 2)( )現在の国際的な疾患分類においては「○○神経症」という名称は全く用いられていない。 3)( )系統的精神療法のうちもっとも長い歴史をもつものは森田療法である。 4)( )神経症の薬物療法では、従来より用いられている抗不安剤の他抗うつ剤を積極的に用いるようになってきている。 5)( )神経症では、環境の影響が小さいものほど治療予後が良い。 |
解答 「6/7、8 神経症性障害」1)× 7日プリント1枚目(機能的)2)○ 7日プリント3枚目 3)× 8日プリント5枚目(精神分析療法)4)○ 8日プリント2枚目 5)× 8日プリント1枚目(症状持続が短く、性格問題が小さく、環境因子が大きいと予後良)
4.下記について正しいものには○、誤っているものには×を記せ。 |
解答 「5/21 睡眠障害・器質的精神障害」、(類)15年度概説大問4
1)× 9枚目。睡眠発作、脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚が四徴です。
2)× 1枚目。JCSで2桁までの比較的軽度の意識障害。
3)× 1枚目。ステロイドは精神症状を起こしやすい薬剤。
4)○ 6、7枚目。 5)× 1枚目。アルコール幻覚症の幻覚は主に幻聴。
6)○ 6、7枚目。部分発作にカルバマゼピン、全般発作にはバルプロ酸。 7)○?
8)× 毎日更新せねばならない時間が真っ先に、続いて場所、人物の順で障害されます。
9)○ 1枚目。 10)○ 4枚目。肝性脳症で特徴的に見られます。
5.1)アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆、ピック病に関して以下より特徴的な臨床症状を2つずつ選べ。 1視空間失認 2感情失禁 3脱抑制 4まだら痴呆 5保続 6健忘失語 |
解答(類)15年度概説大問5、14年度概説大問7、13年度概説大問6 解説は15年度参照。
アルツハイマー型痴呆(1,5) 脳血管性痴呆(2,4) ピック病(3,6)
2)アルツハイマー型痴呆、ピック病に関してsingle photon emission computed tomography(SPECT)にて局所血流量低下を示す部位を以下から2カ所ずつ選べ。 |
解答 アルツハイマー型痴呆(2,3) ピック病(1,2)
6.下記について正しいものには○、誤っているものには×を記せ。 |
解答 (類)15年度概説大問6、14年度概説大問8、13年度概説大問7
「6/11 小児期・青年期精神障害」
1)× アスペルガー障害では言語発達は遅れません。これは自閉症の説明です。 2)×?
3)× ハロペリドール。メチルフェニデートは症状を悪化させます。
4)× メチルフェニデートです。 5)× 症状は軽いが頻度が高い、とされています。
7.DSM-IVについてその構造を説明し、精神科診断分類における利点を述べよ。 |
解答例 「6/11 小児期・青年期精神障害」参照
DSM-IVの特徴には「多軸診断」と「操作的診断」がある。多軸診断とは多くの面から、総合的に患者をとらえる、ということで、具体的にはDSM-IVは1.臨床症状に基づく主要診断、2.精神遅滞と人格障害、3.基礎身体疾患の有無、4.心理社会的・環境的要因の有無、5.機能の全体的評定、という5つの軸からなる。操作的診断とは、診断を誰が行うかにかかわらず、あらかじめ設定された項目のチェックを行えば、同じ診断にたどりつける、ということである。
8.1)精神療法が成り立つために何が必要と思うか。三つ以上の「もの」あるいは「こと」(または「きっかけ」など)を挙げ、自らの考えを簡単に述べよ。 2)「精神療法」はどのように分類できると思うか。三つ以上に分ける試みを行ない、簡単に自らの考えを説明せよ。 |
解答例 「6/10 精神障害の治療-精神療法」参照
1)良好な医師患者関係、患者に対する周囲の理解、時間(根気)…何を書いても良さそうですが。
2)これも精神療法について何なりと記述すればそれでいい、という意味だと思いますが…。
例えばステップでは、「支持的精神療法」、「表現的精神療法」、「洞察的精神療法(精神分析療法など)」、「訓練療法(森田療法、自律訓練法、行動療法など)」、「集団精神療法」、「家族療法」に分類されています。
9.以下の文章を読み、正しいものには○、誤っているものには×を記し、誤っている場合は[ ]内に理由を述べよ。また、○×で答えられないものについてはその設問の意図するところに従い答えを書くこと。 |
解答
1)○ 1)~4)は「5/31 精神障害の症候学」プリント、ノート参照。 2)○
3)×:錯覚は実際の刺激を誤って知覚すること、幻覚は実態なき知覚。
4)×:正常と異常の境界は明瞭でない。
5)×:軽度の意識障害と精神運動興奮を伴う。5)~6)は「5/20 リエゾン精神医学」参照。
6)○? 7)×:薬物療法は第一選択。7)~10)は「5/28、6/2 統合失調症」参照。
8)×:支持的精神療法、家族療法は有効。ただし洞察的精神療法は原則適応なし。 9)○
10)○?(「特有の」といわれるとすこしひっかかりますが…)
11)×:覚醒剤中毒では幻聴が中心。(「統合失調症に比較して」といわれるとその通りかもしれませんが。)
12)×:薬剤の効果が不十分な統合失調症・うつ病に適応あり。 13)○「6/4、14 気分障害」
14)×:統合失調症でよくみられる。「5/31 精神障害の症候学」、「5/28、6/2 統合失調症」
15)○ 16)×:季節性うつ病では過眠と過食を呈する。「6/4、14 気分障害」
17)×:悪性症候群の可能性。抗精神病薬は中止する。17)~21)は「6/3 精神障害の治療-薬物療法」参照。
18)ダントロレン(静注) 19)×:重要な副作用は意識障害、けいれん、錯乱、昏睡など。
20)×:2~3週間かかる。 21)○
22)×:昼夜の区別もなく、対人的接触のない刺激の少ない環境でせん妄を起こす。「5/20 リエゾン精神医学」
23)×:このような施設さえあれば精神科を退院できる患者が多い。「6/16 精神保健・法と精神医学」
24)(1)(2)(4)(7)(9)「5/31 精神障害の症候学」、「5/28、6/2 統合失調症」
25)×:副作用が少なく陰性症状にも有効性が高いため、維持療法によく用いられる。「6/3 精神障害の治療-薬物療法」
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