平成17年度 「精神医学」 概説試験
全員合格
1. ○×問題 (1)せん妄状態では、意識障害が無い。 (2)振戦せん妄は、アルコール離脱時に見られる。 (3)全般発作にはバルプロ酸が第一選択薬である。 (4)側頭葉てんかんは全般性発作に含まれる。 (5)意識障害の診断に脳波は有用でない。 (6)ナルコレプシーにはREM睡眠の過剰が見られる。 (7)インターフェロンには精神症状の副作用はまれである。 (8)アルツハイマー病のもっとも特徴的な病理所見はレビー小体である。 (9)ピック病においては局所血流の低下が前頭葉や側頭葉で見られる。 (10)脳波は通常加齢とともに変化する。 (11)見当識は時間、場所、人物の順に障害される。 (12)幻視や幻触は器質性精神障害に特徴的である。 (13)せん妄状態においては症状の経時的変化はめだたない。 (14)ピック病は脱抑制などの人格変化が起きる。 (15)三相波はヤコブ病に特徴的な所見である。 (16)振戦せん妄はベンゾジアゼピンが通常使用される。 (17)MMSE(Mental State Examination)は器質的精神障害の診断によく用いられる。 (18)脳波上発作波があれば、てんかん発作が起きていなくても抗てんかん薬を投与する。 (19)ピック病の有病率はアルツハイマー病のそれより高い。 (20)脳死判定に脳波検査はかかせない。 |
2004年概説試験4番、2003年概説試験4番に類似
解答 (1)× 軽い意識混濁と強い意識狭窄に高度の認知障害が加わった意識の変容がある。
(2)○ 最終飲酒後2~3日で生じる後期離脱症状。 (3)○
(4)× 複雑部分発作に分類される。 (5)×?
(6)○ non-REM睡眠をとばして一挙にREM睡眠に陥る。 (7)×
(8)× 老人斑(ベータアミロイド)が特徴的。
(9)○ 前頭葉・側頭葉で萎縮が見られる。 (10)○ (11)○ (12)○
(13)× 短期間(数時間から数日)で出現する。1日のうちでも波があり、夕方~夜間前半にかけて増悪する傾向がある(夜間せん妄) (14)○
(15)× 周期性同期性放電(PSD)が見られる。三相波は肝不全で見られる。 (16)○ (17)○
(18)× 発作症状とEEGから発作型を確定してから治療する。
(19)× 稀な疾患で、アルツハイマー病との比率は1:100.
(20)○ 「平坦脳波」は診断基準の一つ。また、植物状態(脳波+)との鑑別にも必要。
2. ○×問題 (1) 広汎性発達障害(PDD)の子の中核症状は精神発達遅滞である。 (2) 広汎性発達障害の治療薬はメチルフェニデートである。 (3) 注意欠陥多動性障害(ADHD)の生涯発症率は約1%である。 (4) 軽度発達障害は女児に多い。 (5) 児童精神外来を受診する子の主訴と親の主訴はほとんど一致している。 (6) 教育従事者の情報は養育者の情報ほど、精神障害の診断に寄与することは少ない。 (7) 被虐待児では虐待を受けていない子に比べ、注意欠陥多動性障害の発症頻度は少ない。 (8) 虐待している親は自身が虐待していることを認識しており、そうした親の精神障害の発症率は虐待していない親と変わらない。 (9) 産後うつ病は育児の負担が大きくなる産後6ヶ月後くらいから発症しやすい。 (10) 産後うつ病発症の危険因子として最も重要なものは産科合併症である。 (16)うつ病は過眠をきたさない。 (26)漢方薬は精神疾患には効果がない。 |
解答 (1)× (2)× (3)× (4)× (5)× (6)× (7)× (8)× (9)× (10)×
(1) ×: 発達遅滞がみられる頻度が高いですが、PDDの症状の中核は対人関係の障害です。広義のPDDに含まれるAsperger症候群では精神発達遅滞はみられません。
(2) ×: メチルフェニデートはADHDの治療薬。PDDでは行動療法や心理療法などを行います。
(3) ×: 約5%と講義中にありました。
(4) ×: PDD, チック, ADHD全て男児の方が多い。
(5) ×: 親が子供の異常をきちんと認識していないことも多いので、子供と二人だけで話をすることが必要だそうです。
(6) ×: 「学業や他の子との生活がうまくいっていない」という教師の気付きから疾患が明らかになることも多い。
(7) ×: ADHDの障害頻度は5%ですが、被虐待児では30%にのぼります。
(8) ×: 親の精神障害が子の虐待に寄与している例は少なくありません。
(9) ×: 産後1,2週~1,2ヶ月が発症時期。
(10) ×: 精神科既往歴・望ましくないライフイベント・周囲の支援不足・負荷の大きな育児(子の疾患など)・望まれない妊娠などがリスク。
※このパートを担当される先生の出題は、例年×が多いようです...
3 穴埋め問題 (1)(4)(5)は廃問 (2)メランコリー型の身体症状としてとくに重要なものは、食欲低下、体重減少、性欲減退および[ ]である。 (3)躁病に見られる思考障害のうち、いろいろな考えが次々に湧いてきて話題がポンポン飛んで話の脈絡がなくなること[ ]という。 |
解答 (2)早朝覚醒 (3)観念奔逸
4 ○×問題 (1)神経症は心因の関与が大きいと考えられる器質性の精神障害である。 (4)神経症の薬物療法では従来より用いられている抗不安剤の他抗うつ剤を積極的に用いるようになってきている。 (5)神経症では環境の影響が小さいものほど治療予後がいい。 (6)身体表現性障害は以前は神経症と分類されていたが、新しい診断基準で概念化されたものである。 (9)アセトアルデヒドの分解酵素を阻害する嫌酒薬の名前 |
2004年概説試験3番と類似
解答 (1)× 機能的精神身体障害 (4)○ (5)× 症状持続が短く、性格問題が小さく、環境因子が大きいと予後良。 (6)○? (9)シアナミドcyanamide
5 次の各文で正しいものには○を、間違っているものには×を記し、間違っているものにはその理由を記述せよ。なお○×で答えられないものには、題意に従って答えを解答せよ。 (1)思考途絶は、統合失調症でよく見られる症状のうちの一つである。 (2)思考抑制は、うつ病性の感情障害で見られる症状のうちの一つである。 (3)錯覚と幻覚は区別がつかず、一般の精神病性障害でよく見られる。 (4)人は精神科症候学によって、正常と異常に医学的に区分される。 (5)せん妄は、意識障害のひとつの表現型であり、精神運動性興奮を伴うこともあるが、伴わないこともある。 (6)せん妄は、術後せん妄、震戦せん妄、夜間せん妄、作業せん妄、等種々の疾患において起こり、種々の症候学的表現型を取る。 (7)統合失調症は、薬物療法は無効である。 (8)統合失調症は、精神療法は無効である。 (9)統合失調症の薬物療法の基本は、クロールプロマジン、ハロペリドールを中心とした古典的抗精神病薬の使用である。 (10)滅裂思考の重症状態は、言葉のサラダとも言われ、統合失調症の特有に見られる思考障害である。 (11)中毒性精神病では、統合失調症に比較して、幻覚においては幻視が見られることが多い。 (12)電気痙攣療法はその変法まで含めて、現在効果に関して否定的であり、全く行われていない療法である。 (13)うつ病で特徴的に見られる妄想は、微小妄想、貧困妄想、罪業妄想などである。 (14)連合弛緩は、躁病でよく見られる思考障害である。 (15)1950年代の精神科治療は、フロイトの影響もあり、精神分析学的治療が盛んであったが、現在は生物学的精神医学の分野が急速に進歩している時代である。 (16)うつ病では、過眠はきたさない。 (17)抗精神病薬投与中に、筋緊張更新、高熱、多量の発汗、振戦、CPKの上昇が見られた。その治療のため、抗精神病薬を増量した。 (18)悪性症候群に最もよく用いられる、治療剤は何か? (19)炭酸リチウムは、躁病、感情障害に用いられ効果がある薬剤として知られているが、副作用として中毒症状の出現が報告されている。そのため血中濃度を測定しながら投与することが望ましいが、中毒症状で最も注意しなければならないのが、急性肝細胞壊死である。 (20)抗うつ剤の効果出現は、比較的早くどれも約2、3日である。 (21)うつ病の治療で用いられる3環系抗うつ薬の副作用は、抗コリン作用が問題となる。たとえば、口渇、唾液分泌減少、起立性低血圧、視力調節障害、尿閉等がある。 (22)ICUシンドロームとは、治療に絶望し、離人症や恐怖症を起こすことである。 (23)慢性期の統合失調症においては、生活療法や社会復帰支援(レクリエーション療法、作業療法等)は、あまり効果がないため、それらを行うことや施設の設置はあまり意味がない。 (24)次のうち統合失調症に特徴的な症状はどれか? 1.妄想知覚 2.作為体験 3.情動失禁 4.両価性 5.常同言語 6.観念奔逸 7.思考察知 8.滞続言語 9.思考途絶 10.気分倒錯 (25)近年日本にも導入された、新しい抗精神病薬であるSDAやMARTAに属する薬剤は、古典的抗精神病薬のクロールプロマジンやハロペリドールと比較して副作用が少ないのは明らかだが、効果が少ないのであまり用いられない。 (26)漢方薬は、精神疾患には効かないので処方しないほうがよい。 (27) 漢方薬は精神医学的症候に対してのみ、対症的に用いるのが望ましい。 (28) 漢方薬を処方中に証が変化しても同じ薬を投与し続けるほうが良い。 (29) 狭義のリエゾン精神医学と狭義のコンサルテーション精神医学とは概念が異なる。 (30) 精神医学的薬物治療においては、単剤投与が原則である。 |
(1)~(25)は2004年概説試験9番と同じ。
解答 (26)× (27)× (28)× (29)○ (30)○
(27) ×: 漢方の基本的考えは"心身一如"であり、精神と身体両方の症候に働き掛ける。
(28) ×: 証に合った処方(随証療法)でないと、副作用(誤治)が起こりやすい。
(29) ○: リエゾンでは精神科医がチームに常駐し、トラブルを予防する意味があります。コンサルテーションの場合は何か問題が起こったときに精神科医が借り出されるということです。
(30) ○: (特に統合失調症の場合は) 原則単剤投与。単剤でダメならやむなく併用という例も現場ではまれでないようですが。
6 各文章の( )内に最も適切な語句を記入しなさい。 1)精神保健福祉法において、精神保健医の診察による入院が可能なのは医療保護入院、( )入院、応急入院である。 5)うつ病の睡眠障害の特徴は( )、中途覚醒、再入眠困難である。 6)うつ病の病前性格として、クレッチマーは循環気質を提唱したが、それに対して九州大学の下田光造は( )気質を提唱し、国際的にも注目された。 |
解答 1)措置 5)早朝覚醒 6)執着
7 ○×問題 (2)1970年代以降、日本を除く先進諸国では精神科病床数が著しく減少した。 (9)急性覚醒剤中毒の離脱時には抑うつ状態と食欲抗進になる。 |
解答 (2)○ (3)○? 現れる症状としては、不快気分のほかに疲労感、鮮明で不快な夢、不眠または過眠、食欲の亢進、精神運動制止または興奮、など。
8 次の神田橋篠治先生の文章を読んであとの問に答える。 (1)一般の医療現場でみられるプラシーボ効果について例を挙げて説明しなさい。 (2)治療計画について患者に説明する時に「プラシーボ効果」を高めるために医師がとるべき態度や振る舞いについて述べなさい。 |
解答例 (1)痛みを訴える患者に、「これは痛みに効くよ」と言って乳糖を与えると、痛みが無くなったり吐き気がでたりすることがある。このときプラシーボにあたるのが乳糖であり、プラシーボ効果にあたるのが鎮痛効果であり(治療効果)吐き気(副作用)である。
(2)望ましいプラシーボ効果がうまれるためには、良好な医師患者関係が欠かせない。患者の訴えを受容し、また共感し、確かな臨床能力を備えた上で臨むのが良い。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||