平成17年度 「精神医学」 卒業試験

 

1.精神保健福祉法において2人以上の精神保健指定医の診察が必要なのはどれか。

A.任意入院  B.自由入院  C.措置入院  D.応急入院  E.医療保護入院

(解答)C2004年卒試24番の類題) Aは患者本人の同意、Bは精神保健福祉法で規定されていません。Dは任意入院ができず、急速を要し、保護者の同意を得られない、精神保健指定医の診察など。Eは保護者の同意。

 

2.我が国の精神障害者の医療について正しいものはどれか。

(1)地域に受け入れ先があれば退院可能な入院患者が75千人もいるとされる。

(2)任意入院患者は半数に満たない。  (3)措置入院患者数は減少してきている。

(4)精神病床における平均在院日数は約180日である。

(5)入院患者の傷病別分類ではうつ病が最も多い。

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)D (1)○ (2)× (3)○ (4)○ (5)× 統合失調症が最多。

 

3.自殺について正しいのはどれか。

(1)現在、我が国の自殺による死亡者数は年間3万人を超えている。

(2)現在、過労による自殺は労働災害として認定されない。

(3)自殺の原因は経済的な理由によるものが多く、うつ病が関連していることは稀である。

(4)一旦未遂に終わった者が再び自殺を試みることは少ない。

(5)最近の自殺者は、50歳代の男性に多い。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)D2004年卒試29番の類題) (1)○ わが国の自殺死亡は、1998年に急増して年間死亡数31,755人と死亡統計始まって以来の高値を示し、以降の年次においても3万人を超える自殺死亡発生が継続している。 (2)× 「精神障害によって、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態」に陥ったものと推定し、原則として業務起因性が認められる。 (3)× (4)× (5)○

 

4.心理検査で投影法はどれか。

(1)Minnesota多面人格検査  (2)矢田部・ギルフォード(YG)性格検査

(3)絵画-欲求不満(PF)スタディ  (4)Rorschachテスト  (5)Hamiltonうつ病評価尺度

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3)  F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)H2003年卒試4番の類題) 人格検査は質問紙法、投影法の2つに分けられる。

(1)× MMPI。質問紙法で、人格特性を多面的に把握する。26領域から550問を試験する。 (2)× 質問紙法。質問数は120で所要時間は約20分、主に教育学の分野で用いられる。 (3)○ 欲求不満を引き起こさせるような2人の人物が描かれている漫画風の絵カードを用いて、欲求不満に対する反応を分析して診断させる。 (4)○ (5)× うつ病の評価尺度。人格検査ではない。

 

5.REM睡眠で見られるのはどれか。

A.筋トーヌス低下  B.夢中遊行  C.夜尿  D.紡錘波  E.心拍数減少

(解答)A  A○ REMは急速眼球運動rapid eye movementsの頭文字。身体が完全に休息する(骨格筋の緊張低下)一方で、脳はある程度活動している(非除波化)。金縛りです。 

 小児のnon-REM睡眠で見られる。   non-REM睡眠の第II期で見られる。 

 

6.病的な記銘障害はどれか。

(1)最近もの忘れがひどく、財布を置いた場所が思い出せない72歳の女性。

(2)最近1ヶ月の間に会合の約束を2度忘れた55歳の男性。

(3)財布の置き場所を忘れ、盗まれたと騒いで家族に連れてこられた74歳の女性。

(4)携帯電話の番号を1度では覚えられないと訴える65歳の男性。

(5)5分前に見せた鍵、時計、ペン、硬貨、タバコの品々のうち、ひとつしか思い出せない68歳の男性。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)E 記銘は体験したことを脳に刻み込むこと。つまり記銘障害とは前向健忘と同義。

病的か否かは、あるエピソードが記憶から丸ごと欠落しているかどうか、で判断。

(1)× 財布を置いたことは覚えている。良性健忘という。 (2)○ 約束したことを忘れているのでは・・・

(3)○ エピソードが丸ごと欠落し、物取られ妄想まで見られる。 (4)× (5)× 改定長谷川式簡易痴呆スケールの質問の1つですが、これだけで病的とはいえないかと。

 

7.Korsakoff症候群でみられるのはどれか。

(1)妄想  (2)作話  (3)意識障害  (4)書字障害  (5)記銘力障害

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)G Korsakoff症候群とは、チアミン(ビタミンB)欠乏によって、前向健忘、逆向健忘、見当識障害、作話、自己の病態に関する洞察欠如の五徴を呈する疾患。 (1)× (2)○ (3)× チアミン欠乏で、意識障害、眼球運動障害、失調性歩行の三徴を呈するのがWernicke脳症。 (4)× (5)○

 

 

8.季節性うつ病について正しいのはどれか。

(1)過眠がみられる。  (2)食欲が低下する。  (3)季節労働者に多い。

(4)高照度光線療法が有効である。  (5)北半球の緯度の高い地域では夏に発症しやすい。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)C 季節性うつ病は冬季にうつ病相期を呈する。過眠、過食を呈し、光療法が有効。

(1)○ (2)× 食欲は亢進 (3)× (4)○ (5)×

 

9.Alzheimer病でみられるのはどれか。

(1)人格障害  (2)着衣失行  (3)見当識障害  (4)Kernig徴候  (5)感情失禁

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)E (1)× 人格変化(無遠慮、頑固、自己中心性がひどい)はあるが、饒舌さ、感受性、人間の好き嫌いなど人格の芯に近い部分は変わらない。 (2)○ 中期から見られる。 (3)○ 初期から。 (4)× (5)× 感情失禁(情動失禁)とは、意志による感情の統制力の低下のために感情表現のコントロールが失われて激しい動揺を示すようになった状態。感情の興奮性自体は亢進していない。ささいな精神的刺激で容易に泣き出したり、激昂したり、笑ったりする。後になると自分の感情反応が過度であったことを自覚できるものである。間脳付近の病変によって起こり、脳動脈硬化症に特徴であるとされる。

 

 

10.認知症(痴呆)が最も急速に進行するのはどれか。

A.Pick病  B.Parkinson病  C.脳血管性認知症  D.Alzheimer病  E.Creutzfeldt-Jakob

(解答)E? A 人格変化、欲動的脱制止が主。 B 緩徐に進行。Alzheimer病と類似。 C 発症は急だが、階段状に増悪。 D 緩徐に進行。 E 急速に進行。数ヶ月以内に無言・無動状態に陥り、発症から平均1年半で死亡。

 

11.アルコール依存症の診断に有用なのはどれか。

(1)飲酒による人間関係のトラブルを繰り返す。  (2)飲酒すると楽天的になる。

(3)二日酔いにより仕事を休んだことがある。  (4)飲酒時の出来事を思い出せない。

(5)連続飲酒と泥酔・入眠のサイクルを数日間繰り返す。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)D アルコール依存症の診断は、薬物探索行動や離脱症状で容易に可能だが、問診が最も精度が高いスクリーニング検査であり、CAGE質問票が汎用されている。即ち、C(Cut down)飲酒を減らすべきと感じたことがあるか、A(Annoyed by criticism)自分の飲酒について批判を受け、煩わしいと思ったことがあるか、G(Guilty about drinking)自分の飲酒を罪深いと感じたことがあるか、E(Eye-opener drinks)朝起きてまず飲酒し、落ち着かせようとしたり二日酔いを紛らわそうとしたことがあるか。

(1)○ (2)× (3)× (4)× (5)○

 

12.次の組合せのうち正しいのはどれか。

(1)強迫性障害-反復行為  (2)統合失調症-思考途絶  (3)うつ病-入眠困難

(4)Ganser症候群-失語症  (5)パニック障害-広場恐怖

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)H (1)× 強迫性障害-強迫行為 (2)○ (3)○ 途中覚醒、早朝覚醒もある。 (4)× Ganser(ガンザー)症候群とは拘禁状態で生じる解離性障害で、的外れ応答、小児症のため痴呆に見える。(偽痴呆) (5)○ パニック発作を繰り返す予期不安広場恐怖

 

13.正しいのはどれか。

(1)各睡眠相は通常90分周期でくり返す。  (2)REM睡眠の脳波はθ波が主体である。

(3)12歳児の脳波ではθ波が出現することはない。

(4)夢中遊行症は男子よりも女子に多い。  (5)夜驚症は徐波睡眠段階に起こる。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4)  D (1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)D2004年卒試35番の類題) (1)○ (2)× REM睡眠:低振幅の不規則な速波

 Non-REM睡眠第1期:α(alpha)波消失・低振幅徐波(主にθ(theta))

 Non-REM睡眠第2期:紡錘波出現

 Non-REM睡眠第3期:高振幅のδ(delta)波が2050%出現

 Non-REM睡眠第4期:高振幅のδ(delta)波が75%以上出現

(3)× 生下時にはδ波のような徐波を示すが、45歳でα波がみられるようになり、1012歳でほぼ成人の脳波に近づく。 (4)× (5)○ 夜驚(やきょう)症とは、小児期に見られるかん高い叫び声や泣き声をもって、徐波睡眠から突然覚醒する病態。

 

14.薬物依存について誤っているものはどれか。

(1)法律上、麻薬にはコカインやLSDなどの薬物は含まれない。

(2)依存はベンゾジアゼピン系化合物では生じない。  (3)覚醒剤依存では次第に使用量が増える。

(4)市販の鎮咳薬や解熱鎮痛剤でも薬物依存が生じる。

(5)依存の形成には脳内のドパミン神経系が関与する。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)A2004年卒試37番の類題) (1)× コカイン、LSDは麻薬取締法の対象である。 (2)× 常用量依存がみられ、中止後に反跳性不眠と不安を呈する。 (3)○ (4)○ 鎮咳薬にコデインがあり、アヘン類の一つである。 (5)○

 

 

15.慢性C型肝炎に対するインターフェロン療法の副作用で最も注意すべきなのはどれか。

A.パニック発作  B.うつ状態  C.躁状態  D.認知症(痴呆)  E.幻覚妄想状態

(解答)B 重大な副作用として、間質性肺炎、ショック、重篤なうつ、急性腎不全、白血球減少・血小板減少・汎血球減少、自己免疫現象、心不全、糖尿病など。

 

 

16.神経性大食症にみられる症状はどれか。

(1)過活動  (2)妄想  (3)脱毛  (4)嘔吐  (5)強迫症状

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)J2004年卒試41番と同じ) (1)△ 神経性大食症の診断基準B.体重の増加をふせぐために不適切な代償行動(自己誘発性嘔吐。下剤、利尿剤、浣腸、その他の薬剤の誤った使用。絶食。過剰な運動)を繰り返す。 (2)× (3)× (4)○ (5)○ 神経性大食症で出現する精神症状として、やせ願望、強迫、ヒステリー性格、抑うつ、孤立などがある。

 

 

17.Alzheimer病においてSPECT検査で早期より異常を示す部位はどれか。

(1)前頭葉  (2)頭頂葉  (3)側頭葉  (4)後頭葉  (5)大脳基底核

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5)J (4),(5)

(解答)E2003年卒試21番と同じ) 頭頂葉・側頭葉

 

 

18.正しいのはどれか。

A.Alzheimer病は60歳以前には発症しない。 B.Pick病の初期症状は、物忘れが多い。

C.Parkinson病が認知症を合併することはない。 D.進行麻痺の病原体はprionである。

E.Leby小体型認知症の患者は抗精神病薬に過敏である。

(解答)E   人格変化が初期症状。   進行麻痺は梅毒の起炎菌スピロヘータ・トレポネーマでおこる脳炎(第4期梅毒) E○

 

19.注意欠陥/多動性障害について正しいのはどれか。

(1)多動、衝動や不注意が主な症状である。 (2)メチルフェニデートを治療薬として使用する場合がある。

(3)症状は家庭ではみられるが、学校では出現しない。

(4)知能が同年齢の子どもにくらべて遅れている。  (5)症状のいくつかは7歳以下であらわれる。

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)C (1)○ (2)○ (3)× 学校でもみられる。 (4)△ 知的能力に関しては、多くは境界線(IQ70)以上の知能指数を示す。しかし、全般的な知的能力に大きな遅れがなくとも、認知能力のアンバランスさを認めるものが多い。そのため、学童期になるといわゆる学習障害の状態像を示すことも少なくない。

(5)○ 注意力障害・多動・衝動性という中心症状は、成長とともに自然に改善する傾向がある。大きく動き回る多動性は810歳までに落ち着いてしまうことが多い。

 

20.次の組合せのうち正しいのはどれか。

(1)イミプラミン-モノアミン再取込みの阻害  (2)ハロペリドール-ドパミンD2受容体の遮断

(3)ジアゼパム-モノアミン代謝回転の促進  (4)リチウム-モノアミン酸化酵素活性の阻害

(5)フェニトイン-選択的セロトニン再取込みの阻害

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)A2004年卒試45番の類題) (1)○ イミプラミン:三環系抗うつ薬で、主にシナプス前部のセロトニン、ノルアドレナリンの再吸収を阻害する。 (2)○ ハロペリドール:抗精神病薬 (3)× ジアゼパム:抗てんかん薬。ベンゾジアゼピン誘導体で、ベンゾジアゼピン受容体に結合し、GABAの感受性を強める。 (4)× リチウム(炭酸リチウム):気分安定薬(抗躁病薬) 詳しい作用機序は不明。 (5)× フェニトイン:抗てんかん薬。Naチャネルを遮断する。

 

21.ベンゾジアゼピン系薬の臨床的薬理作用でないものはどれか。

A.抗不安作用  B.抗幻覚妄想作用  C.抗けいれん作用  D.催眠作用  E.筋弛緩作用

(解答)B 抗不安薬、睡眠薬として用いられる。

 

22.5歳の男児。友達と遊ばないことに気付いた両親に連れられて来院した。出生時、特に問題はなかった。しかし言語の発達の遅れがみられ、現在ある程度の言葉の理解はできるが、会話は成立しない。視線を合わせようとしない。特定のテレビ番組には興味を示すが、その他のことには全く無関心である。手足をばたばたさせたり体をぐるぐる回したりするのを好む。この患児でみられるのはどれか。

(1)知能障害  (2)人見知り  (3)協調運動の障害  (4)常同行為  (5)対人的相互性の障害

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)F? 自閉性障害(小児自閉症)の症例。自閉性障害は3歳までに発症し、以下の3項目を充たす。

・対人関係を築けない抱かれることを喜ばない、視線を避ける、人見知りがない。

・言葉をコミュニケーションの手段として用いない反響言語、代名詞反転、会話に発展しない。

・興味は限定され、いつも決まりきったワンパターンの活動儀式的な振る舞い、奇妙な運動を反復。

(1)○? 自閉症の患児は、良好な知能発達を示すケースから重度の精神遅滞を示すケースまで様々。約70%がIQ70未満の精神遅滞を示し、残り30%が正常な知能発達を遂げる。この症例では、言語の発達の遅れがあることから知能障害が認められる? (2)× (3)×? 患児は不器用で、「ボタンがはめられない、ファスナーが閉められない」などの症状を呈するが、物の握持や歩行などの粗大運動はそれほど障害されない。 (4)○ (5)○

 

23.25歳女性。動悸、頭痛、立ちくらみを主訴に来院した。7歳時両親が離婚し養女に出され、いじめられた。中学1年のとき家出をし、以後学校にはほとんど行かなかった。15歳で同棲、19歳で結婚し2児をもうけた。定職にはつかず、アルバイトを転々とした。夫の浮気が発覚し3年前に離婚。そのころより酒を飲むようになり体重が10kg減少した。その後今の夫と再婚、1児をもうけた。3ヶ月前、夫に借金があることがわかり、そのころより落ち込んでふさぎこむと寝てばかりで仕事も辞めてしまう。最近酒量も増え、いらだちが激しく子どもに八つ当たりしてしまう。この患者に認められないのはどれか。

A.うつ状態  B.適応障害  C.統合失調症  D.身体表現性障害  E.アルコール依存症

(解答)C A○ 「夫に借金があることがわかり、そのころより落ち込んでふさぎこむと寝てばかりで、仕事も辞めてしまう。」 B○ 「定職にはつかず、アルバイトを転々とした」  D○ 「夫の浮気が発覚し3年前に離婚。そのころより酒を飲むようになり体重が10kg減少した。」 E○ 「最近酒量も増え、いらだちが激しく子どもに八つ当たりしてしまう。」

 

24.67歳の男性。夜に大声を上げながら部屋を歩き回ることを主訴に来院した。半年程前からほぼ毎晩、就寝後1時問ほどで、叫び声を上げながら部屋を歩き回るようになった。家人が制止すると我に返り眠りにつくが、またしばらくすると騒ぎ出す。日中騒ぐことはない。身長166cm、体重56kg。静止時振戦が軽度あるが、日常生活に支障を来すほどではない。改訂長谷川式簡易知的機能評価スケール24/30点。血液検査、生化学検査、脳単純MRI、脳波に異常なし。夜間に起こる症状として最も考えられるのはどれか。

A.睡眠時無呼吸  B.REM睡眠行動障害  C.側頭葉てんかん  D.夜間せん妄  E.振戦せん妄

(解答)B  B○ REM睡眠時に出現する異常行動。何らかの理由で、REM睡眠時の骨格筋の弛緩が不十分であるため、夢の中でとるべき行動が現実化してしまう。高齢者、特に男性に多く、せん妄と紛らわしい病態を呈するが、容易に覚醒させることができる点が異なる。  好発は5~10歳くらいで、しばしばてんかんの家族歴を持つ。  せん妄は短期間に発症し、軽い意識混濁、強い意識狭窄で環境認識が困難になった状態。見当識障害、即時および近時記憶障害、幻覚などの症状が現れ、これらは1日のうちでも波があり、特に夕方から夜間前半にかけて増悪する傾向がある。(夜間せん妄)  アルコール依存症における後期離脱症状。最終飲酒後2~3日で生じ、4~5日目にピークを迎えるもので、アルコール離脱せん妄とも呼ばれる。

 

 

25.10歳の男児。奇妙な癖のため勉強ができないことを主訴として母親に連れられて来院した。出生時は異常は認められなかった。5歳時、マリンバ演奏時に肩をあげる癖で気付かれた。その後、まばたきをする、頭を振り回す、鼻をつり上げる、咳をする、体を震わせる、ハッハッ、ウッウッと声を出す、「死ね、死ね」と言うなどの多彩な症状が出現するようになった。この患児について正しいのはどれか。

A.強迫的な母親の養育態度に原因がある。  B.幻覚妄想を伴うことが多い。

C.てんかん性の脳波異常が高率にみられる。

D.10歳代後半になるにつれて症状が軽快する。  E.抗うつ薬が有効なことが多い。

(解答)C トゥレット障害の症例。多彩な運動性チックと1つまたは複数の音声チックが1日中頻繁に生じ、1年以上持続する病態。(チックとは、意思に反して突発的に生じる急速な運動や発声のこと)これらは同時に出現するとは限らず、小児期の初期に運動性チックで始まり、数年遅れて音声チックが加わるパターンが多い。経過とともに音声チックはしばしば汚言を伴うようになる。本症の原因は不明だが、大半に非特異的な脳波異常が見出されることから、何らかの器質的な異常が示唆される。家族内集積傾向あり。治療にはハロペリドール(=抗精神病薬)が用いられる。大半が寛解するが、成年になっても服薬中止によって再発することが多く、その経過は極めて難治性である。   C○  

 

 

26.19歳の男性。奇妙な言動がみられるため、両親に伴われて来院した。3ヶ月前から「皆が自分の悪口を言っている」「ご飯に毒が入っている」などと訴え、大学は休んでいる。精神保健指定医が診察を行い、統合失調症の疑いで入院の必要があると判断したが、「自分は病気ではない」と強く入院を拒否している。両親は入院を希望している。正しいものどれか。

A.警察に通報し措置入院させる。  B.両親の同意により医療保護入院させる。

C.両親の同意により任意入院させる。  D.精神保健福祉センターに通報し応急入院させる。

E.医療保護入院させて入院の告知をしないでおく。

(解答)B 患者の同意が得られない場合、保護者の同意が得られるのであれば、医療保護入院が最適と考えられる。

 

 

27.22歳の女性。幻聴と被害・関係妄想を伴う興奮状態となり、両親に連れられて夜間の精神科救急外来を受診した。対応した医師(精神保健指定医でない)として適切な対応はどれか。

A.脳波を測定し意識レベルを判定する。  B.精神保健福祉センターへ通報する。

C.両親の同意を得て入院させる。  D.直ちに隔離室(保護室)へ入れ行動制限を行う。

E.精神保健指定医に診察を依頼する。

(解答)E? 

 

 

 

 

28.52歳の男性。全身倦怠感と気分の不快を主訴として、妻に伴われて来院した。部長に昇進した直後から疲労感が強く、夜眠れず、食欲も低下した。仕事に集中できず、続けてやっていける自信がない。責任の重さが負担となり、将来を悲観している。特に朝は気分がすぐれず、夜は気持ちが比較的楽になる。強い自責の念が認められる。正しいのはどれか。

(1)病気であることを伝え、休養に入らせる。 (2)脳の画像診断を直ちに行う必要がある。

(3)電気けいれん療法が第一選択である。  (4)自殺の危険に対して配慮する。  (5)頑張るよう励ます。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)C うつ病の症例。 (1)○ うつ病に罹患していることおよびその治療には休養がいかに必要かを十分に説明し、十分な休養をとらせることが必要。その際、重大事項の決定は延期させること。 (2)× (3)× 休養が第一 (4)○ 自殺をしないと約束させること。 (5)× うつ病患者を励ますのは禁忌。患者の苦痛は「頑張りたいけど頑張ることができない」点にある。微小妄想に拍車がかかり、自殺に追い込む危険性がある。また、温泉、カラオケなどの気晴らしも不要。周囲の喧噪によって微小妄想が強まるだけ。

 

 

次の文を読み、設問に答えよ。

46歳の男性。仕事の能率が悪く、叱責しても無頓着なため家族に連れられて来院した。

現病歴=1年半前の脳外科手術後、1年間の療養生活を経て家業の小売店での軽作業に復帰した。しかし、以前より動作が緩慢で同じことを何度も繰り返すため、日常の動作にも非常に時間がかかる。それを注意しても無頓着で一向に改まらない。一日中自宅で何をするでもなく無為に過ごすことも多いという。食欲と睡眠は良好である。

既往歴:1年半前、早朝突然意識を失って倒れた。前交通動脈瘤破裂によるクモ膜下出血と診断され、クリッピング手術が施行された。術後1ヶ月で呼びかけに反応するようになり、半年後には小説を読んだり、自立歩行が可能となったため退院した。術後から抗てんかん薬を服用しており、けいれん発作は起こっていない。

現症:面接時、身なりは整っており、表情は穏やかである。日常動作は間違いなく行うことができ、会話にも問題を感じさせない。

29.この患者にみられる症状はどれか。

(1)発動性低下  (2)抑うつ状態  (3)常同行為  (4)抑制欠如  (5)高等感情欠如

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)B 前頭葉症候群の症例。前頭葉連合野の遂行機能障害により、発動性の低下と人格変化が見られる。 (1)○ 「一日中自宅で何をするでもなく無為に過ごすことも多いという。」(2)× (3)○ 「動作が緩慢で同じことを何度も繰り返すため、日常の動作にも非常に時間がかかる。」 (4)× (5)×

 

 

30.この患者の病変部位はどこか。

A.視床  B.前頭葉  C.頭頂葉  D.側頭葉  E.後頭葉

(解答)B

 

 

31.この患者について誤っているものはどれか。

(1)診断のために頭部MRIを撮影する。  (2)高次脳機能障害である。

(3)精神障害者福祉手帳の申請を行う。 (4)抗うつ薬投与の効果は乏しい。 (5)精神科病院に入院させる。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)J (1)○ (2)○ (3)○ 診断書があれば、精神障害者福祉手帳の申請が可能です。 (4)× 抗うつ薬で、意欲亢進・気分改善などが見込めるかと。 (5)×

 

32.42歳の男性。競馬の騎手。20年来の大酒家。3日前、落馬により下腿骨骨折で緊急手術を受けた。術後、不眠を訴えていたが、本日になって深夜急に起き上がり点滴を自己抜去しようとする。看護師が制止すると「助けてくれ」と言って振り払おうとする。発汗著明であり、自分の状態がわかっていないようで、視線も定まっていない。適切な対応はどれか。

(1)警察への通報  (2)静かで暗い部屋に移す

(3)ビタミンB投与  (4)塩酸モルヒネ投与  (5)ジアゼパム投与

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)I アルコール離脱せん妄(振戦せん妄)の症例。治療はジアゼパムを用いた置換漸減法を行う。また、Wernicke脳症の予防にチアミン(ビタミンB)を含む総合ビタミン剤の点滴も不可欠。

 

33.23歳の女性。熟睡できないことを主訴に来院した。2ヶ月前、運転していた自動車が対向車と正面衝突し、同乗していた友人が目の前で死亡した。その後、後頭部を強打したが精密検査で異常はなく、その後の日常生活にも支障はなかった。1ヶ月半前から、夢の中に事故の瞬間の情景が毎日のように再現され、恐怖感で目が覚めるようになった。最近は苦しくて気分が落ち込み、ささいな物音にびくつき、怒りっぽく、引きこもりがちな生活を送っている。この患者にみられるのはどれか。

(1)強迫症状  (2)フラッシュバック  (3)過覚醒  (4)幻覚妄想  (5)転換ヒステリー

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)E PTSD(外傷後ストレス障害)の症例。本症は、心的外傷後1.56ヶ月を経て発症し、外傷体験が侵入的にフラッシュバックし、悪夢にうなされる。過覚醒、不安、抑うつ、社会的引きこもりなどの症状が現れ、外傷体験を想起させる場面を頑なに回避する。 (1)× (2)○ (3)○ (4)× (5)×

 

次の文章を読んで、下記の設問に答よ。

38歳の女性。6ヶ月前から誘因がないにもかかわらず、発作的に呼吸が苦しくなり、動悸がして「このままでは死ぬのではないか」という恐怖感におそわれるようになった。その都度、救急車で病院に搬送されることが頻繁となった。「また発作が起こるのではないかと不安で、ひとりで外出もできない」と訴えて来院した。診察時の態度は緊張はしているが、おおむね自然であり、話の内容もまとまっている。発作時の記憶もよく保たれている。身体所見に異常を認めない。

34.この疾患の発作時にみられる症状はどれか。

(1)広場恐怖  (2)社会恐怖  (3)発狂の恐怖  (4)死の恐怖  (5)不潔恐怖

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)J2004年卒試1番と同じ)

 

35.この疾患の治療に有効なのはどれか。

(1)認知行動療法 (2)抗不安薬 (3)選択的セロトニン再取込み阻害薬 (4)抗精神病薬 (5)精神分析療法

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)A2004年卒試2番と同じ)

 

36.この疾患について正しい文章はどれか。

(1)1980年のDSM-III発表以前は、不安神経症と呼ばれていた疾患の一亜型である。

(2)うつ病を合併することは稀である。  (3)薬物療法で一旦治癒すると再発することは少ない。

(4)全般性不安障害とともに強い不安によって特徴付けられる。

(5)救急医療では最も遭遇する機会の多い精神障害である。

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)F2004年卒試3番と同じ)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。27歳の男性、物事を何度も確認しないと安心できないと訴えて来院した。高校時代に字を書いても計算しても間違いの有無を調べ続けた。その後対象は拡大して鍵やガス栓の確認を何度もするようになった。そのため、何をするにも時間がかかり、本人も疲れ、職場も毎日遅刻するようになった。治療を強く希望している。

37.この疾患で正しいのはどれか。

(1)患者は自分の行動を非合理的と感じている。  (2)不潔恐怖と同じく恐怖症性障害に属する。

(3)確認を止めようと気にするよりも、このまま続けたほうが良い。

(4)うつ病に合併することは稀である。 (5)もともと性格的に完全主義の傾向が認められることが多い。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3)  F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)D2004年卒試6番と同じ)

 

38.適切でない治療はどれか。

A.行動療法  B.認知療法  C.森田療法  D.抗うつ薬投与  E.電気けいれん療法

(解答)E2004年卒試7番と同じ)

 

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

56歳の男性、頑固な不眠と日中の眠気を主訴に、妻に伴われて受診した。2年前から熟眠感が失われたと訴え、日中に疲労を感じよく居眠りするようになった。職場でも仕事の能率低下に気付かれている。妻によると、2年前から睡眠中のいびきがひどく、時々呼吸が止まった状態になるという。身長160cm、体重90kg、咽頭に異常を認めない。抑うつ気分、不安はない。

39.この疾患の診断に最も有用な検査はどれか。

A.ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)  B.覚醒脳波検査

C.内田-クレッペリン作業能力検査  D.ポリソムノグラフィー  E.甲状腺機能検査

(解答)D2004年卒試8番と同じ)

 

40.この疾患にまず行うべき治療法はどれか。

A.イミプラミン投与  B.抗不安薬投与  C.メチルフェニデート投与

D.経鼻的持続陽圧呼吸  E.軟口蓋の外科手術

(解答)D2004年卒試9番と同じ)

 

41.22歳の男性、不眠を訴えて来院。就職したころから、夜寝つけず、明け方近くにやっと寝つき、昼過ぎに起きるようになった。そのため、遅刻や欠勤が続いている。母親には協力してもらい、朝起こしてもらうが眠気が強く、仕事に集中できない。職場では、意志が弱いとよく注意される。性格は真面目で努力家である。適切な対応はどれか。

(1)上司による厳しい指導  (2)抗うつ薬  (3)ハロペリドール  (4)睡眠導入薬  (5)高照度光療法

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)J2004年卒試15番と同じ)

 

42.35歳の女性。昼間の眠気を訴えて来院した。4年前に次女を出産してから夜間の不眠と昼間の眠気とを自覚するようになった。1年前から症状が増悪し、会話中でも眠ってしまうことがたびたび出現するようになった。また、驚いたときなどに突然倒れ込んでしまうこともあった。夜は悪夢が多く、「寝入りばなに黒い猫が出てきたりして、怖くて眠れない」と訴える。この疾患でみられるのはどれか。

(1)精神運動発作  (2)睡眠中の著明な血圧変動  (3)睡眠麻痺  (4)情動脱力発作  (5)入眠時幻覚

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)J2004年卒試18番と同じ)

 

43.32歳の男性、けいれん発作で来院した。23歳時、幻覚、妄想、および興奮で精神科に6ヶ月入院し、以後抗精神病薬を飲み続けていた。2ヶ月前より大量の水分を摂取している。診察時、けいれんはない。血清生化学所見:Na125mEq/L, K4.0mEq/L, Cl90mEq/L, 血清浸透圧250mOsm/L(基準275-288)、尿浸透圧100mOsm/L(基準50-1,300)この疾患について正しいものはどれか。

(1)水中毒である。  (2)抗精神病薬の副作用のひとつである。  (3)水を反復して飲む強迫症状である。

(4)進行しても意識障害を起こすことはない。  (5)抗利尿ホルモンの分泌異常を伴うことがある。

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

(解答)C2004年卒試20番と同じ)

 

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

2002年、日本精神神経学会は「精神分裂病」という呼称を「統合失調症」に変更した。そもそも精神分裂病という呼称は、()が提唱したschizophreniaという病名を1930年代に直訳したものであるが、この疾患の理解や治療が当時と現在とでは大きく変わってきたことが変更された理由の一つである。また精神分裂病という呼称が、あたかも人格異常者のような誤ったイメージを与えるため、精神障害者に対する偏見の背景をなすものとして、長年、患者家族団体が反対してきたのであった。実際、統合失調症という呼称は患者家族団体の支持を得られたものである。

44.()内に適切な人名はどれか。

Aフロイト  Bユング  Cクレッペリン  Dブロイラー  Eシュナイダー

(解答)Dブロイラー

 

45.統合失調症の原語であるschizophreniaという病名の意味と最も関連する症状はどれか。

A.自閉  B.感情の平板化  C.観念連合の障害  D.自我障害  E.陽性症状

(解答)C 原語の「schizo 分裂」は、「太陽--暑い」などの言語連想が分裂したという意味であり、schizophrenia(スキゾフレニア)は「連想の分裂を特徴とする精神病」という意味である。選択肢の症状はどれも統合失調症に認めらるが、思考過程の異常(思考滅裂、連合弛緩、言葉のサラダ)を指すCが適当。

 

46.下線部分を正しく説明する文章はどれか。

(1)統合失調症は慢性に進行する変性疾患であり、大部分の患者の予後は不良である。

(2)人格変化を来す疾患である。  (3)高度な認知的機能の連合が障害される。

(4)地域社会における生活支援が重視される。

(5)統合失調症の患者(当事者)自身による社会的活動も盛んになりつつある。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3)  F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)H?(2004年卒試23番の類題) (1)× 発症後10年の経過は概ね4等分される。1/4は完全回復、1/4はかなり改善(比較的自立)、1/4はある程度改善(自立は困難)、1/4はほとんど改善せず、欠陥状態、荒廃状態となる。また、30年後の経過は10年後の状態よりも良好。(ある程度改善かなり改善へ) (2)× (3)○ (4)×? (5)○? 薬物治療などにより、患者の2/3は社会復帰している。

 

47.慢性期の統合失調症患者の社会復帰を促進するものはどれか

(1)成年後見人制度  (2)福祉ホーム  (3)援護寮  (4)授産施設  (5)ショートステイ

A(1),(2),(3)  B(1),(2),(4)  C(1),(2),(5)  D(1),(3),(4)  E(1),(3),(5)

F(1),(4),(5)  G(2),(3),(4)  H(2),(3),(5)  I(2),(4),(5)  J(3),(4),(5)

 

(解答)G2004年卒試33番の類題) (1)× 民法で定められている。被補助者には補助人がつけられ、当事者が申し立てた特定の行為には補助人の同意が必要である。同様に被保佐人には保佐人、成年被後見人には成年後見人がつけられる。成年後見人は成年被後見人の行為の全てを取り消すことができる。 (2)○ 生活の場 (3)○ 生活訓練施設 (4)○ 就労訓練施設、作業所。 (5)× 精神障害者の介護者が、疾病等の理由で家庭での介護が困難になった場合に、生活訓練施設に併設するショートステイ施設に一時的に入所できる制度。

 

48.心臓の冠動脈バイパス手術を受けた58歳の男性。術後2日目より集中治療室にて理由もなくおびえ、落ち着かず、騒ぎはじめた。適切な対応はどれか。

(1)頭部MRI検査を行い脳塞栓の部位を調べる。  (2)家族に認知症を発症した可能性が高いと告げる。

(3)抗不安薬を投与して不安緊張の軽減に努める。

(4)夜間の睡眠の確保に努める。  (5)抗精神病薬を投与して鎮静する。

A(1),(2) B(1),(3) C(1),(4) D(1),(5) E(2),(3)  F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)J (2004年度卒試49番と同じ)

 

49.14歳の女性。無月経を主訴に来院した。8ヶ月前から自分は太っていると思うようになり、食事制限や過度の運動を行うようになった。初経は12歳。4ヶ月前より月経は停止している。身長151cm、体重34kg体温35.8度。脈拍44/分、整。血圧84/54mmHg。血液所見:赤血球:424万、Hb:13.2g/dl、白血球:2600、血小板:21万。血清生化学所見:総蛋白:5.9g/dl、アルブミン:3.7g/dl、総コレステロール:239mg/dlAST:114単位(基準40以下)ALT:294単位(基準35以下)Na:142mEq/lK:4.0mEq/lCl:106mEq/lT4:4.0μg/dl(基準5-12)。この疾患について正しいのはどれか。

(1)下痢  (2)知能低下  (3)活動性亢進  (4)夜間高体温  (5)ボディーイメージの障害

A(1),(2) B(1),(3) C(1)(4) D(1),(5) E(2),(3) F(2),(4) G(2),(5) H(3),(4) I(3),(5) J(4),(5)

(解答)I 神経性食欲不振症の症例。若い女性に好発し、るいそう(脂肪組織や筋の減少により,標準体重の-10%以下に体重が減少した状態)で身体は衰え、無月経、低代謝状態。(乳房の萎縮や腋毛・恥毛の脱落はない)行動は活発で、やせていても太っていると思うボディイメージ障害がある。 (1)× (2)× (3)○ (4)× (5)○

 

50.65歳の女性。もの忘れがひどいことを主訴に家族に伴われて来院した。自分の置いた財布の場所を忘れて、「どろぼうが家に入り、財布を盗んだ。」と言ったり、夕方になると、「ここは自分の家ではない。もう家に帰らなければ。」と言って家を出て行こうとする。家族によると最近はわがままで短気になったという。この患者で障害されていないのはどれか。

A.性格  B.記憶  C.思考  D.知覚  E.見当識

(解答)D アルツハイマー病の症例。

 

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