平成16年度 「侵襲医学」 概説試験

 

問1.術前評価(麻酔前評価)の要点を記せ。

2005年度概説 1 参照。

 

問2.モルヒネが効かない癌性疼痛の例を挙げ、その治療法を記せ。

 2003年度卒試 2-(1) 参照。

 

問3.以下の各小問についてa~eより適当なものを1つ選び、解答欄に記せ。

1】不適切な組み合わせはどれか
a.プリーストリPriestley-酸素        b.モートンMorton-エーテル
c.ビクトリアVictoria女王-クロロホルム    d.華岡青洲-笑気(亜酸化窒素)
e.オバートン・マイヤーOverton-Meyer-オリーブ油

(答)d          授業プリント(麻酔法ならびに全身麻酔)参照。

プリーストリは1774年に酸素を、NO2を発見した。、後に笑気と名付けられる。

モートンはエーテルを用いて無痛での抜歯に成功。 

ビクトリア女王のお産で、クロロホルムが用いられた。華岡青洲は、痛散湯により乳癌手術。

オバートンは、麻酔薬の作用強度はその薬物のオリーブ油への溶解度に比例するという説を提唱。

 

2】米国麻酔学会の全身状態分類(ASA-PS,American Society of Anesthesiologists-Physical Status)について誤っているのはどれか。
a.6段階に分類されている。         b.周術期の偶発症発生率と相関する。
c.周術期に発生する偶発症の重篤度と相関する。

d.周術期の偶発症による予後と相関する。   e.値が少ない程、重症である。

(答)e  2005年度概説 3-1 参照。

 

3】吸入麻酔の導入について誤っているのはどれか。
a.肺胞換気量が多いほど導入が速やかである。

b.機能的残気量が多いほど導入が遅れる。 c.心拍出量が多いほど導入が速やかである。

d.血液/ガス分配係数が小さいほど導入が速やかである。

e.油/ガス溶解係数が大きいほど覚醒が遅れる。

(答)c          授業プリント(麻酔法・全身麻酔,P6)参照。
  肺胞気と脳の分圧が平衡に達したとき「導入」が完了する。
  心拍出量が増えると導入は遅くなる=脳血流量は一定に保たれるので、麻酔薬の脳以外の組織        

への移行が増えるため。

 

4】チアミラール(Ultra-Short acting barbiturate)について正しいのはどれか。
a.覚醒が速いのは肝での代謝が速やかに行なわれるためである。
b.導入量で咽頭反射は著明に抑制される。       c.呼吸停止を起こしにくい。
d.交感神経刺激作用のため低血圧をきたしにくい。
e.血中濃度の上昇により脳波の平坦化を認める。

(答)e

a.×:脳からの再分布が速いから。  c.×:呼吸中枢を抑制し、上気道狭窄も起こす。

b.×:副交感神経刺激による咽頭攣縮を起こしやすくなる。
d.×:迷走神経を起こしやすくなり、低血圧となりやすい。

5】全身麻酔中あるいは手術中の機能的残気量低下の原因として正しいのはどれか。
a.呼気終末陽圧換気  b.筋弛緩  c.過剰輸液  d.分泌物貯留  e.肺塞栓

(答)?(機能的残気量「増加」の誤りでしょうか?)
(解説)
 a.×:呼気終末陽圧換気(PEEP)によってFRCは増加。
 b.:筋弛緩状態にある仰臥位患者では、横隔膜の緊張が全く失われているために、腹部臓    

器の重みにより横隔膜、特にその背側は頭側へと変位しFRCは減少。
, e.:非塞栓部位での肺水腫を引き起こす。また死腔の著しい増加は低換気を招く。

 

6】身体各部位と皮膚知覚帯dermatomeの組み合わせについて正しいのはどれか。
a.頸神経   b.乳頭胸神経  c.剣状突起先端部胸神経
d.10胸神経    e.腰神経

)d

a.×:C7   b.×:T4   c.×:T6   d.   e.×:S1

 

7】脳脊髄液について正しいのはどれか。
a.正常脳脊髄液の比重は37±1.000±0.003である。

b.脊椎管内には2035ml存在する。   c.側臥位での正常圧は100150cmH2Oである。

d.弱酸性である。    e.クモ膜の絨毛で分泌され、脈絡叢で再吸収される。

(答)b          授業プリント(局所麻酔,P1)参照。
a.×1.006±0.003 b.  c.×80150mmHg  d.×:弱アルカリ性(pH7.357.60)、e.×:脈絡叢で分泌され、クモ膜の絨毛で再吸収される。

 

8】硬膜外麻酔について誤っているのはどれか。
a.上肢の手術に使用できる。    b.硬膜外腔への到達は抵抗喪失法で判定できる。
c.硬膜外腔へは仙骨裂孔からも穿刺到達できる。

d.投与した局所麻酔薬は脳脊髄液中に移行する。 e.局所麻酔薬中毒は起こりにくい。

(答)e     授業プリント(局所麻酔)参照。
局所麻酔薬中毒は起こりやすい。

 

9】脊髄くも膜下麻酔について正しいのはどれか。
a.脳内に占拠性病変があれば行わない。   b.穿刺はTh12~L1の棘突起間で行う。
c.触覚は温覚よりも早く消失する。       d.分節麻酔が容易である。
e.血圧低下にはジアゼパムを静脈内投与する。

(答)a     授業プリント(局所麻酔)参照。
 a.:穿刺針で硬膜に穴があいた際、脳脊髄腋の漏出が起こり頭蓋内圧と脊髄腔の圧差が生    

じるため脳ヘルニアを起こす可能性があるので、脳圧亢進の場合は禁忌。
b.×:脊髄にあたらないように、腸骨棘を目標として、L4あるいはL4~L5に穿刺する。c.×:神経線維の遮断は、交圧の順。

.×:分節麻酔が可能なのは硬膜外麻酔。   .×:まず硝酸アトロピンの投与が原則。

 

10】悪性高熱について正しいのはどれか。
a.抗精神病薬を突然中断した場合に発症しやすい。  b.特効薬はダントロレンである。
c.プロポフォール投与で発生しやすい。 d.中枢ドパミン神経系の機能不全が原因である。
e.体温上昇が早期の兆候である。

(答)b     授業プリント(麻酔法・全身麻酔)参照。

  原因は、骨格筋の筋小胞体にあるカルシウム放出チャネル(リアノジン結合チャネル)の遺伝 

学的異常ではないかといわれている。

 

11】循環について正しいのはどれか。
a.骨格筋の静脈血管は交感神経活動に敏感に反応する。
b.左心室収縮末期容積は前負荷に規定される。
c.動脈圧は心拍出量と全末梢血管抵抗に規定される。
d.心拍出量は左心室拡張末期容積と心拍数の積である。
e.負荷血液量から無負荷血液量を引いたものが循環血液量である。

(答)c     授業プリント(侵襲と循環)参照。

a.× :後負荷に規定される。c.:心拍出量=1回拍出量×心拍数  e.×

 

12】中心静脈圧上昇の原因として適切でないのはどれか。
a.トレンデレンブルグTrendelenburg体位   b.心タンポナーデ

c.外出血   d.呼気終末陽圧換気   e.肺塞栓

(答)c      外出血では中心静脈圧が下がる。

 

13】心拍数を減少させる薬剤はどれか。
a.イソプロテレノール b.アドレナリン c.プロプラノロール d.ベラパミル e.エフェドリン

(答)c, (授業プリントにはベラパミルが記載)  2005年度概説 3-13参照。

 

14】循環のモニターについて正しいのはどれか。
a.肺動脈楔入圧は右心不全で上昇する。
b.中心静脈圧測定用カテーテルをスワンーガンツSwan-Ganzカテーテルと言う。
c.心拍出量が増加すると混合静脈血酸素飽和度は低下する。
d.酸素消費量はHenderson-Hasselbalchの原理によって算出される。
e.貫壁性の心筋虚血は心電図上虚血部位におけるST上昇として表われる。

(答)e  2005年度概説 3-12 参照。

b.×Swan-Ganzカテーテルは中心静脈圧測定用だけではなく、他にも肺動脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出量、混合静脈血酸素飽和度を測定できる。

15】体液ならびにその調節について正しいのはどれか。
a.浸透圧受容器は延髄にある。  b.アルブミンの60%は血管内に分布している。
c.生体内水分の1/3は細胞外に存在する。
d.ギブス-ドナンGibbs-Donnan効果には蛋白質の存在が必要である。
e.アルドステロンはNa再吸収を抑制する。
 この問題は全員正解になりました。答えが複数あるから?

(答)c, d     授業プリント(侵襲と体液・代謝、入田先生,P5)参照。
a.×:視床下部にある。b.×:血管内は40%。
c.:全水分量は体重の約60%。また細胞外腋は体重の20%。
d.Gibbs-Donnan効果:蛋白質の存在は電解質粒子単独の場合に比べてCOP(膠質浸透 圧)を50%増強。e.×Na再吸収を促進する。

 

 

16】高カリウム血症の治療とし適切なのはどれか。
a.β遮断薬静脈内投与   b.マンニトール(0.25gkg体重)静脈内投与
c.過換気   d.3号液静脈内点滴投与   e.スピロノラクトン内服

(答)c  2005年度概説 3-17 参照。

 

17】アセタゾラミドについて正しいのはどれか。
a.炭酸脱水素酵素の活性を増加させる。   b.脳内の二酸化炭素の量は増加する。
c.重炭酸イオンの尿中排泄を減少させる。 d.肺気腫には禁忌である。 e.眼圧は上昇する。

(答)b  2005年度概説 3-18 参照。

 c.×:重炭酸イオンの排出は増加する。

 

18】内頸静脈血酸素飽和度を増加させる因子として不適切なのはどれか。
a.赤血球輸血   b.分時換気量増加   c.脳酸素消費量低下

d.吸入気酸素濃度増加   e.低体温

(答)b     授業プリント(周術期脳酸素受給バランス,P7)参照。
 内頸静脈血酸素飽和度(SjO2)を増加させる因子
 ・ Hb増加aは 脳酸素消費量(CMRO2)低下cとeは
 ・ 動脈血酸素飽和度(SaO2)増加・吸入器酸素濃度(FiO2)増加dは
 ・ 脳血流量(CBF)増加・PaCO2増加bは×

 

19】脳腫瘍摘出のために開頭したところ、硬膜の膨隆が認められた。対処として正しいのはどれか。
a.麻酔法をプロポフォールとフェンタニルを用いた全静脈麻酔から、亜酸化窒素-酸素-セボフルランを用いた吸入麻酔に変更した。
b.PaCO230mmHgだったので、人工呼吸の回数を減らした。
c.逆トレンデレンブルグTrendelenburg体位だったので、水平仰臥位にした。
d.マンニトール(0.25gkg体重)の静脈内点滴投与を開始した。
e.乳酸リンゲル液の投与速度を50ml/時から500ml/時に増加させた。

(答)d  2005年度概説 3-19 参照。

 

20】脳虚血について正しいのはどれか。
a.空気塞栓にともなって発生することがある。  b.バルビツレートは局所脳虚血を増悪させる。
c.シバリング(ふるえ)を防ぐために高体温で治療する。
d.血糖を高めに維持して脳へのブドウ糖供給を促進する。
e.極早期再灌流療法の有効性は確認されていない。

(答)a     授業プリント(周術期脳酸素受給バランス,P79)参照。
  a.○, b×:局所脳虚血による組織障害を軽減する。ただし、全脳完全虚血には無効。
  c.×:高体温は組織障害の増悪因子。d.×:全脳虚血では糖負荷/高血糖は虚血後脳障害 

を増悪する。e.×:脳梗塞には極早期灌流療法が推奨されている。

 

21】上行大動脈遮断を伴う冠動脈バイパス術後の脳梗塞は塞栓に起因すると考えられている。上行大動脈の動脈硬化病変の検索に最も有効なのはどれか。
a.経食道心エコー検査   b.胸部X線写真   c.心臓カテーテル検査
d.胸部造影CT   e.術野で行う上行大動脈のエコー検査

(答)d  2005年度概説 3-21】参照。

 

 

22】妊婦について正しいのはどれか。
a.機能的残気量が増加する。  b.硬膜外麻酔における局所麻酔薬の必要量は増加する。
c.誤嚥性肺炎をおこしやすい。 d.陣痛による過呼吸は胎児への酸素供給を促進する。
e.分時換気量は減少する。

(答)c 2005年度概説 3-23 参照。     授業プリント(産科麻酔,P1,2)参照。
  a.×:減少 d.×:胎児低酸素血症の原因となる。

e.×:脳梗塞には極早期灌流療法が推奨されている。

 

23】新生児よりも成人において高値を示すのはどれか。
a.体重当りの機能的残気量   b.単位時間-体重当りの酸素消費量
c.気道抵抗   d.体重当りの肺胞換気量   e.死腔換気率

(答)a  2005年度概説 3-24 参照

 

24】新生児について正しいのはどれか。
a.低酸素血症で頻脈になりやすい。     b.ヘモグロビンの酸素結合能は低い。
c.低酸素血症は動脈管再開通の危険因子である。   d.P50は次第に低下する。
e.心電図上、左室優位である。

(答)e
a.×:副交感神経優位のため、低酸素血症によって容易に徐脈をきたす。b.×:高い。

c.×?:動脈管の機能的閉鎖はPaO2上昇により起こりますが、再開通することはあるのでしょうか?d.×:大きくなる。e.:胎児循環では右心系優位だが、出産後は左心系優位となる。

 

25】新鮮凍結血漿輸血の目的として正しいのはどれか。
a.循環血漿量の改善・補充 b.創傷治癒の促進 c.栄養補給としての蛋白質投与
d.凝固因子補充   e.低アルブミン血症の治療

(答)d     授業プリント(輸血,P1)参照。
  血液止血凝固能の補充血小板、新鮮凍結血漿

循環血液量の補充(膠質浸透圧の維持)アルブミン製剤

 

26】大量輸血に伴う合併症として不適切なのはどれか。
a.肺酸素化能の低下   b.高カルシウム血症   c.低体温

d.高カリウム血症   e.術後感染の発生率増加

(答)b  2005年度概説 3-28 参照。

 

27】創傷治癒について正しいのはどれか。
a.ステロイド投与は創傷治癒を促進させる。 b.術中の低体温は手術部位感染を抑制する。
c.増殖期にはマクロファージが集積する。  d.糖尿病は創傷治癒を抑制する。
e.顆粒球は創傷治癒には関与しない。

(答)d  2005年度概説 3-29 参照。

 

28】SIRS(systemic inflammatory response syndrome)の診断基準に含まれていない項目はどれか。
a.CRP(C反応性蛋白質)  b.白血球数  c.体温  d.脈拍数  e.呼吸数

(答)a     授業プリント(侵襲と栄養,P2)参照。
  診断基準は(1)体温>38度または<36度、(2)脈拍数<90/分、(3)呼吸数<20 

/分またはPaCO232torr、(4)白血球数>12,000/mm34,000/mm3または幼弱型>10%、の4項目のうち、2項目以上を満たす場合。

 

29】「安全な麻酔のためのモニター指針」に記載されていない評価項目はどれか。
a.体温   b.ヘモグロビン濃度   c.換気   d.循環   e.酸素化

(答)b  2005年度概説 3-11 参照。

 

30】日本の制定法について適切でない組み合わせはどれか。
a.民法415条-債務不履行責任        b.民法709条-不法行為責任
c.刑法211条前段-業務上過失致死傷  d.憲法1条-基本的人権の尊重
e.憲法25条-健康で文化的な最低限度の生活の保障

(答)b     授業プリント(general physicianとしての麻酔科医,P2)(基本理念,P6)参照。
基本的人権の尊重を謳っているのは憲法第11条

 

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