平成17年度 「侵襲医学」 概説試験

 

1.術前評価(麻酔前評価)の要点を記せ。

授業プリント(麻酔前評価)参照。

() 周術期管理の最終目標は患者のQOLを損なうことなく「安全かつ高度で誰もが納得できる医療」を提供することであり、その第一歩となるのが術前評価である。(1)患者の評価 (2)侵襲の評価:手術部位や難易度・麻酔による循環抑制など (3)人的ならびに物的環境の評価:担当麻酔医の能力とその支援体制・感染防止・麻酔器をはじめとする使用器材の安全対策など に分けて考えることができる。患者生体はもとより、手術を取り巻く環境全てが最良に準備された状態で周術期医療が行われなければならないということである。

 

2.脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)について、以下の各問に答えよ。

1)穿刺針が皮膚からくも膜下腔に到達する組織を図示せよ。

2)適応、禁忌、合併症について記せ。

授業プリント(局所麻酔)参照。

()1)皮膚皮下組織棘上靭帯棘間靭帯横靭帯硬膜外腔硬膜→(硬膜下腔) →

     くも膜くも膜下腔 (図省略)

2)・適応:主に下腹部以下(会陰部、下肢など)の手術。

・禁忌 :1)出血性素因

         2)感染症(穿刺部位の感染、敗血症など)

         3)脳圧亢進、潜在性二分脊椎症などの脳脊髄疾患

         4)協力を得られない場合(小児、脊椎麻酔や硬膜外麻酔を拒否する場合)

         5)解剖学的に穿刺困難な場合(脊椎手術の既往がある場合など)

    ・合併症:1)循環抑制(低血圧、徐脈、迷走神経反射、心停止など)

         2)呼吸抑制(呼吸筋麻痺、中枢神経作用薬の併用、全脊麻など)

         3)神経系の合併症(脊髄損傷、post-dural puncture、頭痛、脳神経麻痺、

髄膜刺激症状、髄膜炎、場尾症候群、尿閉)

         4)局所麻酔薬中毒

 

3.以下の各小問についてaeより適当なものを1つ選び、解答欄に記せ。

1】米国麻酔学会の全身状態分類(ASA-PS,American Society of Anesthesiologists- Physical Status)について誤っているのはどれか。

a 6段階に分類されている。           b 値が少ない程、重症である。

c 周術期に発生する偶発症の重篤度と相関する。 d 周術期の偶発症による予後と相関する。

e 周術期の偶発症発生率と相関する。

(答)b

(解説)ASA-PSの値が大きくなるにつれ、術後1週間以内の術後死亡率が高くなる。しかし、

 ASA-PSでは手術のリスクの予測はできるが、麻酔による死亡の予測はできない。

 

2】吸入麻酔薬による導入について正しいのはどれか。

a 血液/ガス分配係数が低いほど導入速度は遅くなる。

b 吸入気の麻酔ガス濃度を高くするほど導入速度は速くなる。

c 分時換気量が大きいほど導入速度は遅くなる。

d 心拍出量が増加するほど導入速度は速くなる。

e 70%亜酸化窒素を併用すると揮発性吸入麻酔薬の導入速度は遅くなる。

 

(答)b          授業プリント(麻酔法・全身麻酔,P6)参照。

 肺胞気と脳の分圧が平衡に達したとき導入が完了する。

a:血液/ガス係数が低いほうが血液に溶けにくいため、脳に移行しやすい。

b.○:吸気麻酔ガス濃度を高めると、肺胞内濃度の上昇が速まる。

 c.×:換気量が大きいと肺胞内濃度は速く上昇する。

d.×:脳血流は一定に保たれるので、麻酔薬の脳以外の組織への移行が増える。

e:亜酸化窒素と揮発性吸入麻酔薬を同時に吸入すると、揮発性吸入麻酔薬の肺胞内

    濃度の上昇が速くなる。

 

3】麻酔中の呼吸について正しいのはどれか。

a ミダゾラムには呼吸抑制作用はない。

b セボフルランは換気の二酸化炭素応答曲線を左方に移動させる。

c 脊髄くも膜下麻酔において頚神経領域に無痛領域が及んでいなければ呼吸抑制は生じない。

d 仰臥位での横隔膜の弛緩は機能的残気量を増加させる。

e 陥没呼吸は気道閉塞の兆候である。

(答)e          授業プリント(侵襲と呼吸)参照。

 a.×:呼吸抑制は強い。(麻酔法・全身麻酔の授業プリント P12参照)

  b.×:右下方に移動させる。(P1 右中参照)

  c.×C3-5(横隔神経)が遮断されると著名な呼吸抑制が出現し得るが、胸髄の支配する肋間筋麻痺により呼吸抑制は起こりうる。(P3 右上参照)

  d.×:機能的残気量は減少する。(P1 右中参照)

  e.○rocking boat movementは上下部気道閉塞で観察される。(P1 右上参照)

 

4】チアミラール(ultra-short acting barbiturate)について正しいのはどれか。

a 覚醒が速いのは肝で速やか代謝されるためである。

b 血中濃度の上昇により脳波の平坦化を認める。     c 呼吸抑制を起こしにくい。

d 交感神経刺激作用のため低血圧をきたしにくい。

e 急性間歓性ポルフィリン症の症例にも安全に使用できる。

(答)b          授業プリント(麻酔法・全身麻酔,P10,11)参照。

 a.×作用時間が短いのは、脳からの再分布が速いから。

 c.×:呼吸中枢を抑制し、上気道狭窄も起こす。

  d.×:副交感神経を刺激し喉頭・気管支痙攣、迷走神経反射をおこしやすくなる。

 e.×:ポルフィリン症を悪化させるので禁忌。(喘息も禁忌。)

 

5】身体各部位と皮膚知覚帯dermatomeの組み合わせについて正しいのはどれか。

a 5 -- 4頚神経  b 乳頭 -- 6胸神経

c 剣状突起先端部 -- 8胸神経  d -- 10胸神経  e -- 5腰神経

() d

(解説)a:5指はC8 b:乳頭はT4 c:剣状突起はT7 e:踵はS1

 

6】脊髄の解剖ならびに脳脊髄液について誤っているのはどれか。

a 脊髄下端は成人ではL1L2である。  b 水平仰臥位における脊椎の最高部位はL3である。

c 脳脊髄液は弱アルカリ性である。    d 脊椎管内の脳脊髄液量は2035mlである。

e 運動神経は脊髄後根から出ている。

() e          授業プリント(局所麻酔,P1)参照。

 運動神経は脊髄前根。後根は知覚神経。

7】区域麻酔について正しいのはどれか。

a 脊髄くも膜下麻酔では分離麻酔が容易である。

b 脊髄くも膜下麻酔では交感神経よりも知覚神経が早く遮断される。

c 局所麻酔薬中毒は硬膜外麻酔よりも脊髄くも膜下麻酔で起こりやすい。

d 全脊髄くも膜下麻酔では意識消失を認める。

e 脊髄くも膜下麻酔後の頭痛は頭部を高くすることで軽減する。

() d

 a.×:硬膜外麻酔とことなり、分離麻酔、分節麻酔は困難。(分離麻酔とは薬剤濃度を低濃度にすることで、交感神経や感覚神経の細い線維を選択的に遮断すること。)

 b.×:遮断される順序は、交感神経求心線維(内臓痛支配神経)、交感神経遠心線維(血管運動神経)、冷覚、温覚、痛覚、触覚、筋肉運動、圧・位置・深部覚である。

 c.×:硬膜外腔は血管が豊富で、なおかつ硬膜外麻酔では大量の局所麻酔薬を用いるため。

 e.×:治療は安静、頭部低位、輸液など。

 

8】周術期の肺塞栓について誤っているのはどれか。

a 肺酸素化能も障害される。 b 左房内血栓が原因となる。 c 予防的抗凝固療法は有効である。

d 呼気終末と動脈血二酸化炭素分圧の較差が増大する。 E 卵円孔開存は奇異塞栓の原因となる。

(答)c

a.×:酸素化能は障害されるはず。 b.×:下肢の深部静脈血栓が原因。 

.○:ヘパリンの予防投与。 d.○:Va/Qの不均等(血流量が換気量に比べ減少)→PaCO2

 

9】悪性高熱について正しいのはどれか。

a メジャートランキライザーを突然中断した場合に発症しやすい。

b 特効薬はスキサメトニウムである。          c プロポフォールは誘発薬剤である。

d 過去の麻酔で発症していなくても発症の可能性がある。 e 体温上昇は早期の兆候である。

(答)d          授業プリント(麻酔法・全身麻酔)参照。

 a.×スキサメトニウム(筋弛緩薬)とハロタン(吸入麻酔薬)を使った場合に多い。

 b.×:特効薬はダントロレン。   c.×:プロポフォールは安全と考えられる麻酔薬の一つ。

 d.○:初回麻酔での悪性高熱の発症は2/32回目以降は1/3といわれている。

 e.×:初発症状は、原因不明の頻脈や不整脈であることが多い。

 

10】モニターに関する記述として誤っているのはどれか。

a 重症慢性閉塞性肺疾患ではカプノグラム呼気相のだらだらした上昇が認められる。

b 末梢循環不全が進行するとパルスオキシメータは作動しなくなる。

c 心電図で心筋虚血を検出するには複数の誘導をモニターするのが有利である。

d 直腸温と皮膚温の較差は交感神経の緊張度の指標となる。

e 動脈の触診は客観性に欠けるため「安全な麻酔のためのモニター指針」には取り上げられていない。

(答)e          授業プリント(モニタリング)参照。

 

11】「安全な麻酔のためのモニター指針」に記載されていない評価項目はどれか

a 体温  b 循環  c 換気  d ヘモグロビン濃度  e 酸素化

(答)d          授業プリント(侵襲医学の基本理念)参照。

 絶え間ない看視のもとに、酸素化・換気・循環・体温・筋弛緩のチェックを行う。

 

 

12】循環のモニターについて正しいのはどれか。

a 肺動脈楔入圧は右心不全で上昇する。

b 前負荷の指標としては肺動脈楔入圧よりも中心静脈圧の方が優れている。

c 心拍出量が増加すると混合静脈血酸素飽和度は低下する。

d 酸素消費量はHenderson-Hasselbalchの式によって算出される。

e 貫壁性の心筋虚血は心電図上虚血部位におけるST上昇として表われる。

(答)e          授業プリント(侵襲と循環)参照。

 a.×:左心不全、容量負荷で上昇し、血管拡張や容量不足で減少。   b.×

  c,d.×Fickの原理:心拍出量=酸素消費量/(動脈血酸素含量-混合静脈血酸素含量)

      混合静脈血酸素飽和度の低下は心拍出量の減少、酸素需要の増加、酸素供給の減少に起因する。

 e.○ST降下は心内膜下の虚血を意味する。

 

13】心拍数を減少させる薬剤はどれか

a イソプロテレノール b アドレナリン c プロプラノロール d ベラパミル e エフェドリン

(答)c, d (授業プリントにはべラパミルが記載)       授業プリント(侵襲と循環)参照。

a.×β作動薬で心拍数・心収縮力は増加する。  b.×:心拍数は増加する。

  c.○β遮断薬。心拍数は緩徐となる。安静時の正常心臓にはほとんど効果がないが、交感神経緊張時に強い効果が現れる。

  d.○:Ca拮抗薬。 e.×β作動薬で硬膜外麻酔、脊髄麻酔による血圧低下に用いられる。

 

14】酸-塩基平衡の代償反応について正しいのはどれか。

a 呼吸性アシドーシスに伴う換気応答の80%は末梢化学受容器を介する呼吸中枢の刺激である。

b 代謝性代償よりも呼吸性代償の方が代償反応の完成までに時間を要する。

c 代謝性アルカローシスに対する呼吸性代償は低酸素血症にともなう呼吸刺激を伴うために不十分なものになりやすい。

d 水素イオンは血液脳関門を通過する。

e 頸動脈小体の興奮は迷走神経を介して呼吸中枢へ伝えられる。

(答)c

 a.×:呼吸性ではなく代謝性だと思います。

  b.×:呼吸性代償の反応の方が迅速である。 C.○ d.×H+HCO3-は通過しにくい。

 e.×:舌咽神経の分枝の頸動脈洞神経を介して伝えられる。

 

15】酸素代謝について正しいのはどれか。

a 細胞内の酸素消費の90%以上は核で行われる。

b 細胞内での酸素の備蓄を担っているのが活性酸素種である。

c ミトコンドリアDNAは解糖系の酵素をコードしている。

d Hypoxia Inducible Factor(HIF)は解糖系酵素の発現を誘導する。

e 酸化的リン酸化は酸素分子の酸化と共役している。

(答)d

  a.×:ミトコンドリアが最も酸素消費の多い細胞内小器官である。  b.×

 c.×:ミトコンドリアDNAはミトコンドリアが必要とする蛋白質のごく一部をコードするのみ。

  d.○HIF-1が活性化される結果、低酸素適応に関する数々の遺伝子発現(血管新生因子、解糖系酵素等)が誘導されると考えられている。

  e.×:最終的には酸素分子が電子を受け取るので、酸化ではなく還元である。

 

 

16】低酸素血症について正しいのはどれか。

a チアノーゼによって早期発見できる。     b 動脈血酸素分圧が60mmHg以下の状態である。 

c 低酸素血症に伴う脳血管の拡張は動脈血酸素分圧が30mmHg以下になると生じる。

d 動脈血酸素飽和度が90%以下になると意識レベルの低下が認められる。

e 低酸素血症に伴う脳血管の拡張は過換気では認められない。

(答)b or e         授業プリント(侵襲と体液・代謝)参照。

 a.×:チアノーゼが出現してからでは遅い。パルスオキシメーターで早期発見。

 b.○PaO2≦60mmHgSaO2≦90%の状態。

  c.×PaO250mmHg以上のときは脳血流量に影響しないが、50mmHg以下では急激に増加させる。

 d.×PaO240mmHgSaO275%を下回ると意識レベルは低下し、PaO230mmHgSaO257%で脳は活動停止すると思います。   

e.○:過換気では脳血管は収縮すると思います。

 

17】高カリウム血症の治療とし適切なのはどれか。

a β遮断薬静脈内投与  b マンニトール(0.25g/kg体重)静脈内投与

c 過換気  d 3号液静脈内点滴投与  e スピロノラクトン内服

(答)c          授業プリント(侵襲と体液・代謝)参照。

 ・カルシウム投与による細胞膜安定化(Caにより閾値電位を上昇させKの作用を拮抗)

 ・アルカリ治療(重炭酸Naや過換気)やグルコース・インスリン投与によるKの細胞内移行

 ・ループ利尿薬やイオン交換樹脂による体外への強制排泄

 

18】アセタゾラミドの作用について正しいのはどれか。

a 炭酸脱水酵素の活性を増加させる。  b 肺気腫には禁忌である。

c 動脈血液ガス分析では代謝性アルカローシスを呈する。

d 脳内の二酸化炭素の量は増加する。  e 眼圧を上昇させる。

d          NEW薬理,P430,431参照。

 a.×:炭酸脱水酵素阻害作用。 b.×:肺気腫における呼吸性アシドーシスを改善。

 c.×:重炭酸イオンの排出増加により、代謝性アシドーシスを呈する。

  d.○:脳血管を拡張させ脳血流を増加させる。e.×:房水産生減少により眼圧低下。

 

19】脳腫瘍摘出のために開頭したところ、硬膜の膨隆が認められた。対処として正しいのはどれか。

a 麻酔法をプロポフォールとフェンタニルを用いた全静脈麻酔から、亜酸化窒素-酸素-セボフルランを用いた吸入麻酔に変更した。

b PaC0230mmHgだったので、人工呼吸の回数を減らした。

c マンニトール(0.25g/kg体重)の静脈内点滴投与を開始した。

d 逆トレンデレンブルグTrendelenburg体位だったので、水平仰臥位にした。

e 乳酸リンゲル液の投与速度を50ml/時から500ml/時に増加させた。

(答)d          授業プリント(周術期脳酸素需給バランス,P10)参照。

 硬膜の膨隆=頭蓋内圧亢進を考える。

  a.×:吸入麻酔薬は脳血流量を増加させるため、頭蓋内圧を亢進させる要因となる。

  b.×:過換気を行う。  d.×:逆トレンデンブルグの方がよい

e.×:輸液は制限しなければいけない。(低血圧に注意。)

 

 

 

 

20】覚醒遅延の鑑別診断について誤っているのはどれか。

a チアミラールは超短時間作用性なので頻回投与しても覚醒遅延をきたさない。

b ベンゾジアゼピンの作用遷延はフルマゼニルで拮抗可能である。

c 麻薬の作用遷延はナロキソンで拮抗可能である。

d 鑑別診断として脳血管障害の発生を挙げることができる。

e 低体温はMACを増加させる。

(答)e          授業プリント(周術期脳酸素需給バランス,P9)参照。

 b.○:フルマゼニルは、中枢神経系ベンゾジアゼピン受容体に対する競合性拮抗薬。

 c.○:ナロキソンは純粋なオピオイド拮抗薬で、術後にオピオイドが引き起こした、予想外あるいは不都合な呼吸抑制や中枢神経抑制効果を拮抗させるのに用いる。

  e.×MACは加齢、体温降下、妊娠などとともに減少する。

 

21】上行大動脈遮断を伴う冠動脈バイパス術後の脳梗塞は塞栓に起因すると考えられている。上行大動脈の動脈硬化病変の検索に最も有効なのはどれか。

a 胸部X線写真  b 心臓カテーテル検査  c 経食道心エコー検査

d 術野で行う上行大動脈のエコー検査  e 胸部造影CT検査

(答)e  

 エコーは検査を行う人の手技、そして客観性にかけるので、学会などではCTが用いられるみたいです。

 

22】妊婦の生理学的変化として正しいのはどれか。

a 呼吸性アシドーシスを呈する。

b 仰臥位低血圧症候群に対しては用手的な子宮の右方移動が有効である。

c 機能的残気量は増加する。 d 腎血流量は減少する。 e 全末梢血管抵抗は減少する。

(答)e          授業プリント(産科麻酔,P1,2)参照。

 a.×:分時換気量増加によりPaCO2が低下し呼吸性アルカローシスになるはずだが、徐々に進行するためpHは代償される。

  b.×:子宮の左方移動が有効。 c:機能的残気量は減少する。

 e.○:末梢血管抵抗、肺血管抵抗は減少する。

 

23】妊婦の麻酔について誤っているのはどれか。

a 吸入麻酔の導入は促進される。  b 硬膜外麻酔における局所麻酔薬の必要量は増加する。

c 誤嚥性肺炎のリスクが高い。  d 脊髄くも膜下麻酔における局所麻酔薬の必要量は減少する。

e 母体への全身麻酔薬投与は胎児の呼吸抑制の原因となる。

(答)b          授業プリント(産科麻酔,P1,2,5)参照。

a.○FRCの減少、肺胞換気量の増加による。 b.×:局所麻酔薬の必要量は減少する。

c.○:胃排出時間延長、噴門部弛緩、胃内圧上昇、胃酸分泌亢進による。(Mendelson症候群)

d.○:非妊娠時に比較して局所麻酔薬の投与量は1/31/2と少量でよい。

e.○:ベンゾジアゼピンは胎盤通過性が高いため、分娩前に使用すると児の呼吸抑制が強く現れることがある。

 

24】新生児よりも成人において高値を示すのはどれか。

a 単位時間・体重当りの酸素消費量  b 気道抵抗

c 体重当りの機能的残気量  d 体重当りの肺胞換気量  e 死腔換気率

(答)c

a,c:年齢が小さいほど、体重あたりの機能的残気量は少なく酸素消費量は多い。

 b.×:気道抵抗が大きいうえに、機械的刺激による粘膜浮腫や分泌物があると容易に気道閉塞が起こる。

25】小児では術前の絶飲食期間を成人より短くする必要がある。その理由として不適切なのはどれか。

a 細胞外液量の体重に占める割合が成人よりも小児で多い。  b 小児の基礎代謝率は高い。

c 小児は過度の経口摂取制限により、容易に脱水に陥る。 d 胃液のpHは成人より小児で高い。

e 小児は長い絶飲食を精神的に耐えられない。

(答)d

(解説)小児は成人と比べて代謝が活発で体重当たりの体表面積が大きいために、食事・飲水制限により脱水や電解質異常を起こしやすく、また厳しい経口制限により不機嫌・発熱を起こす。(New麻酔科学 P251)

 

26】帯状疱疹について正しいのはどれか。

a 皮疹が出現し、その数日後に痛みが生じてくることが多い。

b 発症部位の皮膚の知覚低下を認めても、痛みが軽い場合には神経ブロック療法の適応にはならない。

c 三叉神経領域では第一枝領域よりも第三枝領域に好発する。

d 顔面神経が冒されるとRamsey-Hunt症候群を呈する。  e 運動神経が冒されることはない。

(答)d

a.×:激しい痛みが生じてから皮疹が出現する。  b.×:早期に治療を行った方が治りが早い。

c.×:三叉神経第一枝領域や胸部に好発する。  d.○:ヘルペスウイルス感染により顔面神経麻痺、頭痛、眩暈を主徴とする疾患。  e.×:内臓病変を合併したり、運動神経が冒されることがある。

 

27】輸血療法に関してについて正しいのはどれか。

a 術前にヘモグロビン濃度10g/dL以下の貧血を認めれば、術前から赤血球輸血を開始する。

b 輸血後GVHDの予防策は新鮮血を用いた輸血を行うことである。

c 手術出血による循環血液量を回復させるためには新鮮凍結血漿を用いる。

d 輸血関連急性肺障害(TRALI)には、輸血用血液中の抗HLA抗体、抗顆粒球抗体が関与している。

e 血小板輸血の適応は、血小板数10/μL未満である。

(答)a          授業プリント(外科輸血療法)参照。

  b.×:予防策は新鮮血輸血の回避、放射線照射、血縁者からの輸血回避。(P5)

  c.×:循環血液量の補充アルブミン製剤。血液止血凝固能の補充血小板、新鮮凍結血漿。

  d.×:混入する顆粒球およびリンパ球がHLA抗体と反応して起きる。(P5)

  e.×:血小板数が5万/μL以上の場合は一般に不要。(P2)

 

28】大量輸血に伴う合併症として不適切なのはどれか

a 肺酸素化能の低下 b 低体温 c 高カルシウム血症 d 高カリウム血症 e 術後感染の発生率増加

(答)c          授業プリント(外科輸血療法,P6)参照。    低カルシウム血症となる。

 

29】創傷治癒について正しいのはどれか。

a ステロイド投与は創傷治癒を促進させる。   b 術中の低体温は手術部位感染を抑制する。

c 増殖期にはマクロファージが集積する。     d 糖尿病は創傷治癒を抑制する。

e 顆粒球は創傷治癒には関与しない。

(答)d          授業プリント(創傷治癒,P4,5,6)参照。

 a.×:ステロイドは創傷治癒の抑制因子。  b.×:促進する。  c.×:マクロファージは炎症期。増殖期は線維芽細胞。  e.×炎症期に感染防御の先陣をきって好中球が集積する。

 

30】成人の心室細動に対する初回の体外式除細動で推奨されているエネルギー量はどれか。

a 0.2J   b 2J   c 20J   d 200J   e 2,000J

(答)d

 

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