H18年度 衛生学 卒業試験

 

H181011

傾向:過去問で見られる問題が大半だが、全く同じ、というわけではなく少しずつ変化が見られる。これまで数年間と比べると、(記述が入るなど)前年との変化が大きい印象。

 

A.下記の文章の内容が正しければ○、正しくなければ×を解答欄に記せ。

1.許容濃度は、労働衛生安全法により規定されている。

2.職場の健康管理は、労働安全衛生法で規定されている。

3.産業医の職務が規定されている法律は、労働基準法施行令である。

4.労働者災害補償保険法は、任意加入保険である。

5.精神障害の労災認定が急激に増加したのは、平成11年からである。

6.大気中フロンの増加は、地表紫外線の増加と関係がある。

7.内分泌かく乱化学物質には、構造活性相関が認められる。

8.有機スズ化合物は、魚類のインポセックスを引き起こす。

9.電離放射線障害による染色体異常には、閾値が存在する。

10.VDT作業は白内障の発症と関連がある。

11.騒音性難聴は、騒音暴露の中止により回復する。

12.紫外線は、熱射病の原因となる。

13.レーザー光線により角膜損傷を起こすことがある。

14.赤血球中のALA-D活性の上昇は、鉛中毒の早期の鋭敏な指標である。

15.鉛中毒予防規則では、鉛取扱者の特殊健康診断を1年毎に行うことが義務付けられている。

16.無機水銀中毒では、Hunter-Russell症候群が認められる。

17.新潟水俣病の原因は、有機水銀である。

18.ポリウレタン樹脂の原料であるTDIは、気管支喘息をひきおこすことがある。

19.減圧に伴う酸素の気泡化が、減圧症の主要な原因である。

20.振動障害では、glove and stocking型の感覚障害が認められる。

【解答】

1.×:許容濃度は日本産業衛生学会が勧告。  2.○  3.×:労働安全衛生法第13条により産業医の選任が義務づけられており、その職務は労働安全衛生規則に規定されている。  4.×:強制加入  5.○:心理的不可による精神障害などの業務上疾病の判断指針がH119月に策定され、その後急増した。  6.○:オゾン層破壊のため。  7.○?  8.○?  9.○?  10.×:眼精疲労、腱鞘炎、職業性頸肩腕症候群などが主な障害。  11.×:不可逆性  12.×  13.○  14.×:上昇ではなく低下  15.×:半年ごと  16.×:有機水銀  17.○  18.○  19.×:酸素ではなく窒素  20.×?:stockingは違うのでは?

 

B.あてはまる記号を解答欄に記せ。

1.大気汚染について正しいものはどれか。

(a)いわゆるロンドン型スモッグでは眼・咽頭粘膜刺激症状が認められた。

(b)ミューズ渓谷事件はロサンゼルス型スモッグである。

(c)浮遊粒子状物質の環境基準について、粒径10μm以下から2.5μm以下の粒子の濃度へと最近変更された。

(d)我が国の大気汚染防止法では発生源からの鉛の排出規制がある。

(e)気温の逆転層は夏季の早朝に生じることが多い。

【解答】(d)

(a)×:真冬の石炭消費増と逆転送が加わり、高濃度のSOxCOによる気管支炎が多発。死者多数。

(b)×:ロンドン型。ロサンゼルス型は光化学スモッグによる眼・粘膜刺激症状と気管支喘息。

(c)×  (d)

(e)×:高くなるほど温度が低くなるはずの大気の層が、高い層の方が温度が高いこと。冬の朝に好発。

 

2.我が国の大気汚染に係わる環境基準について正しいものはどれか。

(a)浮遊粒子状物質の自排局での環境基準達成率は年々低下している。

(b)二酸化窒素の自排局での環境基準達成率は、一般局に比べて低い。

(c)我が国の自動車排気ガス対策では、亜硫酸ガスは重点的に規制されている。

(d)一酸化炭素の濃度は、自動車の増加に伴って近年上昇している。

(e)ダイオキシン類については水質汚濁及び土壌の汚染に係わる環境基準は定められているが、大気中は極低濃度しか検出されないので、大気環境基準は設定されていない。

【解答】(b)

(a)×:昭和50年頃より改善、ただし昭和60年頃から横ばい状態。目標達成率も低い。

(b)○:一般局ではほとんど目標をクリア。一方自動車排出ガス測定局(道路沿い)では達成率80%程度。

(c)×:排気ガスではCONOxが問題となる。亜硫酸ガスは固定発生源における問題。

(d)×:測定開始の昭和46年以降減少傾向。

(e)×:ダイオキシン類対策特別措置法にて規定。

 

3.大気汚染に係わる環境基準の対象物質でないものはどれか。

(a)テトラクロロエチレン  (b)キシレン  (c)ジクロロメタン  (d)トリクロロエチレン  (e)ベンゼン

【解答】(b) (b)以外の4つの他に、SO2NO2CO、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント、ダイオキシンが対象となっている。

 

4.職業性曝露で白血病発生に関係するものはどれか。

(a)6価クロム  (b)酸化エチレン  (c)ニッケル  (d)ベンチジン  (e)カドミウム

【解答】(b) 白血病発生はベンゼンが有名。

(a)×:接触によるアレルギー性皮膚炎、無痛性皮膚潰瘍、吸入による鼻中隔穿孔、肺癌。

(b)○:滅菌ガスとして医療界など広く使用される。発癌性を有するとされ、海外では長期暴露による白血病発症の報告がある。

(c)×:吸入による中毒が問題。急性=呼吸困難、慢性=肺癌、肝機能障害、皮膚掻痒感。

(d)×:膀胱癌が有名。

(e)×:粉塵やフュームの吸入による慢性中毒=近位尿細管障害、骨軟化症。イタイイタイ病。

 

5.塵肺について誤っているものはどれか。

(a)溶接工肺は酸化鉄ヒュームの吸入で発症する。

(b)超合金肺はコバルトの吸入により惹起される。

(c)肺癌は珪肺の合併症の一つである。

(d)粉じんの吸入曝露中止後、症状は改善される。

(e)アスベストは5100μmの長さのものでも肺内に吸入され、沈着する。

【解答】(d)しばしば暴露を中止した後も症状が進行する。

(a)(b)(c)(e)○:その通り。アスベストは比較的大きくても肺内に吸入され沈着するのが特徴。

 

6.有害ガスの記載の中で正しいものはどれか。

(a)アルシンはこげたアーモンド臭を呈する無色のガスで、強力な溶血作用がある。

(b)シアン化水素はニンニク臭を示すガスで、メッキ作業中に中毒の発生がある。

(c)臭化メチルは強力なオゾン層破壊物質である。

(d)ホルムアルデヒドは医療機器工場やガス殺菌作業中の中毒の発生があり、慢性中毒では末梢神経障害が発現する。

(e)一酸化炭素による中毒は日本の炭坑が閉山された現在、ほとんど発生がない。

【解答】(c)

(a)×:こげたアーモンド臭=シアン化水素。強力な溶血作用はアルシンの特徴。

(b)×:ニンニク臭=ヒ化水素(アルシン)。

(c)○:有機塩素化合物、有機臭素化合物は強力なオゾン破壊物質であるものが多い。

(d)×:医療機器工場やガス滅菌作業中の中毒=酸化エチレン。

(e)×:石油ストーブや練炭の不完全燃焼、あるいは火事などでおこる。

 

7.産業廃棄物の安定型最終処分場の地下の採水場で、採水に降りて行った作業員の一人が倒れ、助けに行った他の2人の作業員も続いて倒れた。下記のガスのなかで測定が義務づけられているのはどれか。

(a)二硫化炭素  (b)臭化メチル  (c)二酸化炭素  (d)酸素  (e)一酸化炭素

【解答】(d) 他に硫化水素も測定する。

 

8.4大公害裁判事例でないものはどれか。

(a)新潟水俣病  (b)水俣病  (c)カネミ油症  (d)イタイイタイ病  (e)四日市の大気汚染

【解答】(c)

 

9.感染性廃棄物について誤っているものはどれか。

(a)一類感染症において治療、検査に使用されたものはすべて感染性廃棄物である。

(b)血液は特別管理産業廃棄物である。

(c)他の廃棄物とは分けて排出しなければならない。

(d)特別管理産業廃棄物管理責任者は病院以外の研究機関に置かねばならない。

(e)非感染性廃棄物を収納した容器にはその旨記載したラベルを付けることが推奨される。

【解答】(d)

(a)○:「感染症病床、結核病床、手術室、救急外来室、集中治療室および検査室で治療検査等に使用された後、排出されたもの」は感染性廃棄物となる。

(b)(c)○  (d)×:病院内に、「特別管理産業廃棄物管理責任者」をおく。講習会を修了しなければならないが、医師は自動的に有資格者となる。

(e)○:感染性廃棄物にはその旨表示する義務がある(表示にはバイオハザードマークを推奨)。非感染性廃棄物にも、混乱を避けるため、「非感染性」である旨表示することがのぞましいとされる。

 

10.酸性雨の主要な原因物質はどれか。

(a)窒素  (b)ダイオキシン類  (c)浮遊粒子状物質  (d)一酸化炭素  (e)亜硫酸ガス

【解答】(c)または(e)

酸性雨の原因は硫黄酸化物、窒素酸化物だが、これらは「浮遊粒子状物質」に含まれる。亜硫酸ガス=二酸化硫黄ガスなので、(e)の方がダイレクトに「正解」といいやすい。ただ最近は硫黄分を含む燃料が減らされ、酸性雨の主な原因は窒素酸化物になった、という論調もあり、判じがたい。

 

11.接触性皮膚炎を起こすものはどれか。

(a)カドミウム  (b)ニッケル  (c)マンガン  (d)五酸化バナジウム  (e)シリカ

【解答】(b)

(a)×:粉塵やフュームの吸入による慢性中毒=近位尿細管障害、骨軟化症。イタイイタイ病。

(b)○:吸入による中毒が問題。急性=呼吸困難、慢性=肺癌、肝機能障害、接触皮膚炎(皮膚掻痒感=nickel itchiと言われる。)。

(c)×:吸入による慢性中毒が問題となる。パーキンソン症候群など。

(d)×:粘膜・呼吸器症状が主体。  (e)×?

 

12.石綿関連疾患でないものはどれか。

(a)心膜中皮腫  (b)精巣鞘膜中皮腫  (c)肝臓がん  (d)胸膜プラーク  (e)胸膜肥厚

【解答】(c)

 

13.光化学オキシダントの生成に大きく寄与しているものはどれか。

(a)揮発性有機化合物  (b)亜硫酸ガス  (c)赤外線  (d)二酸化炭素  (e)ナノ粒子

【解答】(a)

光化学オキシダントは、第一次汚染物質(不飽和炭化水素と窒素酸化物)に紫外線が作用した結果生じる第二次汚染物質である。SO2COCO2、浮遊粒子状物質などは無関係。

 

14.我が国で製造と使用が禁止されているのはどれか。

(a)ベリリウム  (b)黄リンマッチ  (c)クロム  (d)三酸化ヒ素  (e)カドミウム

【解答】(b)

製造、輸入、譲渡、提供および使用が禁止されている物質:ベンジジン、4-アミノジフェニル、4-ニトロジフェニル、β-ナフチルアミン(以上は膀胱癌を起こす)、ビスクロロメチルエーテル、アミサイト、クロシドライト(以上は肺癌を起こす)、ベンゼン含有ゴム糊(白血病を起こす)、黄リンマッチ(多彩な呼吸器、消化器症状を起こす)の9種類。

 

15.作業環境測定士が測定を行うべき作業場はどれか。

(a)暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場。  (b)坑内作業場。

(c)中央管理方式の空気調和設備の事務所  (d)著しい騒音を発する屋内作業場

(e)有機溶剤を取り扱う作業場

【解答】(e)

鉛作業場、著しく粉塵を発散する屋内作業場、放射性物質を取り扱う作業室、特定化学物質を取り扱う屋内作業場、有機溶剤を取り扱う屋内作業場、については作業環境測定士が測定すべきとされる。他に酸素欠乏危険場所も作業環境測定を行う。

 

C.以下の問いに答えよ。解答は解答欄に記せ。

問題1

1)上水道の水質基準で「検出されないこと」とされる項目は何か。列挙せよ。

【解答】大腸菌

 

2)人の健康保護に関する水質環境基準で「検出されないこと」とされる項目は何か。列挙せよ。

【解答】全シアン、アルキル水銀、PCB

 

問題2

産業医の職務について正しいものには○を、誤っているものには×を解答欄に記せ。

a.1回以上の作業場の巡視

b.労働者の出勤停止命令

c.定期健康診断の実施

d.作業場などの環境整備について医学的知識を述べることができる

e.労働者の健康状態にあわせた配置転換を行うことができる

f.労働者への適正な作業姿勢の指導

g.労働者の健康障害の原因究明

h.作業場の環境測定

i.業務上疾病の認定をする

j.衛生管理者への指導や助言を行う

k.労働者からの健康相談を受ける

1.健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するための必要な措置について事業者に意見を述べることができる

【解答】

a.○  b.×:命令はできない。  c.×:「健康診断…(中略)…に関すること。」とあるが、自分で実施しなくてはならないわけではない。  d.○  e.×:勧告することはできる。配置転換は総括安全衛生管理者が行う。  f.×衛生管理者、衛生委員会の役割であろう。  g.○  h.×  i.×:労働基準監督署が行う。  j.○  k.○  1.

 

問題3

有機溶剤を取り扱う事業場で従事していた労働者の複数人がめまいと倦怠感を訴えて医療機関を受診した。産業保健上で取るべき対策について、作業環境管理、作業管理、健康管理の項目別に列挙せよ。

【解答例】

作業環境管理:作業環境測定を行う、局所排気による換気をはかる、生産工程や作業方法の変更(自動化や密閉など)、など。

作業管理:暴露時間の短縮、作業衣の定期的交換、防毒マスクなどの保護具着用、など。

健康管理:特殊健康診断を半年以内ごとに行う。実情に合わせて、配置転換や労働時間短縮などの措置をとる。

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