平成18年度 遺伝子治療 本試験

○ 実施日: 2006.12.21  10:0012:00

○ 試験時間: 120

○ 不合格: 11人

○ コメント: 

 

 

 

【1】以下の問いについて答えなさい。(25点)

問1

ヒトゲノム多様性の要素であるSNP、InDel、Microsatellite、Minisatellite、CNVのうち、どれか2つを選択し簡単に説明せよ。

 

問2

連鎖解析と相関解析について、各々を対比させ、その特徴を説明せよ。

 

問3

準連続形質としての多因子疾患の閾値説によれば、女性罹患者の比率が圧倒的に多い多因子疾患においては、男性罹患者の第一度近親者の女性は、女性罹患者の第一度近親者の男性より罹患率が高い。これについて図を用いて説明せよ。

 

問4

相関解析において、ある遺伝マーカーが疾患と有意な相関を示した時、これについて考慮すべき諸点を挙げよ。

 

問5

連鎖する2つの一塩基多型SNP-A、SNP-Bがある。それぞれの対立遺伝子をa1、a2およびb1、b2とし、その頻度をfa1、fa2(fa1+fa2=1)およびfb1、fb2(fb1+fb2=1)とする。またハプロタイプa1-b1の頻度をfa1b1とした時、D=fa1b1-fa1×fb1を連鎖不平衡定数と呼ぶ。4種類のハプロタイプの頻度fa1b1fa1b2fa2b1fa2b2を用いれば、D=fa1b1×fa2b2fa1b2×fa2b1となることをD=fa1b1fa1×fb1より導け。

 

 

【2】単一遺伝子疾患・サラセミアに関連した以下の文の中から正しいものを5つ選び、その番号を記しなさい。(15点)

 

1.常染色体優性遺伝病では、発端者の同胞が罹患する確率は25%である。

2.X連鎖劣性遺伝病の男性患者から女性の罹患児が生まれる確率は50%である。

3.優性阻害変異は常染色体優性遺伝病ではな<、常染色体劣性遺伝病の原因遺伝子の変異として見られることが多い。

4.サラセミアはグロビン遺伝子産物の質的異常に基づく遺伝性貧血症である。

5.サラセミアは地中海沿岸域、アフリカ、中東、インド、中国、東南アジアなどに高頻度に見られるが、これはマラリアに対する抵抗性と関係がある。

6. βサラセミアの主症状は正球性低色素性貧血であり、重症例では肝牌腫や骨の変化を伴う。

7.βサラセミアでは、HbAおよびHbA2の低下が見られる。

8.HbH病では2倍体あたりの正常なαグロビン遺伝子数は2個である。

9.βサラセミアで最も重篤な病型は胎児水腫であり、胎児は死亡する。

10.αサラセミアを合併したβサラセミア患者は、βサラセミアだけの患者に比べ症状が軽<なることがある。

1 1 . αサラセミアの多<は点変異により起きる。

12.βサラセミアの多くは欠失により起きる。

13.プロモーター領域内の点変異のホモ接合体ではβサラセミアメジャーをきたす。

14.βグロビン遺伝子の第1イントロン(IVS-1)内の第1塩基GのAへの置換では、全<正常なスプライシングは起きずβ゜サラセミアとなる。

15.βグロビン遺伝子の第1イントロンの第110塩基GのAへの置換では異常なスプライシングが起きるが、これはスプライシングのアクセプター配列が変異により形成されたためである。

16.イントロン内の点変異でナンセンス変異を来すことがある。

17.Nonsense-rnediate mRNA decayでは、ナンセンス変異をもった遺伝子の転写が抑制されmRNAの合成量が低下する。

18.3’非翻訳領域の点変異によりスプライシングに異常を来すことがある

19.βサラセミアの変更遺伝子として、γグロビン遺伝子が知られているが、これは胎児型グロビン遺伝子であり、HbF変生に関与する。

20.βサラセミアの予防として、遺伝子変異をもつヘテロ接合体の胎児の人工流産が行われている。

 

 

【3】以下の遺伝子治療に関連した問いに対して答えなさい。

1)以下の中で正しいものの組み合わせを、(1)-(5)から選択せよ。(5点)

  a)すべての臨床研究を行う場合にアテネ宣言を遵守する。

  b)臨床研究の第3相研究では安全性は検討しない。

  c)アデノウイルスを用いた癌に対する遺伝子治療では血清抗体が阻害因子となりうる。

  d)悪性腫瘍に対する遺伝子治療の中では免疫遺伝子治療が最も多<行われている。

  e)遺伝子治療はほとんどがまだ臨床研究の段階であるが、中国では実際の薬剤として市販されている。

  (1)a)♭)c)  (2)a)c)d)   (3)c)d)e)   (4)♭)c)e)   (5)a)d)e)

2)以下の中で正しいものの組み合わせを、(1)-(5)から選択せよ。(5点)

  a)レトロウイルスベクターは分裂細胞の染色体中に蛙み込まれる為に細胞が分裂後も導入遺伝子の安定した発現が得られる。

  ♭)アデノウイルスベクターを原因とした白血病の発症が報告された。

  c)リポフェクション法では造血幹細胞に効率よ<遺伝子導入ができる。

  d)アデノウイルスベクターを大量に血管の中に入れると重篤な副作用を発生する可能性がある。

  e)アデノウイルスベクターは非分裂期細胞でも安定した発現が得られ、そのリセプターの1つはCARである。

  (1)a)b)c) (2)a)♭)d)  (3)a)b)e)  (4)a)d)e)   (5)c)d)e)

                 

       

【4】以下の問いに関して答えなさい。(15点)

(A)正しいものに○、誤っているものにXをつけなさい。

1. 罹患患者がすべて女性の場合で、男児の流死産が多い場合には×連鎖優性遺伝病を考える。

2.X連鎖劣性遺伝病では、男一男伝達はない。

3.ミトコンドリア病では全て母系遺伝を示す。

4. 伴性劣性遺伝病である血友病は、女性に発症することはない。

5. ゲノムインプリンティングの異常による疾患には、PradeHA/illi症候群、Angelman症候群がある。

 

(B)以下の奇形症候群について正しいのはどれか。a-eから選択せよ。

  (1)Beckwith-Wiedernann症候群は、Wilms腫瘍のリスクが一般小児よりも高い。

  (2)Kabuki make up 症候群は、ゲノムインプリンティングが原因と考えられている。

  (3)Prader-Willi症候群では、一般に筋緊張が低下する。

  (4)Rubinstein -Taybi症候群では、目じりが下がっている。

  (5)Williams症候群では、腎奇形の合併が多い。

  a.(1)(2)(3) ♭.(1)(2)(5)c.(1)(3)(4)d.(2)(3)(4)e.(3)(4)(5)

  

 

5】以下の遺伝子治療(造血幹細胞)に関する問いに関して答えなさい。(15)

1.造血幹細胞を標的とした遺伝子治療に用いられる(オンコ)レトロウイルスベクターについて誤っているものを2つ選べ。(3)

 

1)ヒトの遺伝子治療には、amphotropic vectorが用いられる。

2)ベクター粒子内のゲノムは(オンコ)レトロウイルスのエンベロープをコードする遺伝子を含んでいる。

3)遺伝子導入できる細胞は分裂細胞に限られている。

4)ベクター粒子内のゲノムはDNAである。

5)導入した遺伝子は染色体DNAに組み込まれ、細胞分裂により失われることがなく長期間安定に保たれる。

 

2.造血幹細胞を標的とした遺伝子治療について正しいものを2つ選べ。(3)

                   -

 

1)Graft versus host disease (GVHD)は重要な副作用である。

2)ヒトの多能性造血幹細胞の大部分は細胞周期上GO期にある。

3)遺伝子導入はin vivo法で行われる。

4)多能性造血幹細胞への遺伝子導入効率が高いことが不可欠である。

5)体内で増殖しないように設計されたウイルスベクターが用いられる。

 

 

3.SCID-XI(X連鎖重症複合型免疫不全症)に対する遺伝子治療に関する記載で正しい

ものを2つ挙げよ。(3)

 

1)原因となる遺伝子がコードする蛋白(γc)は血球系の細胞に広<発現している。

2)正常γcを導入された細胞はin vivoで選択的増殖優位性を示す。

3)レトロウイルスベクターが宿主DNAに組み込まれる部位を予測することができるので、白血病などの腫瘍化のリスクを避けることができる。

4)正常γcを導入された細胞に対する免疫応答を抑えるために遺伝子導入細胞を移注する前に骨髄前処置が行われる。

5)γcの過剰発現を制御する方法が開発されている。

 

4.アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の遺伝子治療に関する記載で正しいものを1つ挙げよ。(3)

                           -

 

1)ADA欠損症は複合型免疫不全症の臨床像を呈する。

2)正常遺伝子導入細胞に選択的増殖優位性が賦与するために、PEG-ADAの併用が行わる。

3)ADA欠損に伴う全身的な代謝障害も改善される。

4)標的細胞としては主にT細胞が用いられる。

5)遺伝子治療に先立って強力な骨髄前処置が必要である。

 

5.下記の疾患の中でこれまでに造血幹細胞を標的としたヒトヘの遺伝子治療が成功

している疾患を1つ挙げよ。(3)

1)血友病

2)Nieman-Pick

3)慢性肉芽腫症

4)Bruton型無ガンマグロブリン血症

5)lgE症候群

 

6】以下の遺伝カウンセリングに関する問いに関して、aからeより選択しなさい。(15点)

 [1]一般的に、遺伝子相談で取り上げられる項目を選べ。

(1)     遺伝病の診断・治療・予後

(2)     家系内に遺伝病がある場合の、子供における再発危険率

(3)     父親を確定するための親子鑑定

(4)     血族結婚に際しての遺伝病の罹患危険率

(5)     家族歴のない先天性奇形や染色体異常の同胞への再発危険率

a(1)(3)(4)(5)  b:(1)(2)(3)(5) c:(2)(3)(4)(5) d:(1)(2)(4)(5) e:(1)(5)すべて

 

   [2]わが国で遺伝相談が十分に普及していない原因と考えられるものはどれか。

(1)     日本では戸籍制度が完備していて親子関係などにこれまで問題が少なかったため、一般市民の遺伝への関心が低かった。

(2)     医学教育において、遺伝学が重視されていなかったので、遺伝相談を担当できる医師がほとんど  いなかった。

(3)     遺伝病の存在によって家系がけがれた、といった先入観のために、医学的な対応を求めるよりも、隠す傾向が強かった。

(4)     遺伝相談には健康保険での診療が適応されない。

(5)     日本人は単一民族のため、ほかの国に比べて遺伝病患者の数がはるかに少なく、遺伝相談の必要性も低かった。

a(1)(2)(3)    b:(1)(2)(5)  c:(1)(4)(5)  d:(2)(3)(4)  e:(3)(4)(5)

 

[3]遺伝相談のときカウンセラーの取る態度としてふさわしくないものを選びなさい。

(1)     得られた危険率に関する情報はすべて正しく説明する。

(2)     遺伝病の再発を防ぐために、特定の方法を指示する。

(3)     原因不明の先天異常症は経験的再発危険率に基づいて説明する。

(4)     再発危険率のみでなく、疾患の症状、予後、治療法などについても説明する。

(5)     どのような場合でも、近親結婚は避けるよう強く説明する。

  a(1)(2)     b:(1)(3)   c:(4)(5)   d:(2)(5)   e:(3)(5)

 

[4]次の遺伝カウンセリングに関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)     遺伝カウンセリングとは、単なる情報開示ではなく、心理感情的な面に注意しながら最終的に個人や家族が自ら意思決定できるように支援するコミュニケーション過程である。

(2)     遺伝子検査の結果を伝えるときは、クライエントの精神的な動揺を避けるために、できるだけ   短時間で話すのが原則である。

(3)     遺伝カウンセリングは遺伝病を減少させるための予防医学の一つであり、国を挙げての取り組みが必要である。

(4)     遺伝カウンセリングは先天異常を中心として小児科領域および産科領域で行われる医療行為である。

(5)     わが国においてはクライエント自身が一人で決定を下すのは困難なので、出来るだけ対処法を  具体的に誘導すべきとされている。

  a(1)     b:(2)    c:(3)    d:(4)    e:(5)

 

 

[5]次の遺伝子カウンセリングのうち、適切なものを選びなさい。

(1)     いとこ同士のカップルが遺伝子カウンセリングのために来院した。近親婚では常染色体劣性遺伝病の頻度が高くなるので、結婚しないように助言した。

(2)     クライエントは男性。今度結婚する予定のフィアンセは健康だが、彼女の弟がHunter(X染色体劣性遺伝病)に罹患している。結婚した場合、同じ病気の子が生まれる可能性がどの程度あるかを知りたくて来院した。この男性に対し、この疾患の再発危険率や生命予後を、できる限り詳細に説明した。

(3)     両親が子供を連れて来院。この両親と子供についての親子鑑定を希望したので、DNAフィンガー プリンティング法を用いて検査した。

(4)     ある疾患の間接的DNA診断の過程で父と子に矛盾が生じ、この父は本当の子でないことが判明したが、この結果をこの父には伝えなかった。

(5)     46XYadd(4)(p16)の核型を有する児の両親の染色体を調べた結果、父は正常であったが、母の核型は46,XX,t(4;9)(p16;p22)であった。父と母どちらに異常があったのかを知らせないで欲しいと いう要望があったが、事実が誤解される可能性があるので結果をそのまま両親に伝えた。

  a(1)     b:(2)    c:(3)    d:(4)    e:(5)

 

[7]遺伝子治療を含む先端医療に対して期待するところを、現在の医療的背景をもとに述べよ。

さらにそれらの臨床研究を実施する際に重要な点についても述べよ。(5)

 

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