平成20年度 泌尿・生殖器 卒業試験

 

<泌尿器科>

12手術後、ホルモン補充が必要なものはどれか、という出題。
a Cushing
症候群
b
原発性アルドステロン症?
c
褐色細胞腫
d
片側副腎摘出
e
両側副腎摘出
1)ab, 2)bc, 3)cd, 4)de, 5)ea

選択肢は過去問と同じ。
正解は5)eaと思われる。

 

15 膀胱癌について正しい組み合わせを選べ

1.典型的な症状は下腹部痛や排尿困難である。

2.筋層に浸潤する浸潤性膀胱癌の標準治療は膀胱部分切除である。

3.表在性膀胱癌は経尿道的腫瘍切除術(TURBT)で切除可能だが、膀胱内再発率が30-50%と高い。

4.発症リスクとしては喫煙などの環境因子が大きく遺伝的要因は少ない。

5.上皮内癌は悪性度が高く、尿細胞診陽性率が高い。

 a.123  b.134  c.234  d.135  e.345

 

 

 

16前立腺癌について正しい組み合わせを選べ。

1 多くは前立腺肥大が原因となる。

2 日本人はアメリカ系黒人よりも前立腺癌に罹患するリスクが高い。

3 PSAが診断・治療の指標として有用である。

4 近年、転移性前立腺癌の割合は低下している。

5 転移性前立腺癌に対しては、主に男性ホルモンを補充する治療が行われる。

a) 1,2   b) 2,3   c) 3,4   d) 4,5   e) 1,5

 

 

 

17 非浸潤性前立腺癌の治療法はどれか。

a化学(抗癌剤)療法

b放射線療法

cホルモン療法

d経過観察

e手術療法
1
全て 2bcde 3cde 4de 5e
 

18精巣腫瘍について正しいものを選べ。

1 高齢者に多い。

2 充実性腫瘍が多く、精巣水腫との鑑別は透光性の有無で容易であるが、確定診断のためには、針生検を行うべきである。

3 停留精巣は精巣腫瘍のリスクが高い。

4 転移があっても、高位結紮で患側を摘出して病理診断を行う。

5 胚細胞腫はセミノーマと非セミノーマに分けられるが、後者のほうが転移しやすく悪性である。

a123 b134 c234 d135 e345

 

19 国際前立腺症状スコアー(I-PSS)の基準に含まれないものをひとつ選べ

a 切迫性尿失禁

b昼間の頻尿

c残尿感

d腹圧排尿

解答a

前立腺肥大症では切迫性尿失禁ではなく溢流性尿失禁がおきる。前立腺肥大症を評価するInternational Prostate Symptom Scoreには、残尿感・昼間の頻尿・夜間の頻尿・尿線中絶・尿意コントロール・尿の勢い・腹圧排尿についての七項目の質問があります。

 

 

20 前立腺肥大症について、適切なものを一つ選べ。
a.
薬物療法の第一選択はα1受容体遮断薬で、特にα1b受容体遮断薬がよく用いられる。
b.
抗男性ホルモン薬は前立腺を収縮させるため、前立腺特異抗原(PSA)を低下させ、排尿障害は速やかに改善される。
c.
正常男性の最大尿流量は10ml/分で、正常女性の平均値より低い。
d.
外科的治療では経尿道的前立腺切除術(TURP)が最も標準的に行われている。

 

 

 

 

 

(婦人科)

 

1.女性生殖器の発生・解剖に関して正しいものをひとつ選べ。

  a. 子宮体部内膜は子宮腔側より、基底層・機能層からなる。

  b.       外陰は尿生殖洞由来である。

  c. 子宮頚部には、基靭帯・膀胱子宮靭帯・円靭帯が付着する。

  d. 子宮動脈は尿管の下方を走行する。

  e. 右卵巣静脈は右腎静脈に流入する。

 

2.性分化について正しいものをひとつ選べ。

  a. 未分化性腺はMIS(Mullerian lnhibitory Substance)により精巣に分化する。

  b. 生殖隆起において原始性腺細胞(Primordial Germ Cell)が発生する。

  c. SRY(Sex determing region of Y chromosome)Genetic Sex を決定する。

  d. 精巣性女性化症候群はGonadal Sex(第一次性決定)の異常を原因とする。

  e. MISは女性型外性器の発生を誘導する。

 

3.黄体ホルモンについて正しいものをひとつ選べ。

  a. 排卵直前に急増する。

  b. 子宮内膜を増殖させる。

  c. 基礎体温を上昇させる。

  d. 頚骨粘液の粘調度を低下させる。

  e. 卵巣の顆粒膜細胞で産生される。

 

4.精巣性女性化症候群について正しいものをひとつ選べ。

  a. 染色体は45XOである。

  b. 多毛、陰核肥大が特徴的である。

  c. エストロゲン受容体の異常である。

  d. 子宮・卵巣がない。

  e. Kaufmann療法により月経を起こすことが可能である。

 

5.32才 未婚女性。既往歴・家族歴に特記すべきことはない。住民健康診断の子宮癌検診でクラスIVの細胞診結果を指摘され、二次検診を指示されて初診にいたった。関連する検査項目として、正しいものをひとつ選べ。

  a. 超音波検査で病巣の部位を推定する

  b. コルポスコピー検査で、子宮の大きさを計測する

  c. 子宮頚癌を疑い、細胞診のみ再検する

  d. 子宮頚部の組織検査で病変の進行度を診断する

  e. 腹腔鏡検査で、診断と治療を兼ねる

 

6.性交後検査(フーナーテスト)について誤っているものをひとつ選べ。

  a. 排卵期に検査する。

  b. 同時に頚管粘液検査も行う。

  c. スライドグラス上で頚管粘液と精液を接触させて、精子の運動を観察する。

  d. 検査結果が不良な場合は抗精子抗体を調べる。

  e. 数周期反復して検査する。

 

7.次の文を読み、問いに答えよ。

43歳女性。接触出血を訴えて受診した。

図1・図2(別紙参照)

 

1)図1は子宮頚部より採取した擦過細胞診像である。誤っているものをひとつ選べ。

  a. 炎症細胞浸潤がみられる

  b. 核クロマチンの増量がみられる

  c. 核の大小不同がみられる

  d. 多核化がみられる

  e. 核周囲ハローを認める

 

2)図2はこの症例のコルポスコピー像である。所見として正しいものをひとつ選べ。

  a. コンジローマ

  b. 異常血管域

  c. 白色上皮

  d. 赤点斑

  e. モザイク

 

3)この症例に対して行うべき治療法として正しいものをひとつ選べ。

  a. レーザー蒸散術

  b. 子宮鏡

  c. 単純子宮全摘術

  d. 広範子宮全摘術

  e. 放射線治療

 

8.47才 既婚女性。1回経産。健康診断で貧血を指摘され、内服薬による治療を受けた既往がある。月経困難と月経不順を主訴に初診。内診で子宮は後屈し手拳大に腫大して触れた。超音波検査では子宮は筋層がびまん性に腫大し結節性の腫瘤はみられず、内膜は一様に薄かった。両側卵巣は正常大であった。この疾患について正しいものをひとつ選べ。

  a. 子宮鏡下手術が勧められる。

  b. エストロゲンの関与が考えられ、閉経により自然軽快が見込まれる。

  c. 悪性疾患を疑い、積極的に開腹手術を勧める。

  d. ピルによる月経コントロールでは、副作用として更年期様症状が多い。

  e. 筋腫核出術の適応である。

 

9.次のうち、正しいものをひとつ選べ。

  a. 腟横中隔症では膣入ロ部に近い部位での形成が多い

  b. 子宮脱は、妊娠時には子宮の増大に伴って脱出が顕著となることが多い

  c. 膣欠損症では第二次性徴が障害されることが多い

  d. 子宮脱とは子宮全体が膣外に出た状態をさす

  e. ミュラー管由来臓器の奇形は尿路奇形を伴うことが多い

 

10.絨毛性疾患について正しいものをひとつ選べ。

  a. 絨毛癌は抗がん剤抵抗性であるため予後不良である。

  b. PSTT(Placental Site Trophoblastic Tumor)の管理では血中hCG測定が有効である。

  c. 部分奇胎の多くは2精子受精3倍体を原因とし、高率に侵人奇胎に続発変化する。

  d. 若年女性に発症する侵人奇胎は、高率に絨毛癌化するため子宮全摘が治療上の第1選択となる。

  e. 全奇胎は全ての絨毛ののう胞化を示すとされているが確定診断に重要な所見はトロボブラスト過形成である。

 

1 1 . 症例は61歳、G2P2、閉経49識の婦人で、4ケ月前の検診で5cm径の子宮筋腫を指摘されていた。最近、下腹部緊満感があり、下腹部に腫瘤を触れ来院された。不正性器出血はない。精査するにあたり最も念頭に置かなければならない疾患はどれか正しいものをひとつ選べ。

  a. 子宮体癌

  b. 子宮腺筋症

  c. 子宮肉腫

  d. 子宮筋腫

  e. 子宮頸癌

 

1 2.72歳の女性が不正性器出血を主訴に来院し、右陰唇に存在する径3cm大の腫瘍性病変を認め、同部位の細胞診でクラスVの所見であり、外陰癌と診断された。外陰癌に関する記載のうち正しいものをひとつ選べ。

  a. 進行期を決定するために、膀胱鏡検査や直腸鏡検査を行う

  b. 外陰癌の病理組織診では腺癌が最も多い

  c. ヒトパピローマウィルス11型の感染が発症に起因することが多い

  d. 外陰癌進行期分類では、他臓器に浸潤・転移性病変が存在しなければI期である

  e. 本症例の治療としては単純外陰切除術を考慮する

 

13.不妊症の治療について正しいものをひとつ選べ。

  a. 多嚢胞性卵巣症候群には遺伝子治療が適応となる。

  b. 卵管性不妊症には人工授精が適応となる。

  c. Asherman症候群にはクロミフェン療法が適応となる。

  d. 黄体機能不全症には排卵誘発が有効な場合かおる。

  e. TVF-ETでは80%程度の着床率が期待できる。

 

14.子宮内膜症について正しいものをひとつ選べ。

  a. 治療にはエストロゲン補充療法を行う。

  b. 診斯には子宮鏡が有用である。

  c. 卵巣チョコレート嚢腫は癌化することがある。

  d. 閉経後に増悪する。

  e. クロミフェン療法が有効である。

 

15.次の症例を読んで[1][2]の設問に答えよ

[症例]

 45才の既婚婦人。人間ドックで骨盤内腫瘤を指摘され来院した。腹部超音波検査で右付属器部に単房性の嚢胞を認め、一部に充実部を認めた(図1)。開腹特、右卵巣は手拳大の腫瘍を形成し、術中迅速組織検査で腺癌(図2)と判明した。標準術式を行い、術後の組織検索で卵巣癌1c期と判明した。

図1・図2(別紙参照)

)この症例について適当なものをひとつ選べ。

  a. 腫瘍マーカー値は、CA-125 : 15U/ml(正常35以下)CEA : 10, 5 ng/ml(正常2.5以下)であった。

  b. 腹水細胞診は陽性であった。

  c. 骨盤リンパ節に転移を認めた。

  d. 術後にブレオマイシンを主剤とした多剤併用化学療法を行った。

  e. 5年生存率は60%以下と考えられる。

 

2)この腫瘍として適当なものをひとつ選べ。

  a. クルッケンベルグ腫瘍(印鑑細胞癌)

  b. 粘液性嚢胞腺癌

  c. 漿液性嚢胞腺癌

  d. 明細胞腺癌(類中腎癌)

  e. 類内膜腺癌

 

16.25歳の女性が下腹部痛、帯下および発熱を告訴として来院し、子宮付属器炎の診断に至った。今後の治療において合併症となり得るものをひとつ選べ。

  a. 習慣流産

  b. 傍卵巣嚢腫

  c. Asherman症候群

  d. 卵管水腫

  e. 子宮内膜症

 

 

 

<病理>

 

以下の文章の正しいものは○、誤っているものは×を、それぞれの解答欄に記せ。

 

1 女性生殖器に発生する腫瘍で最も多いものは平滑筋種である。

2 ヒトパピローマウイルス感染は外陰・膣・子宮頚部における尖圭コンジローマ、扁平上皮癌、および腺癌とそれらの前駆病変の病因である。

3 子宮頚部粘膜上皮異形成のうち、中等度異形成とは、上皮下層2/3に異形成が限局するものを指す。

4 アリアス−ステラ反応とは、血中hCG高値に対する組織反応で、正常妊娠以外にも流産や子宮外妊娠の症例でも認められる。

5 子宮内膜癌全体の約8090%が類内膜腺癌、残りはその他の特殊な組織型である。

6 未分化胚細胞腫は精巣に発生するセミノーマと相同な腫瘍で、免疫染色で胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)が陽性となる。

7 卵黄嚢腫瘍には、血管を中心に据えた糸球体様、乳頭様構造が特徴的なSchiller-Duval小体がしばしば認められる。

8 未熟奇形腫は2〜3胚葉性由来の未熟な組織および未熟神経組織より構成されている。

9 前立腺癌の分化度を表現するGleason scoreは、実際の診断でもよく用いられる。

10 前立腺癌にみられる腺癌細胞は基底細胞を伴わない点が、悪性と判断する重要な鑑別点のひとつである。

11 膀胱癌のうち、95%は尿路上皮(移行上皮)癌で、細胞異型度および構造異型度の両方の要素から3段階(G1G3)で評価する。

12  小児膀胱に粘液状、ポリープ状の発育を示すブドウ状肉腫とは、胎児型横紋筋肉腫のことである。

13 微小変化型ネフローゼ症候群の光顕所見では、メサンギウム細胞増殖は無く、基底膜の肥厚も明らかではない。

14 腎細胞癌の多くは細胞質が淡明な細胞からなる明細胞癌である。

15 小児期に発生する腎細胞癌は極めて稀で、そのなかには特異的遺伝子転座を有するものがある。

16 腎芽腫は腎の原基である後腎組織の芽細胞、すなわち後腎芽細胞由来の腫瘍と考えられている。
解答:○ 小児の腎腫瘍の最多数(90)大半が3歳以下で発症

17 片側肥大、内臓肥大などの単独奇形および巨舌、臍ヘルニア、巨大児などを主徴とするBeckwith-Wiedemann症候群は、腎芽腫の発症リスクが極めて高い。

18

19 腎悪性ラブトイド腫瘍は分化方向不明な悪性腫瘍で、多くの症例が1年以内に死亡する。

20 神経芽腫は副腎に由来し、尿中VMAHVAが上昇することが多い。

 

解答

1 ○ 婦人科疾患の中で最多。45人に1人(2025%)の割合で発生する。

2 ○ 子宮頚癌のうち扁平上皮癌にはHPV-16型、腺癌にはHPV18型が関連していることが明らかになってきた。

3 ○ CIN2に相当する。

4 ○ アリアス‐ステラ反応というのは、hCGにより子宮内膜に脱落膜変化が起こることをいい、正常妊娠、子宮外妊娠、絨毛性疾患でみられる。

5 ○ 子宮体癌のうち95%以上が腺癌、そのうち類内膜癌(80~90%)には類内膜腺癌(60~70%)と扁平上皮への分化を伴う類内膜腺癌(20~30%)などが含まれる。(数    値;発生頻度)

6 ○ 淡明で間質にリンパ球がみられる。

7 △ 卵黄嚢腫瘍の病理組織学的特徴は,@卵黄囊を模倣した立方体ないし扁平な腫瘍細胞が網目状あるいは蜂巣状の構造(Endodermal sinus stracture)を形成すること,A腫瘍細胞が主に血管周囲に配列する,糸球体様構造(Schiller-Duval body)を認めること,B網目状構造を呈する細胞の胞体内外には,好酸性球状の硝子体小球(hyaline globule)が認められ,免疫組織化学的所見ではAFP が大部分の腫瘍細胞に認められることである.糸球体状=乳頭状といえるなら○。

8 ○ 奇形腫は2~3胚葉性、時に単葉性。未熟奇形腫ではさらに神経外胚葉成分を含む未熟な組織からなる.神経外胚葉は脳様で柔らかい。ロゼットを形成する。中胚葉性混合腫瘍との鑑別に有用。未分化神経組織の分化度によりGrade1~3に分類される。

9 × 日本では通常、腺癌の病理組織学的分類には癌細胞の分化の程度に応じて高、中、低分化腺癌に分ける方法が採用されてきたが、Gleason分類は腫瘍細胞の分化度、細胞異型を考慮せず、浸潤パターンや構造異型のみに着目して前立腺癌の形態をパターン1からパターン55段階に階層化する方法を考案した。さらに画期的なことは、前立腺癌の組織像の多様性を考慮して量的に最も優位なパターンとそれより劣勢なパターンの数の合計をGleason scoreとして表現する方法を導入したことである。

10 ○ 前立腺肥大症と前立腺癌の鑑別で重要な点。肥大症では腺上皮細胞と基底細胞からなる二層性が保たれているが、癌では高分化型でも二層性が欠如している。

11 ○ 組織学的異型度はG03GXに分類される。G0GXを除いて三段階評価なので○とした。

12 × 横紋筋肉腫には3つの亜型がある。胎児型は最多(約65%)であり、顕微鏡的に胎児性筋組織に類似している。若年者(生下時〜10歳頃まで)の頭頸部や泌尿生殖器に見られる。ぶどう状(約7~10%)は腫瘍がブドウの房に似ているためにこの名がついた。同じく若年者の膀胱や膣、鼻咽頭など陥凹のある部位に好発する。形態学的に胎児型とはまったく異なる像を呈する。胞巣型(約20%)は肺組織に類似し、好発時期は思春期、四肢や体幹に好発する。前二者は染色体異常のうち転座との関連は薄いが、胞巣型は関連が強い。

13 ○ 光学顕微鏡レベルでは明らかな異常をみとめない。

14 ○ 淡明なのは細胞質にグリコーゲンを豊富に含むため。

15 ○ 小児で最多は腎芽腫。腎細胞癌は稀だが、Xp11転座腎癌(TFE3腎癌)という特徴的な染色体異常による腎細胞癌の小児例がある。

 


 

 

 

 

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