平成20年度 侵襲医学 卒業試験

 

【1】 全身麻酔の目的でないのはどれか。

(a) 除痛

(b) 筋弛緩

(c) 意識消失

(d) 交感神経の遮断

(e) 有害な反射の抑制

 

【2】 正しいのはどれか、二つ選べ。

(1) 全身麻酔の導入で機能的残気量は増加する。

(2) 呼気終末陽圧(PEEP)は機能的残気量を減少させる。

(3) 肥満患者は全身麻酔の導入で肺の血液酸素化能が悪化しやすい。

(4) 慢性閉塞性肺疾患患者は全身麻酔の導入で末梢気道が閉塞しやすい。

(5) 腕神経叢ブロックは呼吸機能が低下した患者で安全に施行できる。

 

【3】体液組成に関して正しいのはどれか。二つ選べ。

(a) 成人の水分量は体重の約60%である。

(b) 体液の細胞外液量は体重の約40%である。

(c) 体内の細胞外液量のうち血管内に分布するのは約50%である。

(d) 成人の血液量は体重1kgあたり約120mLである。

(e) 血漿浸透圧は275295mOsm/Lである。

 

【4】正しいのはどれか。

(a) 出血時の輸液は補充液より維持液が適している。

(b) 脳外科手術の輸液は5%ブドウ糖液が適している。

(c) 出血500mlに対して乳酸リンゲル液を2000mlを輸液する。

(d) 小児では体重に対する体内水分量の割合が成人に比べて少ない。

(e) 妊婦は体重に対する循環血液量の割合が非妊娠時より少ない。

 

【5】輸血療法に関して正しいのはどれか。

(a) 術前にヘモグロビン濃度10g/L以下ならば赤血球輸血を行う。

(b) 輸血後GVHDの予防策として新鮮血を輸血する。

(c) 循環血液量を保持する目的で新鮮凍結血漿を輸血する。

(d) 輸血関連肺障害(TRALI)の原因には抗HLA抗体、抗顆粒球抗体が関与する。

(e) B型患者の危機的出血時に同血液型血液が間に合わない場合にAB型の赤血球輸血を行う。

 

【6】45歳の男性。身長170cm、体重70kg、血中ヘモグロビン濃度は11g/dl。心臓手術が予定された患者にスワンガンツカテーテルを挿入し、心拍出量を測定したところ、5.0L/minであった。動脈血酸素飽和度あ96%であった。このkんじゃんの酸素供給量はどれに近いか。

(a) 100mL/min

(b) 300mL/min

(c) 500 mL/min

(d) 700 mL/min

(e) 1000 mL/min

 

【7】硬膜外麻酔で正しいのはどれか。

(a) 仰臥位で実施する。

(b) 意識が低下する。

(c) 術後の除痛に用いられる。

(d) 麻薬は使用しない。

(e) 頭部の手術にも用いられる。

 

【8】パルスオキシメータによるSpO2の測定で正しいのはどれか。二つ選べ。

(a)動脈血酸素飽和度を反映する。

(b) 空気呼吸下でSpO290%は正常範囲である。

(c) 脈拍数が低下するとSpO2は低下する。

(d) 無気肺があるとSpO2は低下する。

(e) 貧血患者ではSpO2は低下する。

 

【9】カプノメータによる呼気二酸化炭素濃度の測定で正しいのはどれか。二つ選べ。

(a) 呼気二酸化炭素濃度20mmHgは正常範囲内である。

(b) 気管挿管か食道挿管かどうかの判別ができる。

(c) 低換気で低下する。

(d) 肺塞栓で低下する。

(e) 肥満患者で低下する。

 

10】気管挿管の合併症はどれか。二つ選べ。

(a) 頚動脈損傷

(b) 歯牙損傷

(c) 肺塞栓

(d) 嗄声

(e) 無尿

 

11】挿管困難が予想されるのはどれか。二つ選べ。

(a) 下顎―甲状軟骨間距離が7cm

(b) マランパチ分類がクラスⅠ。

(c) 頭部後屈ができない。

(d) 開口が二横指。

(e) 首が長い。

 

12】正しいのはどれか。二つ選べ。

(a) 気管挿管は声帯を確認してから実施する。

(b) 気管チューブの深さは成人で約30cmである。

(c) 気管チューブの内径は約12mmである。

(d) 気管チューブを食道に入れると強い抵抗感がある。

(e) 気管チューブを深く入れすぎると右気管支に入りやすい。

 

13】腰部交感神経節ブロックで生じる下肢の兆候で正しいのはどれか。

(a) 発汗

(b) 垂れ足

(c) しびれ

(d) 温度上昇

(e) 深部腱反射亢進

 

1450歳の男性。脳腫瘍に対して全身麻酔科に腫瘍摘出術が予定された。麻酔導入のため、プロポフォールとベクロニウムを投与したところ呼吸が停止した。直ちにすべき処置で正しいのはどれか。

(a) マスクによる人工呼吸

(b) 気管挿管

(c) 輸液負荷

(d) 脳室ドレナージ

(e) アミノフィリン静注

 

15】ヘモグロビンの酸素解離度曲線を左方に移動させるのはどれか。

(a) 高体温

(b) 2,3-DPGの増加。

(c) 呼吸性アシドーシス

(d) 代謝性アシドーシス

(e) 胎児ヘモグロビン

 

16】硬膜外腔のすぐ背側にあるのはどれか。

(a) 硬膜

(b) くも膜

(c) 黄靱帯

(d) 前縦靱帯

(e) 後縦靱帯

 

17】高二酸化炭素血漿を伴う低酸素血症をキタしやすい病態で誤っているのはどれか。

(a) 胸水貯留

(b) 胸郭形成後

(c) ファロー四徴症

(d) Pickwick症候群

(e)慢性閉塞性肺疾患

 

18】肺血栓塞栓症の危険因子(リスクファクター)として誤っているのはどれか。

(a) 肥満である。

(b) 骨盤骨折がある。

(c) 長期臥床している。

(d) 経口避妊薬(ピル)を常用している。

(e) 頭痛のためアスピリンを常用している。

 

191歳男児。そけいヘルニアに対して、ヘルニア根治術が予定された。全身麻酔の導入に用いられる吸入麻酔薬として適切なのはどれか。

(a) 一酸化窒素

(b) セボフルラン

(c) エーテル

(d) イソフルラン

(e) ベクロニウム

 

20】健常人の酸素解離曲線から外れている組み合わせはどれか。

(a) PaO2=600mmHg、  SaO2=100%

(b) PaO2=150mmHg、  SaO2=95%

(c) PaO2=60mmHg、   SaO2=90%

(d) PaO2=40mmHg、   SaO2=75%

(e) PaO2=27mmHg、   SaO2=50%

 

21】心拍出量を大きく低下させるのはどれか。

(a) 後負荷の低下

(b) 心収縮性の増加

(c) 心拍数の上昇

(d) 循環血液量の低下

(e) 皮膚温の上昇

 

22】日本麻酔学会による「安全な麻酔のためのモニター指針」で、「換気」のモニターとして採用されているのはどれか三つ選べ。

(a) 胸郭の動き

(b) 呼吸音

(c) カプノメータ

(d) パルスオキシメータ

(e) 皮膚、粘膜、血液の色

 

23】周術期のリスクマネジメントで誤っているのはどれか。

(a) 麻酔中に起こりうる合併症を患者に詳しく説明する。

(b) 外科医から手術内容を聞いて麻酔計画をたてる。

(c) 麻酔器の始業点検を週1回定期的に行う。

(d) 大量出血に備え血液センターに連絡する。

(e) 麻酔薬の注射器への準備を麻酔担当医が行う。

 

24】星状神経節ブロック施行後に見られないのはどれか。

(a) 顔面発汗減少

(b) 眼瞼下垂

(c) 結膜充血

(d) 散瞳

(e) 鼻閉

 

25】正しいのはどれか。

(a) 局所麻酔薬を静脈内に投与してはいけない。

(b) 局所麻酔薬はカルシウムチャネル遮断作用で効果を発揮する。

(c) 局所麻酔薬による浸潤麻酔は感染部位に対して効果が高い。

(d) 局所麻酔薬による表面麻酔では局所麻酔中毒は起こさない。

(e) 硬膜外麻酔は脊椎麻酔法により局所麻酔薬中毒を起こしやすい。

 

26】区域麻酔(硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔)に関して誤っているものを選べ。

(a) 硬膜外麻酔は分節麻酔が可能である。

(b) 脊髄くも膜下麻酔は戦死部位が限られる。

(c) 硬膜外麻酔は術後の鎮痛にも使用可能である。

(d) 脊髄くも膜下麻酔後に頭痛が起きることがある。

(e) 硬膜外麻酔は脊髄くも膜下麻酔より短時間に硬化が出現する。

 

27】硬膜穿刺後頭痛に対する治療の中で誤っているのはどれか。

(a) 安静臥床

(b) 自己血パッチ

(c) 脳脊髄液ドレナージ

(d) 輸液

(e) 消炎鎮痛剤投与

 

28】手術中の合併症とそのモニターとの組み合わせで適切でないのはどれか。

(a) 低酸素血症-パルスオキシメーター

(b) 悪性高熱症-呼気二酸化炭素モニター

(c) 狭心症-心電図モニター

(d) 肺血栓症-吸入麻酔薬濃度モニター

(e) 局所麻酔薬中毒症-脳波モニター

 

29】老人の特徴について誤っているものはどれか。

(a) クロージングボリュームが増加している。

(b) 洞機能が低下している。

(c) 食物胃内残留時間が遷延している。

(d) 循環血液量が増加している。

(e) 体血管抵抗が増加している。

 

3028歳の女性。児頭骨盤不均衡のため、帝王切開手術が予定された。適切なのはどれか。

(a) 術前1時間前まで飲食を許可する。

(b) 前投薬にH₂拮抗薬を使用する。

(c) 前投薬にジアゼパムとモルヒネを使用する。

(d) 麻酔施行時の低血圧にはノルエピネフリンの静注を行う。

(e) 麻酔施行時の低血圧には糖を含んだ輸液の急速投与を行う。

 

3124歳の男性。身長168cm、体重62kg。スノーボードで下腿骨骨折を起こし、硬膜外麻酔下に観血的整復固定術が予定された。硬膜外カテーテルを挿入し、そのカテーテルより2%メピバカイン10mlを注入したところ、急に意識がもうろうとし、呼びかけにも応じなくなった。血圧は100/66mmHg、心拍数は76/分であった。

処置として誤っているのはどれか。二つ選べ。

(a) 気道確保

(b) 100%酸素投与

(c) エピネフリン0.1mg静注

(d) ジアゼパム5mg静注

(e) モルヒネ1mg硬膜外投与

 

3269歳の男性。早期胃癌と診断され、胃部分切除が予定されていた。3年前から労作性狭心症があり、発作時には硝酸薬を舌下投与している。他に既往歴はない。

術前検査で頻度が高く認められる所見はどれか。二つ選べ。

(a) 心筋逸脱酵素の上昇が見られる。

(b) 安静時心電図でST部分の上昇が見られる。

(c) 安静時心エコ-図で壁運動異常が認められる。

(d) ジピリダモール負荷心筋シンチグラフィーで心筋虚血が検出される。

(e) 冠動脈造影で狭窄が認められる。

 

3336歳の女性、腹痛で来院。気管支喘息の治療中である。腹部単純エックス線写真で腸管にニーボー像があり、イレウスの診断の下、開腹手術を予定された。

麻酔に使用すべきでない薬物はどれか。二つ選べ。

(a) チオペンタール

(b) 亜酸化窒素

(c) スキサメトニウム(サクシニルコリン)

(d) プロポフォール

(e) イソフルラン

 

3477歳の女性。歩行中に転倒し、大腿骨頚部骨折と診断され、人工骨頭置換術が予定された。10年来の心房細動があり、血栓予防のためにワルファリンを服用している。

麻酔法の選択として適切なのはどれか。

(a) 表面麻酔

(b) 局所浸潤麻酔

(c) 脊髄くも膜下麻酔

(d) 硬膜外麻酔

(e) 全身麻酔

 

35】悪性高熱症の治療で適切でないのはどれか。

(a) 吸入麻酔薬中止

(b) 100%酸素投与

(c) ダントロレン静注

(d) スキサメトニウム(サクシニルコリン)静注

(e) 全身冷却

 

36B型肝炎患者からの採血時、誤って針刺し事故を起こしてしまった。誤っているのはどれか。

(a) B型肝炎ワクチンを接種する。

(b) 直ちに血液を絞り出し洗浄・消毒する。

(c) 高力価ヒト免疫グロブリンを投与する。

(d) 針刺し事故の内容を所属の長に報告する。

(e) 定期的に肝機能の検査を行う。

 

3765歳男性。身長160㎝、体重75kg。元来健康であったが、鼡径ヘルニアに対して、ヘルニア根治術が予定された。写真はその手術のために、脊髄くも膜下の穿刺をしているところである。

(1)   穿刺部位はどこか(37)

a 頸椎56

b 胸椎78

c 胸椎1112

d 腰椎23

e 仙椎23

(2)   この麻酔に用いる麻酔はどれか(38)

a ケタミン

b ミダゾラム

c エチルアルコール

d ブピバカイン

e コカイン

(3)   この麻酔による合併症で頻度が最も高いのはどれか(39)

a 出血性ショック

b 全身のけいれん

c 低血圧

d 手のしびれ

e 低酸素血症

(4)   この患者の周術期の静脈血栓塞栓症の予防対策として適切なのはどれか(40)

a なにもしない

b 弾性ストッキングの着用

c 低用量ヘパリン投与

d 用量調節ワルファリン投与

e 下大静脈フィルターの挿入

 

4153歳の女性。胃がんに対する胃切術に対して区域麻酔と全身麻酔の併用で麻酔を行うことが計画された。区域麻酔に用いる針(写真)について正しいのはどれか。

(a) この針は脊髄くも膜下腔に挿入する。

(b) 手術部位の術中鎮静を図るには腰椎3/4間で挿入するのが最もよい。

(c) 針が適切な位置に挿入されたことの確認法は抵抗消失法を用いる。

(d) 針が適切な位置に挿入されると脳脊髄液の流出が確認できる。

(e) 注入薬物はレミフェンタニルを用いる。

 

42】緩和ケアで正しいのはどれか。二つ選べ。

(a) 全人的ケアである。

(b) 痛みの除去より治療を優先する。

(c) 死を受け容れるよう説得する。

(d) 身体的苦痛より精神的苦痛を重要視する。

(e) 患者と家族のQOLを可能な限り実現する。

 

4352歳の女性。乳癌の腰椎転移による疼痛に対し、非ステロイド性消炎鎮痛薬とモルヒネの内服を行っていたが、次第に疼痛が増悪してきた。適切な処置はどれか。二つ選べ。

(a) モルヒネを中止しリン酸コデインを投与する。

(b) モルヒネを中止し抗うつ薬を投与する。

(c) 非ステロイド性消炎鎮痛薬を中止する。

(d) モルヒネを増量する。

(e) コルセットなどの保護具を着用する。

 

44】緩和医療でオピオイドを投与する際の基本原則として誤っているのはどれか。

(a) 静脈内投与を第一選択とする。

(b) 至適投与量は痛みが消失する量とする。

(c) 時刻を決めて規則正しく投与する。

(d) 予防的な副作用対策を行う。

(e) 効果が不十分なら効果の強い薬に切り替える。

 

4547歳の女性。乳癌の脊椎転移による背部痛に対して、モルヒネを開始することにした。モルヒネ開始時の説明として誤っているのはどれか。

(a) 吐き気がおこることがあるので吐き気止め一緒に飲んでください。

(b) 下痢になりやすいので下痢止めを一緒に飲んでください。

(c) 眠気が出ることがあるので車の運転はしないでください。

(d) 痛みを我慢しないで痛み止めを飲みましょう。

(e) 痛みが取れない場合には薬の量を増やしたり、別の薬を加えたりします。

 

46】麻酔中に血圧が低下する原因を3つ挙げ、それぞれの対処方法を述べなさい。

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