代謝生化学実習レポート1 グルコースの定量

平成14年4月24日実施

1. 序論
グルコースオキシダーゼ法と、Hexokinase-Glucose-6-phosphate dehydrogenase法を用いて それぞれグルコースの定量を行う。

(A)グルコースオキシダーゼ法
グルコースを特異的に比色定量するためにPeroxidaseとGlucose oxidaseを組み合わせた系を用いる。この方法には、糖以外の還元生物質の影響を受けない利点がある。
Glucose+O2+H2O→Gluconic acid+H2O2
H2O2+4-aminoantipyrine+phenol→antipyrine色素
検体に測定試薬を添加すると、検体中のGlucoseは測定試薬のGlucose oxidaseにより酸化され、 とGluconic acidを生成する。 できたH2O2は試薬中のPeroxidaseで還元され、同時に試薬中のphenolと4-aminoantipyrineとを縮合させ、antipyrine色素を形成する。この色素を吸光度500nmの波長で測定し、検体中のグルコースを定量する。この反応はB-D-Glucoseに特異的であるが、唯一の例外として2-deoxy-glucoseが反応する。

(B)Hexokinase-Glucose-6-phosphate dehydrogenase法
Glucose+ATP→Glucose-6-phosphate+ADP
Glucose-6-phosphate+NADP(プラス)→6-phosphogluconate+NADPH
上記の2反応を利用し、できてくるNADPHが吸収する340nmの光の増加でglucoseを定量する。 NADPHのモル吸光係数は6,3×10(3乗)[/M・cm]であるとわかっているので、グルコースオキシダーゼ法のように標準曲線を作成する必要はない。

2. 実験
(A-1)Glucose標準液の希釈
2.0mg/mlのglucose標準液を10倍希釈して、10ml(標準液1ml+水9ml)つくり、 よく混ぜた後、下記のように糖量を変えた溶液をつくる。

No. 10倍希釈した標準溶液 H2O
1(Blank) 0ml 3ml
2 1ml 2ml
3 2ml 1ml
4 3ml 0ml

(A-2)未知検液を10倍希釈(10mlつくる)して下記のように試験管に入れる。

No. 10倍希釈した未知検液 H2O
5 1.5ml 1.5ml
6 3ml 0ml

(A-3)500nmで吸光度を測定する。
ModeをAbsに変換。セル4本に酵素液(Glucose oxidase混合液)2.7mlずつを入れて、500nmでそれぞれの吸光度を読む。次にNo.1〜4を0.3mlずつ各セルに入れてパラフィルムを用いてよく混ぜた後、 3分おきに吸光度を読む(15〜20分)。同様の操作を行って、希釈した未知検液(検液A)0.3ml(No.5,6)の吸光度を読む。
  

(B-1)キュベットに混合試薬(Hexokinase混合液)2mlを加え、340nmの吸光度を読み、それをE0とする。

(B-2)Glucose未知検液の10倍希釈したもの0.1mlを(B-1)に加え、迅速に混ぜ吸光度の増加を添加直後から2分おきに読む。吸光度の増加が起こらなくなった時点をE1とする未知検液のみ2度測定する。

(B-3) ΔE=E1-E0としてグルコース濃度を求める。(グルコースの分子量は180.2)

3. 結果
(A)グルコースオキシダーゼ法

経過時間 No.1(Blank) No.2 No.3 No.4 No.5 No.6
添加前 0.014 0.016 0.012 0.014 0.017 0.017
添加後 0.013 0.143 0.375 0.500 0.277 0.310
3分後 0.013 0.238 0.465 0.718 0.372 0.643
6分後 0.015 0.262 0.492 0.767 0.400 0.734
9分後 0.014 0.267 0.495 0.777 0.408 0.759
12分後 0.014 0.268 0.495 0.779 0.409 0.764
15分後 0.014 0.268 0.495 0.779 0.410 0.765
18分後 0.014 0.268 0.495 0.779 0.410 0.765
ΔA 0.000 0.252 0.483 0.765 0.393 0.748

以上No.1〜4の結果(ΔA)を標準曲線にするとグラフNo.1のようになる。(直線は最小二乗法による)
No.2〜4までのグルコース濃度はそれぞれ、0.067、0.13、0.20(mg/ml)であるから、これをもとにして吸光度Aと溶液濃度C(mg/ml)の関係を式に表すと、A=3.76Cとなる。これにNo.5(20倍希釈),No6(10倍希釈)の測定結果の平均(10倍希釈に換算して0.767)を代入して未知検液の濃度を求めると、10倍希釈してあるため最後に10倍して、C=2.04(mg/ml)となる。

(B)Hexokinase-Glucose-6-phosphate dehydrogenase法

経過時間 添加前 添加後 2分後 4分後 6分後 8分後 ΔA
1回目 0.053 0.182 0.416 0.434 0.435 0.435 0.382
2回目 0.047 0.123 0.374 0.403 0.406 0.406 0.359

1回目、2回目のΔAを平均すると0.3705という値が求められる。
Lambert-Beerの法則より、ΔA=log(I0/I)=εlであるので、ΔAとε=6.3(/mM・cm)とを代入して、c=0.0588(mM)となる。
このcはセル内のNADPHの濃度であるので、はじめにセル内にあったグルコースの濃度に等しい。またセル内の溶液は2.1mlであったから、セル内にあったグルコースの量は5.88×10(-5乗)×2.1×10(-3乗)=1.23×10(-7乗)molと計算できる。一方、セル内に入っていた未知検液(10倍に希釈する前の)の量は0.01mlであるので、この未知検液の濃度は、1.23×10(-7乗)÷(1.0×10(-5乗))=1.23×10(-2乗)[mol/l]=12.3(mM)となる。これを単位換算し、mg/mlに直す。1リットル中に12.3mmol(分子量180.2)のグルコースが含まれているので、1.23×10(-2乗)×180.2=2.21(g/l)=2.21(mg/ml)となる。

4. 考察
この実験では実験AとB、それぞれで求めたグルコースの濃度が等しくならなければならない。今回の実験ではその値が2.04と2.21となり、誤差は8パーセントほどであった。この誤差は測定時にセルの透過面が若干汚れていた、などといったことがあったためにもたらされたものかと考えられる。しかし、正確な濃度が明らかでないのではっきりとは言えないが、この未知検液の濃度はおよそ2.1mg/ml前後であろうということは推測できる結果が得られた。

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