遺伝学 平成14年度追試験

平成15年3月14日(金)実施 120分

1〜10の設問に答えなさい。その場合、各解答欄には学籍番号、氏名を必ず記入すること。


1.次の文(1)〜(6)を読み、正しいものを示しているのは(A)〜(E)のうちどれか。記号を選びなさい[5点]

(1)多因子遺伝病とは、多数の遺伝子の変異によって起こる疾患である。
(2)遺伝医学の理論的基盤は、ラマルクの獲得遺伝説、ダーウインの進化論、およびワトソン・クリックのセントラルドグマ(中心教義)から成る。
(3)遺伝医学で扱う対象サイズは大きい方から小さい方に向かって、分子遺伝学→細胞遺伝学→メンデル遺伝学→集団遺伝学である。
(4)1つの遺伝子は1つのペプチドをコードしていることが多い。
(5)長い1世代、少ない子供数、変異遺伝子の致死効果などがヒトの遺伝を研究するときの制約である。
(6)遺伝医学における生命倫理は、オートノミー(autonomy)、被害防止(nonmaleficence)、善行(beneficence)、正義(justice)の4原則からなるとされている。

(A)(2)〜(6)のみ、 (B)(3)(4)(5)(6)のみ、 (C)(4)(5)(6)のみ、 (D)(5)(6)のみ、 (E)(3)(6)のみ


2.13才男子Down症候群の核型を記載しなさい。[10点]


3.まれな単純劣性遺伝病の典型的な家系図を描き、その特徴を述べなさい。[10点]


4.次の問に答えなさい。[5点×2]
(1)ヒトのゲノムサイズ(ハプロイドに相当するDNAの長さ)は以下の(A)〜(D)のどの値に最も近いか。
(A)10^8ヌクレオチド、 (B)3×10^8ヌクレオチド、 (C)10^9ヌクレオチド、 (D) 3×10^9ヌクレオチド。

(2)ヒトゲノム研究の最近の成果から推定されているヒトゲノム中にある全遺伝子(蛋白質をコードするもののみ)の数は以下の(A)〜(D)のどの値に最も近いか。
(A)1,000個、 (B)3,000個、 (C)10,000個、 (D)30,000個。


5.以下の文(1)〜(20)について、正しいものを5つ選び、その番号を解答欄に記入しなさい。[10点]

(1)丸い種子をもつエンドウの純系と、しわの種子をもつエンドウの純系とを交配して得られるF1は全て丸い種子をもつエンドウである。F1をさらに交配した場合、丸の種子をもつエンドウと、しわの種子を持つエンドウの頻度比は5:2となる。
(2)Hardy-Weinbergの法則においては、あるアレルの遺伝子頻度はホモ接合体の頻度にヘテロ接合体の頻度の半分を加えた値になる。
(3)フェニールケトン尿症は常染色体劣性遺伝病である。ヘテロ接合体の頻度を0.02%とすると、新生児約2万人に一人の割合で罹患児が生まれることになる。
(4)Hardy-Weinbergの法則によれば、親の世代での遺伝子頻度が雌雄で0.6と0.2と異なる場合、子供の世代ではこの遺伝子頻度の雌雄比は1.5:1になる。
(5)選択交配は近親交配に比べ、集団の遺伝的構成を変化させることが多い。
(6)近交係数はある個体の持つ2個の相同遺伝子が、共通の祖先遺伝子に由来する確率である。
(7)いとこ婚の両親からの子供は、劣性遺伝病の危険率が、そうでない場合を比べると約20倍になる。
(8)集団サイズが小さくなると、その遺伝子構成は偶然的遺伝子頻度の浮動の影響を受けにくくなる。
(9)ある単一遺伝子病の原因となる変異がある集団で共通の場合、超優性効果の可能性が高い。
(10)致死的な遺伝子が集団内に高い頻度で維持されている場合があるが、これは雑種強勢で説明できる。
(11)アデニンからチミンヘの変化をtransitionと呼ぶ。
(12)transitionよりtransversionの方が頻度が高い。
(13)域内の2塩基の欠失や挿入ではフレームシフトが起きる。
(14)ヒトのゲノム上のCpA配列では突然変異が起きやすい。
(15)塩基の互変異性体でG:TやA:Cなどのプリン:ピリミジンのミスマッチが起きることがあるが、プリン同士のミスマッチが起きることはない。
(16)遺伝子変換では供与側の遺伝子の塩基配列は変化しない。
(17)機能喪失変異では通常優性遺伝病となる。
(18)イントロン内の1塩基置換でスプライシングの異常が起きることはない。
(19)優性阻害変異では、遺伝子が欠失している場合に比べ症状が重くなる。
(20)トリプレット病は分散型反復配列のリピート数の増加により起きる。


6.次の(1)〜(5)の文章のうち、出生前診断を行うことが考慮される場合とは言えないものを一つ選び、番号を解答欄に記入しなさい。[5点]

(1)夫婦のいずれかが染色体異常の保因者
(2)染色体異常児を妊娠、分娩した既往を有する場合
(3)高齢妊娠
(4)夫婦が社会的な理由で、強く男女の産み分けを希望している場合
(5)胎児が重篤な疾患に罹患の恐れのある場合


7.主要組織適合抗原(MHC)は免疫応答の個体差を決定する重要な分子である。MHCの遺伝学的特徴を3つ簡潔に記しなさい。また、MHCが免疫応答の個体差を決定する機序として考えられることについて述べなさい。[10点]


8.遺伝病の発症予防・治療法に関して以下のそれぞれのレベルで1つ以上述べなさい。[10点]

(1)変異遺伝子、 (2)変異mRNA、 (3)変異蛋白質、
(4)代謝あるいはその他の生化学的機能障害、 (5)臨床的形質、 (6)家族。


9.以下の問について答えなさい。[5点×2]
(1)ヒトゲノム解読の完了後、医学を含めた生命科学分野の研究はどう展開し、また何が重要になるか思う所を記しなさい。

(2)比較ゲノム解析について知る所を記しなさい。


10.次の問に答えなさい。[15点]
(1)ヒトの癌化に関係する遺伝子として、下記の(A)〜(D)の範疇に入る遺伝子を挙げなさい。
(A)がん遺伝子( )( )、 (B)がん抑制遺伝子( )( )、
(C)細胞周期関連遺伝子( )、 (D)修復遺伝子( )

(2)癌抑制遺伝子について、発癌に至る遺伝子(染色体)の変化について順を追って説明しなさい(必要ならば図示すること)。

(3)現在行われている癌の遺伝子治療について概説し、その問題点について述べなさい。

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