平成13年度 統合機能生理学 後期追試験

平成14年1月16日実施、試験時間は120分。問題・解答用紙はB4で4枚。

1枚目
1)味細胞はターンオーバーが速く、ほぼ(1:10)日で新しい味細胞と入れ替わる。甘みの受容には細胞内の(2:cAMP、IP3、DAG、PKC、Ca2+、PKAなど)や(3:2に同じ)などの細胞内伝達物質が関与している。また、脂肪細胞からは(4:レプチン)が分泌され味細胞に働き、味受容をコントロールしている。
2)味細胞からの情報は(5:(延髄)孤束)核に伝えられ、その情報の一部は唾液の分泌をコントロールしている。これには(6:上唾液)核や(7:下唾液)核が関与している。

2.意識、脳波および睡眠に関する次の記述で、( )に最も適した語句を解答欄に記入しなさい。
1)覚醒、睡眠にはいろいろな化学物質が関与しているが、それには(9:青斑)核から分泌される(10:ノルアドレナリン)、(11:縫線核)核から分泌される(12:セロトニン(5-HT))、更に(13:前脳基底部)領域の核から分泌される(14:アセチルコリン(Ach))等がある。このうち(10)と(12)はアミンと呼ばれ(10)は注意の集中に、(12)はnon-REM睡眠に関与している。
2)睡眠深度が深くなるにつれEEGの振幅は(15:増大)し、波長は(16:長)くなる。しかしREM睡眠になると振幅は(17:低下)し、波長は(18:短)くなる。また、筋の緊張は(19:低下)する。深睡眠時の脳波は(20:δ(デルタ))波と呼ばれ(21:0.5〜3.5(この間の値も可))Hzくらいの頻度を持つ。
3)REM睡眠は別名(22:体)睡眠又は(23:逆説(または夢))睡眠とも呼ばれる。一方、nonREM睡眠は(22)に対して(24:精神)睡眠とも呼ばれる。

3.学習、記憶に関する次の記述で、( )に最も適した語句を解答欄に記入しなさい。
1)非連合学習には(25:慣れ)と(26:鋭敏化)があるが、(25)は繰り返し刺激によって感覚経路のシナプス伝達に(27:抑圧)が起こる事がその機序である。しかし、強い刺激を加えると(26)が起こり反応が増加する事がある。これらの発生機序には(28:AMP、PKA、PKC、DAGのいずれか)、(29:28に同じ)や(30:28に同じ)等の細胞内伝達系が関与している。
2)記憶時間による分け方では(31:短期)と(32:長期)に分けられ、(31)はシナプス終末での(33:カルシウム)イオン濃度が主に関与し、(32)は(34:タンパク)合成が関与している。
3)記憶障害には健忘症があるが、その病変部位によって(35:間脳性健忘症)と側頭葉性健忘症とに分けられる。(35)を起こす疾患として(36:コルサコフ症候群)と(37:慢性アルコール中毒)がよく知られ、(36)は(38:ビタミンB1)の欠乏によって起こり、視床内側部や(39:乳頭体)が侵される。

4.大脳皮質の機能に関する次の記述で正しいものには○を解答欄に記入しなさい。但し、誤ったものに○を付けた時には減点する。
40)( )中心後回の部分損傷で明らかな感覚消失が起こる。
41)( )前頭前野は運動には関与していない。
42)(○)22野が障害されると話の意味を理解する事が出来なくなる。
43)(○)大脳皮質には機能的円柱が存在し、一つの円柱への入力は限られる。
44)(○)交連線維は左右の大脳半球の間の線維結合を行う。
45)( )大脳の複雑な高次機能は主に細胞の数に依存している。
46)(○)41、42野には視床からの聴覚情報が直接入力する。
47)(○)ウェルニッケ野の障害では文法の誤りや話がくどくなるなどの症状が見られる。
48)(○)中枢性の聴覚系の障害でははっきりした聴力障害は起こらない。
49)( )錐体路は前頭野からの線維のみで構成されている。
50)(○)Broca野の障害では話すのが遅いなどの症状が見られる。


2枚目
1.次のうち正しいものはどれか。記号を明瞭に、○で囲みなさい。
(1)伸張反射はレンショウ細胞を介する単シナプス性の反射である。
(2)ラット視床下部視索前野を電気刺激するとロルドーシスが誘発される。
(3)刺激毛による痛点は手背部より前額部の方が多い。
(4)視床下部外側野を刺激すると捕捉攻撃行動が誘発される。
a:(1) b:(2) c:(3) d:(4) e:なし                   答え d

2.次のうち正しいものはどれか。記号を明瞭に、○で囲みなさい。
(1)宇宙から帰還すると歩行困難や体液の上半身への移行が生じる。
(2)宇宙酔いは乗り物酔いの薬物治療が有効であるが、訓練も有効である。
(3)微小重力環境における体重減少は、食欲不振とともに筋萎縮や体液喪失による。
(4)微小重力環境における免疫異常は宇宙線障害による白血球の増加である。
a:なし b:(1)、(4) c:(2)、(3) d:(2)、(4) e:(3)、(4)         答え c

3.( )の中に正しい語句を記入しなさい。
1)感染炎症時の食欲不振には(CRH、IL−1、TNG、プロスタグランジン)などが関与している。
2)セロトニンは強力な摂食抑制物質であり、脳内でインスリンやコレシストキニンとともに3大栄養素の中では(炭水化物)の摂取をとくに抑制する。
3)皮膚表面の痛みは、血圧や心拍数を(上昇)させると同時に、(非オピオイド系 または モノアミン系)を介する鎮痛機構を賦活化する。
4)ラットの(扁桃体 または 扁桃体中心核)を電気刺激すると、すくみ反応や脱糞、さらには、モノアミンレベルの上昇や驚愕反射の充進等が誘発される。
5)パーキンソン病では(振戦、無動、仮面様顔貌)などの症状が出現する。

4.ブドウ糖感受性ニューロンのブドウ糖応答機構を説明しなさい。
以下の2つの機構が明らかになっている。
1)ブドウ糖が代謝されATPが産生され、Na-Kポンプ(Na-K ATPase)を活性化し、Naイオンが細胞外に排出されて過分極が起こり、活動が抑制される。
2)ブドウ糖が代謝されATPが産生され、ATPで活性化されるKチャネルが開いて過分極し、活動が抑制される。

5.小脳の構造と機能について説明しなさい。
以下の点を述べていること。図示することも可。場合によっては加点。
1)構造:(1)小脳半球、中間部、虫部、(2)新小脳、旧小脳、古小脳と線維連絡の関係、(3)小脳皮質および小脳核について説明する。またプルキンエ細胞、顆粒細胞、ゴルジ細胞、バスケット細胞、星状細胞、登上線維、苔状線維などのキーワードで神経回路の説明をしてもよい。
2)機能:体の平衡、運動および姿勢の制御について説明をする。小脳失調を例に説明してもよい。動眼神経反射をモデルとして説明しても可。

6.怒り反応の中枢発現機構を説明しなさい。
以下の点を述べていること
1)視床下部腹側内核から中心灰白質吻側外側部を経て威嚇攻撃行動を誘発する経路が怒り反応の主要経路である。
2)前視床下部や視床下部背内側部から中心灰白質尾側外側部を経て威嚇後退反応を起こす経路も怒り反応に関与する。
3)怒り反応の際に、上記の経路が働いて、心拍や血圧の上昇、とくに四肢の血流の増加、オピオイド非依存性鎮痛作用も引き起こす。

7.内分泌攪乱物質の特徴を説明しなさい。
以下の点を述べていることが望ましいが、異なる視点からの論述でも正しい記述であれば可。
1)環境中に広く分布している物質で構造的にエストロゲンなどの内在性ホルモンと類似しており、エスロトゲン受容体に結合し、エスロトゲンの生理作用を撹乱する。アンドロゲンや甲状腺ホルモンの作用を撹乱する場合もある。
2)従来の一般毒性や生殖毒性、発癌性など毒性学の評価法では、とらえきれない側面を持つ。特に胎児期や乳児期に重大な影響を受ける可能性がある。


3枚目
1.次の文章のうち、正しいものに○をつけなさい。間違っているものに○をつけると、その分だけ減点になる。
ア(○)発熱中でも体温が一定であれば、熱産生量と熱放散量はほぼ同じといえる。
イ(○)変温動物(polikilothermic animals)も体温調節を行う。
ウ( )変温動物(polikilothermic animals)は発熱しない。
エ( )ヒトの温熱的中性域(thermoneutral zone)は、33〜36℃である。
オ( )褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生は、細胞膜にある脱共役蛋白質が重要である。
カ( )"寒け"がして暖房のスイッチを入れた。この時、体温は低下していると考えられる。
キ( )同じ日本人でも、大人になってタイに移住したヒトは、能動汗腺数が多くなる。
ク(○)非蒸散性熱放散では、皮膚血管の拡張が重要な役割を果たしている。
ケ(○)睡眠時には、体温は覚醒時に比べて低下する。
コ( )内因性発熱物質は視床下部の温ニューロン活動を増強し、冷ニューロン活動を低下させることによって、発熱を起こす。
サ(○)ラットで視索前野、前視床下部を加温するとだ液分泌が増加する事が期待される。
シ(○)炎症性サイトカインには発熱、睡眠、食欲低下、ACTH分泌を起こす作用がある。
ス( )非ステロイド性解熱薬はプロスタグランディン産生を促進することにより、解熱作用を発揮する。
セ(○)リンパ球は、視床下部ホルモンや下垂体ホルモンも分泌し、また、それらに対する受容体も発現している。
ソ(○)ストレスによって免疫系機能が修飾される機序として、自律神経系および神経内分泌系の賦活化がある。
タ( )ストレスによって免疫機能が充進することはない。
チ( )バゾプレッシン(vasopressin)は、内因性発熱物質の一つである。

2.次の文を読んで以下の問に答えなさい。答えは日本語でもよい。
Following intravenous infusion of a hypertonic NaCl solution, a dog drinks twice as much water as it does after intravenous infusions of an osmotically equivalent solution of urea. In the former case, because the membranes are impermeable to Na+ ions, water (ア) the cells. But the cell membranes are readily permeable to urea, so that when it is injected, the concentrations in the intracellular and extracellular spaces equilibrate, with a distinctly smaller change in volume and osmolarity of the cells.
If the total volume of the extracellular fluid is reduced without changing the NaCl cocentration, thirst is also induced.
Experiments have shown that the effects of the above two factors are additive, so that simultaneous decrease in (イ) and in (ウ) gives rise to intense thirst.
[intravenous=静脈内;urea=尿素;equilibrate=平衡になる;intense=強い]

問1.ア、イ、ウに入るもっとも適当な語句を下から選べ。
 cell volume, leaves, comes into, intracellular ion concentration,
extracellular fluid, destroys, Na+ ions, intracellular osmolarity
ア(leaves)、イ(cell volume)、ウ(extracellular fluid)

問2."the total volume of the extracellular fluid is reduced without changing the NaCl cocentration"の状態が起こった時に血中で増加することが予想されるホルモンをあげよ。
レニン、アンジオテンシンU、アルドステロン、グルココルチコイドなど

問3.座骨神経を用いた活動電位の実習について間違っているものに×をつけなさい。正しいものに×をつけると、減点になる。
ア(×)神経の刺激は、矩形波を1秒聞に10回通電して行った。
イ(×)銅線でできた電極の上に、カエルの座骨神経を置いて行った。
ウ(×)刺激の持続時間をアイソレータで設定した。
エ( )誘発された活動電位を10回平均加算して、コンピューターに記録した。
カ( )電気刺激装置からアナログ/デジタル変換装置への直接の接続は、掃引パルス(または、トリガー(引き金)パルス)のためである。
キ( )記録電極をリンガー液で浸した糸で短絡すると、活動電位の振幅が小さくなった。
ク(×)座骨神経の末梢側を刺激して中枢側で記録すると、振幅が小さくなるのは、記録部位で活動電位を発生している神経線維の数が少ないためである。
ケ( )空間定数が小さいほど伝導速度は遅い。
コ( )時定数が大きいほど伝導速度は遅い。
サ(×)外部抵抗が小さいほど、伝導速度は遅い。
シ(×)クロナキシーを求めるため、刺激の強さを種々に変えて閾値刺激の大きさを測定した。
ス( )クロナキシーと時定数は、比例関係がある。
セ( )刺激電極間をピンセットで挟んで、off responseが陽極で起こることを確認した。
ソ( )off responseの機序の一つとして、Na+イオンチャネルの不活性化の低下がある。
タ( )off responseの機序の一つとして、K+イオンチャネルの活性化の低下がある。


4枚目
1.生体リズムか障害される疾患(病態)を5つ挙げよ。
<解答例>
時差ぼけ、老化、躁鬱病、季節性感情障害、睡眠相後退症侯群、非24時間睡眠覚醒症侯群 など

2.筋紡錘が関与する代表的な単シナプス反射として膝蓋腱反射が挙げられるが、その膝蓋腱反射が起こるメカニズムを、(1)膝、(2)脊髄、(3)大腿四頭筋、の3つ部位に分けて説明せよ。
<解答>
標準生理学第5版図3-15(P170)参照

1.正しい文章を選んで、先頭の( )に○を記入せよ。間違ったものに○をつけると減点になるので注意すること。
1( )カエルのリンガー液のイオン組成は、[K+]=125mM、[Na+]=2.5mMである。
2(○)ヒトの血清電解質濃度は、[K+]=4mM、[Na+]=140mMである。
3( )K+は細胞外に多く、Na+とCl-は細胞内に多いという濃度の不均等分布が存在する。
4(○)細胞内に膜不透過の陰イオンが存在しているため、Donnanの膜平衡が成り立つている。
5(○)イオン濃度は、動物の種類、細胞の種類などによって絶対値は異なるが、細胞内外の濃度比が以ている場合は静止電位も近似する。
6( )静止電位は、イオンの相対的膜透過性と膜内外の濃度勾配で決定され、最も透過性の低いイオンの平衡電位に最も近くなる。
7(○)体液の組成イオンのうち膜透過性の最も高いのは、一般的にK+であるが、低K+濃度の溶液中では、その他のイオンの透過性も無視することはできない。
8(○)静止電位はNa-Kポンプによって維持されている。
9( )Na-Kポンプは、ATP1分子の加水分解で生じるエネルギーを用いて、濃度勾配に逆らって、2個のNa+を細胞内から細胞外へ運び出し、3個のK+を細胞外から細胞内へ運び入れる。その結果、細胞内のK+は高濃度に、Na+は低濃度に、静止電位は負に維持される。
10( )虚血状態になると、細胞内のK+濃度、細胞外のNa+濃度が上昇し、静止電位は深くなる(過分極方向に向かう)。
11(○)静止電位が活動電位の発生閾値に近づいて、過剰の活動電位の発生が認められる状態は、臨床的にはケイレンに対応すると考えられる。
12( )静止電位が活動電位の発生閾値を超えて脱分極の状態になると、活動電位は自然に発生するようになる。
13(○)静止電位測定用のガラス微小電極内には、3mMよりも、3MのKCl溶液を入れるほうが望ましい。
14(○)オシロスコープやペン書きレコーダーに直接微小電極をつないで静止電位を測定してはいけない。
15(○)先端電位は、ガラス微小電極の先端を折ったときの電位変化を測定することで推測できる。
16( )高濃度K+溶液中ではK拘縮がみられるが、この時必ず活動電位も観察される。
17(○)Nernstの式により、K+の平衡電位が計算できる。
18( )リンガー液の浸透圧が高張な場合は、その中の細胞は膨張する。
19( )筋細胞の活動電位を細胞内記録するためには、興奮収縮連関を遮断しないように注意する必要がある。
20( )筋の終板電位を細胞内記録する方法として、リンガー液を高Ca、低Mg液にする方法がある。


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