平成14年度 統合機能生理学 後期本試験

平成14年12月20日実施、試験時間は120分。問題・解答用紙はB4で6枚。

以下の解答(例)は当日掲示されたもの。

1枚目
認知と記憶に関する記述で( )に最も適当と思われる語句を下記の解答欄に記入しなさい。
1)記憶の過程には(1:記銘)、保持および(2:想起)の3段階がある。
(1)には大脳のうち(3:海馬or扁桃体)が密接に関与し、保持には(4:側頭葉の連合野、or全体)が関与している。
2)記憶には人の顔やエピソード等の記憶に関係する陳述記憶と自転車などに乗る事を覚える(5:非陳述記憶)がある。(5)の記億には大脳基底核や(6:小脳)が重要な役割を果たしている。
3)学習には非連合学習と連合学習があり、非連合学習は(7:繰り返し)の様な刺激を与えると生じ、連合学習の代表はロシアの(8:パブロフ)が見つけた(9:条件付け)である。
4)コルサコフ症侯群では脳しんとうに伴って見られる健忘とは異なり、(10:前行性健忘)と呼ばれる障害が起こる。

2枚目
1.脳波の発生源で重要な脳構造物はどれか。              (1)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.大脳皮質
b.網様体賦活系
c.視床非特殊核
d.視床下部
e.小脳皮質

2.健常者の覚醒時脳波で出現しない波はどれか。             (5)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.α波
b.β波
c.θ波
d.δ波
e.頭蓋頂鋭波

3.どの脳の部位が睡眠を引き起こすことができるか。 (2)
選択肢 1(a), 2(b), 3(c), 4(d), 5(e)
a.小脳皮質
b.視床下部後部
c.中脳網様体
d.視床特殊核
e.後頭葉

4.レム睡眠の特徴で正しいものはどれか。 (1)
選択肢 1(a)(b), 2(b)(c), 3(c)(d), 4(d)(e), 5(a)(e)
a.夢をみる
b.筋緊張の低下
c.緩徐な眼球運動
d.睡眠紡錘波の出現
e.α波の出現

5.レム睡眠とノンレム睡眠の周期を形成するものはどれか。        (3)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.視交叉上核のクロック遺伝子
b.橋網様体のアセチルコリン
c.縫線核のセロトニン
d.青斑核のノルアドレナリン
a中脳黒質のドーパミン

6.連合野の機能で正しい組み合わせはどれか。 (5)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.側頭連合野−対象の位置、動きを知る
b.頭頂連合野−対象が何であるかを知る
c.前頭連合野−状況を判断し予測する
d.前運動野−選択された運動の方法をセットする
e.補足運動野−運動の順序の記憶を読み出す

7.右大脳半球損傷でおこる症状はどれか。                (2)
選択肢 1(a)(b), 2(b)(c), 3(c)(d), 4(d)(e), 5(a)(e)
a.手指失認
b.着衣失行
c.左半側空間無視
d.色彩失認
e.左右失認

8.左大脳半球損傷でおこる症状はどれか。 (4)
選択肢 1(a)(b), 2(b)(c), 3(c)(d), 4(d)(e), 5(a)(e)
a.相貌失認
b.視覚失認
c.運動視喪失
d.失書
e.失読

9.失語症で正しい記載はどれか。 (5)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.運動失語はWernicke失語ともいわれる
b.感覚失語はBroca失語ともいわれる
c.運動失語は非流暢性発語障害である
d.感覚失語は流暢性発語障害である
e.健忘失語は命名障害である

10.誘発電位検査で正しい記載はどれか。 (3)
選択肢 1(a)(b)(c), 2(a)(c)(e), 3(b)(c)(d), 4(b)(d)(e), 5(c)(d)(e)
a.脳波計で記録する
b.加算平均法を使う
c.脳波に比べて小さい
d.末梢の感覚神経を刺激する
e.秒単位の脳機能を検査できる

3枚目
1.次の文章のうち、正しいものに○をつけなさい。間違っているものに○をつけると、その分だけ減点になる。
ア( )体温が一定でも発熱中は、熱産生量が熱放散量を上回っている。
イ( )変温動物(poikilothemic animals)は発熱しない。
ウ( )褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生は、細胞膜にある脱共役蛋自質が重要である。
エ( )ヒトの温熱的中性域(thermoneutra1 zone)は、33〜36℃である。
オ(○)温熱的中性域(thermoneutra1 zone)の体温調節では、皮膚血管運動が重要である。
カ(○)ヒトの熱産生の大部分は、骨格筋で行われる。
キ( )褐色脂肪組織による非ふるえ熱産生は、ノルアドレナリンα受容体の刺激によって増加する。
ク(○)発汗がなくても蒸散性熱放散はおこっている。
ケ(○)一般に能動汗腺数は、日本人よりフィリピン人の方が多い。
コ( )日本人でも、大人になってタイに移住し長く住んでいると、能動汗腺数が多くなる。
サ(○)非蒸散性熱放散では、皮膚血管の拡張が重要な役割を果たしている。
シ( )発熱が急激に起こる時は、発汗促進、ふるえ、皮膚血管収縮が起こる事が期待される。
ス( )"寒け"がして暖房のスイッチを入れた。この時、体温は低下していると考えられる。
セ( )内因性発熱物質は視床下部の温ニューロン活動を増強し、冷ニューロン活動を低下させることによって、発熱を起こす。
ソ(○)イヌで視索前野・前視床下部を加温するとパンティングが起こる事が期待される。
タ( )バゾプレッシン(vasopressin)は、内因性発熱物質の一つである。

2.次の間いに答えよ。
1)間違っているものの組み合わせはどれか。
(1)生体内の細胞間質液(interstitial fluid)は、体重のわずか5%にすぎない。
(2)細胞内脱水(intrace11u1ar dehydration)は、細胞外液の高浸透圧によって起こる。
(3)肝臓で産生されたレニン(rennin)は、アンギオテンシンU(angiotensinU)の産生を促す。
(4)バゾプレッシン(vasopressin)の腎臓における作用は、主にV1受容体を介している。
ア.(1),(2)のみ イ.(2),(3)のみ ウ.(4)のみ エ.(1),(3),(4)のみ オ.すべて  答え(エ)

2)間違っているものの組み合わせはどれか。
(1)肝門脈領域の浸透圧感受性神経終末からの情報は、脊髄から視床下部へ伝えられる。
(2)脳室周囲器官(circumventricu1ar organ)には、圧受容ニューロンがある。
(3)乳頭体は、脳室周囲器官の一つである。
(4)浸透圧感受性ニューロンは、浸透圧の上昇によって細胞の体積が増加し、発火頻度も上昇する。
ア.(1),(2)のみ イ.(2),(3)のみ ウ.(4)のみ エ.(1),(3),(4)のみ オ.すべて  答え(オ)

3)オスザルの性行動について、間違っているものの組み合わせはどれか。
(1)内側視索前野(media1 preoptic area)のニューロンは、陰茎挿入(intromission)時に活動が上昇する。
(2)陰茎勃起(erection)は交感神経系、射精(ejacu1ation)は副交感神経系が関与している。
(3)ドーパミンは、性行動に対して抑制的に作用する。
(4)セロトニンは、性行動に対し促進的に作用する。
ア.(1),(2)のみ イ.(2),(3)のみ ウ.(4)のみ エ.(1),(3),(4)のみ オ.すべて  答え(オ)

4)メスラットの性行動について、正しいものの組み合わせはどれか。
(1)内側視索前野を破壊すると、ロルドーシスが消失する。
(2)腹内側核(Ventromedia1 nuc1eus)は、ロルドーシスに対して促進的である。
(3)エストロゲンは、ロルドーシスに対して促進的である。
(4)ロルドーシスは、錐体外路系が関与している
ア.(1),(2)のみ イ.(2),(3)のみ ウ.(4)のみ エ.(1),(3),(4)のみ オ.すべて  答え(オ)

4.座骨神経を用いた活動電位の実習について正しいものに○をつけなさい。間違っているものに○をつけると、減点になる。
ア(○)神経の刺激は、矩形波通電によって行った。
イ( )銀線でできた電極の上に、ラットの座骨神経を置いて行った。
ウ( )刺激の持続時間をアイソレータで設定した。
エ( )細胞内活動電位の1O回平均加算した波形を記録した。
オ(○)電気刺激装置からオシロスコープヘの直接の接続は、掃引パルス(または、トリガーパルス)のためである。
カ( )刺激電極をリンガー液で浸した糸で短絡すると、活動電位の振幅が小さくなった。
キ(○)座骨神経の末梢側を刺激して中枢側で記録すると、振幅が小さくなった。
ク(○)空間定数が大きいほど伝導速度は速い。
ケ( )時定数が大きいほど伝導速度は速い。
コ( )外部抵抗が小さいほど、活動電位が大きく記録できる。
サ( )記録電極間をピンセットで挟んで、off responseが陽極で起こることを確認した。
シ( )off responseの機序の一つとして、Na+イオンチャンネルの活性化の低下がある。
ス(○)off responseの機序の一つとして、K+イオンチャンネルの活性化の低下がある。

5.活動電位の実習のうち、峰分かれの項で、直径が小さいC線維の活動電位を観察するためには、刺激強度を大きくする必要があった。以下は、同じ比抵抗の膜抵抗および内部低抗の無髄線維では、直径が小さい方が閾値が高くなることを説明した文である。図を参考にして、文中のかっこの中に最も適切な語句、および数値を入れなさい。
神経線維を刺激する目的で、プラス電極とマイナス電極の2本の細胞外銀線電極間に電流を流すと、大部分は細胞外液の中を流れてしまうが、一部の電流は、( プラス )電極では軸索内部へ流入し、( マイナス )電極では軸索から流出する。その結果、電流が流入するところでは、膜を横切って電圧降下が生じ、局所的な( 過分極 )が起こる。( マイナス )極に向かって軸索内を流れる電流は、軸索内に長さ方向の電圧勾配を作る。( マイナス )電極では、膜から流出する電流が局所的な( 脱分極 )を発生する。これら3つの電圧降下を合計すると、その値は2本の電極間の電位差と等しくなるはずである。
半径が20μm無髄線維において、膜抵抗が10MΩ、電極間の内部低抗が80MΩとする。単純化するため電流はすべて細胞内を流れるとすると、電極間に120mVの電圧をかけると、軸索内には( 1.2 )nAの電流が流れる。この時、( マイナス )極の脱分極は、( 12 )mVである。しかし、半径が40μmになると、膜抵抗は( 5 )MΩ、内部抵抗は( 20 )MΩと、いずれも小さくなる。その結果、軸索内を流れる電流は、( 4 )nAと大きくなり、膜低抗の減少はあっても、( マイナス )極の脱分極は、( 20 )mVと、細い場合より大きくなる。すなわち、電極間に同じ電圧をかけても、膜電位の変化は細い線維の方が小さいことになる。このことは、言い変えれば、細い線維を興奮させるためには、より強い刺激が必要である[すなわち、閾値が高い]、ということを意味する。このように、太い線維は刺激しやすいが、一方で冷却や麻酔薬の影響を受けやすい。従って、運動線維に影響を与えることなく、麻酔薬を用いて( 痛覚 )線維をブロックすることができるのである。[MΩ=10^6Ω、mV=10^-3V、nA:10^-9A]

4枚目
1)本能・情動行動の特徴を説明する下記文中の空欄に該当する言葉を記入せよ。
本能行動とは、(1:自己保存)と(2:種保存)に不可欠な生命活動であり、本能的欲求によって駆り立てられる行動(摂食行動、飲水行動、性行動など)をさす。本能・情動行動は、@感覚刺激の(3:受容)、A感覚刺激の(4:認知)と生物学的価値評価、B価値評価に基づく(5:情動)の表出ならびに主観的体験、の3つの過程からなり、必ず(6:自律神経)反応を伴い、その遂行には(6)系の協調が不可欠である。
本能的欲求が満たされた時には(7:快感)や(8:喜び)の情動、満たされない時は、(9:不快感)や(10:怒りor悲哀)等の情動が惹起される。

2)筋紡錘の一次終末と二次終末の情報変換特性の違いを説明し、生体が二種類の伸張受容器を備えているメリットを答えなさい。
解答例 実習書設問2(P22)

3)伸張受容器か関与する代表的な単シナプス反射である「膝蓋腱反射」の反射経路を、(1)受容器、(2)求心路、(3)中枢、(4)遠心路、(5)効果器に分けて説明せよ。
解答例 実習書設問4(P22)

5枚目
問1.静止電位の測定実験を思い出して、以下の問いに答えなさい。選択肢があげてあるものは正しいものを一つ選んで○で囲み、空欄には適当な単語を記入しなさい。
1. (皿・○微小・パッチ) 電極を用いた2.(○細胞内・細胞外・ホールセル)記録法により、3.(○カエル・ラット・マウス)縫工筋の静止電位を測定した。
回路に電極をセットして電極をリンガー液中にいれ、増幅器の電源をいれた。E1ect1ode Testのボタンを押して回路に1nAの電流を流すと、記録電極と不関電極の間に、15mVの電位差が観察された。したがってこの電極の電極抵抗は4.(15MΩ)であることがわかる[単位も記入すること]。電極内には5.(3M KCl溶液)を入れたが、もし何も入れないと電極抵抗は6.(無限大)となる。
縫工筋を固定した記録用チャンバー内にノーマルリンガー液を満たした。この液の中にはK+イオンが7.(2.5mM)、Na+イオンが8.(125mM)の濃度で含まれている。細胞内に電極が入った瞬間、9.(-90mV)程度の大きさの10.(○静止・活動)電位が観察される。
静止電位とK+イオン濃度の関係を調べるために、リンガー液中に含まれるK+イオンの濃度を1O倍あげると、静止電位は約11.(59)mV、12.(過分極・○脱分極)側に変化することが期待され、ほぼその通りになった。リンガー液中のK+イオン濃度をさらにあげていくと、静止電位はほぼK+イオンの13.(平衡)電位に一致した。このことより、       リンガー液のK+イオン濃度が高いと、静止電位は主に14.(K+)イオン濃度によって決まることが推測される。
リンガー液中のK+イオンの濃度をノーマルより下げていくと、測定される静止電位の値は、15.(Nernst)の式から推測される値よりもかなり、16.(過分極・○脱分極)側になり、むしろ17.(Go1dman-Hodgkin-Katz)の式から推測される値に近い値が観察される。したがってリンガー液のK+イオン濃度が低いと、静止電位の値には18.(K+だけでなくNa+およびC1-の複数のイオン)が関与することが推測される。
15、17の式はいずれも19.(受動)輸送のみを考慮した式であるが、実際の細胞では20.(能動)輸送が静止電位の維持に大きく関与している。

間2.正座をしていると、しばらくすると足がじんじんしてきて、さらに正座を続けていると足に触っても感覚が鈍くなり、正座をやめるとまたじんじんしてくる。この現象の発生機序について述べよ。
細胞の静止電位はNa-Kポンプ(Na-K ATPase)を働かせることによって能動的に維持されている。すなわち、ATP1分子の加水分解により発生するエネルギーを用いて、濃度勾配等によって細胞内に流入するNaイオン3個を細胞外にくみ出し、濃度勾配により細胞外に流出するKイオンを2個細胞内にくみ入れる。その結果、細胞内外のイオン濃度勾配が維持され、静止電位は負の一定値に維持される。
正座をしていると、体重による圧迫で足の血流が悪くなり、足の細胞は虚血状態となる。虚血になると、血流による酸素およびグルコースの供給が低下し、ATPの産生量が減少する。その結果、Na-Kポンプの機能が低下し、細胞外のK濃度が上昇し、細胞内のNa濃度も上昇し、静止電位はしだいに脱分極方向に変化する。静止電位がしだいに発火の閾値に近づいていくと、少しの刺激で活動電位が発生したり自発発火がみられるようになったりする。これが、足のじんじん感を引き起こす。
さらに静止電位が浅くなり、発火の閾値を超えて脱分極側に移行すると、脱分極ブロックの状態となり、活動電位はもはや発生しなくなる。これが足に触っても感覚が鈍い状態である。
正座をやめると、虚血状態が解除され、血流が回復することで、Na-Kポンプの機能が回復し、次第に静止電位が深くなるが、その過程で静止電位が発火の閾値付近にあるとき自発的な発火がみられ、足はまたじんじんしてくる。

6枚目
下の実習の説明文の括弧に入る適切な語を回答欄に書き入れよ。
ラット後肢に侵害性熱刺激を加えると、即座に後肢を跳ね上げた。侵害性の熱刺激は、痛みを伝える一次求心性線維である無髄の(@:C)線維や一部の(A:Aδ)線維の自由終末にある、(B:カプサイシン)受容体によって受容される。その結果、これら一次求心性線維に(C:受容器電位)が発生して活動電位が発生する。この情報は脊髄に入り脊髄内で(D:多シナプス)性に(E:α運動)ニューロンに伝えられ屈筋を収縮させ後肢を跳ね上げる。侵害刺激から後肢を遠ざけようとするこのような反射を(F:屈曲)反射と言う。
もし、後肢に炎症が生じ、(G:ブラジキニン)、(H:プロスタグランジン)などが産生されると、これらの物質によって(B)受容体などの痛みの受容体が感作し、その閾値が低下し(I:痛覚過敏)が生じることがある。一方、触覚は一次求心性線維の(J:Aβ)線維によって伝えられる。その受容体には、順応が非常にはやく高頻度の振動を受容する(K:パチニ小体)や順応が遅く圧覚を受容する(L:メルケル触盤)などがある。
※ G、Hは順不同で、その他にセロトニン、P物質、H+、K+など


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