血液 平成12年度概説試験

平成12年11月22日実施

1.発熱・出血・倦怠感を主訴した急性白血病を疑う患者が来院した.
  どのような造血系検査を行うか箇条書きに5つ述べなさい.(=H.13年度II、H.14年度IV)
    末梢血血球検査
    骨髄穿刺検査
    特殊染色
    染色体検査
    遺伝子診断検査
    細胞表面マーカー

2.血液の検査に関して次の問に答えよ.(≒H.13年度III、H.14年度II)
(1) 赤血球,血小板,白血球のヒト成人における基準範囲を列記せよ.
赤血球:400万〜500万/μl
白血球:3,800〜9,000/μl
血小板:14万〜44万/μl
(2)凝固検査をする時の注意点に関連して,下記の記述の(a-f)の中から正しいものを選び○印をつけよ.

a.凝固検査用採血は抗凝固剤を添加して採血しなければならないが,抗凝固剤の種類によって,検査データが異なってくることはない. →× 抗凝固剤の性質によって異なる。
b.抗凝固剤と血液の混合比率は(1:7)〜(1:9)の間に収まっていなければならない.
→× 厳密に1:9である必要がある
c.凝固検査用の抗凝固剤はヘパリンが望ましい. →× 電解質分析に用いる
d.凝固検査用の抗凝固剤はクエン酸が望ましい. →○
e.凝固検査用の抗凝固剤はEDTA-k2が望ましい. →× 血球計数に用いる
f.凝固反応は蛋白質の限定分解であるので,凝固用検体は採血したら直ちに氷冷することが望ましい.
   →× 直ちに検査に用いる。2時間以上かかる場合は−80℃以下の冷凍庫で保存。

3.再生不良性貧血(25才,女性)が来院した.血算はヘモグロビン値6.5g/dl,白血球数1500/ml,血小板数15000/mlであった.どのような症状に着目して診察を行い,どのような輸血療法を考慮すればよいか.
  正しいものに○,間違っているものに×を記せ.
(1) 赤血球輸血はヘモグロビン値が10g/dl以下であれば直ちに検討するべきである.
 →×7g/dl以下で検討されるが絶対的適応ではない。
(2)肝機能障害がある患者はすべて新鮮凍結血漿輸血が適応となる. →× 凝固因子欠損が著しい場合検討。
(3)感染症状が無くても白血球が500/ml以下に減少している場合は顆粒球輸血を行う.
 →× 理由としては、HLAの一致する人が必要、経費が患者負担、GVHD、効果が低い、など。
(4)疾患によっては症状が安定している場合,末梢血血小板が1万/ml以下であっても必ずしも血小板輸血は適応とならない. →○ 
(5)輸血が必要かどうかの判断には倦怠感,頻脈,発熱の有無,口腔内出血などの臨床所見の観察が必要である. →○
  
4.正しいのはどれか.2つ選び,解答欄に番号を記せ.
(1)Niemann-Pick病ではLangerhans細胞の進行性増殖を来す. →× Letterer-Siwe病の誤り
(2)マラリアでは脾に大量のヘマトイジンが沈着する. →× 沈着するのはヘモゾイン
(3)原発性骨髄線維症はしばしば巨大脾腫を来す. →○ 
(4)Langerhans細胞の多くはS-100蛋白陰性である. →× 陽性
(5)胸腺腫は上皮性腫瘍である. →○

5.次の文を読み,正しい文に○,誤った文に×をつけなさい.
(1)正常新生児において末梢血ヘモグロビン値が19g/dlは正常範囲である. →○
(2)ヒトの造血臓器は胎生期から成人に到るまで骨髄である. →× 胎生期は中胚葉、肝臓、脾臓
(3)健康な3歳児では末梢血中のリンパ球数は好中球より多い. →○
(4)小児白血病は年間15才未満の小児人口1万人に1人の頻度で発生する. →×小児癌がこの頻度
(5)小児の急性リンパ性白血病の好発年齢は2から4才である. →○
(6)小児急性白血病の診断には末梢血白血球数の増加が必須の所見である. →× 一般に必須ではない
(7)小児急性リンパ性白血病の再発部位として骨髄,中枢神経系,精巣が重要である. →○
(8)小児急性リンパ性白血病の5年生存率は20%以下である. →× 50〜60%

6.造血幹細胞移植について,文章が正しければ○,誤っていれば×をつけよ.
(1) 造血幹細胞移植の対象疾患は,白血病や再生不良性貧血であれば,鉄欠乏性貧血に実施されることもある.
     →○
(2)同種移植においては,ドナーとレシピエントのHLAの適合度が移植成績に影響を及ぼす.急性GVHDが重症化するに従って順に移植成績が低下する. →× 重症なほど再発は減る
(3)同種移植では,抗がん剤の投与量の増加に伴う抗腫瘍効果の増強と輸注した幹細胞や白血球による免疫学的な抗腫瘍効果が期待できる. →○ GVLのこと
(4)移植後の再発に対して移植時の同一ドナーからリンパ球を採取し,輸注する治療法が実施されており,なかでも急性骨髄性白血病の再発に対して有効率が高い. →成果は上がっていない。
(5)再生不良性貧血では,自己の幹細胞が十分採取できないため,自家移植は実施困難である.また,慢性骨髄性白血病では,幹細胞にも異常が認められるため,理論的には,自家移植で治癒は目指せず自家移植の適応はほとんど無い. →○ 

7.再生不良性貧血について,(1)〜(6)から正しいものを3つ選んでください.(≒H.13年度IV)
(1)正球性正色素性貧血を来す. →○
(2)網状赤血球は増加する. →× 減少する
(3)血清鉄は低下する. →× 上昇する
(4)血漿鉄消失時間(PIDT1/2)は延長する. →○
(5)骨髄は低形成である. →○
(6)Vit.B12の筋注が特効薬である. →× 悪性貧血の誤り

8.溶血性貧血について,正しいものには○,誤っているものには×をつけてください.
(1)小球性低色素性貧血を来す. →× 正球性正色素性
(2)網状赤血球は増加する. →○ 
(3)間接ビリルビン値が上昇する. →○
(4)ハプトグロビン値が上昇する. →× 低下する
(5)骨髄は赤芽球系過形成を示す. →○

9.常温型自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断に必要な検査
 (赤血球に対する自己抗体を検出する検査)の名前を記入してください.
   クームス試験

10.小児の貧血について正しい組み合わせはどれか.
(1)特発性再生不良性貧血には染色体異常を伴うことが多い. →× 特発性とは原因不明のこと
(2)Diamond-Blackfan貧血には染色体不安定性が見られる. →× FAの誤り
(3)重症再生不良性貧血にはHLA適合同胞から骨髄移植を行う. →○
(4)遺伝性球状赤血球症の患児は胆石を合併しやすい. →○
(5)球状赤血球症の患児はヒトパルボウイルスB19感染後に溶血発作を起こす. →× 赤血球の産生低下
    a.(1)(2) b.(1)(5) c.(2)(3)
    d.(3)(4) e.(4)(5)

11.血液凝固線溶系疾患に関する下記の文章において正しいものに○,誤りに×をつけよ.
  また誤りの文章の中の語句を簡潔に訂正し,正しい文章にせよ.
(1)播種性血管内凝固症候群(DIC)において,診断するために最も必要な検査は血小板数とFibrin degradation products(FDP)である. →○
(2) ヘパリンは,トロンボモジュリンの作用を増強し,抗凝固作用を示す.
 →× アンチトロンビンIIIに作用
(3)トロンビンは,フィブリノーゲンを分解し,フィブリンとする. →○
(4)プラスミンは,フィブリンを分解し,FDPとする. →○
(5)凝固[因子欠損は,男女ともに同じ比率で発症する. →× 男性に圧倒的に多い
(6)von Willbrand Factor(vWF)は,血小板粘着に重要であり,その機能異常ある いは欠損を示すvWDでは出血時間が延長する. →○
(7)プロトロンビン時間(PT)が延長し,活性化部分トロンポプラスチン時間(APTT)が正常のときは凝固]因子の欠乏を考える. →× VII因子の欠乏
(8)DICは,血液悪性腫瘍に併発することが多い. →○
(9)一般的なDICは,過剰線溶が出血傾向を増悪させるので抗線溶療法を優先する. →× 抗凝固療法
(10)ビタミンK欠乏では,凝固第Xおよび[因子活性が低下し 出血傾向を示す. →× II,VII,IX,X因子

12.括弧内の最も適切な項目を選択せよ.
(1) 正常成人の体内総鉄量は(a.3〜4mg, b.30〜40mg, c.3〜4g)である。 →c
(2) 体内総鉄量の約70%は(a.ヘモグロビン鉄, b.トランスフェリン鉄, c.フェリチン鉄)である。 →a
(3) 鉄欠乏による貧血は(a.大球性正色素性, b.正球性正色素性, c.小球性低色素性)貧血である。 →c
(4) 鉄欠乏性貧血の赤血球形態異常では(a.大小不同症, b.巨赤血球, c.球状赤血球)が特徴である。 →a
(5) 鉄欠乏性貧血の鉄剤による治療は、原則として(a.経口投与, b.経静脈投与)で行う。 →a

13.巨赤芽球貧血について誤っているのはどれか.
a.正球性正色素性貧血に分類される. →× 大球性正色素性貧血
b.V.B12の吸収は回腸で行われる. →○
c.悪性貧血では抗内因子抗体が高率に出現する. →○
d.巨赤芽球は,核が未熟で,胞体は比較的成熟している. →○
e.葉酸欠乏による貧血ではシリング試験陽性である. →× 陰性
1)a,d 2)a,e 3)b,d 4)c,e 5)d,e

14.以下の2題に関しての語句説明をせよ.
(1)急性白血病のFAB分類
    急性白血病をMay-Giemsa染色及びペルオキシダーゼ染色の2枚の標本から簡便に分類できるようにしたもの。前者は形態の観察に用い、後者は大雑把な骨髄性(陽性)かリンパ球性(陰性)かを判別するのに用いる。骨髄性のものはM0〜M7、リンパ球性のものはL1〜L3に分類されるが、M0,M7はペルオキシダーゼ陰性を示し、L1/L2は区別する意義が薄いなどone and onlyの分類法とは言えなくなって来ており、他の検査と併用することが望ましい。ただ、1時間程度あれば診断がつく簡便性は捨てがたく、一刻を争う疾患であることから、まずFAB分類によって暫定的な診断を下して即治療を開始し、同時に検体を別の染色法による鏡検や、遺伝子診断などに回して後日確定診断を行うという流れが良いように思われる。


(2)骨髄異形成症候群のFAB分類
    骨髄及び末梢血における芽球の比率や形態観察によって、骨髄異形成症候群(MDS)を、
     RA(不応性貧血)
     RARS(環状鉄芽球を伴う不応性貧血)
     RAEB(芽球過剰を伴う不応性貧血)
     CMML(慢性骨髄単球性白血病)
     RAEB-t(白血病への移行期にあるRAEB)
    の5種類に分類したもの。予後の判定と治療法の選択に用いられる。例えば、RAやRARSは慢性に経過し比較的予後が良好であるため、蛋白同化ホルモンによる造血刺激療法など貧血治療を主体とした治療を行うが、RAEBやCMMLやRAEB-tなどは慢性白血病に準じた治療法、すなわち化学療法や造血幹細胞移植などが検討される。

15.下記の(1)〜(15)の文章のうち,正しいものに○,誤りに×をつけよ.
(1)形質細胞はBリンパ球が最終分化した細胞であり,細胞性免疫を担当する. →× 液性免疫を担当
(2)急性リンパ球性白血病細胞は,ペルオキシダーゼ染色陽性細胞は3%以上になることが大部分であり,時にはPAS染色も陽性となる. →× 3%未満になる
(3)フィラデルフィア染色体は,成人の急性リンパ球性細胞の約50%に認められ,これを有する急性リンパ球細胞の予後は良好である. →× 予後不良
(4)成人の球性リンパ球性白血病の予後は,小児のそれと異なり悪い. →○
(5)急性リンパ球性白血病の再発は,骨髄の他に髄膜や精巣に多い. →○
(6)成人の急性リンパ球性白血病は,Total cell killを目指し多剤併用化学療法を行う. →○
(7)Burkitt lymphomaや急性リンパ球性白血病のL3では,染色体の8番と14番の転座,t(8;14)がみられることが多い. →○
(8)慢性リンパ球性白血病の大多数は,成熟した形態を示すB細胞の腫瘍である. →○
(9)慢性リンパ球性白血病では,欧米では白血病の約30%を占めるが,我が国では2〜3%とその頻度は低く,高齢者に好発する. →○
(10)慢性リンパ球性白血病は,病初期から治療するのではなく,病期が進行し貧血,血小板減少が生じてから治療を開始するのが一般的である. →× 進行してからでは効果なし
(11)良性M蛋白血症がその経過中に多発性骨髄腫に移行することは極めて稀である. →× よくある
(12)多発性骨髄腫は,形質細胞の腫瘍であり,末梢血で赤血球のRouleaux Formationがよく見られる. →○
(13)多発性骨髄腫では,骨破壊や病的骨折を生じることは極めて稀である. →× 骨折により発見される
(14)Bence-Jones蛋白は,免疫グロブリンL鎖由来であり,酢酸緩衝液存在下では,56度で白濁するものの,煮沸すると再融解する. →○
(15)原発性マクログロブリン血症では,IgMの著増が見られ,過粘調症候群がよく見られる. →○

16.正しいものの番号には○を,間違っているものの番号の前に×印をつけよ.
(1)慢性リンパ性白血病ではbcr/ablの遺伝子再構成が認められる. →× 慢性骨髄性白血病
(2)急性前骨髄性白血病(M3)では染色体15;17転座が多く認められる. →○
(3)急性白血病FAB分類では骨髄中の芽球のペルオキシダーゼ染色陽性率が10%未満の場合はL1〜L3に,それ以上ではM1〜M6に亜分類される. →× 10%ではなく3%
(4)Common ALLでは通常,細胞表面抗原CD10陽性である. →× B細胞系のみ陽性
(5)M4Eoとは好酸球増加を伴った骨髄単球性白血病であり,inv16の染色体異常を認めることがある.
    →○

17.以下にしめす単語は各々1及び2のいずれと関連が深いと考えられますか.(≒H.14年度V)
 【1】細胞性免疫:1.Tリンパ球  2.Bリンパ球 →1
 【2】リンパ節の副皮質:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球 →1
 【3】Reed-Steinberg細胞:1.ホジキンリンパ腫 2.非ホジキンリンパ腫 →1
 【4】悪性リンパ腫の臨床病期分類:1.Ann Arbor分類 2.REAL分類 →1
 【5】濾胞性リンパ腫:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球 →2

18.正しい組み合わせは,いずれか.
(1)慢性骨髄性白血病………
(2)特発性血小板減少性紫斑病………巨核球数の著明な減少 →× 巨核球は増加
(3)骨髄異形成症候群………無効造血 →○ 
(4)Bernard-Soulier症候群………巨大血小板 →○
a.1,2 b.3,4 c.1,3,4 d.すべて

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