血液 平成14年度概説試験

平成14年11月26日

I. 次の文章の( )内に適切な語句を記入せよ。
1) 急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia, AML)は、(a 骨髄幹細胞)の、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia, CML)は、(b 多能性造血幹細胞)の白血病化と考えられている。
2) 急性白血病の診断にはミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色が不可欠で、MPO染色陽性芽球の割合が(c 3)%未満を急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia, ALL)と診断する。
3) AMLのうち、AML M2型は染色体異常(d t(8;21))を示すことが多く、予後(e 良好)である。
4) CMLの90%以上にみられる染色体異常は(f t(9;22))で、フィラデルフィア染色体と呼ばれ、CMLに特異的な遺伝子(g bcr/abl融合遺伝子)が形成される。
5) 多発性骨髄腫は、形質細胞の腫瘍性増殖疾患であり、血中の(h 赤血球の連銭形成)、尿中の(I Bence-Jones蛋白)が診断基準項目として重要である。
6) 同種骨髄移植は、白血病に対する治癒的治療法として確立しており、よい条件で移植を実施すると、AMLおよびCMLでは(j 60)%以上、ALLでは約50%に治癒が期待される。

II.下記の問いに答えよ。(=H.13年度III、≒H.12年度2)
1) 成人男性の基準範囲を赤血球、白血球、血小板について記せ。
赤血球:400万〜550万/μl
白血球:3,800〜9,000/μl
血小板:14万〜44万/μl
2) 血球検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
EDTA
3) 凝固検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
クエン酸ナトリウム
4) 血球検査・凝固検査用に採血したあと、検査をするまでの間で守らなければならない点をあげよ。
早く搬送し、保存期間を短くする。検体を長く保存する時は冷やしておく。検体は密封容器で保存する。検体容器を振ったりゆすったりしない。

III.次のうち正しいものに○をつけよ。
1) 赤血球濃厚液1袋(400ml 全血由来、ヘモグロビン60g含有)の輸血は、酸素運搬能を約100ml増加させることができる。
2) 新鮮冷凍血漿5単位(400ml)中には約1gのフィブリノゲンが含まれているので、輸注によって50kgの成人でフィブリノゲン濃度は30mg/dl上昇する。
3) 血小板濃厚液(10単位)を輸血した場合、末梢血血小板数は3?5万個/mm3増加する。増加が得られない場合は、破壊亢進、免疫抗体、消費過剰等を鑑別する必要がある。
4) ABO不適合輸血では補体が作用して凝集した赤血球が溶血するので肺塞栓は起こらない。
5) アルブミンは血管内に40%、細胞外液中に60%の割合で分布しているので血清アルブミン値を1g/dlに上昇させるためには、循環血液量(dl)×2 gが必要である。


IV.易疲労感、発熱、出血傾向を認める白血病を疑う患者が来院した。どのような造血系検査を試行したらよいか、箇条書きに5項目記しなさい。(=H.13年度II、H.12年度1)
末梢血血球検査
骨髄穿刺検査
特殊染色
染色体検査
遺伝子診断検査
細胞表面マーカー

V.以下に示す単語は各々1及び2のいずれと関連が深いと考えられますか。
 答えは番号で示しなさい。(≒2001年度卒試XII)
(1)細胞性免疫:1.Tリンパ球、2.Bリンパ球 →1
(2)リンパ濾胞:1.Tリンパ球、2.Bリンパ球 →2
(3)ホジキンリンパ腫:1.節性、2.節外性 →1
(4)悪性リンパ腫の臨床病期分類:1.Ann Arbor分類、2,REAL分類 →1
(5)抗CD20モノクローナル抗体:1.Tリンパ腫、2.Bリンパ腫 →2

VI.下記の細胞を図示せよ
1) Auer body(アウエル小体)
胞体内の顆粒。図では松葉状になっています。

2) Pseudo-Pelger anomaly(偽ペルゲル様核)
よく分からないですが、変な形ならばよいのかもしれません。

3) Adult Tcell leukemia cell(ATL細胞)
花弁状の分葉をしています。

4) Red blood cell fragmentation(破砕赤血球)
異常な形状ならば大丈夫でしょう。

5) Rouleaux formation(連銭形成)
赤血球が互いにくっ付いている様を描きましょう。

VII.急性白血病における寛解導入療法、強化療法、維持療法について述べよ。
寛解導入療法
10^12に体内で増殖した白血病を減少させ、抑制された正常造血を回復させる。
強化療法
完全寛解後に残存した体内の芽球を減少させるために寛解導入療法以上に強い抗癌剤による治療を行う。
維持療法
強化療法後に比較的弱い化学療法を長期間に渡って行うこと。

VIII-1.汎血球減少を来す疾患を三つ選び、「○」をつけよ
1. 再生不良性貧血→○
2. 遺伝性球状赤血球症→×
3. 骨髄異形成症候群→○
4. 悪性貧血→○
5. 自己免疫性溶血性貧血→×

VIII-2.骨髄増殖性疾患について正しい記述を3つ選び、「○」をつけよ
1. 慢性骨髄性白血病では、フィラデルフィア染色体を認める。→○
2. 慢性骨髄性白血病では、好塩基球増多を伴うことが多い。→○
3. 真性多血症では、好中球アルカリフォスファターゼ(NAP)スコアは低下する。→×
4. 真性多血症では、血中エリスロポエチン濃度は増加する。→×
5. 骨髄線維症では、脾腫をきたす。→○

IX-1.血小板減少症について正しい組み合わせを選べ。
(1) 血栓性血小板減少性紫斑病は、副腎皮質ステロイドホルモンが第一選択薬である。
→× 新鮮凍結血漿の投与を行う。
(2) 播種性血管内凝固症候群は、フィブリノゲンが増加し血小板減少をきたす微小循環不全をきたす疾患である。→× フィブリノゲンは減少する。
(3) Bernard-Soulier症候群は、抗GPIb/IX抗体が出現し血小板減少をきたす疾患である。
→× GpIb/IX欠如が原因。常染色体劣性遺伝。
(4) 特発性血小板減少性紫斑病では、骨髄巨核球数は正常あるいは増加している。→○
(5) von Willebrand 病では、血小板数は正常であることが多いが、出血時間が延長している。→○

a. 1,2 b.1,3 c.1,4 d.1,5 e.2,3 f.2,4 g.2,5 h.3,4 i.3,5 j.4,5

IX-2. 血液凝固異常症について正しい組み合わせを選べ。
(1) 血友病Aは、伴性劣性遺伝である。→○
(2) 血友病Aの最も重篤な合併症として、VIII因子抗体産生がある。→○
(3) 凝固VII因子欠乏症では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長する。→×
    VIIの欠乏では正常。延長するのはVIII,IX,XI,XIIの欠乏。
(4) トロンビンは、凝固促進及び血小板凝集を惹起するが、凝固調節も行っている。→○
(5) ビタミンKは、肝細胞での凝固因子産生を抑制する。→×
似た文章としては「ワルファリンはビタミンK依存因子の産生を抑制する。」

   a.123 b.124 c.125 d.234 e.235 f.245 g.345 h.145 i.135

X.骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome; MDS)について、正しい記述の組み合わせは?
(1) 染色体異常を呈することが多い. →○
(2) 高齢者に多い. →○
(3) 好中球のペルゲル(Pelger)様核奇形や巨赤芽球様変化(megaloblastoid)などがみられる. →○
(4) WHO分類では芽球が20%以上となったら白血病と分類される。→○

  a.(1),(2) b.(2) ,(3) c.(1),(2),(3) d.(4) e.すべて

XI.次の文章を読み正しいものには○、過っているものには×を記入しなさい。
(1) 正常新生児において、末梢血ヘモグロビン値は19g/dlは正常範囲である。→○
(2) 健康な8歳児では、末梢血中の好中球数はリンパ球数より多い。→○
5日目〜5歳の間は好中球<リンパ球
(3) 小児急性リンパ性白血病(ALL)の発症年齢のピークは7-9歳にある。→×
ピークは2〜4歳
(4) 小児ALLの予後因子として、診断時の年齢と末梢血白血球数が重要である。→○
(5) 小児ALLでは、HLA一致同胞が存在する場合、同種造血幹細胞移植術が第一選択の治療法である。→× 第一選択ではないと思います。

XII.小児の血液疾患について正しい組み合わせはどれか。
1) 牛乳貧血をきたす乳児には、高蛋白血症を見ることが多い。→× 低蛋白血症
2) 適切なHLAドナーのいない重症再生不良性貧血の患児には、まず抗リンパ球グロブリン+シクロスポリンAによる免疫抑制療法を行う。 →○
3) Fanconi貧血の診断には染色体不安定性の確認が重要である。→○
4) 遺伝性球状赤血球症の患児はヒトパルボウイルスB19感染に伴い溶血発作を起こす。
→× 溶血はない
5) 特発性血小板減少性紫斑病の乳児には積極的に脾摘を行う。→× 脾摘は成人型

a.(1),(2)  b.(1),(5)  c.(2),(3)  d.(3),(4)  e,(4),(5)

XIII. 次のうち正しい組み合わせはどれか?
a 正常成人の体内総鉄量 ---- 2000〜5000μg →× 3〜4g
b 鉄欠乏性貧血 ---- 大球性正色素性貧血 →× 小球性低色素性貧血
c 鉄貯蔵蛋白 ---- フェリチン →○
d VitaminB12の吸収部位 ---- 回腸末端 →○
e 葉酸欠乏症の診断 ---- シリング試験 →× ビタミンB12欠乏症

1.a,b 2.a,e 3.b,c 4.c,d 5.d,e

XIV以下の病態、症状のうち、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、マクログロブリネミアにあてはまるものを選べ。(多:10個 慢:7個 マ:9個 の解答欄指定あり)(=H.14年度卒試VI-1)
 (1) Bリンパ球の腫瘍であり、細胞表面にはimmunogloblinを発現していない。→多
 (2) 白血球数が増加していることが多い。→慢
 (3) ほとんどの症例で血清中にM蛋白が上昇している。→多、マ
 (4) 末梢血中で大型の成熟リンパ球数が増加していることが多い。→慢
 (5) 核が偏在し、車軸核を持つ細胞が骨髄中で増加している。→多
 (6) 眼底にソーセージ様静脈怒張が見られることがある。→マ、多
 (7) 骨に再生像を伴わない骨髄融解像がみられ、骨折しやすい。→多
 (8) 血清Ca値が上昇する症例は稀ではなく、それに伴う意識障害で受診する例もある。→多
 (9) 腎障害を生じやすい。→多
 (10)欧米では白血病の約30%を占めるが、我が国では2〜3%とその頻度は低い。→慢
 (11)IgM産生細胞が単クローン性に増殖した疾患である。→マ
 (12)血小板数などに比し、出血傾向がみられやすい。→マ
 (13)約10%の症例でアミロイド―シスを合併する。→多
 (14)細胞表面にCD5を発現していることが多い。→慢
 (15)若い成人には稀で、高齢者に好発する。→多、慢、マ
 (16)病期が進行すると貧血、血小板減少を生じることが多い。→多、慢、マ
 (17)病初期からの積極的な化学療法が予後を改善する。→多
 (18)病期が進行すると、肝・脾腫が見られることが多い。→慢、マ
 (19)急性白血病に比べ、経過はゆるやかであることが多い。→多、慢、マ

XV.次の文章で間違っているものには○、過っているものには×を記入せよ。
1) 胸腺の重量は思春期に最も重くなる。 →○ 13歳で最大。以降は萎縮。 
2) マクロファージはライソソーム水解酵素を有する。 →×
3) Hurler症候群は発育不全、奇異顔貌と尿崩症を示す。 →× 尿崩症はない
4) Tay-Sachs病では網膜のcherry red spot が特徴的である。 →○
5) リンパ節の胚中心は主にT細胞で構成される。 →× B細胞
6) 組織球性壊死性リンパ節炎では好中球浸潤と凝固壊死が特徴である。 →× 好中球浸潤はない
7) 特発性血小板減少性紫斑病では1000g以上の巨大脾腫を認める。 →× 脾腫にはならない
8) 濾胞性の悪性リンパ腫は5年生存率が90%を超える。 →おそらく○ 
9) バーキットリンパ腫は小児に後発し顎骨に腫瘤を形成する。 →○
10) リンパ芽球が多リンパ腫の一部はbcr/Ablキメラ遺伝子を有する。 →× bcr/ablはCML


XVI.次の事項につき簡潔に説明せよ。
1) Birbeck顆粒
    Langerhans細胞の胞体に含まれるテニスのラケットの形をした顆粒。(意味は不明とのこと)
2) Reed Sternberg巨細胞
    Hodgkinリンパ腫に特徴的な細胞。Hodgkin細胞が大型・多核化したもの。
3) 分子標的療法
    腫瘍細胞にのみ発現し、その増殖や維持に必要な分子を直接の治療目標とする治療。
    使用する薬はグリベック(CML)、ハーセプチン(乳癌)、イレッサ(肺癌)など。

XVII. リンパ腫と関連の深いウイルスを2つ上げそれぞれ簡単に説明せよ。
EBウィルス
    ヘルペスウィルスの一種でBurkittリンパ腫の原因となる。マラリア感染、ミドリサンゴの産生するホルボールエステルの作用などの補助因子が加わって発症すると考えられている。
  HTLV-1
レトロウィルスの一種で、ヘルパーT細胞に感染しATLの原因となる。血液、体液、乳汁の細胞成分の移入により感染する。
  肝炎ウィルス
    B細胞性非Hodgkinリンパ腫をおこすといわれている。

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