血液 平成15年度概説試験

平成15年11月19日実施、120分。
103人中3人不合格。

解答の作成には授業プリント・year note 2004を用いています。記述の解答は一例だと思って下さい。

1. 造血幹細胞について、100字以内で説明せよ。
【解答】造血幹細胞は赤血球・白血球・血小板に分化する細胞で、分化能(Differentiation)と自己複製能(Self-renewal)を持つ。骨髄だけでなく末梢血にもごく少数ながら存在し、最近では臍帯血中にも存在することが明らかにされている。(90文字)
【解説】全ての血球に分化すること、分化能と自己複製能を持つ事が重要だと思います。

2. 下記の問に答えよ。
(1) 成人男性の基準範囲を赤血球、白血球、血小板について記せ。
(2) 血小板検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
(3) 凝固検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
(4) 血球検査・凝固検査用に採血した後、検査するまでの間で守らなければならない点を挙げよ。
【解答】
(1)赤血球:400〜550万/μl
   白血球:3,800〜9,000/μl
   血小板:14万〜44万/μl
(2)EDTA
(3)クエン酸ナトリウム
(4)早く搬送し、保存期間を短くする。検体を長く保存する時は冷やしておく。検体は密封容器で保存する。検体容器をゆすったりしない。
【解説】毎年出題されているようです。
(1)新生児・成人女性などでは正常値が異なります。
(2)EDTAはCaイオンと結合して抗凝固能を発揮するので血球成分に与える影響が少ないです。
(3)赤沈や凝固検査に用いられます。EDTAと同じくCaイオンと結合するのですが、血球容積が変化してしまうために血算関連には用いられません。
(4)上記の他に、感染性の検体は特に取り扱いに注意する、などがある。

3. 易疲労感、発熱、出血傾向を認める白血病を疑う患者が来院した。どのような造血系検査を施行したらよいか。箇条書きに5項目記しなさい。
【解答】末梢血血球検査
    骨髄穿刺検査
    特殊染色
    染色体検査
    遺伝子診断検査
    細胞表面マーカー
【解説】毎年出題されています。上記の内、上から3つは必須だと思います。

4. ( )内に選択した数値または、正しい用語を入れよ。
(1) 赤血球濃厚液1袋(400ml全血由来、ヘモグロビン60g/dl含有)の輸血は酸素運搬能を(A)ml上昇させるか?ヘモグロビン1分子の分子量を65,000、Abogadro数22.4lとする。
a)1 b)10 c)100 d)1000
(2) 新鮮凍結血漿5単位(400ml)中には約1gのフィブリノゲンが含まれているので50kgの成人でフィブリノゲン濃度は(B)ml/dl上昇する。循環血液量は体重の7%、ヘマトクリット値30%とする。
a)0.4 b)4 c)40 d)400
(3) 血小板濃厚液(10単位)を輸血した場合、末梢血血小板数は3〜5万個/mm^3増加する。増加が得られない場合は、(C)、(D)、(E)などを鑑別する必要がある。
(4) ABO不適合輸血では補体が作用して凝集した赤血球が(F)するので、(G)は起こらず窒息死を免れる。
(5) アルブミンは血管内に40%、細胞外液中に60%の割合で分布している。血清アルブミン値を1g/dl上昇させるためには何グラムのアルブミンが必要か?体重50kg、ヘマトクリット値30%として概算せよ。(H)
【解答】
(1)(A)c
(2)(B)c?
(3)(C)特発性血小板減少性紫斑病(D)溶血性尿毒症症候群(E)Kasabach-Merritt症候群
(4)(F)溶血 (G)肺塞栓
(5)(H)87.5g?
【解説】輸血の講義はここまで細かくなかったと思いますが・・・。自信のない解答です。
(1)循環血液量は50×0.07×10=35dl
ヘモグロビン量は60÷35≒1.86
酸素飽和度100%、動脈血酸素分圧を100mmHgとすると、
血液酸素含量(ml/dl)=1.39(ml/g)×ヘモグロビン濃度(g/dl)+0.3で求まるので、
1.39×1.85+0.3≒2.88
2.88×35=100.85なので答えはcでしょう。
(2)単純に計算(1000÷35)すると28.5くらいになるのですが・・・。
(3)血栓性血小板減少性紫斑病では血小板輸血は禁忌です。血小板に異常をきたす疾患を並べてみましたが…。
(4)溶血することで血栓が出来なくなります。
(5)循環血液量=50×0.07×10=35dl
100÷40=2.5
1×2.5×35=87.5g

5. 下の文章の( )内に適当な言葉を下の言葉から選び、A〜Eの( )に対応する番号(1〜16)を記せ。
 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)は別名を(A)と称し、通常の貧血治療薬の鉄剤やビタミンでは治らない慢性進行性の造血障害で高率に白血病に移行することから、(B)と位置付けられる。発病年齢のピークは(C)歳代にある。MDSの本態は多能性造血幹細胞の(D)異常に基づく疾患である。MDSは骨髄では活発に造血しているにもかかわらず、骨髄細胞の分化成熟に異常を来し、正常な血球を供給できない状態、(E)にある。多彩な血球形態異常は(E)を反映する変化で、その原因としてアポトーシスが関与すると考えられている。

1.不応性貧血 2.無効性貧血 3.有効造血 4.無効造血 5.50-60 6.60-70 7.70-80
8.クローン性 9.非クローン性 10.多クローン性 11.真性多血症 12.骨髄線維症
13.慢性骨髄単球性白血病 14.前白血病状態 15.前再生不良性貧血状態 16.前巨核球性状態
【解答】(A)1.不応性貧血
    (B)14.前白血病状態
    (C)6.60-70
     (D)8.クローン性
    (E)4.無効造血
【解説】13年度にほぼ同じ問題が出ています。

6.
(1) 予後良好に分類される染色体異常を持つ急性骨髄性白血病を3つあげ、その細胞学的特徴について述べよ。
(2) FAB分類による急性白血病の診断手順について述べよ。その際M1、M2、M3等の略名の記載は不可とする。
(3) 急性白血病の寛解導入寮法、強化療法、維持療法について述べよ。
【解答】
(1)M2(分化型骨髄芽球性):前骨髄球から先への分化傾向を認める。
   M3(前骨髄球性;APL):Auel小体高率、束を形成(faggot cell)
   M4(骨髄単球性;AMMoL):骨髄芽球と単芽球が見られる。
(2)ミエロペルオキシダーゼ染色での陽性芽球<3%―いいえ→ANLL(M1,2,3,4,5,6)
          ↓はい                     ↓
       ALL M5a,M7                    ↓
          ↓                        ↓
      エステラーゼ染色                エステラーゼ染色
    陽性↓     陰性↓              陽性↓    陰性↓
      M5a    ALL,M7               M4,M5   M1,2,3.6
              ↓                          ↓
        血小板ペルオキシダーゼ                 PAS染色
       陽性↓      陰性↓               陽性↓  陰性↓
         M7        ALL                 M6   M1,2,3
   
(3)寛解導入療法:増殖した白血病を減少させ、抑制された正常造血を回復させる。
   強化療法:残存した芽球を減少させるために、寛解導入療法以上に強い抗癌剤による治療を行う。
   維持療法:強化療法後に比較的弱い化学療法を長期間に渡って行うこと。
【解説】
(1)染色体異常としては、
   M2:t(8;21)(q22;q22)
   M3:t(15;17)(q22;q12)
   M4:inv(16)(p13;q22)
(2)上記は略称ですませてしまいましたが、解答を書くときは下記の通りに書いて下さい。
M1,2=急性骨髄芽球性白血病(1は未分化型、2は分化型)
M3=急性前骨髄芽球性白血病
M4=急性骨髄単球性白血病
M5=急性単球性白血病(M5aは単芽球が主体のもの)
M6=赤白血病
M7=急性巨核芽球性白血病
ALL=急性リンパ芽球性白血病
また、M1,2,3からfaggot cell(+)でM3を鑑別してもよいかもしれません。
(3)AMLは維持療法はせず、ALLは1〜2年の抗癌剤治療をするそうです。

7. 以下の病態、症状のうち、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、マクログロブリネミアに当てはまるものを選べ。
(1) Bリンパ球の腫瘍であり、細胞表面にはimmunoglobulinを発現していない。
(2) 白血球数が増加していることが多い。
(3) ほとんどの症例で血清中にM蛋白が上昇している。
(4) 末梢血中で大型の成熟リンパ球数が増加していることが多い。
(5) 核が偏在し、車軸核を持つ細胞が骨髄中で増加している。
(6) 眼底にソーセージ様静脈怒張が見られることがある。
(7) 骨に再生像を伴わない骨融解像がみられ、骨折しやすい。
(8) 血清Ca値が上昇する症例は稀ではなく、それに伴う意識障害で受診する例もある。
(9) 腎障害を生じやすい。
(10)欧米では白血病の約30%を占めるが、我が国では2〜3%とその頻度は低い。
(11)IgM産生細胞が単クローン性に増殖した疾患である。
 (12)血小板数などに比し、出血傾向がみられやすい。
  (13)約10%の症例でアミロイド―シスを合併する。
  (14)細胞表面にCD5を発現していることが多い。
  (15)若い成人には稀で、高齢者に好発する。
  (16)病期が進行すると貧血、血小板減少を生じることが多い。
  (17)病初期からの積極的な化学療法が予後を改善する。
  (18)病期が進行すると、肝・脾腫が見られることが多い。
  (19)急性白血病に比べ、経過はゆるやかである事が多い。

【解答】
(1)多、マ(2)慢(3)多、マ(4)慢(5)多(6)マ(7)慢(8)多(9)多(10)慢(11)マ(12)マ(13)多(14)慢(15)多、マ(16)多(17) 多、マ(18)慢、マ(19)多、慢、マ
【解説】解答欄は多:10個、慢:7個、マ:9個

8. 以下にしめす単語は各々1及び2のいずれと関連が深いと考えられますか。答えは番号で示して下さい。
(1) 細胞性免疫:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球
(2) リンパ節の副皮質:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球
(3) CD20抗原:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球
(4) 悪性リンパ腫の臨床病期分類:1.Ann Arbor分類 2.WHO分類
(5) 胃MALTリンパ腫:1.ピロリ菌 2.EBウイルス
【解答】
(1)1(2)1(3)2(4)1(5)1
【解説】
(1)Tリンパ球が細胞性免疫、Bリンパ球が体液性免疫。
(2)Tリンパ球は副皮質に、Bリンパ球はリンパ濾胞にあります。
(3)特異的マーカーは、Bリンパ系:CD10,20,19。Tリンパ系:CD2,3,5,7。
(4)浸潤の程度からStage1〜4に分類します。
(5)大半はピロリ菌の慢性感染と密接に関連しています。

9. 小児の血液疾患につて正しい組み合わせはどれか。
(1) 牛乳貧血を来す乳児には、高蛋白血症を見ることが多い。
(2) 重症再生不良性貧血の患児にはHLA適合同胞から骨髄移植を行う。
(3) Fanconi貧血の診断には染色体不安定性の確認が重要である。
(4) 遺伝性球状赤血球症の患児はヒトパルボウイルスB19感染に伴い溶血発作をおこす。
(5) 小児の特発性血小板減少性紫斑病には6ヶ月以内に治癒しない慢性型が多い。

  a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5)
【解答】c
【解説】
(1)× 牛乳蛋白への過敏症から蛋白漏出を起こし、低蛋白血症をきたす。
(2)○ ドナーがいなければシクロスポリンなどで免疫抑制療法を行います。
(3)○ 染色体の不安定性はFanconi貧血の特徴的な所見です。
(4)× 溶血ではなく造血障害により貧血を起こす。
(5)× 小児には急性型が多く、成人には慢性型が多い。

10. 次の文章を正しいものには○、誤っているものには×を記入しなさい。
(1) Down症の児は、健常人に比べ高頻度に悪性腫瘍を発生する。
(2) 悪性新生物は、1歳から14歳の小児における死因の第2位である。
(3) 小児白血病の約50%が急性リンパ性白血病である。
(4) 中枢神経白血病予防目的の頭蓋放射線照射により、白血病が完治した後も低身長が持続する児が見られる。
(5) 日本において過去10年間に発症した小児急性リンパ性白血病の5年生存率は約50%である。
【解答】(1)○(2)○(3)×(4)○(5)×
【解説】
(1)Down症は白血病のRisk factorです。
(2)第1位は不慮の事故です。
(3)約70%がALLです。約20%がAML。
(4)成長障害が起こります。晩期障害として他に神経障害、白内障、脱毛、甲状腺機能低下など。
(5)50〜60%のようです。

11. 次の文章を読み正しいものには○、誤っているものには×を記入しなさい。
(1) 転座型染色体異常を伴う小児急性リンパ性白血病患児の予後は、常に不良である。
(2) 小児の固形腫瘍で最も頻度の高いものは脳腫瘍である。
(3) 小児急性リンパ性白血病では、全ての症例に対し第1寛解期早期に同種造血幹細胞移植を行うべきである。
(4) 小児に対する造血幹細胞移植では、晩期障害を回避するために、全身放射線照射(TBI)を用いない移植前処置を選択しなければならない。
(5) 同種造血幹細胞移植後の急性GVHD(移植片対宿主病)は、一般に成人より小児の方が軽症である。
【解答】(1)×(2)○(3)×?(4)×?(5)○
【解説】
(1)12;21転座、1;19転座などは予後良好群である。
(2)他に多いのは神経芽腫、横紋筋肉腫、非ホジキンリンパ腫、ウィルムス腫瘍など。
(3)全ての症例に、ではないような気がしますが・・・。
(4)全身照射を行うと思います。障害が出たら減量するようですが。
(5)成人と比較して頻度が低く軽度なことが多い。

12. 播種性血管内凝固症候群(DIC)で正しいのはどれか。
(1) 組織因子が引き金になることが多い。
(2) トロンビン、アンチトロンビン複合体は正常である。
(3) 血小板数は低下する。
(4) FDPは線溶のマーカーであり、DICの診断に重要である。
(5) フィブリノゲンは増加する。

 1.(1)(2)(3) 2.(1)(3)(4) 3.(2)(4)(5) 4.(3)(4)(5) 5.(1)(2)(5)
【解答】2
【解説】
(1)○ 悪性腫瘍・白血病・敗血症で3/4を占めます。
(2)× トロンビン‐アンチトロンビン複合体は増加します。
(3)○ 血小板数↓で出血時間延長がおこります。
(4)○ FDPは著名に増加します。
(5)× 血漿フィブリノーゲンは低下します。

13. 正しいのはどれか。
(1) ビタミンK欠乏では、PTとともにAPTTも延長する。
(2) 凝固]因子欠損では、PTのみ延長する。
(3) アスピリン投与で出血時間が延長する。
(4) 特発性血小板減少症(ITP)では、第一選択薬はヘパリンである。
(5) 血栓性血小板減少性紫斑病では、フィブリノゲンが減少する。

 a.(1)(2) b.(1)(3) c.(1)(5) d.(2)(4) e.(3)(5)
【解答】b
【解説】
(1)○ ビタミンK依存因子(2,7,9,10)による凝固が障害されます。
(2)× PTのみ延長:3,7
     APTTのみ延長:8,9,11,12
     両方延長:1,2,5,10
(3)○ 抗血小板薬。シクロオキシゲナーゼをブロックするためTXA2の産生が減少する。
(4)× 第一選択は、急性型ではステロイド薬、慢性型では副腎皮質ステロイドの長期投与。
(5)× 凝固線溶系は正常です。

14. GVL効果について、100字以内で説明せよ。
【解答】白血病に対する造血幹細胞移植においておこる、ドナーとレシピエント間の組織適合抗原の差異に基づく免疫学的反応を主体とした抗白血病効果。白血病の再発率が有意に低下する。GVHDと一体の関係にある。(97文字)
【解説】Graft Versus Leukemia効果のこと。

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