血液 平成16年度概説試験

1. 造血幹細胞について、100字以内で説明せよ。

【解答】2003年概説1と同じ
造血幹細胞とは、多分化能により必要に応じて生体内に各系統の血液細胞を補充するという能力を持つと同時に、自己複製能により自分と同じ細胞を産生して造血幹細胞の数を維持するという能力を持つ細胞である。

2. 下記の問に答えよ。
(1) 成人男性の基準範囲を赤血球、白血球、血小板について記せ。
(2) wintrobeの赤血球指標であるMCV(平均赤血球容積)の基準範囲の大凡の値をその単位と共に記せ。
(3) 血小板検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
(4) 凝固検査用の抗凝固剤は何を一般的に用いるか。
(5) 血球検査・凝固検査用に採血した後、検査するまでの間で守らなければならない点を挙げよ。

【解答】 2003概説2参照
(1)赤血球:400〜550万/μl   白血球:3,800〜9,000/μl   血小板:14万〜44万/μl
(2)80〜100μ?  (3)EDTA  (4)クエン酸ナトリウム
(5)早く搬送し、保存期間を短くする。検体を長く保存する時は冷やしておく。検体は密封容器で保存する。検体容器をゆすったりしない。

3. 易疲労感、発熱、出血傾向を認める白血病を疑う患者が来院した。どのような造血系検査を施行したらよいか。箇条書きに5項目記しなさい。

【解答】2003概説3と同じ。
末梢血血球検査、骨髄穿刺、特殊染色、染色体検査、細胞表面マーカー

4.汎血球減少をきたす疾患を3つ選べ。
(1)再生不良性貧血    (2)遺伝性球状赤血球症    (3)骨髄異形成症候群
(4)悪性貧血         (5)自己免疫溶血性貧血

【解答】 1.3.4   (イヤーノートG-26)

5.骨髄増殖性疾患について正しい記述を3つ選べ。
(1)慢性骨髄性白血病ではPh染色を認められる。
(2)慢性骨髄性白血病では好塩基球増多が認められる。
(3)真性多血症ではNAP値が低下している。
(4)真性多血症ではEPOが増加している。
(5)骨髄線維症では脾腫を来す。

【解答】 1、2、5
(1) ○ CMLの97%以上にでPh染色体陽性。 (イヤーノート G-46)
(2) ○ 好中球の増加が主体だが、好塩基球、好酸球も増加する。(同) 
(3) × 真性多血症ではNAPは低下する。
NAPは成熟好中球のマーカー酵素であるアルカリホスファターゼ。  (イヤーノート G-48)
(4) × 真性多血症ではEPOに対する感受性が高いため、赤血球が増加し、EPOは正常か低下。
(同 G-55)
(5) ○ 髄外造血による脾腫を認める。(同G-53)

 6.○×をつけよ (MDS)
(1)発症年齢のピークは50歳代である。  (2)骨髄線維症は一病型である。
(3)偽ペルゲル核異常がみられる。     (4)本態は多能性造血幹細胞のクローン性異常に基づく。
(5)ビタミンB12、葉酸が有効なことが多い。

【解答】 MDSの授業プリント(2002.10.15 岡村先生)参照
(1)× 60〜70歳代がピーク
(2)× 診断基準参照。骨髄線維症など、血球減少の原因となる他の疾患を認めない。
(3)○ 好中球に偽ペルゲル様核奇形がみられる。      (4)○
(5)× 通常の鉄剤やビタミン、葉酸投与には反応しない。

7. (1) 予後良好に分類される染色体異常を持つ急性骨髄性白血病を3つあげ、その細胞学的特徴について述べよ。
(2) FAB分類による急性白血病の診断手順について述べよ。その際M1、M2、M3等の略名の記載は不可とする。
(3) 急性白血病の寛解導入寮法、強化療法、維持療法について述べよ。

【解答】2003概説6と同じ。
(1)  M2:t(8;21) 成熟傾向のある顆粒球系細胞が10%以上存在する。
   M3:t(15;17) アズール顆粒の存在、Auel小体高率、束を形成(faggot cell)
   M4Eo:inv(16) M4Eoは、M4の亜型で、粗大な異型好酸顆粒のみられる好酸球が出現する。

(2)イヤーノートG-42チャート参照 (右表は今日の診療vol.11より)

・M0 微分化型骨髄芽球性白血病
AMLとしては例外的にペルオキシダーゼ陰性を示す。これは顆粒が酵素活性をいまだ獲得していないから。
・M1 未分化型骨髄芽球性白血病
淡明な核と明瞭な核小体を持つ芽球が顕著に増殖する。芽球は分化傾向が低いのでALLとの鑑別が必要となる。
・M2 分化型骨髄芽球性白血病
分化傾向を生じており、芽球の比率が低下している。アウエル小体 auer body が認められる。 染色体転座t(8:21)を持つ。M0からM2まではHLA-DRが陽性となる。
・M3 前骨髄球性白血病 acute promyelocytic leukemia
前骨髄球が分化異常によって増生したもの。アズール顆粒が豊富でアウエル小体 auer body が認められる。 染色体の転座 t(15:17)が多くの事例で見られ、臨床的にはDICが必発する。
・M4 急性骨髄単球性白血病 acute myelomonocytic leukemia
骨髄系に加えて単球系の増殖も見られるため、非特異的エステラーゼ陽性となる。
・AML-M4Eo   好酸球増多が見られるタイプであり、予後良好である。
・M5 急性単球性白血病
単芽球が増生する。単球系に由来するので、AMLとしては例外的にペルオキシダーゼ陰性であり、 非特異的エステラーゼは強陽性を示す。 CD14,CD4,CD13などが陽性となる。
・M6 赤白血病 acute erythroleukemia
顆粒球系と赤芽球系の異常により、骨髄芽球とともに赤芽球が増生する。GPAが陽性となる。
・M7 急性巨核芽球性白血病
顆粒球系と血小板系が異常となり、血小板関連抗原であるCD41が陽性となる。 AMLとしては例外的にペルオキシダーゼ陰性。 予後が極めて悪く、平均生存期間は半年に過ぎない。しばしばDown症候群に合併する。

(3)
寛解導入療法:増殖した白血病を減少させ、抑制された正常造血を回復させる。
強化療法:残存した芽球を減少させるために、寛解導入療法以上に強い抗癌剤による治療を行う
維持療法:強化療法後に比較的弱い化学療法を長期間に渡って行うこと。


8.以下の病態、症状のうち、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、マクログロブリネミアに当てはまるものを選べ。
(1) Bリンパ球の腫瘍であり、細胞表面にはimmunoglobulinを発現していない。
(2) 白血球数が増加していることが多い。
(3) ほとんどの症例で血清中にM蛋白が上昇している。
(4) 末梢血中で大型の成熟リンパ球数が増加していることが多い。
(5) 核が偏在し、車軸核を持つ細胞が骨髄中で増加している。
(6) 眼底にソーセージ様静脈怒張が見られることがある。
(7) 骨に再生像を伴わない骨融解像がみられ、骨折しやすい。
(8) 血清Ca値が上昇する症例は稀ではなく、それに伴う意識障害で受診する例もある。
(9) 腎障害を生じやすい。
(10)欧米では白血病の約30%を占めるが、我が国では2〜3%とその頻度は低い。
(11)IgM産生細胞が単クローン性に増殖した疾患である。
(12)血小板数などに比し、出血傾向がみられやすい。
(13)約10%の症例でアミロイド―シスを合併する。
(14)細胞表面にCD5を発現していることが多い。
(15)若い成人には稀で、高齢者に好発する。
(16)病期が進行すると貧血、血小板減少を生じることが多い。
(17)病初期からの積極的な化学療法が予後を改善する。
(18)病期が進行すると、肝・脾腫が見られることが多い。
(19)急性白血病に比べ、経過はゆるやかである事が多い。

【解答】 2003年概説7と同じ
 多発性骨髄腫・・・3、5、7、8、9、13、15、16
 CLL・・・2、4、10、14、15、16、19
 マクログロブリネミア・・・3、6、11、12、15、16、18
1は選んでいない。(Bリンパ球系腫瘍CLLでは細胞表面のimmunoglobulinが低発現であるから。他の2つでも、発現していないわけではない。) 17も選んでいない。

9.正しいものを選べ
(1)小児がんの発生頻度は15歳未満の人口10万人に対し約1,3人である。
(2)小児白血病の30〜40%がALLである。
(3)小児がんでは成人における悪性腫瘍にと比べ造血器腫瘍・肉腫・胎児性腫瘍・脳腫瘍などの割合が高い。
(4)小児がんは成人に比べ診断時にすでに全身に広がっている可能性が高い。

【解答】 3、4   2002.10.29 小児がん 授業プリント参照
(1)× 10万人あたり10〜14人       (2)× 70〜80%がALL
(3) ○ 成人に比べて、非上皮性の腫瘍が多い。
(4) ○ 診断時に小児では80%、成人では20%、全身に広がりが見られる。

10.正しいものはどれか? 2つ選びなさい
(1)小児ALLではHLA一致の同胞が存在すれば、第一寛解期早期に同種造血幹細胞移植を行うべきである。
(2)予後が極めて不良と考えられる染色性転座を認める小児白血病は同種造血幹細胞移植の適応となる。
(3)末梢血幹細胞移植後の好中球回復は骨髄移植や臍帯血移植に比べて早い。
(4)小児患者における造血幹細胞移植後のGVHDは成人患者と比較して頻度が高くて重症であることが多い。
(5)小児がん治療後の晩期障害として成長障害、臓器機能障害、二次がんなどがある。

【解答】 2,5   2002.10.29 小児がん 授業プリント参照
(1)× ALLの同種造血幹細胞移植は、再発時、寛解導入不能例、第1寛解期(予後不良の染色体転座t(9,22),t(4,11)があるとき)に行われる。治療の中心は化学療法。
(2) ○ (1)参照
(3) ○ 多くの幹細胞が含まれているため、回復が早い。好中球の回復が早いことは、感染症の予防になり、PBSCTの利点とされている。
(4) × 頻度は低く、軽症である。    (5) ○ 

11.○×をつけよ。
(1)新生児期の末梢血白血球の正常値は5000〜9000/ulである。
(2)白血病は小児悪性腫瘍の約40%を占める。
(3)小児急性リンパ性白血病の発症の年齢のピークは10歳前後である。
(4)小児ALLの5年生存率は今でも約40%程度である。
(5)小児ALLの再発部位としては骨髄、中枢神経、精巣が重要である。

【解答】 2002.10.28 小児の血液疾患(1) 松崎先生 授業プリント参照
(1) × 出生後すぐは、1万後半が正常。その後減少し、1歳で1万程度になる。 (2) ○
(3) × 2〜4歳にピーク (4) × 5年生存率は70%程度。 (5) ○

12.小児の血液疾患について正しい組み合わせはどれか。
(1) 牛乳貧血を来す乳児には、高蛋白血症を見ることが多い。
(2) 重症再生不良性貧血の患児にはHLA適合同胞から骨髄移植を行う。
(3) Fanconi貧血の診断には染色体不安定性の確認が重要である。
(4) 遺伝性球状赤血球症の患児はヒトパルボウイルスB19感染に伴い溶血発作をおこす。
(5) 先天性第13因子欠乏症はPTとAPTTによりスクリーニング可能である。
  a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5)

【解答】  c 2003年概説9と類似。
(1)× 牛乳貧血では、低蛋白血症を呈する。 (2) ○ (3)○
(4)× 溶血発作ではなく低形成発作を起こす。HSでは骨髄は赤芽球過形成だが、パルボウイルスB19は、赤血球前駆細胞に親和性があるため、感染すると低形成発作を起こす。(新臨床内科学 P1198)
(5)× 第13因子はフィブリン安定化因子。PT,APTTは正常で、第13因子の活性低下を示す。

13.次のうち最も関係が深いものを(1)、(2)から1つ選び答えよ。
(a) リンパ濾胞:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球
(b) ホジキンリンパ腫:1.節性 2.節外性
(c) CD20モノクローナル抗体:1.Tリンパ球 2.Bリンパ球
(d) 悪性リンパ腫の臨床病期分類:1.Ann Arbor分類 2.WHO分類
(e) 胃MALTリンパ腫:1.ピロリ菌 2.EBウイルス

【解答】 授業プリント 2002.10.9 リンパ系疾患(1)参照
(a)2 リンパ節の皮質にあるリンパ濾胞には、Bリンパ球が多い。Tリンパ球は副皮質に多い。
(b)1 ホジキン病の60%以上は頚部リンパ節原発
(c)2 CD20はBリンパ球の表面抗原。 (d)1
(e)1 MALTリンパ腫は、橋本病やピロリ菌に関連。EBVはバーキットリンパ腫に関連。

14.血小板減少性疾患について正しいものを選べ。
(a)偽性血小板減少はヘパリン採血でよくみられる。
(b)特発性血小板減少性紫斑病では骨髄巨核球低下が見られる。
(c)ヘリコバクターピロリ除菌で改善することがある。
(d)血栓性血小板減少性紫斑病ではFDP増加が見られる。
(e)血栓性血小板減少性紫斑病ではvWF切断酵素が低下している。

【解答】 (e)
(a)× EDTA採血でみられる。                                 (イヤーノート G-75)
(b)× 骨髄巨核球は増加する。(血小板抗体によって、血小板の破壊が亢進し、それを補うため。)
(c)△ ピロリ菌陽性のITP例では、除菌により、約半数で血小板数の上昇が見られる。TTPなどでは、そういいう報告はない。                                        (イヤーノート G-81)
(d)× 凝固系は普通正常。ただし、進行するとDICを合併することがある。      (イヤーノート G-82)
(e)○ vWF切断酵素が低下するために、血小板凝集が進むと考えられている。   (同)

15.血液・凝固線溶異常症について正しいものを選べ。
(a)プロテインSは血液凝固を促進する。
(b)血管内皮細胞はvWFを産生放出する。
(c)血友病Aの患者(♂)と正常者との女児は全て血友病キャリヤ(保因者)である。
(d)播種性血管内凝固症候群では血小板は通常正常である。
(e)ビタミンK欠乏では血栓症を来すことがある。

【解答】 (c)
(a)× プロテインSは肝臓で合成され、プロテインCの補酵素として働く。プロテインCは肝臓で合成され、FX、F[を分解し、凝固系の亢進を抑える。                     (ステップ血液 P303)
(b)○ vWFは血管内皮細胞、及び骨髄巨核球で産生され、循環血液中(血漿または血小板)に存在する。機能としては、一次止血に際する、血小板と血管内皮下組織の「糊」としての機能と、F[と複合体をつくり安定化させる機能がある。                         (新臨床内科学 P1277)
(c)○ 血友病Aは伴性劣性遺伝。
(d)× 広範に細血管内凝固が生じるため、消費性に血小板は減少する。     (イヤーノート G-87)
(e)× ビタミンKはFU,Z,\,]因子、PC,PSの産生に不可欠で、不足すると、出血傾向が見られる。
                                                    (イヤーノート G-86)

16.GVL効果について、100字以内で説明せよ。

【解答】白血病に対する造血幹細胞移植においておこる、ドナーとレシピエント間の組織適合抗原の差異に基づく免疫学的反応を主体とした抗白血病効果。白血病の再発率が有意に低下する。GVHDと一体の関係にある。(97文字)
【解説】Graft Versus Leukemia効果のこと。

17.ラングハンス細胞組織球症について正しい組み合わせを選べ。
(1)増殖細胞はBirbeck顆粒を有する。 (2)増殖細胞は骨を侵すことはない。
(3)増殖細胞はS−100蛋白陰性である。 (4)合併症として悪性リンパ腫が50%以上の例に生ずる。
(5)Letterer-Siwe病では広汎な皮疹を来す。
a(1),(2) b(1),(5) c(2),(3) d(3),(4) e(4),(5)

【解答】 b 授業プリント 2002.11.7 マクロファージ系・脾・胸腺、新臨床内科学 P271 参照
(1) ○  (2) × 骨、肺、皮膚、リンパ節などが侵襲を受ける。 (3) × S-100蛋白陽性。
(4) リンパ球の浸潤は認められるが、悪性リンパ腫は認められない。 (5) ○

18.脾腫を来す疾患について述べよ。 (記述)

【解答】授業プリント 2002.11.7 マクロファージ系・脾・胸腺からの出題と考えると、以下の解答になると思います。
1. 1000g以上の巨大脾腫 CML、CLL、悪性リンパ腫、Gaucher病、骨髄増殖症候群、マラリアなど
2. 500〜1000gの脾腫   慢性脾炎(亜急性心内膜炎、結核、サルコイドーシス、腸チフス)、慢性うっ血、HS、伝染性単核症、転移性悪性腫瘍、急性白血病、悪性リンパ腫、Niemann-Pick病など
3. 500g以下の脾腫    ITP,急性脾炎、急性うっ血、SLE、AIHA

内科診断学を参照にすると以下の様な解答になると思います。好きな方を選んでください。
脾機能亢進
 網内系機能亢進
・溶血性貧血 HS、サラセミアなど
 免疫亢進 
  ・感染症  伝染性単核症、AIDS,ウイルス肝炎、結核、マラリア、CMV感染症など
・ 免疫調節不全 SLE,サルコイドーシス
 髄外造血  骨髄線維症
脾血流異常、門脈圧亢進
 肝硬変、肝静脈閉塞、特発性門脈圧亢進症、門脈閉塞、うっ血性心不全
浸潤
・ 沈着 アミロイドーシス、Gaucher病、Niemann-Pick病
・ 細胞浸潤 白血病、悪性リンパ腫、CML、組織球増加症
不明 特発性脾腫大、鉄欠乏性貧血


19.次のうち正しいものの組み合わせを選べ。
a)鉄芽球性貧血では環状鉄芽球が減少する。 b)骨髄異形成症候群の骨髄は低形成である。
c)巨核芽球性貧血ではPAS陰性の巨赤芽球が出現する。
d)再生不良性貧血では脂肪髄になる。 e)多発性骨髄腫では骨髄に異形骨髄芽球が出現する。
(1)a b (2)a e (3)b c (4)c d (5)d e

【解答】 (4)
(a)× 環状鉄芽球は増加する。(YN G-22)(b)× MDSでは骨髄は正〜過形成を示す。(同 G-50)
(c)○ (同 G-27) (d)○ (e)× 多発性骨髄腫の骨髄には異型形質細胞が出現する。(同 G-67)

20.次のうち誤っているものを選べ。
(1)トランスフェリンは3価の鉄を2原子まで結合できる。
(2)血清フェリチン値が低下している場合、鉄欠乏状態が考えられる。
(3)正常成人男性の場合、生体内総鉄量は3〜4gである。
(4)生体内では脾臓に蓄えられている鉄が最も多い。
(5)正常成人男性の鉄需要量はおおよそ1mg/日である。

【解答】 イヤーノート G-18参照
(1) ○  (2) ○ フェリチンは貯蔵鉄を反映する。 (3) ○ (4) × Hb鉄が体内の鉄の70%を占める
(5) ○ 体内から1日約1mgの鉄が排泄される。そのため、鉄の需要量は1日1mg。ただし、鉄の吸収率は約10%なので、鉄所要量(食事からとるもの)は1日10mg。

21.以下に挙げた貧血症状を、A:低酸素による症状 B:心肺の代償作用による症状 C:貧血の原因に基づく特殊症状に分類せよ。
1、血管雑音 (  ) 2、黒色便 (  ) 3、筋痛 (  ) 4、失神発作 (  ) 5、異食症(  )  
6、頻脈  (  )   7、息切れ (  ) 8、頭痛 (  ) 9、毛細血管拍動 (  ) 10、心雑音 (  )

【解答】 授業プリント 2002.10.10 貧血 参照
1、血管雑音 (B) 2、黒色便 (C ) 3、筋痛 (A ) 4、失神発作 (A ) 5、異食症(C )  
6、頻脈  (B )  7、息切れ (B ) 8、頭痛 (A ) 9、毛細血管拍動 (B ) 10、心雑音 (B)

22.輸血に関して正しいものはどれか。
a)輸血が必要と考えられる患者が入院してきた場合には、あらかじめ不規則抗体スクリーニングを施行することが望ましい。
b)血液型検査のオモテ検査では受血者の血清中に抗A・抗B抗体の存在を添加して抗原有無を調べる。
c)ABO血液型判定ミスの原因として最も多いのはABO亜型によるものである。
d)交叉適合試験の主試験では供血者血清と患者血球の適合を調べる。
e)交叉適合試験のガラス板法ではIgG抗体を検出する。

【解答】
a)○ ABO式血液型における抗A、抗B抗体は規則性抗体といわれる。それに対し、規則性抗体以外の赤血球抗原に対する抗体を不規則抗体という。(たとえばRh血液型の抗E抗体など) 不適切な輸血をすることで抗原感作し、不規則抗体が産生され、溶血を起こしてしまう。抗体スクリーニングを行うことにより、適合血を準備できる。                                     (一目でわかる輸血 P25)
b)× オモテ試験とは、抗A血清、抗B血清に、受血者の血球を加えて、赤血球抗原の型を調べる。
ちなみに、ウラ試験は、標準血球に患者血清を加えて、血漿の型を調べるもの。          (同 P21)
c)×? オモテ検査とウラ検査の不一致の原因としては、ABO亜型が原因のこともあるし、試薬の汚染、試験管の汚染など検査環境の影響等もある。原因としては後者が多いのではないかと思われる。 同 P21)
d)× 交叉適合試験とは、輸血の前に、供血者の血球と患者の血清の反応(主試験)、および供血者の血清と患者の血球の反応(副試験)を調べることである。
e)×? (ガラス板法というのは、ABO血液型検査のときに行う方法では?)抗A,抗B抗体はIgM抗体なので、IgM抗体を検出すると思います。

23.輸血に関して正しいものはどれか。
a)貧血で受診した女性が鉄欠乏性貧血と診断された。Hb=6g/dlと適度の貧血を認めたため濃厚血球液を2単位輸血した。
b)低栄養状態の42歳男性。栄養補給のため新鮮凍結血漿5単位の輸血を行った。
c)1年前に再生不良性貧血と診断され、慢性的に血小板10000/ul以下の15歳女性患者が本日外来を受診。血小板数が8000/ulであったので明らかな出血症状は認められなかったが部分的に血小板輸血を行った。
d)体重40kgの患者に血小板濃厚液(10単位)を輸血した場合、末梢血球数は40000〜60000/ul増加する。
e)体重50kgの患者に血清アルブミン値を1g/dl上昇させるために約50gのアルブミンが必要である。
(1) a b (2) a d (3) b d (4) d e (5) b c

【解答】 4
a)× まずは鉄剤の投与を行うべきである。鉄剤に反応する鉄欠乏性貧血は、基本的には輸血の適応にならない。                                               (輸血医学 P79)
b)× 栄養補給のために新鮮凍結血漿を輸血するのは不適切。 肝障害やDIC時などの凝固因子の補充に用いる。                                           (一目でわかる輸血 P41)
c)× 再生不良性貧血など慢性の血小板減少状態では、重篤な出血を認めなければ、5000/μlあれば血小板輸血はしないほうが良い。症状が安定して、出血傾向がある場合、5000/μl以下で血小板輸血の適応となる。                                               (同 P39)
d)○ 予測血小板増加数(/μl)=(輸血血小板総数/循環血液量(ml)×10^3)×2/3
最後の×2/3は、輸血された血小板の約1/3は脾臓にプールされるから。循環血漿量は体重の1/13である。また、血小板濃厚液1単位中、約0.2×10^11個の血小板が含まれる。
増加数(/μl)=2×10^11/(40000×1/13×10^3)×2/3=4.3×10^4個           (同 P39)
e)○ アルブミンの必要投与量(g)=血清アルブンミンの期待上昇値(g/dl)×循環血漿量(dl)×2.5
ただし、循環血漿量は0.4dl×体重(kg)、投与アルブミンの血漿内回収率は4/10とする。
この仮定に従うと、結局、必要投与量=期待上昇値(g/dl)×体重(s)となる。
したがって、1×50=50g                                           (輸血医学 P94)

24.輸血の副作用について間違っているものはどれか。
a)TRALI(Transfusion-related acute lung injury)は輸血1〜2時間で急激な呼吸困難を発症し、胸部単純X線上肺水腫がみられる。
b)輸血後GVHDを予防するには親近者血液を輸血することが望ましい。
c)血液製剤からの白血球除去は輸血後GVHDの予防に有効である。
d)ABO不適合輸血による副作用はA型血液をAB型の人に輸血するほうが、AB型血液をA型の人に輸血するよりも重症化する。
e)遅発性溶血性輸血後反応ではABO以外の抗原が不適合なため受血者の体内で抗体が産生され輸血した赤血球が破壊される。
(1) a b (2) a d (3) b d (4) d e (5) b c

【解答】 
a)○ TRALIは、輸血後数時間で起こる、心不全を伴わない、急性の肺水腫による呼吸不全。
b)× 血縁者間輸血では、同一HLAを共有していることが多く、HLA一方向適合になる可能性が高い
(HLA一方向適合・・・患者のHLAのタイプがA/B、供血者がA/Aであるとき、患者から見ると、供血者のリンパ球は自己のHLAと同一なため、排除できない。しかし、供血者から見ると、患者のBは異物であり、患者組織を攻撃する。) (一目でわかる輸血 P73)
c)○ 輸血用血液中のリンパ球が患者の中で増殖し、肝、皮膚、消化管を障害するので、有効。
d)× AB型の血液をA型の人に輸血する=主試験陽性となるABO不適合=major mismatch
   A型の血液をAB型の人に輸血する=副試験陽性となるABO不適合=minor mismatch
  major mismatchの方が、はるかに重篤な副作用を呈する。輸血した血球が全て溶血するため。
                                                    (輸血医学 P24,25.26)
e)○ 即時型はABO血液型の自然抗体などが存在するときに、対応する血液が輸血すると溶血などをおこす。遅発型は、輸血後に、供血者の赤血球の抗原を認識して、抗体が新たに産生される場合に起こる。                                         (一目でわかる輸血 P65)

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