肝胆膵 平成14年度概説試験

解答は授業プリント、内科学(朝倉書店)、新臨床外科学(医学書院)などを参考に作成。
誤りがあったら教えて下さい。

1.経口感染するウイルスはどれか。
a. A型肝炎ウイルス
b. B型肝炎ウイルス
c. C型肝炎ウイルス
d. D型肝炎ウイルス
e. E型肝炎ウイルス
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 2
解説 他は血液感染、B〜D型ウイルスはエンベロープを持ち、持続感染(慢性化)を起こすことも共通。また、E型ウイルスはA型に類似のウイルス。

2.現在ワクチンが有効なウイルス肝炎はどれか
a. A型肝炎
b. B型肝炎
c. C型肝炎
d. D型肝炎
e. E型肝炎
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 1
解説 HAV…不活化ワクチンがある
    HBV…ワクチンあり、母子感染の予防など
    HCV…escape mutantが起こりやすく、ワクチン開発は困難
    HDV…HBVによるヘルパー作用を必要とする不完全ウイルス。HBVワクチンが有効。

3.A型肝炎に関して正しい記載はどれか
a. ALT上昇後に便中にウイルスが排泄される。
b. 日本では若年層での感染率が高い。
c. 肝機能正常のキャリアーが存在する。
d. 感染の流行に季節性がある。
e. 一度感染すると終生免疫を得る。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 5
解説 a…× 潜伏後期に大量のウイルス排泄。→ALT上昇期に低下、ピーク時には排泄停止。
    b…× 不顕性感染率が高いが、加齢とともに顕性感染比率が上昇。
    c…× 決して慢性化しない。→キャリアーも存在しない。劇症化することは稀だがある。
    d…○ 1〜4月に好発。3、4月にピーク。ただ季節性の変動は少なくなってきている。

4.B型肝炎に関して過っている記載はどれか。
a. 肝機能正常のキャリアーが存在する。
b. 最近は急性肝炎の原因としては性交が多い。
c. 母子感染による垂直感染以外では一過性感染に終わる。
d. HBs抗体陽性になると、体内から完全にウイルスは排除される。
e. HBs抗体陽性からHBe抗体陽性にかわることをseroconversionという。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 ?
解説 a…○ 母子感染により免疫寛容が成立し、ヘルシーキャリアーとなる。
    b…○
    c…× 免疫の未熟なうち(〜3歳くらい)の感染は慢性化する。
    d…○
    e…× seroconversionは抗原が消失してそれに対応する抗体が出現する現象。「HBs抗原」を「HBe抗原」に変えれば○。

5.C型肝炎に関して過っている記載はどれか。
a. 日本国内で多く認められる遺伝子型は1b、2a、2bであり、1bが約70%を占める。
b. C型肝炎ウイルス感染で、1/3の患者が慢性肝炎へと移行する。
c. 母子感染が慢性肝炎の主たる原因である。
d. インターフェロンは慢性肝炎を完治させうる治療薬である。
e. 福岡県は一般住民での感染率が高い県である。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 3
解説 b…× 高率(80%ほど)の慢性化率
    c…× 母子感染は低率。入れ墨、麻薬(回し打ち)など。輸血はスクリーニングにより激減。
    d…○ 30%で治癒。30%では無効。
    e…○ 西日本で高い西高東低。

6.慢性肝炎に関して過っている記載はどれか。
a. 6ケ月以上の肝機能異常とウイルス感染性が持続している病態である。
b. 慢性肝炎で全く症状のないことは稀である。
c. 組織学的には門脈域の好中球浸潤と肝小葉の細胞変性・壊死が特徴的である。
d. 新犬山分類でのF4A2は肝硬変である。
e. 慢性肝炎の状態からの発癌は肝硬変より低い。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 3
解説 a…○ 非ウイルス性肝炎もあると思うが、プリントにそう書いてあるし…。「慢性肝炎」とういのがウイルス性のもの、と定義する教科書もあるらしい。
    b…× 多くは自覚症状を認めない。(肝臓の予備能は非常に大きいため。)
    c…× リンパ球が浸潤細胞の中心。肝実質細胞に種々の程度の変性、壊死が起こるのは正しい。
    d…○ F4=肝硬変、A2=中等度の壊死・炎症。FはフィブリンのFで0〜4、Aは0〜3。
    e…○ HCVでは慢性肝炎からの発癌はないが、HBVではあり得る。

7.肝硬変に関して正しい記載はどれか。
a. 肝硬変は広汎な線維化と再結節の形成を特徴とする。
b. C型肝炎ウイルスの保因者の方がB型肝炎ウイルス保因者より肝硬変になりやすい。
c. 日本では肝炎ウイルス以外の原因で肝硬変になることは5%未満である。
d. 肝硬変の死亡率は20年前から年々増加の傾向にある。
e. 肝硬変の死亡数では男女差はない。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 1
解説 b…○ ウイルス性肝炎の70%がC型肝炎、30%がB型肝炎。
    c…× アルコールなどの非ウイルス性が10%程度
    d…× かなりコントロールできるようになり、死亡率は低下している。
    e…× 2〜3:1と男性に多い。

8.アルコール性肝障害で正しい記載はどれか。
a. アルコール5合10年間の大酒家は肝硬変になる可能性が高い。
b. 女性は男性より同じ摂取量の場合、アルコール性肝障害は軽くなる。
c. 一般に抗生物質ではantabuse作用は認められない。
d. アルコール性肝障害の特徴はALTがASTより高くなりγGTPが上昇する。
e. アルコール硝子体はアルコール性肝炎で認められる。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 2
解説 a…○ 常習飲酒家は3合・5年以上(脂肪肝になる可能性が高い)、大酒家は5合・10年以上。
    b…× 女性は男性の2/3の量で肝障害が現れるといわれる。
    c…× セフェム系抗生物質で認められる。アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害する嫌酒作用のこと。
    d…× ASTが優位。
    e…○ アルコール硝子体=Malloly体。細胞核周辺部に認められる不整形の好酸性物質。アルコール性肝炎の代表的所見だが常に出現するわけではない。

9.薬剤性肝障害で正しい記載はどれか。
a. 薬剤性肝障害は薬剤服用歴や薬剤中止での改善が診断に重要である。
b. Acetoaminophenの障害ではZone 1 necrosis の可能性が高い。
c. 薬剤性肝障害は胆汁鬱滞では腹部エコーで胆管拡張所見が参考となる。
d. Halothan肝障害は初回手術の方が重篤である。
e. ホルモン剤で腫瘍形成が認められることがある。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 ?
解説 a…○
    b…× Zone 1=門脈周囲、Zone 2=中間部、Zone 3=中心静脈周囲=肝細胞障害型。Acetoaminophenの障害では中心静脈近傍の壊死が起こる。
    c…×?
    d…× Halothan(麻酔薬)肝障害は2回目に注意。=アレルギー性肝炎を起こすことがある。
    e…○ FSH(卵胞ホルモン、経口避妊薬)で肝細胞腺腫が起こることがある。

10.自己免疫性肝炎に関して過っている組み合わせはどれか。
a. 持続性又は反復性の血清トランスアミナーゼの高値。
b. 組織学的には慢性肝炎あるいは肝硬変(時には急性肝炎像)
c. 男女差1:2
d. 血清アルブミン値またはIgA値の高値
e. 自己抗体(特に抗核抗体、抗平滑筋抗体など)陽性
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 4
解説 c…× 圧倒的に女性に多い。1:9くらい。
    d…× 著明な高γ―グロブリン血症。血清アルブミンは低下。

11.原発性胆汁性肝硬変に関して過っている記載はどれか。
a. 抗ミトコンドリア抗体が陽性。
b. 胆道系酵素(ALP、γGTP)の上昇
c. Chronic non-suppurative destructive cholangitis
d. Onion-skin Fibrosis
e. 発症は中年女性に多い。
解答 d
解説 b…○ 胆汁鬱滞の所見を示す。
    c…○ 慢性非化膿性破壊性胆管炎。原発性胆汁性肝硬変は病理学的にはこう呼ばれる。
    d…× 全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴的所見。
    e…○ 男女比は1:9。

12.Wilson病と関連しないものはどれか。
a. 銅
b. セルロプラスミン
c. 偏光顕微鏡
d. D-ペニシラミン
e. 溶血発作
解答 c
解説 Wilson病=全身の組織、特に肝、脳、腎、角膜などに銅が過剰に蓄積する常染色体劣性遺伝病。
    b…○ 肝臓でのセルロプラスミン合成が低下→銅が消費されにくくなる。
    d…○ Wilson病の第一選択薬。重金属をキレートする。
    e…○ 血中に大量放出された銅が赤血球膜を障害→溶血。

13.肝臓の解剖で正しい組み合わせを1つ選びなさい。
a. 肝臓は右葉と左葉の2葉より構成されている。
b. 臨床的に肝右葉と左葉はCantlie's lineで分けられる。
c. 臨床的肝区域は尾状葉、左葉外側区域、左葉内側区域、右葉前区域、右葉後区域に分けられる。
d. Cantlie's lineは解剖学的肝円索(肝鎌状靭帯)と一致する。
e. Cantlie's lineは頭側は大動脈、足側は胆嚢(底部)で結ばれたものである。
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 3
解説 a…× 尾状葉を入れて3葉。
    d…× 解剖学的左葉は外側区域と一致。
    e…× 大動脈ではなく下大静脈。

14.肝臓の脈管について正しい組み合わせを1つ選びなさい。
a. 肝臓の流入血管は肝動脈と門脈から成り立っており、その血流は肝動脈が400ml/minで1100ml/minと門脈血流の方が圧倒的に多い。
b. 門脈は脾静脈と上腸間膜静脈が合流したものである。
c. 門脈圧は動脈圧に近く70mmHgで、静脈圧4mmHgに対してまだ十分に圧較差が残されている。
d. 肝臓からの流出血管は肝静脈で4本であり、区域の境界を流れている。
e. 肝動脈は通常、上腸間膜動脈→胃十二指腸動脈→固有肝動脈に由来している。
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 1
解説 b…○ 脾静脈には門脈起始の直前に下腸間膜静脈が流入。
    c…× 約7mmHg。動脈圧は約120mmHg。
    d…× 右・中・左肝静脈の3本。
    e…× 腹腔動脈→総肝動脈→固有肝動脈に由来。

15.肝(ミクロ)解剖について正しいものを選びなさい。
a. 肝小葉間にはグリソン鞘が存在し、そこには肝動脈、門脈、中心静脈が存在する。
b. 肝臓に存在するほとんど(90%)の細胞は肝実質細胞(肝細胞)である。
c. 肝非実質細胞としては、胆管上皮細胞、肝類洞細胞、肝星細胞(伊東細胞)、クッパー細胞、Pit細胞があり、各々重要な働きをしている。
d. 肝線維化(肝硬変化)においては肝星細胞が細胞外マトリックスの産生などで重要な働きをしている。
e. 肝類洞細胞と肝細胞の間にはDisse腔が存在し、そこに肝マクロファージであるクッパー細胞が存在する。
解答 c
解説 a…× 中心静脈→胆管
    b…× 65%程度。
    d…× 細胞外マトリックス→コラーゲン(T、V型)
    e…× ここに存在するのは伊東細胞。クッパー細胞は類洞内に存在。

16.肝臓における代謝について正しい組み合わせを1つ選びなさい。
a. 肝硬変症が進行すると糖尿病が合併してくる。
b. アミノ酸基転化などで生じたアンモニアは主に肝臓の尿素回路で尿素窒素に返還される。
c. T型糖原病であるvon Gierke病は1−4結合したグリコーゲンを分解する酵素が欠陥しており、全身特に筋肉でのグリコーゲンの蓄積が著明で低血糖は示さない。
d. 中性脂肪(トリグリセライド)は1個のグリセロールと4個の脂肪酸より構成される。
e. アポ蛋白とはリン脂質で覆われた粒子内にコレステロールや中性脂肪を内包したもので、そこに存在(突き刺さった)する蛋白をリポ蛋白という。
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 1
解説 a…○ 肝臓での取り込みが低下し、血中に糖が増える。
    c…× これはU型(Pompe病)。T型はグルコース6−フォスファターゼの欠損でグルコースが不足する。低血糖とグリコーゲン蓄積による肝腫大がみられる。
    d…× 脂肪酸は3個。
    e…× アポとリポが逆。

17.肝脂質代謝のなかで正しい組み合わせを1つ選びなさい。
a. 食べた中性脂肪、コレステロールは腸管上皮でカイロミクロンとなり、肝臓に運ばれるが、その過程でLPL(lipoproteinlipase)により中性脂肪が引き抜かれ、(カイロミクロン)レムナントとなる。
b. 肝臓で合成されるリポプロテインはVLDLであり、LPLによりIDLになり、さらにhepatic lipaseによりコレステロールが相対的に富むLDLとなる。
c. LDLはLDLレセプターにより粒子ごと細胞内に取り込まれるが、その際アポE蛋白がLDLレセプターに認識される。
d. 家族性高コレステロール血症ではVLDLの増加が著明で、W型、すなわち中性脂肪優位の高脂血症を呈する。
e. コレステロール合成の律速段階はHMG-CoAレダクターゼの反応で、高コレステロール血症の治療にはこの段階の阻害剤であるHMG-CoA reductase inhibitorが広く用いられている。
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 4
解説 c…× アポE蛋白→アポB100
    d…× Ua型。LDLが高値。コレステロールが増加し、中性脂肪は正常。

18.以下の記述で正しいものはどれか。
a. 胆汁酸は中性脂肪を原料に作られ、7α-hydroxylaseにより1次胆汁酸である、コール酸とケノデオキシコール酸が生成される。
b. 脾臓で破壊された老廃赤血球に由来する直接型ビリルビンは肝臓で抱合(主にグルクロン酸抱合)を受け、間接型ビリルビンになり胆汁中に排泄される。
c. 総胆管の完全閉塞による黄疸の場合、直接型ビリルビンが優位に上昇し、検尿では、ビリルビン、ウロビリノーゲンともに陽性となる。
d. Gilbert症候群では絶食によりビリルビン値が上昇する。
e. Dubin-Johnson症候群では、黒色肝、BSP試験での再上昇が認められる。
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 5
解説 a…× 中性脂肪ではなくコレステロール。
    b…× 直接型と間接型が逆。
    c…× ビリルビンは強陽性になるが、ウロビリノーゲンは陰性。
    d…○ 間接型上昇。
    e…○ 直接型上昇。

19.直接型ビリルビン優位の黄疸を示す病態を選びなさい。
a. 新生児黄疸
b. 閉塞性黄疸
c. 重症ウイルス性肝炎
d. 肝硬変症
e. サラセミア
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 2(他は間接型ビリルビンが優位となる。)
解説 a…× UDP-グルクロニルトランスフェラーゼ活性低下などによる抱合不全などが原因。
    b…○ 抱合後のビリルビンの行き場がなくなる。
    c…○ 理屈は肝硬変と同じ。肝細胞障害になる。
    d…○ 初めは抱合能には余裕があり、抱合後の輸送に障害が出る。抱合するグルクロン酸の合成が低下すると、間接型が優位になる。
    e…× 無効造血が亢進。血球破壊が増加する。

20.以下の記述で正しいものの組み合わせを1つ選びなさい。
a. アルブミンの半減期は数時間で、凝固因子の20日間に比べて短いので、現時点での肝の合成能を見るのに適している。
b. 凝固因子をみる検査にはプロトロンビン時間、ヘパプラスチンテストがあり、これらはビタミンK依存性の凝固因子の活性を示している。
c. 原発性胆汁性肝硬変症では免疫グロブリンIgMの高値と抗ミトコンドリア抗体の陽性を認める。
d. 急性肝炎の患者でIgG型の抗HAV抗体が陽性であった。この場合、A型急性肝炎と診断される。
e. A型肝炎既往者が肝機能障害で来院した。A型肝炎の再感染の可能性がある。
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 3
解説 a…× アルブミンと凝固因子が逆。
    b…○ プロトロンビン時間延長は第T、U、X、Z、]因子のいずれかの欠乏、ビタミンK欠乏による。 ヘパプラスチンテストは、肝臓での第Z、\、]因子産生量を反映。
    c…○ 中年以降の女性に好発する慢性肝内胆汁鬱滞症。免疫学的機序による胆管破壊が原因とされる。
    d…× IgG型の抗HAV抗体は中和抗体で、3ヶ月でピーク、以後終生陽性が持続。
    e…× A型肝炎は劇症化することこそまれにあるが、決して再感染・慢性化しない。

21.肝疾患と免疫グロブリンの関係で正しい組み合わせはどれか。
a. IgE高値・・・・・急性A型肝炎
b. IgM高値・・・・・原発性胆汁性肝硬変症
c. IgG高値・・・・・自己免疫性肝炎
d. IgA高値・・・・・アルコール性肝硬変症
e. IgG高値・・・・・薬剤性肝炎
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 2
解説 肝臓ノート33ページ以降を読みましょう。
    a…× A型肝炎に特徴的なのはIgMの上昇。
    b…○ 血中抗ミトコンドリア抗体、慢性非化膿性破壊性胆管炎と共に特徴的な所見。
    c…○ 最も特徴的な所見は自己抗体で抗核抗体、抗平滑筋抗体があることが多い。
    d…○ ほかにAST優位の血清トランスアミナーゼ上昇、γGTP上昇、ALPの上昇など。
    e…× 薬剤性肝炎はIgE高値。(アレルギー反応の関与するもの)

22.肝硬変の重症度の判定に有用な検査項目はどれか。
a. コリンエステラーゼ
b. プロトロンビン時間
c. γ-GTP
d. トランスアミナーゼ
e. ICG試験
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 4
解説 a…○ 非特異的コリンエステラーゼは肝機能の中で合成機能と相関し、肝硬変での低下は特徴的。
    b…○ 現在の肝臓の蛋白合成能を知るための指標。Child-Pugh分類の項目の一つ。
    c…× 胆道系の障害、アルコール性肝障害で上昇。
    d…× ASTとALT。上昇するが、肝硬変の末期では逆に低下。
    e…○ インドシアニングリーン。肝機能全般の指標。30%を超えると肝硬変を考える。

23.肝性脳症について正しいものの組み合わせを1つ選びなさい。
a. 肝性脳症U度以上では羽ばたき振戦を認めることが多い。
b. 肝性脳症では、尿素回路がうまく働かないために血中のアンモニアが上昇している。
c. 肝性脳症ではフィッシャー比が上昇している。
d. 肝性脳症では、アミノ酸の異常バランスを補正するために、芳香族アミノ酸の輸液を行う。
e. 肝性脳症では、合成2糖類(ラクツロース等)を経口、または注腸を行う。
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 4
 解説 c…× フィッシャー比=分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸、は低下。
     d…× 分岐鎖アミノ酸の輸液を行う。

24.肝硬変患者において定期的に行うべき検査で最も必要なものを2つ選べ。
a. 腹部エコー検査
b. 上部消化器内視鏡検査
c. 心エコー検査
d. 大腸内視鏡検査
e. 腹部単純レントゲン検査
(1)a,b (2)a,e (3)b,c (4)c,d (5)d,e
解答 1
解説 aは肝癌発生の有無を、bは門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤の有無を調べる。

25.検診にて肝機能障害とHCV抗体陽性を指摘された患者が来院した。自覚、他覚症状共にない。当院の検査結果はAST 80 IU/l、ALT 60 IU/l、ALP 380 U/l(正常115-359)、γ-GTP 50、総蛋白 8.0 g/dl、アルブミン3.6 g/dl、ヘパプラスチンテスト60%(正常80%以上)、血小板7万/mm3、 AFP 350ng/mlであった。今後進めていくべき検査はどれか。
a. 脳波検査
b. 腹部エコー検査
c. 腹部CT検査
d. 上部消化管内視鏡検査
e. 心電図検査
(1)a,b,c (2)b,c,d (3)c,d,e(4)a,b,e(5)a,d,e
解答 2
解説 C型肝炎による肝硬変、肝癌が疑われる。(血小板↓↓とAFP↑↑から)

26.肝動脈に関して正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 右肝動脈が上腸間膜動脈から分枝する頻度は約10%である。
2) 上腸間膜動脈から分枝した右肝動脈は肝門部で、門脈の前面を通る。
3) 左肝動脈が左胃動脈から分枝する頻度は約20%である。
4) 左肝動脈は総胆管の左壁に接することが多い。
5) 右肝動脈は総胆管の背面を通る。
解説 1…○ 本来の肝臓の動脈は腹腔動脈から血流を得る。
    2…○
    3…× 約10%。普通は腹腔動脈が左胃動脈と総肝動脈に、総肝動脈が固有肝動脈と胃十二指腸動脈に、固有肝動脈が左右の肝動脈に分岐する。
    4…たぶん○
    5…○

27.正しい組み合わせはどれか。すべて選びなさい。
1) Pringle法・・・・・・・・肝臓の止血法
2) Couinaud・・・・・・・・・肝臓の区域
3) Cantlie・・・・・・・・・ 右肝静脈
4) S2とS3(外側区域)・・・ 発生学的に同一
5) 短肝静脈・・・・・・・・・門脈系へのシャント
解説 1…○ 肝十二指腸靱帯をクランプし、肝臓への流入血流を遮断する。確実だが長時間連続は不可。
    2…○ S1〜S8の分類のこと。門脈の走行が基準。
    3…× 下大静脈と胆嚢床を結んだ線で、中肝静脈の走行とほぼ一致する。
    4…× 別々に発生する
    5…×? S6、7から下大静脈に流れる静脈らしいから、「門脈系へのシャント」にはあたらないのでは?

28.肝膿瘍についての次の記述のうち正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 起炎菌はグラム陰性菌が多い。
2) 感染経路は門脈系由来が多い。
3) アメーバ性肝膿瘍は、細菌性肝膿瘍に比べ単発性が多い。
4) 単発の肝膿瘍に対しては、肝切除が第一選択である。
5) 肝膿瘍では酵素が初期から出現することが多い。
解説 1…○ 大腸菌、シュードモナス、クレブジエラなど。
    2…× 抗生物質により著減(5%程度)。胆道経由が60%と最多。
    3…○ 95%が単発。90%が右葉と右に多い。
    4…× 第一選択はドレナージ。超音波ガイド下に行うことで安全性が増した。
    5…× 白血球↑、赤沈亢進、CRP陽性など急性炎症所見。酵素上昇も起こり得るが特異的ではない。

29.肝血管腫に関して正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 典型的な超音波断層所見の1つはハロー(halo)である。
2) 腹部dynamic CTスキャンでは中心部に星芒上のlow density area (central scar)を認める。
3) 血管造影上の特徴的所見はcotton wool-like poolingである。
4) MRIのT2強調画像において、境界明瞭なhigh intensityを呈する。
5) Kasabach-Merritt症候群は、出血傾向とDICのため手術適応となることが少ない。
解説 超音波ではほぼ均一な高エコー腫瘤、CT検査では周辺から造影され造影効果が数分以上持続。MRIはT1強調画像で肝実質より均一な低信号、T2強調画像で均一、著明な高信号。血管造影では3の通り、動脈分枝の周囲にいくつか円形の造影剤貯留(=綿花様)が長く持続。
 1…× ハローとモザイクパターンは肝細胞癌(HCC)の特徴的所見。
 2…× これは限局性結節性過形成の所見。
 3…○
 4…○
 5…× これがあるなどし、圧迫症状のある症例は肝切除の適応となる。(小さいものは処置の必要なし。)

30.肝細胞癌における癌抑制遺伝子p53について正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 前癌病変(腺腫様過形成)の時点から変異をきたすことが多い。
2) 肝細胞癌におけるp53の変異の率は約20?30%である。
3) アフラトキシンによる肝細胞癌ではExon 7, codon 249の変異が特徴的である。
4) p53の変異は肝細胞癌の分化度と無関係である。
5) p53の変異がある症例の予後は不良である。
 解説 ? 3は○です。

31.血清PIVKA-IIが上昇しないのはどれか。すべて選びなさい。
1) 慢性活動性肝炎
2) 肝硬変
3) 肝細胞癌
4) ビタミンK投与
5) ワーファリン投与
 解説 1と2と4。肝細胞癌のマーカーだが、ビタミンK依存性のため、ビタミンKの吸収障害や、ビタミンK拮抗剤(ワーファリンなど)の投与でも上昇する。

症例58歳。男性。生来健康であったが、検診のエコーにて肝に腫瘤を指摘され入院。
生活歴:smoking 50本/日(40年間)、drinking ビール大瓶3本/日
血算:WBC 4200/mm3、Hb14.5g/dl、Plt.24万/ml;
生化学所見:T.P. 7.2g/dl、Alb.4.5g/dl、AST 12IU/l、ALT 10IU/l、PT11.2秒(98%)、ICGR15 6.5%,
ウイルスマーカー:HBs Ag(-)、HBs-Ab(+)、HBe-Ag(-)、HBe-Ab(+)、HBc-Ab(+)、HCV-Ab(-)
腫瘍マーカー:AFP 7.0ng/ml、PIVCA-II 11mAU/ml、CEA 3.5ng/ml(正常<2.5ng/ml)
CT(図1左)と、血管造影(図1右)の画像を示す。
32.最も考えられる診断はどれか。
1) 肝血管腫
2) 高分化型肝細胞癌
3) 中・低分化型肝細胞癌
4) 肝内胆管癌
5) 転移性肝癌
33.治療として適切なのはどれか。
1) 肝動脈塞栓術
2) Lipiodolization
3) ラジオ波腫瘍焼灼術
4) 肝切除
5) その他
画像がないのでムリですね…。参考までに検査所見を正常値とともに検討。
血算は正常ですね。
T.P.は正常域6.5〜8.0、Albは3.8〜5.1なのでこれも正常。ASTはGOTと同じ、ALTはGPTと同じで基準値はASTが5〜30、ALTが1〜25なので、ややAST優位のトランスアミナーゼ上昇。PTは正常(9〜12)、ICG15は10%以下が正常なのでこれも異常なし。肝機能はほとんど低下していないと言えそうです。(ということは肝硬変後に起こる肝細胞癌は考えにくい。)
ウイルスは中和抗体(HBs-Ab)があるのでHBVの既感染。
腫瘍マーカーはAFPが10以下で正常、PIVKA-Uも11は正常範囲。CEAが若干上昇しています。
CEAが上がるのは大腸癌由来らしいのでその転移の可能性が濃厚。大腸癌の肝転移は単発、胃癌の肝転移は多発のものが多いそうです。CTで造影されにくい腫瘍が単発で認められるなら確定でしょう。この場合治療は肝切除。

ついでに画像検査所見と治療法についてもまとめておきます。
肝血管腫:大問29参照、球形に見える。
肝細胞癌:超音波エコーでハローとモザイクパターン、結節内結節(nodule in nodule)。球形に見える。造影CTでhigh-low pattern、MRIのT1強調画像では一定せず、T2強調画像で高信号。
肝内胆管癌・転移性肝癌:両者の画像鑑別は非常に困難。カリフラワー状。エコーでbull's eye sign。造影CTでlow-low pattern(乏血管)、MRIのT1強調画像では低信号、T2強調画像で高信号。

肝切除:肝予備能(ICG試験を参考にする)と相談して切除範囲決定。肝内胆管癌、転移性肝癌では背景となる肝臓が正常な場合が多いので、最大80%を切除可能。転移性肝癌では転移巣が肝臓のみで原発巣がよくコントロールされていれば切除適応となる。
肝動脈塞栓療法=TAE:カテーテルを肝細胞癌の栄養動脈に挿入、塞栓物質を動注して腫瘍のみを選択的に壊死させる。
経皮的エタノール注入療法=PEI:迅速な蛋白凝固作用のある99%エタノールを超音波ガイド下に腫瘍内に注入。腫瘍を壊死させる。適応は3cm以下で3個以内。
ラジオ波腫瘍焼灼術:マイクロ波凝固療法の発展版。熱によって腫瘍組織を焼くのは同じだが、マイクロ波のように急激に高温にならない。より適応範囲が広い。
Lipiodolization:化学療法併用油性造影剤の肝動脈注入療法。油性造影剤にとかした抗癌剤(リピオドール)を注入し、腫瘍のみを選択的に壊死させる。TAEと併用されることも多い。

34.肝細胞癌について正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 肝切除後に最も再発しやすい臓器は肺である。
2) 治癒切除後の肝細胞癌の再発は3年で約30%である。
3) 再発肝細胞癌は手術適応がない。
4) 3cm以下の肝細胞癌の場合、肝動脈塞栓療法は肝切除術と同等の治療成績である。
5) ラジオ波焼灼療法はマクロ波凝固壊死療法に比べ、脈管への損傷が少ない。
解説 1…× 肝外転移は肺が最多、ただし肝内再発の方が多い。
    2…× 3年以内に50〜60%が再発。
    3…×? 肝機能がしっかりしていれば再手術も可能なはず。
    4…×? Lipiodolizationなら○では…。
    5…?

35.限局性結節性過形成(FNH)について正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 慢性肝疾患を背景にすることが多い。
2) 血管造影でのspoke-wheel appearanceが特徴的である。
3) 99mTc-phytateの取込みがみられる。
4) central scar を有することが多い。
5) 肝切除が施行されることが多い。
解説 1…×
    2…○ 放射状(車軸状)に広がる末梢静脈。これが見つかればほぼ確定。
    3…○ テクネチウムで標識したphytateを投与すると病変部に取り込まれる。
    4…○ 結節内中央の線維化。
    5…× 診断がつけば無症状=経過観察。症状があるとき、HCCと判別がつかないときは切除適応。

36.肝内胆管癌について正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 慢性肝炎を背景にすることが多い。
2) 嚢胞腺癌が多い。
3) 主たる進展様式はリンパ行性である。
4) 胆汁産生を認めることがある。
5) 画像診断で転移性肝癌と鑑別が難しい。
解説 1…× 背景となる肝臓は正常な場合が多い。
    2…×? 管状腺癌が多い。
    3…○ 肝内胆管癌はアデノカルチノーマなのでリンパ行性転移がある。
    4…○? 腫瘍細胞内または腺管内に必発的に粘液産生を見る。
    5…○

37.転移性肝癌について正しい記載はどれか。すべて選びなさい。
1) 大腸癌肝転移の切除後の五年生存率は10%程度である。
2) 肺癌や乳癌の肝転移は、肝切除の適応となることが少ない。
3) 大腸癌の肝転移は、多発性であってもできる限り切除した方がよい。
4) 転移性肝癌は、肝動脈塞栓のよい適応である。
5) 多発性大腸癌転移性肝癌は、肝移植の適応である。
解説 1…×? よい条件で行われた場合には30〜40%の5年生存率が期待できる。
    2…○ 肝臓以外の臓器にも転移しやすい癌は切除対象にならないことが多い。肝臓のみに転移することの多い癌=大腸癌。
    3…○ 大腸癌は転移臓器が肝臓のみのことが大半のため。
    4…× 転移性肝癌は血管に乏しいのでよい適応とはいえない。
    5…× 胆道系以外の悪性腫瘍は肝移植の禁忌だそうです。移植してもまた転移しそうですね。

38.肝移植の基本的免疫抑制につき正しいものはどれか。すべて選びなさい。
1) ステロイド
2) カルシニューリン阻害剤
3) アザチオプリン
4) OKT3
5) 抗インターロイキンreceptor抗体
解説 ?全部正しいような…。「基本免疫抑制剤」はシクロスポリンA(CYA)やタクロリムス(FK506)なんかのカルシニューリン阻害剤らしいから2だけ○にすればいいのか?

39.食道静脈瘤について正しい記述はどれか。すべて選びなさい。
1) 原因疾患はすべて肝硬変である。
2) 発赤所見(血まめ様所見、ミミズ腫れ所見)を呈する食道静脈瘤は出血しやすい。
3) 緊急の出血時にSengestaken-Blakemore tube(S-B tube)は有用である。
4) 食道静脈瘤の治療としての第一選択は門脈下大静脈シャントである。
5) 食道静脈瘤を有する症例は門脈圧が20cm H2Oを越すことが多い。
解説 1…× 門脈圧亢進症によって引き起こされるが、門脈亢進を来すのは肝硬変だけではない。
    2…○
    3…○ 内視鏡的な結紮や硬化療法を試みるが、不可能ならSB tubeやバゾプレッシンの併用。
    4…× 内視鏡的に結紮や硬化を行うのが先。
    5…○ 

40.以下の疾患で門脈圧亢進症をきたす疾患はどれか。すべて選びなさい。
1) バッドキアリ症候群
2) 肝内結石症
3) 日本住血吸虫症
4) 肝外門脈塞栓症
5) 脂肪肝
解説 1と3と4。他に肝硬変。バッドキアリ症候群以外はしばしば食道静脈瘤を来す。また、バッドキアリ症候群、肝硬変では腹水が見られることもある。

41.次の文章のうち誤っているものはどれか。
a. 胆汁脂質は胆汁酸塩、コレステロール、及びリン脂質からなる。
b. ビタミンKの吸収には胆汁酸が必要である。
c. 間接ビリルビンはグロブリンと結合した形で血液中に存在する。
d. 溶血性黄疸では尿中ビリルビンが強陽性となる。
e. 閉塞性黄疸時にはデルタビリルビンが認められる。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 4
解説 a…○ 他に胆汁にはビリルビン、ムチンなどが入っている。
    b…○ 脂質、脂溶性ビタミンの消化吸収を行う。
    c…× グロブリンではなくアルブミンと結合。
    d…× 間接ビリルビンが血清中に増加し、尿・便中にはウロビリンが増加する。(腸肝循環が正常)
    e…○? 選択肢からすると…

42.次の文章のうち誤っているものはどれか。
a. Rotor症候群では間接ビリルビンが増加する。
b. 胆汁酸が欠乏すると難治性の下痢がおこる。
c. 悪性腫瘍による閉塞性黄疸時には皮膚掻痒が認められる。
d. HMG-CoA還元酵素阻害剤により高コレステロール血症を治療することができる。
e. ビリルビンはβグルクロニダーゼによりグルクロン酸抱合される。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 2
解説 a…× 直接型が上昇(Dubin-Johnsonも)。間接型上昇はCrigler-NajjarとGilbert症候群。
    b…○ 脂質の消化吸収ができなくなる。
    c…○ 
    d…○ HMG-CoA還元酵素はコレステロール合成に必要な酵素であるため。
    e…× UDP-glucuronyltransferaseによりグルクロン酸抱合される。

43.次の文章のうち誤っているものはどれか。
a. 閉塞性黄疸では尿中ウロビリノーゲンが陽性となる。
b. 腹水を伴った閉塞性黄疸患者では、経皮経肝胆道ドレナージ術は禁忌である。
c. Mayo-Robson点は胆石症の圧痛点であり、臍の右上方に位置する。
d. 赤血球の平均寿命は120日である。
e. ウルソデオキシコール酸はコレステロールを複合ミセルとして可溶化させる。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 1?
解説 a…× ビリルビンが陽性に。
    b…×? 経皮経肝胆道ドレナージ術(PTBD)を行うときには、脱水、貧血、低蛋白血症などを起こしていることが多いので、これらをまず補正せねばならない。
    c〜e…○

44.次の文章のうち誤っているものはどれか。
a. 胆石症の三主徴は上腹部の疝痛・黄疸・発熱である。
b. Dubin-Johnson症候群では直接ビリルビンが増加する。
c. 肝硬変患者で黄疸と腹水が認められる場合は、外科的内瘻術の適応はない。
d. 肝門部胆管癌による胆道閉塞では経皮経肝胆嚢ドレナージが有効である。
e. Head点は胆石症の圧痛点であり、心窩部に位置する。
1)a b  2)a e  3)b c   4) c d  5) d e
解答 5
解説 a…○ シャルコーの三徴。悪心を入れたら四徴。
    b…○ Dubin-Johnson、Rotor症候群は直接型が上昇。間接型上昇はCrigler-NajjarとGilbert症候群。
    c…○? 補正を行わねばならない。
    d…× 経皮経肝胆嚢ドレナージは三管合流部以下の閉塞に行う。
    e…× Solar点。Head点はへその右斜め上のあたり。

45.腹腔鏡下手術について正しいものはどれか。
1) 腹腔鏡の気腹には化学的に安定なヘリウムガスが用いられている。
2) 腹腔鏡手術では気腹圧をできるだけ高くして十分な視野を得ることが重要である。
3) 腹壁吊り上げ法は気腹法に比べ、高炭酸血症の合併症が多い。
4) 進行胆嚢癌も腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応となる。
5) 腹腔鏡手術においても最初のトロカールは小開腹を行って挿入される。
解答 2?
解説 1…× 二酸化炭素ガスを用いる。
    2…○? 最大10mmHg。この範囲で充分気腹する、ということなのだろうか…。
    3…× 二酸化炭素分圧や腹腔内圧の上昇が少なく、これらに起因する合併症が少ない。
    4…× リンパ節郭清を腹腔鏡下に行うのは困難。
    5…× 最初は臍下部に腹腔鏡用のトロカールを刺入する。

46.腹腔鏡下手術について誤っている記載はどれか。
1) 開腹術に比べ術後回復が早い。
2) 開腹術に比べ手術時間が長い。
3) 胆嚢摘出術では腹腔鏡下手術の割合が開腹術よりも多い。
4) 吊り上げ法より気腹法が普及している。
5) 手術既往のある症例は腹腔鏡下手術の適応とならない。
解答 5
解説 3…○ 8割前後。
    4…○ 気腹法の術野の方が広い。

47.肝内結石症について誤っている記載はどれか。
1) ビリルビン結石の割合が多い。
2) アジア地域に多い。
3) 肝膿瘍をきたしやすい。
4) 一度きちんと治療すれば再発しにくい。
5) 一区域内に限局していれば肝切除の対象となりうる。
解答 4?
解説 1…○ 胆汁鬱滞により発生すると考えられるのでビリルビンカルシウム石が基本。
    2…○
    3…○?
    4…×? 単純に根治性を期待できる症例は少なく、難治性疾患のひとつ。
    5…○ 切除が唯一の根治的な治療。狭窄部に発癌の可能性もあり。

48.誤っている組み合わせはどれか。
1) 経口胆石溶解剤---------コレステロール結石
2) 胆石イレウス-----------胆嚢十二指腸瘻
3) 総胆管結石症-----------Courvoisier徴候
4) Reynolds5徴-----------中枢神経症状
5) 胆道拡張症-------------膵胆管合流異常
解答 3
解説 1…○ 半年〜3年の服薬で10〜30%が消失するとか。
    2…○ 胆嚢十二指腸瘻で胆嚢の胆石を腸に出した後、その胆石で腸閉塞(イレウス)が起こることあり。
    3…× Courvoisier徴候は乳頭部胆管癌でみられる、無痛性に腫大した胆嚢を触知する徴候。
    4…○ Charcot3徴(疝痛、発熱、黄疸)+意識障害、ショック。敗血症などにより引き起こされる。
    5…○ 両者は合併していることが多い。

49.総胆管結石について正しい記載はどれか。
1) 無症状であれば経過観察とする。
2) 胆嚢結石に比較し、コレステロール結石の割合が多い。
3) エコーで90%は確認できる。
4) 治療としては腹腔鏡手術が最も普及している。
5) 総胆管切開は、総胆管結石に対する術式の1つである。
解答 4
解説 1…× 胆嚢結石なら経過観察でよさそうですが。
    2…× 胆嚢結石に比較し、ビリルビンカルシウム石が多い。
    3…× 胆嚢にあれば95%以上確認できるそうですが、総胆管では胆管造影をするらしい。
    4…○ 腹腔鏡下総胆管切石術。
    5…×?

50.急性胆嚢・胆管炎について誤っている記載はどれか。
1) 胆嚢壁の3重構造は、急性胆嚢炎のエコー像の特徴である。
2) 急性閉塞性化膿性胆管炎は抗生剤に良く反応するので、まず保存的治療を試みる。
3) 経皮経肝的胆嚢ドレナージは急性胆嚢炎に対する治療法のひとつである。
4) 胆道感染の主要な菌種はグラム陰性桿菌である。
5) 経十二指腸的逆行性感染は胆道感染の重要な経路である。
解答 2
解説 1…○?
    2…× 劇症性のため一刻も早い胆道ドレナージが必要。
    3…○
    4…○ 大腸菌が最多。
    5…○ 他に血行性(わりと多い)、リンパ行性の感染がある。

問題51.膵の解剖で正しい組み合わせはどれか。
a. 五臓六腑に膵臓は含まれていない。
b. 膵は後腹膜に位置する実質臓器で、長さ10〜15cm、幅5cm、重量60〜70gである。
c. 膵は解剖学的に頭部、体部、尾部に分けられるが、頭部と体尾部の境界は門脈の左縁である。
d. 膵の導管(膵管)にはSantorini管(主膵管)とWirsung管(副膵管)があり、総胆管は副膵管の前面を走行する。
e. 膵は総肝動脈、脾動脈、下腸間膜動脈の三つの動脈からの分枝が、互いに連絡しあってつくる動脈アーケードにより栄養を受けている。
1)a b c  2)b c d  3)c d e  4)a c e  5)a-eすべて
解答 1
解説 a…○ 五臓(充実臓器)=心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓。ちなみに六腑(中空臓器)=大腸、小腸、胆嚢、胃、三焦(実体なし)、膀胱。
    b、c…○ 全くその通り
    d…× 「主膵管」と「副膵管」が逆。総胆管は副膵管の後面を通る。
    e…× 下腸間膜動脈ではなく上腸間膜動脈。

52.消化管ホルモンであるコレシストキニン(CCK)の作用として正しい組み合わせはどれか。
a. 膵液(水)分泌作用
b. 胆嚢収縮作用
c. Oddi氏筋弛緩作用
d. 胃排泄促進作用
1)a b   2)c d   3)a b c  4)a c d  5)b c d
解答 3
解説 膵液分泌作用を持つものには他にセクレチングループのセクレチンやVIPがある。またCCKはガストリンと同グループ。インスリンも膵液分泌作用を持つ。dは促進ではなく抑制。

53.膵酵素について正しい組み合わせはどれか。
a. 主に蛋白質を分解する酵素はトリプシンである。
b. 主に脂肪を分解する酵素はリパーゼである。
c. 主に炭水化物を分解する酵素はアミラーゼである。
d. 主に線維質を分解する酵素はエラスターゼである。
1)a b c  2)b c d  3)a c d  4)a b d  5)a-dすべて
解答 5
解説 全てその通り。

54.回腸が主要吸収部位であるものの正しい組み合わせはどれか。
a. 鉄
b. カルシウム
c. ビタミンB12
d. 胆汁酸・ステロール
e. 脂肪
1)a b  2)b c  3)c d  4)d e  5)a-eすべて
解答 3
解説 鉄、カルシウムは十二指腸で、脂肪は空腸でそれぞれ吸収される。
    空腸ではVit B12以外の水溶性ビタミンと蛋白質も吸収する。

55.急性膵炎の病因として正しい組み合わせはどれか。
a. 胆石、胆管炎
b. 耳下腺炎
c. 副甲状腺機能亢進症
d. ステロイド
e. 妊娠
1)a b c  2)c d e  3)b c d  4)a b c d  5)a-eすべて
解答 5
解説 男性では70〜80%がアルコール性、女性では50%が胆道疾患と、この3つが多い。他に外傷など。

56.血清アミラーゼについて正しい組み合わせはどれか。
a. 急性膵炎の際は、血清アミラーゼの上昇に遅れて尿中アミラーゼが上昇する。
b. 非代償期の慢性膵炎では異常低値を示すことが多い。
c. アミラーゼは腎排泄性のため腎不全の際に上昇することが多い。
d. マクロアミラーゼ血症の患者は膵癌の発症率が高い。
e. アミラーゼ産生腫瘍で最も頻度の多い疾患は大腸癌である。
1)a b c  2)b c d  3)c d e  4)a c e  5)a-eすべて
解答 1
解説 a…○ その後正常値に戻るのも血清アミラーゼの方が早い。
    b…○ 膵臓のアミラーゼ産生細胞が破壊され尽くすため。
    c…○ これが×だったら選べる選択肢がないですね…。腎不全でも上昇します。
    d…× そんなことはない。
    e…× アミラーゼ産生腫瘍は肺癌、卵管癌、卵巣癌など。
 
57.急性膵炎について正しい組み合わせはどれか。
a. 急性膵炎の疼痛に対してOddi筋の収縮作用がないモルヒネが鎮痛剤として最も適している。
b. 急性膵炎では胸腹水を認めることが多い為、積極的な輸液は禁忌である。
c. 急性膵炎での腹部造影CTは、腎機能を悪化させるので禁忌である。
d. 重症急性膵炎では初期のCHDF(持続的血液濾過透析)が有効である。
e. 急性膵炎晩期(後期)では、消化管出血は主な死因の一つである。
1)a b  2)b c  3)c d  4)a e  5) b d
解答 5
解説 a…× モルヒネはOddi筋を収縮させ、膵管内圧を上昇させるので禁忌。
    b…× 大量(5〜6l)の輸液を行う。(電解質補正)
    c…× 昔はそう言われていたが、これをしないと壊死具合がわからないので腎不全がない限りやるべき。
    d…○
    e…○? 合併症に消化管出血があるのは確実。主な死因なのか?

58.慢性膵炎に関して正しい組み合わせはどれか。
a. 慢性膵炎の非代償期の病態は消化吸収不全と耐糖能異常である。
b. 慢性膵炎で糖尿病を合併している症例において、アルギニン負荷試験でインスリン反応に加えグルカゴン分泌も低下していれば膵性糖尿病として治療を行う。
c. 膵内結石の存在だけでは慢性膵炎の確診例とならない。
d. 慢性膵炎の非代償期では膵酵素は上昇を示す症例が多い。
e. 慢性膵炎の急性増悪の際の治療は急性膵炎に準ずる。
1)a b c  2)a b d  3)b c d  4)b d e  5)a-eすべて
解答 ?(1→? eは○?3つ正解ならabeが一番怪しいと思うんですが…。

解説 a…○
    b…○
    c…○?
    d…× 膵細胞がほとんど破壊されて正常値かそれより低下する。
    e…○?

59.慢性膵炎患者における膵外分泌機能を評価する検査として正しい組み合わせはどれか。
a. セクレチン試験
b. D-キシロース試験
c. グルカゴン負荷試験
d. PFD試験
e. 便中キモトリプシン
1)a b c  2)a b e  3)b c d  4)a d e  5)a-eすべて
解答 4
解説 a…○ 膵液を1時間ゾンデで吸入。感度は高いが患者の負担は大きい。
    b…× 糖の吸収能力検査。
    c…× どちらかというと肝細胞機能の検査。
    d…○ BT-PABA試験。侵襲性が低いが感度も低い。
    e…○ 便に排泄される消化酵素を測定。感度は低い。

60.膵管癒合不全(pancreas divisum)および膵胆管合流異常について正しい組み合わせはどれか。
a. 膵管癒合不全では腹側膵炎を惹起しやすい。
b. 膵管癒合不全の治療にはセクレパン療法が有効な場合が多い。
c. 膵管癒合不全では悪性腫瘍の合併が多い。
d. 膵胆管合流異常には先天的に総胆管拡張症を合併しやすい。
e. 膵胆管合流異常では胆汁中アミラーゼが上昇する場合が多い。
1)a b c  2)a b e  3)b c d  4)a d e  5)b d e
解答 5?
解説 a…× 膵管癒合不全が起こると、膵液の大部分を産生する背側膵(発生段階で回転しない方)からの膵液分泌が(副膵管は細いため)うまくいかない。→背側膵炎を起こしやすい。
    b…○?
    c…× 膵胆管合流異常症では高率。
    d…○
    e…○

61.自己免疫性膵炎について正しい組み合わせはどれか。
a. 逆行性膵管造影での瀰漫性狭細化が特徴である。
b. 耐糖能の異常を伴うことはまれである。
c. ステロイド治療は禁忌である。
d. 組織ではリンパ球優位の炎症細胞浸潤と線維化を示す。
e. 血中IgGやγ‐グロブリンの上昇を伴うことが多い。
1)a b c  2)a b e  3)b c d  4)a d e  5)b d e
解答 4
解説 a…○ 他にびまん性膵腫大、下部総胆管狭窄、胆汁鬱滞型黄疸などを呈する。
    b…×?
    c…× ステロイドで著明に膵肥大が改善することが多い。
    d…○ リンパ濾胞の形成を伴うこともある。
    e…○

62.膵癌について正しい記述はどれか。
a. 最も多い組織型は膵腺房細胞癌が最も多い。
b. 糖尿病の発症、または急な血糖コントロールの異常を認めた際は、膵癌を念頭においての精査が必要である。
c. 一般に血中腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, DU-PAN2, SLXなど)は膵癌の治療効果の判定には有用ではない。
d. 腫瘍による主膵管の閉塞による随伴性膵炎を発症の機に発見されることが多い。
e. 一般に腹腔動脈に癌浸潤が存在しても手術の適応である。
1)a b c  2)a b d  3)b c d  4)c d e  5)a-eのすべて
解答 3
解説 a…× 腺房細胞は膵全体の90%をしめるが、癌は全膵癌の1%。ほとんど膵管上皮癌。
    b…○ 特に高齢者に突然糖尿病が発生した場合。
    c…○ 転移や再発を見るのには有用。早期の診断には有用性がない。
    d…○ 初発症状は黄疸、腹痛、食欲不振、全身倦怠感など。これには膵炎の症状も多い。
    e…× 日本では積極的だが欧米では一般に主要血管に癌浸潤を認める症例は手術対象外。

63.胆石について誤っているものはどれか。
1) コレステロール石は胆嚢に多い。
2) 純コレステロール石は割面で放射状を呈する。
3) ビリルビン石は割面で層状を呈する。
4) 混成石は外層がコレステロールで内層がビリルビンである。
5) 黒色石はビ系石で割面は無構造である。
解答 4
解説 外層がビリルビンの層状構造、内層はコレステロールの放射状構造。ほかはその通り。

64.胆石随伴疾患でないものはどれか。
1) 胆汁性腹膜炎
2) Lemmel症候群
3) Mirizzi症候群
4) 胆嚢蓄膿
5) 内胆汁瘻
解答 2
解説 1…○ 胆汁は刺激が強く、非常に強い炎症反応を起こす。
    2…× 十二指腸憩室に起きた炎症が波及し、乳頭部の排出障害から胆道、膵疾患を呈すること。
    3…○ 胆嚢管に嵌頓した胆石による炎症。総胆管内腔が狭窄。
    4…○
    5…○

65.胆道系解剖で誤っているものはどれか。2つ選びなさい。
1) Calotの三角は胆嚢管、総肝管、肝下面で囲まれた三角形である。
2) 総胆管と主膵管は小乳頭で共通管を作る。
3) 総胆管は副膵管の腹側にある。
4) 胆嚢動脈はsentinelリンパ節の背側にある。
5) 胆嚢管、総胆管、総肝管の合流部を三管合流部という。
解答 2、3
解説 2…× 小乳頭ではなく大乳頭。
    3…× 背側。発生の過程による。
    4…○ 前哨リンパ節。胆嚢の前面にある。

66.胆嚢癌について誤っているものはどれか。
1) ss胆嚢癌の5年生存率は約50%である。
2) 女性に多い。
3) m, mp癌は全層切除の胆嚢摘出術が適応となる。
4) 肝床部浸潤を伴う胆嚢癌では左葉よりの肝切が適応となる。
5) 肝外胆管切除の意義は肝十二指腸間膜のリンパ節郭清にある。
解答 4
解説 1…○ m癌90%。se癌10〜20%。
    2…○ 男女比1:2。また60歳代に多い。
    3…○
    4…× 隣接する肝右葉Glisson内に浸潤するため、肝右葉を切除する必要がある。
    5…○? はじめに転移するとされる12番リンパ節が三管合流部付近にある。

67.胆管癌について正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1) 女性に多い。
2) 胆石を約50%に合併する。
3) 肝側の胆管癌ほど予後不良となる。
4) 下部胆管癌は胆管切除の適応となる。
5) 乳頭型の非浸潤癌は予後良好である。
解答 3、4
解説 1…× 男性の方が多い。60歳代に多い。
    2…× 胆石の合併は約30%。
    3…○ 肝門部胆管癌、上部胆管癌は予後きわめて不良。
    4…○ 肝門部、上部胆管癌は胆管切除と肝切除。中・下部胆管癌は胆管切除と膵頭十二指腸切除が主体。
    5…×?

68.胆嚢ポリープについて誤っているものはどれか。
1) 生検として腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われる。
2) 単発は悪性例に多い。
3) 無茎性は悪性例に多い。
4) 1.5cm以上は悪性例に多い。
5) 頻度が多いのは腺腫である。
解答 5?
解説 コレステロールポリープが多い?

69.膵胆管合流異常症について誤っているものはどれか。2つ選びなさい。
1) 胆管拡張を伴う例は胆嚢に癌が多い。
2) 合併胆嚢癌の発症は通常の胆管癌より10−20歳若年である。
3) 西洋人、女性に多い。
4) 胆管非拡張例は胆嚢摘出術の適応である。
5) 通常、共通管の長さで診断する。
解答 3、4
解説 1…○ 胆嚢癌、胆道癌を合併しやすい。
    2…○ 健常者と比べてリスクが高く、若年時より癌化することも多い。
    3…× 東洋人、女性に多い。
    4…× 胆管拡張例は拡張胆管を切除するとともに胆嚢摘出を行う。
    5…○ 成人で10mm以上、小児で5mm以上の異常に長い共通管となっている。

70.十二指腸乳頭部癌について誤っているものはどれか。2つ選びなさい。
1) 消長する黄疸が特徴である。
2) Courvoisier徴候が見られる。
3) 女性に多い。
4) 乳頭切除は腺腫や全身状態不良の乳頭部癌のみ適応となる。
5) 潰瘍型は腫瘤型より予後良好である。
解答 3、4
解説 1…○ 癌が瘻を形成、胆汁がそこから流れ出すため、一旦黄疸がなくなる。
    2…○
    3…× 男性に多い。60歳代に多いのは胆嚢癌、胆管癌と同じ。
    4…× 胆嚢癌、胆管癌と同じで化学療法、放射線療法の効果は少なく、外科切除が唯一根治的療法。
    5…○? 3、4が間違ってるから○ではないかと…。

71.膵癌について誤っているものはどれか。2つ選びなさい。
1) 膵管由来の乳頭状腺癌が多い。
2) 背部痛を伴う腺癌は予後不良である。
3) 血流に富む腫瘍である。
4) 男性に多い。
5) 膵頭部癌は(幽門輪温存)膵頭十二指腸切除の適応となる。
解答 1、3
解説 1…× 膵管由来の腺癌が多いが、管状腺癌が85%、乳頭癌は10%、腺扁平上皮癌は3%。
    2…○? 初期症状の乏しい膵体尾部癌(予後不良)で初発症状となることが多い。
    3…× 大半を占める膵管癌は血管に乏しい。
    4…○
    5…○ 体尾部に及んでいるものは膵全摘。根治療法は切除のみである。

72.嚢胞性膵腫瘍について正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1) 漿液嚢胞腺腫は外科治療の絶対適応である。
2) 膵管内乳頭粘液腺癌は粘液嚢胞腺癌より予後不良である。
3) 粘液嚢胞腫瘍は中年、男性に多い。
4) 主膵管型IPMTは手術適応である。
5) 壁在結節のある分枝型IPMTは手術適応である。
解答 4、5?
解説 1…× 診断が確実なら経過観察でよい。(予後良好)
    2…?
    3…× 女性に多い。
    4、5…○? IPMT=膵管内乳頭粘液性腫瘍。粘液性のものは切除が原則だそうですが…。

73.仮性嚢胞について誤っているものはどれか。
1) 6ヵ月縮小のない仮性嚢胞は手術適応である。
2) 感染のある仮性嚢胞は手術適応である。
3) 仮性嚢胞は膵管と交通することが多い。
4) 仮性嚢胞に対する手術として嚢胞空腸吻合術がある。
5) 急性膵炎や腹部外傷後に生じることが多い。
解答 3
解説 1…○ 自然消失しやすいが、経過観察は(感染がなければ)6週間。これを過ぎて縮小しなければ手術。
    2…○
    3…× 少ない
    4…○ 嚢胞胃吻合が多いが、十二指腸や空腸との吻合も可。根治を期待できる。
    5…○ 急性仮性嚢胞は急性膵炎により、慢性仮性嚢胞は外傷、慢性膵炎、膵癌などにより発生。

74.膵頭十二指腸切除術合併症について誤っているものはどれか。
1) 10−20%に術後晩期に糖尿病を生じる。
2) 膵空腸吻合術の縫合不全は約20%に認める。
3) 術後仮性動脈瘤は総肝動脈に多い。
4) 逆行性胆管炎さらには肝膿瘍を認める。
5) 長期にH2レセプター拮抗薬の投与が必要である。
解答 ?
解説 5は○でしょうけど…。

75.膵内分泌腫瘍について誤っているものはどれか。
1) インスリノーマは単発、良性が多い。
2) ガストリノーマは多発、悪性が多い。
3) 腫瘍遺残の検索には術中超音波が有用である。
4) SASIテストはインスリノーマの診断に有用である。
5) 主膵管より離れているときは核出術の適応となることが多い。
解答 4
解説 1…○ 多発性、悪性がそれぞれ約10%ずつ。
    2…○ それぞれ約60%ずつ。
    3…○
    4…× ガストリノーマの診断に有用。SASI=選択的動脈内セクレチン注入法。
    5…○ 核出術はその部分と周りだけの切除。膵管に近いと管をとって残りをつなぎ合わせねばならす、そう簡単にはいかない。

76.原発性胆汁性肝硬変についての記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 好中球を主体とする化膿性胆管炎を呈する。
b. 肝内大型〜中型の胆管障害が特徴的である。
c. 初期には類上皮細胞肉芽腫がみられることがある。
d. 傷害された肝細胞内にマロリー体が出現する。
e. 進行すると食道静脈瘤を合併する。
1) a b c  2) c d e  3) b d   4) a e   5) a-e全て
解答 2
解説 a…× 炎症細胞の主役はリンパ球、マクロファージ。
    b…× 外径が80μmまでの小葉間胆管に主として認められる。
    c…○ Glisson鞘内や小葉内にみられる。
    d…○ マロリー体はアルコール性の肝炎、肝硬変などでよく見られる所見。
    e…○ 20年以上の経過で肝不全と門脈圧亢進症が発生する。

77.肝炎についての記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 急性肝炎では肝細胞の変性・壊死による好酸体が見られる。
b. アルコール性肝炎では肝細胞の風船様膨化を認める。
c. 脂肪性肝炎が進行すると線維化をきたすことがある。
d. 自己免疫肝炎ではステロイドが著効することがある。
e. 薬剤性肝炎では中心静脈周囲の胆汁鬱滞をみることがある。
1) a b d  2) c d e  3) a c   4) b e   5) a-e全て
解答 5
解説 a…○ 胞体の硝子様変性→細胞全体のエオジン好染化→壊死=好酸体
    b…○ 細胞が腫大、壊死。脂肪、水分や分泌されるはずの蛋白質の細胞内貯留による。
    c…○ 特にアルコール性の脂肪肝では同時に線維化が進行。
    d…○ 免疫抑制療法が第一選択。
    e…○ 肝細胞障害型と胆汁鬱滞型、2つの混合型に分類できる。

78.肝細胞癌に関する記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 腫瘍細胞は索状構造、充実性の発育を示し腫瘍血管は乏しい。
b. 2cm以下の小型癌では被膜を認めないことが多い。
c. 高分化型では脂肪化を認めることがある。
d. 慢性肝炎からの発癌よりも腺腫を経由しての癌化の方が多い。
e. 肝内結石症は肝細胞癌の危険因子である。
1) a c e  2) b d e  3) b c   4) a d   5) a-e全て
解答 3
解説 a…× 組織型はいろいろだが血管が乏しいものばかりではない(むしろ多い)。
    b…○?
    c…○?
    d…× 慢性肝炎→肝硬変→肝細胞癌、のパターン。
    e…× 危険因子の主なものはHBV、HCVの感染。

79.胆嚢癌に関する記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 男性より女性に多く発症する。
b. コレステロールポリープは前癌状態である。
c. 胆嚢癌の診断には経皮的生検が有用である。
d. 癌細胞が胆汁を産生することがある。
e. リンパ節に転移しやすい。
1) a c d  2) b d e  3) a e   4) b c   5) a-e全て
解答 
解説 a…○ 男女比1:2
    b…× 無症状で、成長もしない。=悪性化しない。
    c…× 胆嚢の場合一部を生検するのは困難で、一気に切除してしまう。
    d…×
    e…○ 肝門部や胆管に沿うリンパ節に高頻度に見られる。

80.以下の記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 膵嚢胞線維症では膵外分泌腺の萎縮・消失と膵管拡張を認める。
b. 膵腺房細胞は蛋白分泌細胞である。
c. 膵ランゲルハンス島は膵体・頭部に比べて膵尾部に密にみられる。
d. 糖尿病では膵ランゲルハンス島の硝子様変性、線維化を認めることがある。
e. アルコール性膵炎では膵管内に蛋白塞栓や膵石ができる。
1) a c d  2) b d e  3) a e   4) b c   5) a-e全て
解答 5
解説 a…○ 膵腺房細胞は萎縮して線維成分で置換される。
    b…○ 消化酵素などを分泌
    c…○
    d…○?
    e…○ 膵液の粘稠度上昇→蛋白が固まって塞栓、膵石を形成。

81.以下の記述の中で、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 肝血管腫は一層の扁平な内皮細胞に囲まれた血管腔が組織学的特徴である。
b. 肝アミロイドーシスでは肝細胞索間にアミロイドの沈着を認める。
c. 過剰な輸血ではクッパー細胞にヘモジデリンの沈着を認める。
d. Dubin-Johnson症候群では肝臓が黒褐色を呈することがある。
e. ヘルペス性の肝炎では核内封入体を認めることがある。
1) a c d  2) b d e  3) a e   4) b c   5) a-e全て
解答 5
解説 a…○ 内皮細胞で裏打ちされた血管の増生。
    b…○ 主に肝細胞索間の類洞壁に沈着する。
    c…○
    d…○ Rotor症候群とともに抱合型(直接)ビリルビンの上昇する症候群。
    e…○ 

82.63歳男性。検診にて胆道系酵素の上昇を指摘される。エコー、CTにて肝左葉を占拠する腫瘤を認め肝左葉切除が施行された。図2はその肝切除標本の組織の写真であるが、この腫瘍について正しいものの組み合わせはどれか。
a. 被膜を有することが多い
b. AFPが高値であることが多い。
c. リンパ節に転移しやすい。
d. 血管造影にて著明に濃染することが多い。
e. 粘液を産生することがある。
1) a b c  2) a d e  3) b c   4) c e   5) a-e全て

83.33歳女性。生来健康。風邪症状で近医を受診したところ肝機能異常を指摘された。症状発現後1ヶ月で著明な肝萎縮、意識障害とプロトロンビン時間の延長を示してきたため、父親をドナーとして生体肝移植を施行した。図3はレシピエントから摘出された肝臓のホルマリン固定標本だがこの原疾患について、正しいものの組み合わせはどれか。
a. 移植前の重症度の指標には肝生検が必須である。
b. 広範な出血と肝細胞壊死が組織学的な所見である。
c. 写真の標本では胆汁うっ滞を認める。
d. 慢性C型肝炎によるものがほとんどである。
e. 急性型よりも亜急性型が予後不良である。
1) a b c  2) a d e  3) b e   4) c d   5) a-e全て

84.図4は生後5ヵ月男児の摘出された脾臓のH-E染色像である。正しいものの組み合わせはどれか。
a. 核は小型円形で細胞質は淡い好酸性の胞体を示す。
b. Glucose-6-phosphatase欠損症である。
c. 細胞内に脂質が蓄積する。
d. 細胞内にグリコーゲンが蓄積する。
e. 肝脾腫をきたすことがある。
1) a c e  2) b d e  3) b c   4) a d   5) a-e全て
 以上3問はどうしようもないですね…。

85.膵移植について誤っているものはどれか。
1) II型糖尿病患者で糖尿病性腎症による末期腎不全を伴う場合、膵腎同時移植のよい適応となる。
2) 末期腎不全を伴う膵移植レシピエントには同じドナーからの腎臓移植も同時に行う。
3) 膵移植により糖尿病性血管症が改善し、患者の予後が改善する。
4) 12時間UW液内で冷保存した膵臓は再灌流後、良好な膵内分泌機能を期待できる。
5) 膵移植よりも膵腎同時移植のほうが成績は良好である。
解答 4?
解説 1〜3は授業で言及があったと思いますが、4、5については何もなかったような…。どちらかというと4が疑わしいと思います。

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送