臨床検査医学 平成14年度本試験

1. 次の各文章のうち正しいものに○をつけよ(選択肢はもっとありました。答えは一つではないそうです)
(1) 臨床検査は
a. 代謝疾患やホルモン疾患にのみ有効である
×。
b. 治療方針の有効性の判定にも利用される
○。
c. 病気の兆候がなくても検査結果次第では病気が潜んでいる場合がある
○。
d. データが状況に応じて変化しても基準範囲内なら病状を反映していない
×。

(2) 検査結果が精密であるということは
a. 方法が違う検査法と結果が一致するということである
×。
b. 再現性が高いということである
○。精密度、再現性とは「測定を繰り返したときにどれだけバラツキがあるか」
c. 結果の解釈が易しいということである
×。
d. 検体中に何かが混在していても結果に影響がないということ
×。
e.正常値と異常値の間が明確であるということ
×。

(3) 検査結果が正規分布になるなら
a. 全てのデータが平均値±2×S.D.の範囲に入る
?。S.D.は標準偏差のこと。
b. データの半分ほどが平均値以上となる
○。
c. グラフは平均値で対称となる
○。

(4) 尿に関して
a. 正常phは約3.5である
×。正常pHは6前後。
b. 採尿後放置しておくと酸性へ傾く
×。炭酸ガスが抜けるのでアルカリ性に。
c. 尿中に蛋白質が出たら糸球体異常である
×。糸球体の異常とは限らない。尿細管などの異常でもタンパクはでる。
d. 尿路感染が起こるとアルカリ尿になる
○。細菌が尿素を分解してアンモニアを生成する。

(5) 血液検体について
a. クエン酸と血液の比を1:6とするとよい
×。1:9に。
b. 血漿の方が血清よりも体内を反映している
○。しかし血清のほうが使われる。
c. 血清ではKイオン濃度が上昇している
○。凝固反応中に細胞からKが遊離する。

(6) 酵素に関して
a. 血中ALP(アルカリホスファターゼ)は胆道癌で上昇する
○。
b. アミラーゼは肝障害で上昇する
×。膵疾患で上昇。
c. コリンエステラーゼは肝臓の状態の指標となる
○。

(7) CK(クレアチニンキナーゼ)に関して
a. 激しい運動でCK‐MBが上昇する
×。CK-MMが上昇。
b. 心筋梗塞でCK‐MBが上昇する
○。

2. ProteinC/ProteinS系は凝固制御系に重要な働きをしており、この機能異常は血栓発症の危険因子の1つである
(1) ProteinC/ProteinSはどのような役割を果たしているか
ProteinC(PC)は活性化されると、proteinS(PS)、リン脂質、Caとともに[a、Xaを分解し活性を阻止する。また、プラスミノーゲンアクチベータインヒビタも阻害し、線溶系を促進する。すなわちPC/PSは凝固制御の働きを持つ。

(2) 凝固系が活性化されると、ProteinC/ProteinSによる凝固制御系が必然的に活性化されるが、この見事な連携でProteinS/ProteinCが活性化される機序を簡潔に述べよ
トロンビンは血管内皮表面のトロンボモジュリンと結合し、トロンビン−トロンボモジュリン複合体をなるとフィブリノーゲンをフィブリンにする凝固活性を失う。複合体はPCを活性化させPC/PSによる凝固制御系を活性化する。

3. 臨床検査の遺伝子検査について
(1) 検体を採取する上で注意すべき点を簡潔に述べなさい
・他のDNAの混入を防ぐ
・抗凝固剤にヘパリンを用いない(ヘパリンはポリメラーゼを阻害する)
・ ヌクレアーゼの混入がないようにする

(2) PCRを利用した検査を行なう上で最も注意すべき点を簡潔に述べなさい
・細菌感染の遺伝子検査を行う際、生菌と死菌の区別がつかない
・遺伝子検査であるのでインフォームドコンセント、個人情報の管理をしっかりする

4. 次の表の空欄を埋めよ

  出血時間 血小板数 APTT PT Fbg
血小板減少症
vWF病,血小板機能異常
内因系凝固異常
外因系凝固異常
重症肝障害,DIC

APTT(activated partial thromboplastin time)は内因系の検査、PT(prothrombin time)は外因系の検査であるので凝固時間の延長はそれぞれの凝固系の異常を意味する。肝障害では肝産生凝固因子の産生障害により、また進行した播種性血管内凝固症候群(DIC)では凝固因子の総合的消費により上のような結果となる。

5. ミトコンドリアに関する下記の問いに簡潔に答えよ
(1) フリードリッヒ失調症の主要原因遺伝子フラタキシンの異常と細胞機能異常との関連について述べよ
フラタキシンは鉄のホメオスタシスにかかわるミトコンドリアタンパクである(遺伝子はゲノムDNAに存在)。フラタキシン遺伝子のGAA反復配列が伸張すると、フラタキシンの産生量が低下する。フラタキシン遺伝子によりコードされている鉄輸送体の欠失によるミトコンドリアの鉄沈着がミトコンドリア内の鉄の酸化をもたらす。過剰な酸化鉄は、ついで細胞内成分の酸化をきたし、不可逆的細胞傷害を生じる。

(2) インスリン分泌機構に関し、ミトコンドリア機能との関連を中心に述べよ。
インスリンの分泌には、β細胞のグルコースの取り込みとグルコースの異化で生じるATPが必須である。したがって酸化的リン酸化に携わるミトコンドリアの異常はATP生成能が低下するためインスリンの分泌の低下をもたらす。

(3) ミトコンドリアにおける活性酸素産生について述べよ
電子伝達系において電子がスムーズに流れなくなると多くの電子がもれ、活性酸素発生量が増加する。

(4) 疾患に関連する原因遺伝子探索法について簡単に述べよ
ポジショナルクローニング:ある染色体の位置以外はまったく未知である遺伝子について、その遺伝子をクローン化する方法で、候補領域を狭めていくため、連鎖不平衡を起こしている遺伝子多型マーカーを利用して連鎖解析を行う。

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