臨床検査医学 平成15年度本試験

平成15年9月29日実施(90分)

受験者102人中39人不合格。

問題用紙は解答用紙と共通でA3、2枚。
(1枚目)
[1]次の問に答えよ。
1.臨床検査は年齢や性別等様々な要因で変化する。年齢で変化する典型的な検査項目を3項目、変化が激しい年齢とともにあげよ。
(1)生後1週間に変化するもの:
(2)成長期に変化するもの:
(3)40−50歳以上で変化するもの:

2.感度の算出方法を記せ。
感度とはある疾患Dを有する群での検査Tの陽性率(真陽性率)であり、(真陽性)/(真陽性)+(偽陰性)で求まる。

3.特異度の算出方法を記せ。
特異度とはある疾患Dを持たない群での検査Tの陰性率(真陰性率=1−偽陽性率)であり、(真陰性)/(偽陽性)+(真陰性)で求まる。

4.尿の沈渣は腎障害の鑑別に重要な指標となる。腎孟腎炎とネフローゼ症候群で観察される典型的な円柱をそれぞれ1つずつ挙げよ。
腎孟腎炎:顆粒状円柱
ネフローゼ症候群:脂肪円柱

5.健常人での尿のpHと比重を記せ。
pH:6.0前後
比重:標準値は1.010〜1.035であり、通常1.025以上を正常とする。

6.尿の比重が低くなる疾病と高くなる疾病を1ずつ挙げよ。
比重が低くなる疾病:尿崩症、糸球体腎炎、腎盂腎炎など
比重が高くなる疾病:糖尿病、副腎機能不全、うっ血性心不全、肝障害など

7.血尿を来す疾患を2つ挙げよ。
糸球体腎炎、尿路感染症

8.亜硝酸試験は尿に異常に含まれる何を検査するものか。
細菌(尿路感染症の検査)

9.凝固検査を行う場合、使用する抗凝固剤の種類を述べよ。
クエン酸

10.凝固検査では、抗凝固剤と血液の混合比を一定にする必要がある。その理由を述べよ。
遊離のクエン酸が生じると、固まりにくい血液であるという判定が出てしまうから。

11.血清中のアルカリホスファターゼが上昇する疾病名を3種挙げよ。
胆道癌、胆道結石、膵乳頭癌、胆汁うっ滞、肝硬変など

12.EDTA採血やクエン酸採血でアルカリホスファターゼ活性を測定したら、測定結果が正しく出ない場合がある。その理由を述べよ。
アルカリホスファターゼの活性にはZn2+が必須であり、EDTA採血やクエン酸採血をすると、Zn2+がキレートされて、アルカリホスファターゼの活性が極端に下がってしまうから。

13.アミラーゼのアイソザイムを2種挙げよ。また、それぞれ2種類のアイソザイムについて、上昇する代表的な疾患名を1ずつ挙げよ。
P型:膵炎、マクロアミラーゼ、慢性腎不全など
S型:耳下腺炎

14.心筋障害の指標に利用されるクレアチンキナーゼのアイソザイム名を挙げよ。
CK−MB

15.乳酸脱水素酵素のアイソザイムで1型、2型が有意に増えている場合にまず考える疾患を2種類挙げよ。
心筋梗塞、溶血性貧血、腫瘍

16.内因性凝固因子が異常の場合延長する凝固検査の名前を記せ。
APTT(activated partial thromboplastin time)

17.Von Willeband病で延長する凝固検査の名前を記せ。
出血時間

18.Protein CがProtein Sと協調して制御している凝固因子名を1つ挙げよ。
第Da因子、第[a因子

19.血液凝固ではTenaseとProthrombinaseがそれぞれ重要な役割を果たしている。それぞれの役割を簡潔明瞭に説明せよ。
Tenase:第X因子を活性化する。
Prothrombinase:第X因子のこと。第X因子から制限蛋白分解により生成される活性型の第]a因子はプロトロンビンのトロンビンへの変換を補助する。

20.フェニールケトン尿症の原因は何か。
Phenylalanineの代謝異常、phenylketoneの蓄積

21.フェニールケトン尿症では何故に尿中にフェニールピルビン酸の結晶が出るのか。
多くの場合、肝のphenylalanine hydroxylaseが先天的に欠損しており(classical PKU)、フェニールアラニンからチロシンへ酸化過程が障害され、チロシン生成不全が起こり、蓄積するフェニールアラニンの代謝産物であるフェニールピルビン酸が尿中に排泄される。

22.ガスリー法の基本原理を端的に述べよ。
ガスリー法とは新生児の血液をしみこませたろ紙を培地上にのせて培養し、阻止円ができれば陽性、できなければ陰性というものである。フェニールアラニン、フェニールピルビン酸の存在下では生育しないようなバクテリアが培地上にぬってあるためにこのような検査を行うことができる。


(2枚目)
[2]ミトコンドリア病に関して次の問いに答えよ
1.ミトコンドリア病で最も特徴的な血液生化学上の変化項目を一つあげよ。
血中のピルビン酸及び尿酸の濃度が増える。電子伝達系の異常により、NADHをNAD+にできなくなり、解糖系のある段階が進まなくなるので、このとき解糖系をまわすために、ピルビン酸を乳酸にすることでNADHをNAD+にするためである。

2.ミトコンドリアDNAのヘテロプラスミーとは何か?
1細胞中に正常ミトコンドリアDNAと異常ミトコンドリアDNAが混在している状態。

3.ミトコンドリアDNA異常は白血球で調べると陰性に出る可能性があるがその理由は何か?
外眼筋麻痺 (CPEO) におけるミトコンドリアDNAの欠失については、白血球のミトコンドリアDNAには異常が見られない。この場合は筋肉のミトコンドリアDNAを解析する必要がある。

4.ミトコンドリア病は脳筋症とも言われるが、両組織が障害を受けやすい2つ理由を述べよ。
・エネルギー消費が大きい。
・分化しない。

5.ミトコンドリア脳筋症の筋組織の形態学的特徴を一つ挙げよ。
Ragged red fiber(赤色ぼろ線維)と呼ばれる特徴的な組織像を示す。筋線維内のミトコンドリアは巨大化し、その数も増加する。増加したミトコンドリアはGomoriトリクローム変法という染色で赤染し、すこしボロボロした感じを与えるので、このような呼び名がついた。

6.ミトコンドリアDNA異常に特徴的な遺伝様式は何か?
核遺伝子によって形成された卵子細胞質の特性によって形質が受け継がれる母系遺伝である。ボトルネック効果により、一世代で蓄積された変異が次世代では淘汰される。

7.ミトコンドリアDNA異常の閾値効果とは何か?
異常ミトコンドリアDNAの割合が一定の閾値を越えた場合にミトコンドリア機能異常がもたらされること。例えば、ATP合成能では、変異率がある値を超えると合成能が極端に低下する。

8.ミトコンドリア病の定義は?
ミトコンドリア機能を一時的に主因とする病態。狭義では電子伝達系の異常による病態のことを指す。

9.活性酸素とは何か?
活性酸素とはO2が部分還元されたもの。その中で反応性が最も大きいものはヒドロキシラジカルである。

10.ミトコンドリアDNAが障害を受けやすい理由を一つ挙げよ。
ミトコンドリアの電子伝達系(32ATP)は解糖系(2ATP)よりも効率がよい。酸素は反応性が高く、これを用いる電子伝達系においては必然的に活性酸素が発生する。電子伝達系における電子の流れが滞ると、多くの電子がもれ、活性酸素の産生量が増加する。また、真核細胞では活性酸素の産生場所(=ミトコンドリア)と遺伝情報とを分かつことができており、DNAと活性酸素とが直接触れることがないようになっている。参考までに、活性酸素に直接触れるミトコンドリアDNAは100〜1000倍変化速度が速い。活性酸素によるミトコンドリアDNAの障害は加齢とともに蓄積していく。

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