免疫学 平成14年度本試験

平成14年9月26日実施

1.胸腺におけるT細胞の選択機構について

1)正および負の選択の結果、成熟してくるT細胞の抗原認識における特徴をそれぞれ述べよ。
正の選択の結果、成熟してくるT細胞は胸腺皮質上皮細胞により提示された自己MHC−ペプチド複合体を認識する。また、負の選択の結果、成熟してくるT細胞は胸腺樹状細胞上のMHC分子により提示された自己抗原を認識しない。この二つの選択の結果のため、T細胞はMHC拘束と免疫寛容を獲得することになる。

2)正しいものを選べ。
@MHCa×bのマウスの骨髄細胞を放射線照射したMHCbマウスに移入して、MHCaマウス由来の皮膚を移植したところ、皮膚は生着した。
AMHCa×bのマウスの骨髄細胞を放射線照射したMHCaマウスに移入して分化してきたT細胞はMHCbマウス由来の抗原提示細胞で提示された抗原にも反応できた。
BMHCbマウスの骨髄細胞を移入した放射線照射MHCaマウスに卵白抗原を投与したところ、卵白抗原特異的T細胞が活性化された。
CMHCa×bのマウスの骨髄細胞を放射線照射したMHCbマウスに移入して、MHCbのマウスを皮膚移植したところ、皮膚は拒絶された。


2.感染に対する生体防御機構について
1)自然免疫と適応免疫の特徴を説明し、その大きな違いをあげなさい。
 自然免疫は、日常出会う可能性のある一般的な侵入者であるウイルス、細菌、カビ、寄生体などを効果的で速やかに撃退する。マクロファージなどが担っている。適応免疫は、有機分子である、あらゆる抗原を認識できる抗体を作ることができるB細胞が担う。しかし、抗体はクローン選択によって特別に作られるので感染後数日かかる免疫応答である。

2)初期(早期)誘導反応とはどのような免疫反応であるか説明し、この免疫反応に関与する細胞をあげなさい。
早期誘導反応とは、自然免疫が起きた後、数時間後にあらわれる反応で、持続されるような免疫にはつながらないが、感染自体によって誘導される反応である。感染−エフェクター細胞の動員−エフェクター細胞による認識と活性化−感染源の除去の流れをとる。NK細胞やマクロファージが関与している。


3.次の( )内に適切な用語を回答欄に記入せよ。
主要組織適合抗原(MHC)は、抗原ペプチドを(a:T細胞)に提示することで免疫応答を惹起する。MHCはクラスT分子とクラスU分子に大別される。クラスT分子は、細胞内に侵入したウイルス等の内在性抗原を主に提示するが、その際ユビキチン化された蛋白抗原は(b:プロテアソーム)で分解され、エネルギー依存的に(c:TAP)を介して輸送されクラスT分子へとローディングされる。一方、クラスU分子は細菌等の外来性抗原を主に提示する。MHCクラスU分子は(d:インバリアント鎖)と会合した形で、小胞体からゴルジ体を経て、エンドゾームヘと運搬される。この過程で(e:インバリアント鎖)は分解され、CLIPと呼ばれるペプチドフラグメントとしてクラスU分子のペプチド結合溝を占拠しているが、これは(f:HLA-DM)によって除去され、最終的に細胞内にとりこまれた外来抗原由来のペプチドがMHCクラスU分子と結合することになる。


4.次のうち正しいものには○、間違っているものには×を記せ。
@樹状細胞はナイーブT細胞を活性化することができる。(○)
A表皮ランゲルハンス細胞系樹状細胞の分化にはTGFβが必要である。(×?)
B形質細胞様樹状細胞はウイルス感染により多量のTNFα/βを産生する。(×)
C樹状細胞は死細胞貪食して効率よくMHCクラスT分子にそれ由来の抗原ペプチドを提示できる。(×)
D成熟樹状細胞は未熟樹状細胞より貧食能が強い。(×)


5.補体の役割について簡潔に述べなさい。
 平成12年度大問6参照


6.CD4ヘルパーT細胞には現在Th1とTh2がよく知られている。それぞれのヘルパーT細胞の分化に必要なサイトカインは何か。またそれぞれのT細胞から放出される代表的なサイトカインは何か。
Th1の分化には、IL-12が必要であり、これはIL-4やIL-10で抑制される。またTh2の分化には、IL-4が必要であるが、これはIFN−γによって抑制される。さらに、Th1からはIL-2、IFN−γ、TNFが放出され、Th2からはIL-4、IL-5、IL-10が放出される。


7.マクロファージが病原体で刺激されると活性化されて炎症性サイトカインを放出する。このとき放出される代表的なサイトカインを3つあげ、それぞれの役割を簡潔に記せ(2〜3行)。
平成11年度大問3参照


8.タンパク質のユビキチン化と抗原提示の関係について、下記の10個のキーワードを全て使って論ぜよ。
<キーワード>ユビキチン、プロテアソーム、El、E2、E3、クラスTMHC、TAP、ウイルス蛋白、細胞内抗原、免疫寛容
細胞に感染したウイルスによってコードされたウイルス蛋白のような細胞内抗原はプロテアソームによって小断片(ペプチド)に分解される。こうしたペプチドの多くのものは、さらに個々のアミノ酸へと壊され、新しい蛋白質をつくるために用いられるが一部のペプチドは小胞体の膜を通してTAPと呼ばれる輸送タンパク質によって運ばれ、クラスTMHCの溝に適合するものは、その溝に乗せられゴルジ層板をとおして細胞表面に提示される。ところが、T細胞は免疫寛容のため、自己の抗原は、提示されていても認識しないのである。
また、抗原であるタンパク質にユビキチンが結合するとMHCクラスT分子による抗原提示が効率よく行われる。(E1、E2、E3についてはよく分かりませんでした。)


9.アポトーシスのシグナル伝達系について、概念図を書き、それを文章で説明せよ(図のみは不可)。
平成12年度大問2参照


10.次の疾患の発症に関わる重要な分子をあげてその発症機構を述べなさい。
a.高IgM血症
b.無ガンマグロブリン血症(Bruton型)
c.X染色体連鎖型重症複合免疫不全症(X-SCID)
d.即時型アレルギー

a〜cは平成11年度大問4参照
d.即時型アレルギーはヒスタミン、プロスタグランジンあるいは他のあらかじめ生成された、または急速に合成される有毒分子によって起こる。これらの物質は血管透過性の亢進、平滑筋の収縮をもたらす。


11.次の分子あるいは語句について説明しなさい。
a.terminal deoxynucleotidyl transferase
b.RAG1/RAG2
c.somatic hypermutation(体細胞超突然変異)
d.switch recombination

a.切断面にランダムな塩基を付け加えて、N-sequenceと呼ばれる超可変領域をつくりだす酵素
b.レセプター遺伝子再編成に必須のRAG-1、RAG-2タンパクをコードする遺伝子。この酵素は、組換えシグナル配列部分でDNAを切断して結合する。
c.リンパ小節の胚中心で起こる。抗原提示を受けたB細胞が増殖する際、V遺伝子に高頻度でmutationがおこること
d.抗体の定常領域を変化させる一方向性の再編成のこと(IgM、IgG、IgE、IgAの順)

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