寄生虫学 平成11年度本試験

1.次の空欄を埋めよ。

寄生虫名   人に感染する直前の宿主(それがない場合には感染の様式) 寄生部位 症状・病変
マラリア ハマダラカ 経皮感染 血液、肝、脾 発熱、脾腫、貧血
トキソプラズマ ブタ、ヒツジ 経口感染 血液、リンパ管 先天性トキソプラズマ、全身性トキソプラズマ症、急性心筋炎
エキノコックス キツネ、イヌ 経皮感染 肝、肺 肝包虫症、肺包虫症
クリプトスポリジウム オーシストの経口感染 小腸 下痢
広東住血線虫 ナメクジ、エビ 経口感染 好酸球性髄膜炎
アニサキス サバ、スルメイカ 経口感染 胃・小腸 アニサキス症
赤痢アメーバ 嚢子の経口感染 消化管 アメーバ赤痢、アメーバ性肝膿瘍
回虫 幼虫包蔵卵の経口感染 消化管 腹痛、レフレル症候群
有鉤条虫 ブタ、イノシシ 経口感染 消化管 脳嚢虫症、眼嚢虫症、皮下嚢虫症
オンコセルカ ブユ 経皮感染 皮下 オンコセルカ腫瘤、河川盲目症

2.次の語句を、それぞれ例を挙げて説明せよ。
1) 日和見感染
トキソプラズマなど、ヒトの免疫抑制条件下に増殖し重篤な病状を引き起こすこと。
2) 異味症
鉤虫症で見られ、成虫の消化管内寄生により、患者が土、茶の葉、木炭、生米、ゴムなどを好んで食べること
3) 橋本イニシアチブ
1998年バーミンガムサミットにおいて橋本首相が提唱した構想で、日本が先頭に立って世界の寄生虫防圧を推進しようというもの。
4) 再興感染寄生虫
マラリアなどのように一旦おさまった寄生虫感染が再び出現して起こった感染症
5) 象皮症
バンクロフト糸状虫での糸状虫(フィラリア)症で慢性時に起こる。成虫は特に鼠径部、腋窩部、精索などのリンパ管に好んで寄生し、次第に管を閉塞していく。するとリンパのうっ帯が起こり、うっ帯したリンパは皮下組織に浸透し、その慢性刺激のため皮下組織の増殖をきたす。そうして長年の間に皮膚が肥厚し、象の皮膚のようになること。

3.君の前に、海外への旅行から帰国後、発熱などを訴える患者が現れた。
次の問いに答えよ。
1) まず疑うべき病名を答えよ。
マラリア
2) そのためにはどのような検査をする必要があるか。(材料、方法)
末梢血の塗抹標本をギムザ染色して鏡検する。
3) その顕微鏡での像を図示せよ。
図説人体寄生虫学p.61や実習のスケッチ参照
4) 君はどのような処置を行うか。
クロロキン、硫酸キニーネの投与、対症療法

4.次の空欄にあてはまる語句を選択肢の中から選べ。

B
ロマーニャ徴候 クルーズ・トリパノソーマのシャーガス病の眼瞼浮腫
ウィンターボトム症候群 ガンビアトリパノソーマのアフリカ睡眠病のリンパ節腫大
嚢子を出すもの トキソプラズマ、赤痢アメーバ
膣炎 膣トリコモナス
チクレロ潰瘍 皮膚リーシュマニア
セービン・フェルドマン試験 トキソプラズマの色素試験
胆道迷入 回虫で見られる迷入
休眠原虫 三日熱・卵形マラリア原虫で見られる肝細胞内で長時間静止状態のもの
脂肪性下痢 ランブル鞭毛虫症において多数寄生により吸収障害が起こったときに見られる
肺炎 ニューモシスティスカリニ、トキソプラズマ、回虫、糞線虫症(レフラー症候群)

5.寄生虫が感染したとき、どのような免疫反応が起こっているか。
宿主側、寄生側のどちらについて書いてもよい。
宿主側:寄生虫感染においてはIgM抗体とIgG抗体が、原虫感染と蠕虫感染とを問わず認められる。また蠕中感染の場合に血清IgE濃度の強い上昇が知られている。一方細胞性免疫はT cellが主役と考えられ、遅発型過敏症、移植免疫、ある種の感染防御免疫に見られる。また好酸球増加は原虫感染のときには見られず蠕虫感染のときに見られる。寄生虫には抗体、特にIgE抗体が結合すると、好酸球はEcεレセプターII型を介して攻撃する。このため、Th1/Th2バランスはTh2に傾く。

寄生側:寄生虫には宿主の免疫反応を免れるエスケープ機構が存在する。原虫はシストを形成するなどの物理的バリア、抗原変異、免疫学的おとり効果、マクロファージの食作用に対する抵抗性の獲得、宿主免疫応答のモディフィケーション、補体系の不活化によるエスケープ、蠕虫は宿主抗原による擬態、抗原性の転換、可溶性阻止抗原の放出、体表を遮蔽抗体で覆う、抗補体因子の放出、宿主免疫能の抑制によるエスケープがある。

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