病理学 平成15年度本試験

平成15年9月19日実施

受験者102人中14人不合格。

試験の形式について
まず120分間の筆記試験。(以下、1病理35点、2病理35点)
続いて60分間のプレパラート試験。(1病理3枚、2病理3枚の6枚、1枚5点)
プレパラートの6枚には4組(A〜D)がある。
プレパラート試験で記入するのは「臓器診断」、「根拠」(以上で1点)、「病理組織学的診断」(1点)、「所見」(3点)。

以下は病理組織学的診断の一覧。確証はなし。

 
1病理 DIC+急性尿細管壊死 新鮮心筋梗塞 DIC+急性尿細管壊死 陳旧性心筋梗塞
結核結節(副腎) アスペルギルス症(肺) 巨細胞性肺炎 偽膜性大腸炎
リウマチ様皮下結節 DIC+急性尿細管壊死 橋本病(甲状腺) 上皮乳頭腫(下鼻甲介)
2病理 脂肪肝 貧血性梗塞(腎臓) ヘモジデローシス(肝) 膠様髄(骨髄)
若年性ポリープ(結腸) 前立腺肥大症(結節性過形成) ポイツ・ジェガーズ・ポリープ(小腸) 血管筋脂肪腫(腎臓)
髄様癌(乳腺) 甲状腺乳頭癌 移行上皮癌(膀胱) 肝細胞癌

病理病態学(旧1病理) 問題用紙は解答用紙と共通。B4で2枚。
(1枚目)
1. 以下の事項について説明せよ。(各2点)
(1) 側副循環(collateral circulation)
何らかの原因で主幹動脈が狭窄したり閉塞した場合に普段あまり機能していない血管や静脈叢を利用して血液を送ること

(2) 蜂窩織炎(cellulitis)
化膿性炎の一種でびまん性の化膿性病巣を作るもの

(3) 肉芽腫性炎(granulomatous inflammation)
マクロファージ、類上皮細胞、多核巨細胞から成る肉芽腫の形成を特徴とする増殖性炎

(4) 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation)
血管内において過度の血液凝固亢進の結果、無数の微小血栓が形成された病態

(5) 奇異性梗塞(paradoxical infarction)
心臓に中隔欠損、卵円孔開存等が存在すると、体循環系の静脈に生じた塞栓子は肺循環系を通過せず欠損孔を通り直接大動脈に入り体循環系の臓器に塞栓を生じる。これを奇異性梗塞と呼ぶ

2. 以下の( )内に字句を記入して文章を完成せよ。(各0.5点)
(1) 炎症の際の白血球浸潤は、先ず内皮細胞の(1)分子発現による(2)現象をへて、白血球の(3)と内皮細胞の(4)分子の相互反応を介する固着現象、さらに(5)による血管外逸出の3段階に分けられる。
1 セレクチン 2 ローリング 3 インテグリン 4 イムノグロブリンスーパーファミリー 5 PECAM−1

(2) 全身性、局所性の血栓性素因としては、主なものに(6)、(7)、(8)、(9)、(10)があり、これらはいずれも動脈硬化の危険因子である。
6 高コレステロール血症 7 高血圧 8 糖尿病 9 喫煙 10高齢

(3) 止血には、一過性の(11)につづく(12)並びに(13)血栓形成が大切である。
11 血小板凝集 12 凝固因子活性化 13 フィブリン

(4) 出血の局所的影響には(14)が、全身的には(15)、(16)や(17)がある。
14 血腫形成 15 全身血管の収縮 16 貯血臓器の収縮 17 組織液の血管内吸収

(5) 形態的特徴により血栓を分けると、動脈には(18)血栓、静脈には(19)血栓、心弁膜には(20)血栓、微小血管には(21)血栓が出来やすい。
18 白色 19 赤色 20 ゆうぜい 21 硝子

(6) 細菌毒素は内毒素と外毒素に大別され、前者はグラム(22)の細胞膜に存在する(23)で、発熱、(24)、(25)や(26)などの原因となる。また後者には、(27)毒素などがある。
22 陰性菌 23 リポポリサッカライド 24 敗血症性ショック 25 DIC 26 ARDS 27 破傷風毒素やボツリヌス毒素、百日咳毒素など

(7) 炎症の主な病理形態学的変化として、組織の(28)、(29)と(30)があげられる。
28 壊死 29 瘢痕化 30 肉芽腫形成

(2枚目)
3. 以下の文章の正誤を( )内に○、×を記入して示せ。(各0.5点)
(×)肺水腫は右心不全によって肺に血液を充分送れない状態になった時に生じる。 左心不全です
(○)新たに血栓が出来る時には、既存の内皮細胞と骨髄由来内皮前駆細胞とが関与する。
(○)出血性梗塞は腸などの動脈の吻合の多い臓器や、肺などの血管系に二重支配のある臓器に好発する。
(×)塞栓症の原因として最も多いものは骨折や外傷によって骨髄や脂肪が肺動脈に塞栓するものである。 血栓が多い
(○)血栓形成過程に関するVirchow's triadとは、血管壁、血液、血流の異常を指す。
(○)義(偽)膜性炎症は粘膜に発生し、繊維素に富む剥離しにくい膜状皮膜を伴う。
(×)膿瘍は好中球の浸潤と集簇(しゅうそう)を特徴とし、壊死を伴わない。 伴います
(×)接着蛋白とリガンドの関係は、鍵と鍵穴の関係に喩えられるとともに発現因子は白血球の種類に特異的である。 特異的ではありません
(○)敗血症の特徴的病理像は、転移性微小膿瘍形成と毒血性による全身網内系の活性化である。 転移性ってのが怪しいですが、敗血症は菌血症+毒血症
(×)白血球の動きが刺激因子の濃度勾配により規定される場合をケモカイネシス、そうでない場合をケモタキシスという。 逆です
(×)NO(Nitric oxide)はcAMPを介して、主に内皮細胞の変性、壊死をコードする。 cGMPです
(○)深部真菌症として、カンジダは消化管、アスベルギールスやムコールは肺に発生しやすい。
(×)梅毒性大動脈中膜炎に合併する大動脈瘤は腹大動脈に最も多い。 胸大動脈です
(×)Pneumocystis cariniiは細胞膜の研究、ribosome RNAの解析結果と電顕で細胞質内に細胞内小器官が少ないことから原虫の仲間と考えられている。 真菌です。
(×)ケモカイン受容体は、HIV-1ウイルスのCD8+リンパ球への感染に関与している。 CD4です
(○)LE小体とは補体、抗IgG抗体の存在下に好中球に貪食された核を言い、SLEの組織に認められるヘマトキシリン体と同質である。 賛否両論ありますが、結局は同質です
(○)Basedow病(Graves病)は自己免疫疾患であり、TSH受容体に対する抗体が甲状腺ホルモンの産生を刺激するのがその原因である。
(×)シェーグレン症候群では唾液腺の炎症をきたし、免疫反応のため唾液の分泌が亢進する。 口内は乾燥します
(×)T型過敏症反応は、組織肥満(胖)細胞結合IgE(アレルゲン)と抗原(レアゲン)との結合を基盤として発生する。 アレルゲンとレアゲンが逆
(○)ANCA陽性血管炎は多数であるが、細胞質(抗プロテアーゼV)-ANCAはウェゲナー肉芽腫症に特徴的である。C―ANCAはウェゲナー肉芽腫、P―ANCAは顕微鏡的多発動脈炎とアレルギー性肉芽腫性血管炎(Chu-Straus症候群)

形態機能病理学(旧2病理) 問題用紙はA4で1枚。解答用紙はA3の白紙(裏面使用可)1枚。
1. 癌の浸潤・増殖と転移について病理学的に述べよ。(7点)
癌は良性腫瘍に比べ境界が不明瞭であり、発育速度が速い。浸潤性の増殖を示し転移する。転移には血行性転移、リンパ行性転移、腹膜播種がある。又、良性腫瘍に比べ再発しやすい

2. 次の事項について略述せよ。(各2点)
(1) アミロイドの沈着が高頻度の臓器・組織を列挙せよ
 腎、肝、脾、心臓、副腎、消化管等。

(2) 閉塞性黄疸
総胆管の閉塞により胆汁がうっ滞し、黄疸になったもの。直接Bilが上昇する

(3) 褐色萎縮
リポスフチンが高度に蓄積し臓器が萎縮している状態

(4) アポトーシス(apoptosis)
プログラムされた細胞死。クロマチンの凝集、アポトーシス小体の出現、マクロファージによる貪食が見られる

(5) 活性酸素・フリーラジカルによる人体の細胞傷害について具体例を挙げよ
放射線照射による細胞のDNA障害

(6) 放射線による臓器障害
放射線照射により臓器の細胞は次々とアポトーシスを起こす。この時、未分化で細胞分裂速度の速い臓器ほど障害されやすい

(7) 奇形腫
内・中・外三胚葉成分から成る胚細胞腫瘍。様様な成熟を示す

(8) 異常核分裂
悪性腫瘍の細胞において見られる三極分裂、四極分裂等の異常な核分裂。

(9) 免疫組織化学染色で、第一段階で腫瘍の鑑別に有用な抗体と、その認識する腫瘍を列挙せよ。
11月10日のプリント。CD45→リンパ腫、cytokeratin→上皮性腫瘍、S-100→メラノーマ、vimentin→肉腫

(10) 軟部肉腫で特異的なキメラ遺伝子を有する肉腫とその遺伝子を列挙せよ
Ewing肉腫EWS-FLI1、滑膜肉腫SYT-SSX1、胞巣型横紋筋肉腫PAX3-FKHR

(11) 多段階発癌
癌は遺伝子型レベル、表現型レベルで様々な原因が重なり多段階的に発生する

(12) 小児と成人に好発する軟部肉腫を各々二つ挙げ説明せよ
小児;神経芽腫、横紋筋肉腫 成人;滑膜腫、血管腫、平滑筋肉腫

(13) 乳癌の予後因子を列挙せよ
エストロゲン、プロラクチン、脂肪の分解産物等。

(14)虚血性腸炎の組織学的特長を述べよ
縦走潰瘍を呈し、全層性に病変が分布する。粘膜の壊死、出血、類線維素壊死が見られ、炎症細胞は見られない

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