病理学 平成9年度本試験

病理病態学(1病理)
1. 白血球の遊走、浸潤過程について、血管内皮細胞との相互作用を含めて述べよ。
起炎刺激を受けた細動脈は拡張し、血流は緩徐となり、血管内皮細胞間隙の拡大とともに血管透過性の亢進が起こる。
また、血流の緩徐により白血球は血管内皮により近い部分を流れるようになるが、内皮細胞の表面を転がりながら、下流へ移動する(rolling)。さらに経過すると白血球は血管壁に接着(adhesion)し、その後白血球遊走因子の濃度勾配にしたがって、血管内皮細胞間隙を通過して血管外へ出る。
白血球のrollingとadhesionにおいて白血球・血管内皮細胞の細胞膜上にある接着分子とそのレセプターが重要な働きをしている。

2. ( )内に適当な字句を下記より選んで文章を完成せよ。(全体で7点)
循環障害のために生じた、組織や臓器の限局性壊死巣を(a:(13)梗塞)といい、その多くは機能的終末動脈に発生した(b:(25)血栓)、(c:(27)血栓性塞栓)や(d:(23)動脈硬化)による組織の低酸素が原因となる。(a)は病理形態学的に、心臓、腎臓、脾臓、や脳に好発する(e:(29)白色梗塞)と(f:(1)肺)や(g:(4)腸管)に多発する(h:(30)赤色梗塞)に大別される。新鮮な(a)の主病変は(i:(7)凝固)壊死であるが、脳でしばしば(j:(8)融解)壊死を生じるので脳(k:(11)軟化)とも呼ばれる。壊死部周囲には炎症反応が、さらに時間の経過とともに(l:(19)瘢痕)が形成され、病変は境される。陳旧化すると壊死部は、線維組織による(m:(19)瘢痕)や液性成分を入れた(n:(21)嚢胞)として残ることとなる。

(1)肺、(2)副腎、(3)甲状腺、(4)腸管、(5)肝臓、(6)膵臓、(7)凝固、(8)融解、(9)乾酪、(10)壊疸、(11)軟化、(12)卒中、(13)梗塞、(14)出血、(15)うっ血、(16)充血、(17)側副血行、(18)肉芽組織、(19)瘢痕、(20)痩孔(ろうこう)、(21)嚢胞、(22)膠原病、(23)動脈硬化、(24)DIC、(25)血栓、(26)高安病、(27)血栓性塞栓、(28)バージャー病、(29)白色梗塞、(30)赤色梗塞

3.下記の事項を説明せよ。(各3点)
1)沈下性うっ血(hypostatic congestion)
心臓の駆動力が落ちると血液を循環させる力が不十分になるため、重力の影響を受け、身体の下垂部に血沈が沈着する。この沈下した血液がうっ血のように暗赤色を呈すること。しかし、うっ血のように永続するものではない。

2)義(偽)膜性炎(pseudomembranous inflammation)
粘膜において線維素性炎が粘膜の表面にフィブリンと粘膜上皮および白血球の壊死物質から偽膜と呼ばれる膜状物を付着することがある。

3)日和見感染(opportunistic infection)
免疫能や抵抗力の低下している場合、本来は病原性を示さない微生物の感染により重篤な病変を引き起こす。

4)内毒素(endotoxin)
グラム陰性菌の細胞壁外膜の主要成分の一つであるリポ多糖体であり、抗原性は低い。

5)組織因子(tissue factor)
血管壁に障害が生じると、その部分及び周囲組織から組織因子が遊離され、その作用で外因系凝固反応が進行し、トロンビンが形成される。

6)W型過敏症(type W hypersensitivity)
特異抗原によって感作されたT細胞によって媒介される反応で、TD細胞によって引き起こされる遅延型過敏症と、Tc細胞が主役を演じる標的細胞障害に大別される。

7)自己免疫の成立機序(pathogenesis of autoimmune)
・Th細胞バイパス機構…正常では自己抗原のキャリアと反応するTh細胞が機能的に減少していたり、抑制されているため免疫学的寛容となっていることが多いが、このような寛容となった抗原特異的Th細胞にとって代わるようなTh細胞が現れ、自己抗体の産生に至る。
・Ts細胞の機能不全…自己抗原に対する免疫応答の抑制を行うTs細胞の減少または機能により自己抗体産生が起こる。
・隔絶抗原の脱出…眼の水晶体や精子などリンパ系細胞と接触したことがない物質が外傷などで血中に放出されると、非自己と見なされ抗体が作られる。


形態機能病理学(2病理)
1.アポトーシスの特徴と生物界における役割について述べよ。(10点)
 平成10年度追試験大問1参照

2.前癌病変と境界病変について各々具体的な例を挙げて述べよ。(10点)
 前癌病変…全く正常の体細胞の腫瘍化もあるが、悪性腫瘍の場合、種々の先天性組織異常あるいは後天性慢性病変をもとにして発生することが多いという臨床的経験による推定から、このような場合の先行病変を前癌性病変という。
      (例)肝硬変→肝細胞癌
 境界病変…悪性腫瘍増殖の初期段階にある可能性が疑われながら、悪性であることの証明ができない病変のこと。良性と悪性の中間病変。
      (例)卵巣上皮腫瘍などに見られる

3.次の事項について略述せよ。(各3点)
1)化生(metaplasia)
 平成13年度追試験2−3)参照

2)癌抑制遺伝子
 平成10年度本試験2−3)参照

3)乾酪化
 平成11年度本試験2−10)参照

4)悪液質
 腫瘍に発生する全身的影響の中で最も重要なものの一つである。体重減少、脱力、消耗、食欲不振などをきたし、貧血、皮膚乾燥、諸臓器の萎縮などが現れる状態。悪性腫瘍の末期に生じるが、発生の機序は明らかでない。悪性腫瘍の産生する物質が宿主の代謝に変調をもたらすと考えられている。

5)長期血液透析療法後アミロイド症
 平成12年度本試験2−2)参照

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送