薬理学 平成10年度 本試験

1.次の2組の文章には
 1(@正、A正)2(@正、A誤)3(@誤、A正)4(@誤、A誤)がある。正解の番号を解答欄に記入せよ。
(A)薬物の生体膜透過について
  @電解質の薬物ではイオン型であることが重要である
  A弱酸性の薬物の解離はpHの低下にともなって増加するので、細胞膜を介する拡散の速度も増加する
(B)薬物のpKa(イオン化定数)について
  @pKaが3.5の酸性薬物では口腔内より胃内での吸収が高い
  ApKaが6以下の塩基性薬物では口腔内より胃内での吸収が高い
(C)血液脳関門について
  @脂溶性の高い薬物だけが脳組織へ移行できる
  A血液脳関門においては血流→脳組織、脳組織→血流へのどちらの方向への移行も同様に困難である
(D)薬物の生体内変化について
  @それぞれの基質に対して特異性の高い酵素によって行われる
  A薬物の第二相性生体内変換に関して肝ミクロソーム酵素は関与しない
(E)薬物受容体について
  @細胞膜に存在する薬物受容体の大半はGタンパク共役型受容体で単量体または多量体であり、細胞膜を7回貫通し、C端側を細胞外に出し、N端側は細胞内に存在する
  Aニコチン性アセチルコリン受容体はイオンチャネル内蔵型受容体であり4TM型である
(F)三量体Gタンパク質の役割
  @アゴニスト〜受容体〜Gタンパク質の三者複合体が形成され、Gタンパクのコンホメーションが変化し、GDPが結合部位より離れGTPが同じ部位に結合する
  A百日咳毒素及びコレラ毒素はGタンパク質をターゲットとし、前者はGs、後者はGiをADPリボシル化する
(G)細胞内情報伝達系について
  @発ガンプロモーター、ホルボールエステルはDGの構造類似体としてC-キナーゼを活性化する
  AホスホリパーゼA2の主産物はアラキドン酸であり、アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼによってプロスタグランディン類に、リボキシゲナーゼによりロイコトリエン類に代謝される
(H)筋細胞とカルシウムイオン
  @骨格筋のトロポニンIはリン酸化されてもあまり機能が変化しないが、心筋のトロポニンIが
リン酸化されると収縮系のCaイオン感受性が増加する
  ACaイオンによる平滑筋の収縮蛋白系の活性化機構は横紋筋とは全く異なり、ミオシン軽鎖のリン酸化による
(I)生理活性物質について
  @副腎皮質からのカテコラミン遊離は、交感神経節前線維の興奮によりアセチルコリンが分泌され、クロム親和性のムスカリン受容体と結合し、この際生じるCaイオンの流入による開口分泌によって発現する
  Aアドレナリン作動性神経終末には自己受容体(autoreceptor)があり、遊離されたカテコラミン自身により遊離が促進される
(J)生理活性物質について
  @ヒスタミンを静注すると血圧低下とともに頻脈があらわれる
  A肥満細胞からのヒスタミン遊離で最も重要なものは抗原刺激によるもので、肥満細胞膜のIgG受容体を介して起こる

(A)4 @×:イオン型→非イオン型 A×:増加→減少
(B)2 @○ A×:口腔内の吸収が高い
(C)2 @○ A○
(D)3 @×:高い→低い A○
(E)3 @×:N端側とC端側が逆 A○
(F)2 @○ A×:GsとGiが逆
(G)1 @○ A○
(H)3 @×:増加→減少 A○
(I)3 @×:皮質→髄質、ムスカリン→ニコチン A○
(J)2 @○ A×:IgG→IgE

2.次の言葉を簡単に説明してください。
@GCP
  平成12年度大問6−2参照

ApA2値
アゴニスト単独時の容量反応曲線を2倍だけ高容量側に平行移動させるのに必要な競合的アンタゴニストのモル濃度のnegative logarithm

BNO
EDRFの実態として作用する。アルギニンよりNO合成酵素により生成される。細胞膜を通過し、GC活性化によりcGMPを産生し血管平滑筋を弛緩させる。

C偽伝達物質(Pseudo transmitter)
α−メチルドーパやα−メチルアドレナリンなど本来の伝達物質と構造が似ていて受容体に結合するが、作用を示さないもの。

Dコリン性クライシス
コリンエステラーゼ阻害薬の過剰投与により強いムスカリン様作用やニコチン様作用が起こる。

EPAM
  平成12年度大問6−3参照

FDisulfiram
  平成12年度大問6−4参照

GACE阻害剤
不活性のアンギオテンシンTを活性型のアンギオテンシンUにするACEを阻害することで、レニン・アンギオテンシン系を阻害するので高血圧の治療薬として用いられている。

H最近の毒物混入事件で使用された毒物名を2つ挙げよ
 ヒ素、アジ化ナトリウム

IAuerbach plexus
 消化管の筋層間神経叢で副交感神経節を成し、その節後神経が平滑筋や粘膜に分布する。

3.日本における薬害について例をあげ説明し、その防止策について考察せよ。
サリドマイド事件:西ドイツでつくられた催眠・鎮静薬サリドマイドが妊婦に使用された結果、児に四肢奇形(アザラシ肢症)が発生。妊婦での胎児への影響に対する検査として、非臨床試験での生殖毒性試験をもっと厳密に行うべき。

4.鎮咳薬を中枢性および末梢性に分類し例をあげ、その作用機序を説明せよ。
中枢性鎮咳薬:求心性刺激に対する咳中枢の閾値を上昇させ、咳反射を抑制する。麻薬性と非麻薬性に分けられ、前者にはコデインやジヒドロコデインが、後者にはデキストロメトルファンやジメモルファンなどがある。
末梢性鎮咳薬:気道粘膜における求心性インパルスの生成を抑制する。ベンゾナテートなどがある。

5.くる病の治療薬を挙げ、この疾患の発生から治療薬を用いて治るまでの過程を次のキーワードを全て使用して説明しなさい。(キーワード:骨再構築、リン酸、カルシウム、紫外線)
くる病治療薬:ビタミンD誘導体
紫外線照射不足などによって引き起こされるが、ビタミンDを摂取することにより体内で活性化され、
血清中のカルシウムとリン酸の代謝平衡を調節し、骨形成を促進することで骨再構築を行う。

6.異なる機序によって作用する胃・十二指腸潰瘍治療薬を三つ挙げ、その各々の作用機序を述べよ。
制酸薬:炭酸水素ナトリウム
過剰分泌の胃酸を中和し、粘膜の消化を防ぐとともに中和によってペプシン活性を低下させる。
H2受容体遮断薬:シメチジン
壁細胞のH2受容体に結合して、ヒスタミンの作用を遮断する。
プロトンポンプ阻害薬:オメプラゾール
壁細胞のプロトンポンプの酵素活性を阻害し、酸分泌を抑制。

7.d-ツボクラリンあるいはサクシニルコリンによる骨格筋の過剰弛緩を回復させる目的でネオスチグミンを投与した場合、予想される反応の違いと理由を述べよ。
d-ツボクラリン…アセチルコリンと競り合ってニコチン受容体を占拠し、終板電位の大きさを減らす。
→コリンエステラーゼ阻害作用を持つネオスチグミンを投与すると、アセチルコリン濃度が相対的に上昇し、d-ツボクラリンの作用は減少する。
サクシニルコリン…受容体に結合し、脱分極が起こる。その後もしばらく脱分極が持続した後、終板電位は回復しても脱分極しない状態となる。(脱感作)
→この時、コリンエステラーゼ阻害剤を投与してアセチルコリンを増やしても効果がない。

8.次の記述の括弧の中に下記の語句群から適当な語句を選び、その番号を解答欄に記入せよ。
1)シナプス前終末(nerve terminal)には放出した伝達物質を再び取り込む(a:5.トランスポーター)が存在する。ジアゼパム、クロールプロマジン、イミプラミン、バクロフェン、MAO阻害剤のうち、( a )に影響を及ぼすのは(b:15.イミプラミン)である。
2)膜を(c:46.4)回貫通する蛋白サブユニットよりなる受容体は、通常その構造の中にイオンチャネル(ion channel)を内包する。GABAA、GABAB、nicotinic、AMPA型グルタミン酸の各受容体のうち、このタイプに属さないものは(d:25.GABAB)である。
3)シナプス前終末におけるガバ受容体(GABA receptor)は、A型(GABAA)を介して(e:31.クロール)チャネルの活性化を、B型(GABAB)を介して(f:33.カルシウム)チャネルの抑制を引き起こし、いずれの場合も神経伝達を抑制する。
4)グルタミン酸受容体(glutamate receptors)のうち、通常、細胞外マグネシウム(Mg)イオンにより抑制を受けているタイプは(g:23.NMDA)型である。
5)ドパミン受容体は、基本的にD1受容体とD2受容体に大別されるが、錐体外路症状の発現に関連が深いのは(h:29.ドパミンD2)の方である。
6)MPTP(methyl-phenyl-tetrahydropyridine)はパーキンソン症状、アルツハイマー型痴呆、鬱病、てんかん発作のうち(i:37.パーキンソン症状)を引き起こす。
7)(j:12.LSD)はセロトニンと共通する構造部分を持ち、幻覚などの精神症状を引き起こす。
8)ハロペリドールはドパミンD1受容体とD2受容体のうち、(k:29.ドパミンD2)に対する阻害作用が著しく強い。
9)SCH-23390はドパミンD1受容体とD2受容体のうち、(l:28.ドパミンD1)に対する阻害作用が著しく強い。
10)ニトラゼパム、クロールプロマジン、アンフェタミン、フェノバルビタールのうち、(m:21.アンフェタミン)はカテコラミン作動性ニューロンにおいて神経終末からの伝達物質の遊離(vesicular exocytosis)を引き起こす薬物である。
11)パーキンソン病の治療には(n:18.L-ドーパ)が用いられるが、メイジャートランキライザー投与による錐体外路(パーキンソン様)症状(extrapyramidal side effect)には禁忌であり、この場合は(o:19.抗コリン薬)を用いる。

1.微小管 2.ミトコンドリア 3.受容体 4.シナプス小胞 5.トランスポーター 6.シナプスボタン
7.イオンチャネル 8.G蛋白 9.リン酸化酵素 10.ニトラゼパム 11.ジアゼパム 12.LSD
13.ジフェニルヒダントイン 14.クロールプロマジン 15.イミプラミン 16.バクロフェン
17.MAO阻害剤 18.L-ドーパ 19.抗コリン薬 20.モルフィン 21.アンフェタミン
22.フェノバルビタール 23.NMDA 24.GABAA 25.GABAB 26.nicotinic
27.AMPA型グルタミン酸 28.ドパミンD1 29.ドパミンD2 30.ヒスタミン 31.クロール
32.カリウム 33.カルシウム 34.ナトリウム 35.アルミニウム 36.マグネシウム
37.パーキンソン症状 38.アルツハイマー型痴呆 39.鬱病 40.てんかん発作
41.ハンチントン舞踏病 42.神経症
43.1 44.2 45.3 46.4 47.5 48.6 49.7 50.8

9.排尿筋及び尿道に作用する薬剤をそれぞれ一つ挙げ、その主たる作用部位、作用機序を記せ。
  プロピベリン…抗コリン作用薬。膀胱平滑筋のムスカリン受容体と拮抗して膀胱の収縮を抑制する。頻尿、尿失禁を改善する。
  タムスロシン…α1受容体阻害薬。α1A受容体遮断作用により、前立腺・前立腺部尿道の平滑筋を弛緩させ尿道内圧を低下し、排尿困難を改善する。

10.何故強心配糖体がうっ血性心不全に使用されるのか、β-アドレナリン受容体刺激薬と比較して説明しなさい。また、強心配糖体の作用発現機序について知るところを述べなさい。
  平成13年度大問2参照

11.次の問題のうち2題を選択し解答せよ。
1)収縮蛋白Ca感受性増加薬を2つ以上挙げ、その作用機序について述べ、他の強心薬に比べどのような利点を有するか述べなさい。
   平成12年度大問4−2参照

2)頻脈型不整脈の治療において、
  (1)実効不応期を延長させる薬物の利点を説明し、
  (2)このクラスに属する薬物のうち作用機序を異なるものを2例以上挙げ説明しなさい。
       よくわかりません、すいません。

3)作用機序の異なる狭心症治療薬を3種類挙げ、簡単に説明しなさい。
・ 有機硝酸エステル
NO生成により細胞内グアニル酸シクラーゼを活性化しcGMP量を増加させて細胞内カルシウム濃度を低下させることにより、全ての血管平滑筋を弛緩させる。
・ β受容体遮断薬
心臓においてβ作用が亢進すると、心拍数増加、心筋収縮力増加、および心筋代謝の亢進が起きて酸素消費が増加する。β遮断薬は主に心仕事量を減少することによって労作狭心症に有効となる。
・ カルシウム拮抗薬
細胞膜の電位依存性L型カルシウムチャネルに特異的に結合し、カルシウムの細胞内流入を阻止する。これにより、冠状動脈をはじめとしてすべての血管平滑筋の弛緩を引き起こす。

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送