衛生学 平成15年度本試験(一部)

注:僕は解答作成にあたって「国民衛生の動向(2004年版)」と「ステップ公衆衛生第7版」を購入しました。解説中の「ステップ」は「ステップ公衆衛生第7版」を、「動向」は「国民衛生の動向(2004年版)」を指すものと思ってください。衛生学・公衆衛生学の多くの範囲はこれらでカバーできますが、中毒など○○の健康障害のような講義がかなり多く、それらには対応しきれない感じがしました。(他の衛生・公衆衛生学の教科書でも同じようなものだと思います。)よって、中毒系の設問には講義プリント中心に、時々内科などの教科書を動員して解説しています。また国民衛生の動向はあくまで毎年動向を調査して発行されているものですから、試験勉強にはそれほど有用ではないかもしれません。

1.長年に渡ってシンナーを常用しているものについて、どのような症状が見られるか、またどのような臨床検査を行うか。
<解答例・解説>
(11月30日有機溶剤による健康障害(川本先生)の講義プリント参照)
シンナーは、トルエン(30〜40%)、キシレン(5〜15%)、酢酸エチル(10〜20%)、MEK(メチルエチルケトン、5〜10%)、メタノール(1〜10%)、イソプロピルアルコール(1〜10%)、などの、様々な有機溶剤の混合物である。これらの非特異的な症状には、粘膜刺激作用や皮膚の脱脂があり、各物質の特異的な症状には以下のような物がある。
トルエン→中枢神経障害(頭痛、めまい、倦怠感、脳波以上、小脳大脳萎縮)、依存。検査は尿中馬尿酸の定量。
キシレン→症状はトルエンと類似。検査は尿中メチル馬尿酸の定量。
メタノール→中枢神経障害(特に視力障害)検査は血中及び尿中メチルアルコールやギ酸の定量。(視力検査?)
ノルマルヘキサン→慢性中毒が中心で末梢神経障害(多発性神経炎;手袋靴下型)。中枢神経障害なし。検査は尿中2,5-ヘキサンジオンの定量、末梢神経伝達速度低下、筋電図の神経原性変化。


2.ホルムアルデヒドの基準には@許容濃度、A室内濃度指針値、B建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称ビル管理法)に基づく管理基準、C学校環境衛生基準、などがある。@〜Cの各基準の概念(考え方)について述べよ。
<解答例・解説>
(11月16日室内環境と健康(平田先生)の講義プリント参照)
@ 許容濃度(ステップp291):ほとんどすべての労働者に健康上の悪影響がみられない空気中の濃度とされ、日本産業衛生学会の勧告による指標。労働上の指標であるから、週40時間の曝露を基準として算定されている。行政上の拘束力はない。
A 室内濃度指針値(ステップp368、動向p283):シックハウス対策として導入された指標で、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど13の揮発性有機化合物について定められている。この値以下であれば、一生曝露を受けたとしても有害な影響を受けないとされる値である。
B ビル管理法に基づく管理基準(ステップp368、動向p286):建築物の大型化、高層化、密閉化が進み、建築物内における環境が人工的に調整されることが多くなってきたことに基づき、これら建築物の衛生管理を目的に定められたもの。公共の場での環境衛生に配慮した基準である。
C 学校環境衛生基準(ステップp284):健康的で快適な学校環境を目指すための基準である。
上から順に、「労働環境」、「居住環境」、「公共の場」、「学校環境」における健康基準である、ということを記述すればいいのではないかと思います。


3.以下の中から1つを選択して解答せよ。
1)労働安全衛生法で作業環境測定が必要とされる作業場を5つ
2)有機溶剤予防規則における生物学的モニタリングでの化学物質、生体資料、測定対象物質の組み合わせを5つ上げよ(例:エタノール・血液・エタノール)
3)管理濃度について説明せよ。
<解答例・解説>
1)作業環境測定が必要とされる作業場
(11月30日生物学的モニタリング(川本先生)の講義プリント2枚目左下、ステップp290参照)
粉塵、放射線、特化物・コークス、鉛、有機溶剤を扱う、いわゆる「指定作業場」
暑熱寒冷多湿な作業場
騒音を伴う作業場
坑内
酸素欠乏危険場所
中央管理方式の空気調和設備の事務所

2)化学物質、生体資料、測定対象物質の組み合わせ
(11月30日生物学的モニタリング(川本先生)の講義プリント1枚目右上、ステップp304参照)
ベンゼン・尿・フェノール
トルエン・尿・馬尿酸
キシレン・尿・メチル馬尿酸
ノルマルヘキサン・尿・ヘキサディオン
トリクロロエチレン・尿・トリクロロ酢酸または三塩化物の総量

3)管理濃度について
(ステップp291参照)
作業環境測定の結果により作業環境の状態は、適切な第1管理区分、改善の余地がある第2管理区分、不適切な第3管理区分に分けられるが、この管理区分決定の指標となるのが管理濃度である。


4.紫外線で起こりうる障害はどれか。
1)皮膚色素沈着
2)視神経萎縮
3)緑内障
4)熱射病
5)皮膚紅斑
選択肢 a 1,2 b 1,5 c 2,3 d 3,4 e 4,5
解答:b
解説:講義なし、ステップp322参照
皮膚透過性が弱い(表層に影響が大きい)、熱作用が弱い、などの性質があります。日焼けした後のことを考えれば簡単かと。


5.公害事例の組み合わせで正しいものを選びなさい。
1)新潟水俣病---無機水銀
2)水俣病----有機水銀
3)イタイイタイ病----ヒ素
4)光化学スモッグ----紫外線
5)四日市喘息----二酸化窒素
選択肢 a 135 b 23 c 45 d 4のみ e 1-5全て
解答:?(2と4)
解説:ステップp340、動向p316〜参照
1)×:有機水銀。阿賀野川下流域
3)×:カドミウム。神通川下流域
4)○:紫外線の光化学反応により、視程が低下する。目や気管が刺激され、呼吸器系障害をもたらす。
5)×:四日市喘息はSO2が主体。


6.地球温暖化について正しいものを選べ。
1)地球の温暖化により消化器疾患が増加する。
2)ガスやエアロゾル中に取込まれた硫酸や硝酸は湿性酸性雨である。
3)オゾン層破壊物質であるクロルフルオロカーボンは地球温暖化効果も強い。
4)臭化メチルはオゾン層破壊物質の1つであるが、農業用土壌燻蒸剤で用いられるため、オゾン層保護対策の規制から除外された。
5)1994年の時点で、国及び国民一人当り二酸化炭素排出量の最も多いのはアメリカ合衆国である。
選択肢 a 135 b 23 c 45 d 4のみ e 1-5全て
解答:?
解説:講義で言及なし


7.我が国の大気汚染について正しいものを選べ。
1)自動車台数の増加によりCOの環境基準達成率は年々低下している。
2)CO2の環境基準は360ppmである。
3)粒径2.5μm以下の浮遊粒子物質の環境基準が最近定められた。
4)大気汚染観測局の中の一般局では、窒素酸化物は環境基準を達成している。
5)オゾンは光化学スモッグで一次汚染物質である。
選択肢 a 135 b 23 c 45 d 4のみ e 1-5全て
解答:b?
解説:1月12日、大気環境と大気汚染(田中先生)の講義プリント
すいません、よくわかりません。
5)×:一次汚染物質=もともと固体のもの。二次汚染物質=気体が大気中で粒子に。(1枚目左下)


8.大気汚染について以下より正しいものを選べ。
1)いわゆるロンドン型スモッグでは、目、咽頭粘膜刺激が認められた。
2)ミューズ渓谷事件はロサンゼルス型である。
3)気温の逆転層は夏期の早朝に生じることが多い。
4)我が国の大気汚染防止法では、発生源からの鉛の排出規制がある。
5)環境基準法で自動車の排ガス規制が行われている。
選択肢 a 135 b 23 c 45 d 4のみ e 1-5全て
解答:d
解説:1月12日、大気環境・大気汚染(田中先生)?
1)×:ロンドン型は咳など。呼吸困難で死亡も。
2)×:SOxが増えた=ロンドン型。ちなみに、ロサンゼルス事件以外はロンドン型のようである。
3)×:ステップp357、冬におこりやすい。
5)×:ステップp357、大気汚染防止法に規定。

9.欠

10.金属中毒について以下より正しいものを選べ。
1)六価クロム吸入によって鼻中隔穿孔が認められるが、肺癌はない。
2)慢性ベリリウム中毒で小字症が見られる。
3)職業性無機ヒ素化合物の暴露で肺癌が発生する。
4)慢性カドミウム中毒で尿中β2マイクログロブリン量が増加する。
5)慢性ニッケル中毒により歯牙に黄色環が出現する。
選択肢 a 12 b 15 c 23 d 34 e 45
解答:d
解説:12月16日、その他の重金属による健康障害(田中先生)の講義プリント、ステップp300〜参照
1)×:気管支炎・肺炎から肺気腫、肺癌へ進行する。鼻中隔穿孔も有名。
2)×:小字症はマンガン中毒による。マンガン中毒:精神症状→神経症状。
3)○:倦怠感、皮膚炎、ボーエン病、皮膚癌、鼻出血、鼻中隔穿孔、肺癌。
4)○:最も初めにカドミウムの影響をとらえるものの一つ。
5)×:カドミウムにて黄色環が発生する。ニッケルでは皮膚炎や肺癌。

11欠、12欠、13欠、14欠

15.鉛中毒について正しくないものを以下から選べ。
1)無機、有機を問わず鉛は皮膚からほとんど吸収されない。
2)鉛による貧血は骨髄抑制である。
3)鉛疝痛は徐々に増強する激しい腹痛である。
4)鉛による末梢神経障害は上肢の屈筋障害が強くあらわれる。
選択肢 a 123 b 124 c 134 d 234 e1-4全て
解答:e
解説:12月15日、重金属による健康障害(鉛)(大村先生)の講義プリント、ステップp298〜参照
1)×:有機鉛は経皮的にも体内へ吸収される。
2)×:ヘモグロビン合成阻害
3)×:発作性
4)×:運動麻痺は上肢、特に伸筋群に強い(垂れ手)


16.日本において正しいものを選べ。
1)総従業員数が500名以上で鉛業務への常時従事者がいる場合、専属産業医が必要である。
2)ガラス製造業が鉛業務として取り扱われることはない。
3)鉛業務は有害作業であるが、"鉛作業主任者"といった特別な資格者を置く必要はない。
4)鉛作業場は指定作業場であり、年2回以上作業環境測定をしなければならない。
選択肢 a 1 b 12 c 13 d 14 e 1-4全て誤り
解答:e
解説:12月15日、重金属による健康障害(鉛)(大村先生)の講義プリント、ステップp298〜参照
1)×:500人以上の鉛業務常時従事者がいる場合に必要。
2)×
3)×:技能講習を修了した鉛作業主任者が必要
4)×:年に1回


17.産業医の選任が指定されている法律はどれか。
1)健康増進法
2)労働基準法
3)労働安全衛生法
4)じん肺法
5)作業環境測定法
解答:3
解説:9月17日、産業保健総論の講義プリント7ページ、ステップp287、動向p290参照


18.産業医の職務が規定されているのはどれか。
1)労働安全衛生法施行令
2)労働安全衛生規則
3)労働基準法施行令
4)作業環境測定法施行令
5)工場法
解答:2
解説:ステップp288、動向p290参照

19欠 20欠(文章の穴埋め)

21.A群に関係のある語句をB群から選んで答えなさい。
A群:1.ほや   2.Raynaud現象   3.過敏性肺炎   4.C5dip   5.ベンズ
6.スクイーズ  7.チェーンソー  8.企図振戦  9.ハンターラッセル症候群  10.オージオグラム

B群:ア.4000Hz   イ.水銀中毒   ウ.聴力検査   エ.減圧症   オ.関節障害
カ.白ろう病   キ.農夫肺   ク.有機水銀中毒   ケ.職業性喘息   コ.末梢循環障害

<解答・解説>1月12日、14日、物理因子による健康障害(槇田先生)講義プリント
1.ほや・ケ.職業性喘息:14日プリント1枚目右下、ほやは牡蠣についている生物。これで喘息を起こすらしい
2.Raynaud現象・カ.白ろう病:12日プリント3枚目右側、ステップp320、白ろう病=Raynaud現象
3.過敏性肺炎・キ.農夫肺:14日講義より
4.C5dip・ア.4000Hz:12日1枚目右側、ステップp320、騒音性難聴ではC5(4000Hz)が真っ先に障害される。
5.ベンズ・オ.関節障害:ステップp318、減圧症(潜函病)で起こる。原因は血行不全。
6.スクイーズ・エ.減圧症:ステップp317、粘膜から液体成分が滲出し疼痛を生じる。
7.チェーンソー・コ.末梢循環障害:ステップp320、チェーンソーなど手持ちの振動工具使用者にみられる。
8.企図振戦・イ.水銀中毒:12月3日、重金属による健康障害(水銀)の講義プリント1枚目左側。金属水銀中毒。
9.ハンターラッセル症候群・ク.有機水銀中毒:同1枚目右側。有機水銀による神経症状=知覚障害、失調、聴力障害、視野狭窄など。
10.オージオグラム・ウ.聴力検査:ステップ耳鼻科p16。周波数ごとに聴覚閾値を調べる。


22.次の衛生行政に関する法律を年代順に並べよ。
 1、地域保健法  2、優生保護法  3、結核予防法  4、伝染病予防法  5、老人健康法
解答
4(1897)→3(1919)→2(1948:1996年母体保護法へ)→
5(1982年の老人保健法では…?)→1(1994年、保健所法から改訂)


23.A群に関係の深い語句をB群より選べ。
A群:1.地球温暖化  2.海洋環境保全  3.有害廃棄物の越境移動  4.絶滅危惧種  5.水鳥生息に必要な湿地
B群:ア.ワシントン条約  イ.ラムサール条約  ウ.京都議定書  エ.バーゼル条約  オ.ロンドン条約

<解答・解説>動向p330〜参照
1:ウ   2:オ   3:エ   4:ア   5:イ

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