衛生学 平成16年度卒業試験

A.下記の各文章の内容が正しければ○を、正しくなければ×を解答欄に記せ。
1.上水道の普及率は90%を超えているが、下水道の普及率は90%を超えていない。
2.水を介して広がる伝染病を水系伝染病と言うが、水をろ過して給水することにより水系伝染病による死亡率が低下することをMills-Reincke現象と呼ぶ。
3.浄水法として日本では急速濾過法が主流であるが、その利点として処理速度の早さがあげられる。
4.浄水の滅菌処理方法の代表的なものとして塩素滅菌があるが、この方法では塩素ガスなどを濾過処理水に注入し、生成した有効塩素の働きによって滅菌が行われる。
5.下水処理の代表的な方法である活性汚泥法は、嫌気的な生物学的処理方法である。
6.環境基本法に基づく公共用水域の水質環境基準ででは大腸菌は検出されてはならない。
7.水質汚濁の代表的な指標としてBOD(生物学的酸素要求量)、SS(浮遊物量)、DO(溶存酸素量)があるが、これらの指標の値が大きいほど水質汚濁は進行している。
8.産業活動に伴って排出される全ての廃棄物は事業者の責任の下で処理することが法律で定められている。
9.一般廃棄物は排出量が減少せず、リサイクル率は減少傾向にあるため、埋め立て処分用地の確保が大きな問題となっている。
10.医療機関から排出される全ての廃棄物が感染性廃棄物として取り扱われるわけではない。
11.医療機関から排出される廃棄物で血液が付着したものであっても、専門的な知識を有する医師が判断すれば感染性廃棄物として取り扱わなくてもいい場合がある。
12.感染性廃棄物は他の廃棄物とは排出の段階から分別を行い、また、その容器や保管場所には感染性廃棄物の存在を明示しなければならない。
13.内分泌撹乱物質(俗称 環境ホルモン)とは、内分泌系の機能を狂わせ、結果的に生物に悪影響を与える物質のことをさす。
14.ダイオキシン類は食物経由で体内に入る場合が多いが、その他の内分泌撹乱物質の中には呼吸により体内に入るものも少なくない。
15.日本で発生するダイオキシン類の大部分は廃棄物の焼却由来だと考えられているが、規制強化により廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出量は大きく減少した。
16.無機水銀による精神症状としては不眠、易刺激性、幻覚などを伴った譫妄が有名で、水銀過敏症と呼ばれる。
17.無機ヒ素による皮膚症状としては色素沈着、白板、角化症があり、さらにボーエン病、皮膚癌へと発展する場合もある。
18.クロム中毒では無機ヒ素中毒と同様に鼻中隔穿孔が見られる。
19.ベリリウムの急性中毒としてベリリウム肺(びまん性、散在性の肉芽腫形成)があるが、ベリリウム肺は進行性で予後不良である。
20.金属熱は溶接作業などにより酸化亜鉛の粉じんなどを吸入することによってひき起こされるが、予後良好で1〜2日で解熱し回復する。

<解答・解説>
以下、10月13日、上下水(大村先生)の講義プリント参照。毎回出題で傾向も類似しています。
1.○:上水97%(平成14年度)、下水67%(15年度)。ステップP358。
2.○?:水系伝染病だけでなくすべての伝染病の死亡率が低下する現象ですが…。
3.○:緩速濾過法は微生物を利用し時間がかかるので現代では実用的ではないそうです。ステップP359。
4.○:ステップP359。
5.×:好気的に、活性汚泥中の微生物が下水中の有機物を処理する。ステップP361。
6.×:アルキル水銀。上水中には大腸菌が検出されてはならない。ステップP362。
7.×:DOのみ、値が小さいほど汚れている、ということに注意。ステップP363。
以下、11月2日、廃棄物(大村先生)の講義プリント参照。毎回出題で傾向も類似。
8.×:産廃=事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、法令で定めるもの。産廃は排出事業者に処理責任がありますが、それ以外の一般廃棄物は市町村に責任があります。(プリント1枚目)ステップP350。
9.×:リサイクル率は次第に上昇傾向(2枚目)。他の内容については正しい。ステップP353。
10.○:例としてレントゲンのフィルムなどが挙げられる。ステップP351。
11.○:ただし鋭利なものはだめ(割れると鋭利になる試験管も)で、ガーゼなどが可。(2枚目)
12.○:ゴミ箱から別にする、ということ。(2枚目)ステップP352。
以下、1月11日、公害(久永先生)の講義?
13.○:ステップP348。
14.○?:大半が食物を通じて摂取される。ステップP347。
15.○:ステップP347。
以下、12月3日、水銀による健康障害(槇田先生)の講義プリント参照。
16.×:これは金属水銀中毒の記述。ステップP300。
以下、12月16日、その他の金属による健康障害(田中先生)の講義プリント参照。
17.○:プリント1枚目。特異的な症状と共に出現。ステップP302。
18.○:2枚目右中。ステップP302。
19.×:2枚目左下。ステップP302。これは慢性中毒の所見。
20.○:ステップP303。12〜24時間で回復し、通常死ぬようなことはない。


B.有機溶剤中毒予防規則で決められた有機溶剤と尿中代謝物の組み合わせで、正しいものに○、過っているものに×を解答欄に記せ。
a.キシレン:フェノール
b.スチレン:馬尿酸
c.トルエン:メチル馬尿酸
d.テトラクロルエチレン:総三塩化物
e.ノルマルヘキサン:マンデル酸
<解答・解説>11月30日、生物学的モニタリング(川本先生)の講義プリント1枚目右上参照。過去にも別形式で出題されています。なるべく覚えた方がいいでしょう。
a.×:キシレン=メチル馬尿酸。ベンゼン=フェノール。ステップP304。
b.×:スチレン=マンデル酸。
c.×:トルエン=馬尿酸。ステップP304。
d.○:トリクロロエチレンなど塩化炭化水素は総三塩化物。ステップP305。
e.×:ノルマルヘキサン=2,5−ヘキサディオン。ステップP305。


C.正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
a.生物学的モニタリングとは、血液や尿、呼気、毛髪などの生体資料を検査することによって、化学物質がどの程度体内に吸収されたか、または生体影響の程度の指標として用いられる。
b.許容濃度以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと判断される。
c.管理濃度とは、作業中のどの時間をとっても暴露がこの濃度以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと判断される濃度である。
d.管理濃度は作業管理区分を決定するための指標として用いられる。
e.有害因子の負荷量とそれに対応する個人への影響との関係を量反応関係と言う。
<解答・解説>
a.○:11月30日、生物学的モニタリング(川本先生)の講義プリント1枚目左上参照。ステップP290。
b.○:定義通り。ステップP291。
c.×?:少なくともそのような定義に基づいて決められたものではなく、「既定の複数箇所の空気を採取して得られた数値」を管理濃度としている。ステップP291。
d.○:その通り。ステップP291。
e.×:これは量影響関係の説明。量反応関係は「有害因子の負荷量と集団中の影響を受けた人の割合との関係」のこと。ステップP290。


D.大気汚染に関わる環境基準の対象物質はどれか。正しいものに○、誤っているものに×を記せ。
a.トルエン   b.一酸化炭素   c.ヒ素   d.水銀   e.鉛
<解答・解説>1月12日、大気環境・大気汚染(田中先生)の講義?、ステップP354参照
a.×  b.○  c.×  d.×  e.×
大気汚染に関わる環境基準の対象物質は以下の10種類
環境基本法:二酸化窒素、二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント
平成9年2月に追加:ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン
平成13年4月に追加:ジクロロメタン
ダイオキシン類対策特別措置法(平成12年1月):ダイオキシン


E.次の組み合わせで正しいものはどれか、正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
a.マンガン:鼻中隔穿孔
b.有機水銀:白血病
c.ニッケル:貧血
d.カドミウム:尿中低分子蛋白
e.六価クロム:パーキンソン症候群
<解答・解説>12月16日、その他の金属による健康障害(田中先生)の講義プリント、ステップP300〜参照。
a.×:プリント2枚目左上。小字症など精神神経症状が多い。鼻中隔穿孔=クロム、ヒ素。
b.×:12月3日、水銀による健康障害(槇田先生)の講義プリント参照。知覚障害、小脳症状、求心性視野狭窄、聴力障害などなど。
c.×:2枚目右下。肺癌、皮膚炎。貧血は鉛で有名。
d.○:3枚目左中。肺腎毒性。慢性中毒で肺気腫、急性中毒で肺水腫。
e.×:2枚目右上。肺毒性(肺気腫→肺癌)、鼻中隔穿孔、皮膚潰瘍。


F.作業環境測定を行うべき作業上で正しい箇所はどれか。正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
a.暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場
b.著しい騒音を発する屋内作業場
c.坑内作業場
d.中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で事務所の用に供されるもの
e.酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業所
<解答・解説>11月30日、生物学的モニタリング(川本先生)の講義プリント2枚目左下。
全て正しい。作業環境測定の定義についてはステップP290参照


G.騒音性難聴に付いて正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
1)4000Hz付近の聴力低下で始まる。
2)労働安全衛生法により、定期的聴力検査が必要である。
3)感音性難聴である。
4)騒音暴露を中止すれば徐々に回復する。
5)騒音性難聴の予防は産業医の職務である。
<解答・解説>1月12日、物理因子による健康障害(槇田先生)の講義?、ステップP320参照。
1)○:C5−dip
2)○?:6ヶ月に1回の健康診断で聴力レベルを測定。法律も労働安全衛生法でいいと思いますが…。
3)○
4)×:不可逆性であり、回復しない。
5)?:はっきり職務として規定した記述は見つけられませんでした。ステップP288参照。


H.次の文章が正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
1)赤外線はビタミンDを活性化する。
2)潜函病では、ベンズと呼ばれる関節症状が最も多い。
3)UVB(中波長紫外線)は日焼けを起こす。
4)イソシアネートは過敏性肺炎をひき起こす原因となりうる。
5)振動障害ではレイノー現象は稀である。
6)石綿の暴露では肺癌の合併頻度が高い。
7)塵肺の健康診断には、胸部X線間接撮影が含まれる。
8)常時50人以上を雇用している事業所では産業医を選任しなければならない。
9)産業医は業務上疾病の認定を行う。
<解答・解説>1月12日、物理因子による健康障害(槇田先生)の講義?
1)×:紫外線がプロビタミンDのビタミンDへの変換に関与する。ステップP322。
2)○?:浮上直後に生じる関節痛と筋肉痛をベンズという。ステップP318。
3)○:地上に届くのはUVAとUVB。UVBの方が波長が短く作用が強い。ステップP322。
4)○?
5)×:手持ちの振動工具で起こる手腕系振動障害の中期に発生。白ろう症とよばれる。ステップP321。
6)○:石綿の吸入と肺癌の発生率には深い関係があり使用が制限されている(広辞苑)。ステップP327。
7)×:間接ではなく直接撮影を以上のない場合3年ごとに行う。ステップP328。
8)○:常時1000人未満の労働者を雇用する事業所では嘱託非常勤医を選任すればよい。ステップP288。
9)×?:はっきりしたことがちょっとわかりません。


I.次の組み合わせで正しいものに○、誤っているものに×を解答欄に記せ。
1)富栄養化:塩素処理
2)神通川流域:アルキル水銀
3)四日市:ダイオキシン
4)阿賀野川流域:六価クロム
5)宮崎土呂久:ヒ素
<解答・解説>1月11日、公害(久永先生)の講義?
1)×:ステップP345参照。富栄養化は有機リンが原因。
2)×:以下、ステップP341参照。神通川流域=イタイイタイ病=カドミウム。
3)×:四日市ぜんそく=二酸化硫黄主体
4)×:阿賀野川流域=新潟水俣病=メチル水銀
5)○:土呂久鉱山周辺でヒ素による水質汚濁が発生。

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