公衆衛生学 平成15年度本試験

平成15年度公衆衛生学T 試験問題(4学年)

A出題者:古野
1.問題A、問題Bのどちらかに回答せよ(20点)。
問題A.感染症法で規定されているT類、U類およびV類感染症を列挙せよ。
問題B.@図の内容を説明せよ。
A世界的見地から結核の予防について述べよ。
<解答・解説>
問題A.テキストP89
 一類感染症:エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、SARS、痘瘡
 二類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス、ジフテリア、ポリオ
 三類感染症:腸管出血性大腸菌感染症
解説:ゴロ合わせがあったので。『一塁@ベースをAさっさとBまわるCアフリカ人D』@一類 Aペスト Bラッサ熱 Cマールブルグ熱 Dエボラ出血熱、クリミアコンゴ熱(アフリカの地名)
SARSと痘瘡はなぜかこのゴロには入ってませんが。
問題B.テキストP90〜
@ ごめんなさい、図を入手することができませんでした。「結核の講義の時のあの図ですよ、ホラ」とおっしゃっていました。
A 重要なのは、BCGの可及的早期の接種と、DOTSの徹底である。WHOは、「結核の罹患率や有病率が高い国においては、生後可能な限り早い時期にBCG接種をするべきである。」としている。また、初回治療の失敗は薬剤耐性結核菌の蔓延をもたらす。それを防ぐために、初回治療の徹底を目的として、特に都市部の貧困層の服薬コンプライアンスを高める目的でDOTS(directly observed treatment shortcourse、直接監視下短期化学療法=
保健師などが結核患者の家庭訪問指導に際し、処方された薬剤を確実に服用しているかチェックするなど、服薬を確認しながら投薬する方法)がおこなわれている。「世界的見地」といわれるとなんだかあたふたしますね。想いのたけをぶつければいいらしいのですが、BCG接種の有効性とDOTSについてまとめておけば無難かと。

2.問題A、問題Bのどちらかに回答せよ(20点)。
問題A.費用効果分析、費用便益分析および費用効用分析について違いが分かるように説明せよ。
問題B.@図の内容を説明せよ。
A「貧困と疾病」について、世界的見地から述べよ。
<解説>
問題A.平成14年のAの問題1、問1参照
問題B これも図の入手に失敗しました。古野教授によると、図はどこかにやってしまったそうです。Aも何のことかようわからんです。「世界的見地から」と問題文に書いてあるので、「それってなんですか?」とくいさがったところ、「そんなの今まで4年間勉強してきた医学の知識とか使って自分の意見書けばいいですよ。これまで勉強してきた思いのたけをぶつけてください。4年間の勉強が十分なのか足りないのか、試験でわかるでしょ?足りなかったらあと2年間勉強頑張ればいいんですよ。落とすためのテストではないですから。」と笑顔で言われました。


B出題者:溝上
設問1.生物医学研究について述べた文章である。該当する研究の種類を選び、その記号を[ ]に記入せよ。なお、該当する選択肢が複数ある場合、より一般的と思われる方を記入すること。[9点]
[ ]インフォームド・コンセントが必須である。
[ ]病気にかかった人とかからなかった人を同定した後に、曝露について調査する。
[ ]SARSの流行状況を分析するのに適している。
[ ]小児白血病発症と電気製品使用との関連を調べる疫学研究に向いている。
[ ]ヒトについての、最も信頼度の高いエビデンスが得られる。
[ ]健康人におけるがん発症の危険因子を調べる場合、莫大な費用と年月を要する。
[ ]新薬の効果を調べるのに適している。
[ ]発病のメカニズムを明らかにすることができる。
[ ]思い出しバイアスの影響を受けやすい。
a.記述疫学研究(生態学的研究を含む)
b.症例対照研究
c.コホート研究
d.介入研究(無作為対照試験)
e.a〜dのいずれでもない
<解答・解説>
上から順に、d(講義資料集p11参照)、b, a, b, d(講義資料集p10参照), c, d(講義資料集p3参照), e, b。

設問2.長時間フライトでの皮膚粘膜症状の多発が乗客の健康問題となっている。成田−ストックホルム直行便で、機内を加湿しない通常のフライト(通常便)と、加湿したフライト(加湿便)で症状発現を比較する研究が行われた。搭乗前に該当症状を訴えていた人は、通常便搭乗者102名中22名、加湿便搭乗者116名中16名であった。乗客の人種・性・年齢構成は両便でほぼ同じであった。[5点]

問1.搭乗前には症状がなかったが、搭乗中に症状があったと答えた人は、通常便16名、加湿便では9名であった。乗客100名あたりの、搭乗に伴う症状発現割合(単位なし)をそれぞれ計算せよ。また加湿に伴う予防効果を示す指標として、相対危険度を計算せよ。
乗客100人あたり症状発現割合:通常便    加湿便
相対危険度

問2.後の調査で、加湿便では通常便に比べ、皮膚・粘膜症状を訴えやすいアレルギー体質の搭乗者の割合が高かったことが判明した。[ ]内の適切な選択肢を○で囲み、以下の文を完成させよ。
『このことを考慮すると、真の相対危険度は今回得られた値よりも[1.小さく2.大きく]、本当の予防効果はもっと[1.小さい2.大きい]と考えられる。』

設問3.住民登録制度がなく年齢別人口が不明な場合、比較可能な死亡率が計算できない。このような場合、簡便な死亡統計指標としてPMI(Proportional Mortality Indicator)が用いられる。この指標について、図を用いて説明せよ。[3点]

設問4.患者死亡後、その死因が厚生労働省から死因統計として公表されるまでの概略を述べよ。[3点]

<解答・解説>
設問1 通常便 16/(102-22)×100=20   加湿便 9/(116-16)×100=9
(相対危険度)=(暴露群のリスク)/(非暴露群のリスク)
       = 0.09 / 0.20
       = 0.45
(相対危険度)=(オッズ比)だと勘違いしていましたが、この2つは別物らしいです。
相対危険度とは、疾病のリスクと危険因子の間の関連の強さを表す指標ですが、患者対象研究においては、患者群と対照群で抽出率が異なるため相対危険を直接計算できません。そこで、オッズ比を計算することによって相対危険を推定するのです。詳しくはテキストのP26を参照してください。
設問2 このことを考慮すると、真の相対危険度は今回得られた値よりも『1、小さく』、本当の予防効果はもっと『2、大きい』と考えられる。
設問3 テキストP19
PMIは全死亡者数に占める50歳以上の死亡者数の割合で表される。途上国間の健康水準の比較に利用される。
設問4 テキストP18
死亡7日以内に親族などが、死亡届と死亡診断書(死体検案書)を市区町村に提出。これらの書類は、死亡小票に転記され、管轄の保健所、政令市または都道府県、厚生労働省へと送られる。原死因決定とICD-10によるコード化のあと、入力・集計・公表される。


C出題者:清原
間1.受動喫煙の健康影響について記せ。[5点]
問2.がん(肺がん以外の)発生における環境要因と遺伝要因の関与について記せ。[5点]
問3.基礎代謝に影響を及ぼす条件を5つ以上示し、どのように影響するかも説明せよ。[10点]

<解答・解説>
問1(講義資料集p66参照)受動喫煙とは、他人が吸ったたばこの煙を吸わされることをいう。主流煙は、燃焼温度の高い部分で発生し、たばこの内部やフィルターを通過するのに対して、火の先から出た煙である副流煙は燃焼温度が低いため、主流煙に比べて有害物質が高い濃度で含まれている。非喫煙者の受動喫煙による健康影響は粘膜の急性の刺激症状や肺がんリスクの増加、循環器疾患の症状増悪などの報告がある。
問2(講義資料集p50参照)原因遺伝子を確定できる遺伝性腫瘍は,がん全体の5%程度であり,約95%を占めるほとんどのがんは,複数の環境要因と遺伝要因が複雑に相互作用を起こすことによって生じる。例えば、環境要因(食事、運動、ストレスなど)の影響を受けやすいか受けにくいかも遺伝的な体質で決まることがある。
問3
年齢 : 低>高
性 : 男>女
体格 : 身長高く痩せている人は基礎代謝が大きい
体質 : 筋肉質の人の基礎代謝は大きい
体温 : 正常値が高い人は基礎代謝が大きい
ホルモン : 甲状腺ホルモン・副腎髄質ホルモンの多い人は基礎代謝大。
季節 : 冬の基礎代謝は大きい。
月経 : 月経2〜3日前は基礎代謝が大きい。


D出題者:徳永
問1.年齢調整死亡率を計算する意義を説明せよ。[4点]
問2.検査の敏感度、特異度、陽性反応的中率とは何か。[6点]
問3.ダウン症候群の発生と母親の年齢の間には強い関連がある事が知られている。ダウン症候群の発生と父親の年齢に関連があるか調べるため、患者対照研究を行いたい。下記リスト中の用語を全て用いて、研究デザインと解析方法を考察せよ。
なお、解析の都合上、父親の年齢を「若年」と「老年」に2分する。調査対象の児は「ダウン症候群有り」と「ダウン症候群無し」の2群に分類できるものとする。[10点]
リスト:層化、Mantel-Haenszelオッズ比、関連、層別

<解答・解説>
問1(講義資料集p21参照)粗死亡率は年齢構成の違いに影響されるため、年齢構成の異なる集団の間で粗死亡率を比較しても、結果の解釈が困難である。そこで、比較する集団の年齢構成が同じであると仮定した時の標準化指標(=年齢調整死亡率)で比較する。
問2(講義資料集p32,33参照)
  敏感度:有病者中の真陽性の割合
  特異度:健康者中の真陰性の割合
  陽性反応的中率:検査陽性者中の患者の割合。敏感度や特異度は有病率の影響を受けないが、陽性反応的中度は有病率にほぼ比例する。
問3 テキストP28
まず、老年の父親の若年の父親に対するダウン症候群ありのオッズ比とその95%信頼区間を求め、そのデータを若年の母親と老年の母親に分けて再集計し、オッズ比と95%信頼区間を求める。このようにして層別に集計されたデータから、層化に用いた因子を調整したMantel-haenszel法を用いてオッズ比を求め、父親の年齢とダウン症の発症に真の関連があるかを調べる。
解説:10月12日の小テストと同じ問題で、解答が配布されましたね。それによればポイントは以下のような点になるかと。
・母親の年齢とダウン症の発症率には強い相関があるとされている。
・母親の年齢と父親の年齢の間には相関があるはずである。
・以上より、母親の年齢は父親の年齢とダウン症児の関連を研究する上で交絡因子になるおそれがある。
・これを解決するために、母親の年齢を(5歳ごとなどに)層化する。
・設けた層別に、父親の年齢群(若年or老年)vs児がダウン症か否かの2×2表を作成する。
・その表からMantel-Haenszel Odds比と95%信頼区間を計算する。

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