公衆衛生学 平成16年度本試験

平成16年度公衆衛生学T 試験問題(4学年)

平成16年度 公衆衛生学 本試験
平成17年1月18日実施(120分)
A3が1枚、A4が5枚(アンケートも含む)で1冊。全て提出。以下はメモをもとに復元。おそらく講義資料集の巻末に掲載されるはず。解答はかなり適当なので参考程度に。

<溝上先生>
設問1.運動による高血圧予防効果に関する介入研究を行った。境界型高血圧の患者200名中研究の説明に同意してくれたのが160名。運動指導群と観察群を均等に分け実験を行う
@実験の説明事項として適切な組み合わせを選べ
a.参加者の自由意志で研究からの離脱が可能である
b.参加することによる利益、不利益
c.研究組織、研究資金
d.介入の割り付けには参加者の希望が考慮される
e.運動指導による抗圧効果には確かなエビデンスがある
1.abc  2.bcd  3.cde  4.abd  5.bce
<解答・解説>
溝上先生「関連と因果」の講義。ヘルシンキ宣言。割り付けは無作為に行われる。また、「運動指導による抗圧効果」を調べるための研究であり、それに確かなエビデンスはない。よって答えは1。

A断面的研究でないことにより回避できる介入研究の二つの点を述べよ
<解答例>
溝上先生「関連と因果」の講義。
思い出しバイアスを排除できる、など。(もうひとつを思いつきませんでした…)

B看護師には患者群の振り分けを知らせなかった。知らせた場合のバイアスを述べよ
<解答例>
知らせた場合、看護師には「運動指導群の方が観察群よりも血圧が低いだろう。」などと思いこむ意識が働き、これが血圧測定結果に影響を及ぼす可能性がある。

Cリスクの指標は(1オッズ比、2相対危険度)で行う
<解答>
徳永先生「調整オッズ比」の講義。
2相対危険度

Dこの実験におけるリスクを求めよ


設問2.日本の死亡統計表によれば平成6、7年に心疾患による死亡率が減り平成7年には脳血管障害による死亡率が減っている。この理由を考察せよ
<解答例>
ステップp185
死亡診断書から「終末期の状態としての心不全」を追放したため。


設問3.日本の出生統計について
1.合計特殊出生率の定義と長期的な人口増減との関連について数値を挙げて説明せよ
<解答例>
合計特殊出生率は女性1人が一生の間に生む子供の数のことで、これが2.1を下回ると長期的に人口は減少する。

2.1950年の人口1000に対する出生統計表。合計特殊出生率を求めよ
15〜19歳  13
20〜24歳 161
25〜29歳 238
30〜34歳 176
35〜39歳 105
40〜44歳  36
45〜49歳   2
<解答・解説>
15歳の女性は1000人につき13人の子供を産む→女性1人あたり0.013人を出産。
16〜19歳に関しても同じ→15〜19歳の間に女性1人あたり0.013×5=0.065人出産。
同様にして考えると…
(13+161+238+176+105+36+2)×5÷1000=3.655
よって答えは3.66


<清原先生>
問1. がん検診の有効性を評価する場合、注意しなければならないバイアスを4つ列挙し、それぞれについて簡単に説明せよ。[4×2=8点]
<解答例>
清原先生「がん検診」の講義
・ Lead-time bias:検診によりがんの発見時期が早まり、この期間が死亡までの期間に上乗せされるために生じるバイアス。自覚症状が現れた時点で診断されたがんに比べて、検診により発見されたがんは生存期間が長く見える。
・ Length bias:増殖速度の速いがんは、検診前に自覚症状などで医療機関を受診する可能性が高く、結果的に検診でがんが発見される患者は増殖速度の遅い、予後のよい集団に偏るため、検診は有用であるという間違った結論にいたらしめるバイアス。
・ Selection bias:検診を受ける人の方が、自分の病気に関心を持つ傾向があり、その結果、早期にがんを自覚しやすく、これが検診の効果として評価されるために生じるバイアス。
・ Overdiagnosis bias:もし検診をしなければ発見されず、その後放置しても増殖せず生涯診断がつかないであろう「境界病変」を発見し、がんと診断することにより、検診群での死亡率が低く算出されるバイアス。

問2. 主要部位のがん(肺、大腸、胃、乳房)の年齢調整死亡率について、男女別に近年の年次推移を簡単に説明せよ。[4×3=12点]
<解答例>
清原先生「がんの統計と予防」の講義
肺がん:男性に多く、男女とも増加傾向。
大腸がん:結腸・直腸ともに男性に多く、男女とも増加傾向。
胃がん:男性に多く、男女とも減少傾向。
乳がん:大半は女性で、女性では増加傾向。


<徳永先生>
(1)次の語句を説明せよ。
・ 平均寿命
・ 相対生存率
・ 現状生命表 
・ 敏感度と特異度
<解答例>
・ 平均寿命:ある歳の人が、その後生存できると期待される年数を平均余命といい、0歳の平均余命を平均寿命とよぶ。(徳永先生「生命表・生存率」の講義)
・ 相対生存率:対象者と同じ特性を持つ一般集団の期待生存率から、実測生存率/期待生存率により計算される。追跡している患者の死因に関する正確な情報がなくても計算できる。(徳永先生「生命表・生存率」の講義)
・ 現状生命表:特定集団の現在の死亡状況が将来も変わらないと仮定して作成する生命表。(徳永先生「生命表・生存率」の講義)
・ 敏感度・特異度:敏感度は有病者中の真陽性の割合、特異度は健康者中の真陰性の割合で、いずれも100に近いほど検査の精度は高いといえる。(徳永先生「検査の精度」の講義)

(2)図(ROC曲線)はどのようにして作成されたものか説明せよ。
<解答例>
結果が連続変数の場合に、cut-off pointの値を変えると敏感度、特異度が変化する。様々なcut-off pointにおける敏感度、特異度をグラフにプロットしたものがROC曲線であり、ROC曲線下面積が大きな検査ほど有用な検査であるといえる。(徳永先生「検査の精度」の講義)

(3)医学部の後輩から「Mantel-Haenszel法とは何か、どうしてこういう方法をとるのか」と聞かれたら、あなたはどう説明するか。この後輩が理解できるように説明せよ。なおこの後輩はまだ公衆衛生学を勉強していない。(専門用語を並べたからといって相手が理解するとは限らない)
<解答例>
たとえば、母親の年齢との相関が証明されているダウン症児の出生率と、父親の年齢との関連について調べる場合にMantel-Haenszel法は用いられる。
一般に、母親の年齢と父親の年齢とは相関関係があるので、単純に父親の年齢が若いかどうかとダウン症児の出生率とを比較すると、誤った結論を導いてしまうおそれがある。(この場合の母親の年齢を「交絡因子」という)そこで、このような影響を除くため、母親の年齢でまず集団を層別化し、各層で父親の年齢とダウン症児出生率を調べて、オッズ比を算出、それをMantel-Haenszel法によって統合し、父親の年齢とダウン症児出生率との関係を調べるのである。(徳永先生「調整オッズ比」の講義)

(4)
(a)年齢調整死亡率を計算する意義を説明せよ。
(b)標準化死亡比(SMR)の利点を述べよ。
<解答例・解説>
徳永先生「年齢調整死亡率と標準化死亡比」の講義
(a)年齢を調整しない死亡率(粗死亡率)は年齢構成の違いに影響されるため、年齢構成の異なる集団の間で粗死亡率を比較しても結果の解釈が困難である。そのため、比較する集団の年齢構成が同じであると仮定したときの標準化指標(すなわち年齢調整死亡率)で比較する。

(b)年齢調整死亡率を求め、それを比較することができればその方が望ましいが、観察集団の年齢階級別死亡率がわからないときは年齢調整死亡率が求められない。このような時も、標準化死亡比であれば求めることができるので用いられる。また、死亡数が少ないときにも有用である。


<古野先生>
精神保健福祉法で規定されている入院形態を列挙し、入院条件を説明せよ。10点
<解答例・解説>
下野先生「精神保健」の講義、ステップ精神科p248。
・ 任意入院:患者本人の同意による入院。
・ 医療保護入院:精神保健指定医の診察で入院が必要とされた場合で、任意入院が行われる状態でなく、保護者の同意がある。
・ 措置入院:都道府県立または民間の指定病院で、2名以上の精神保健指定医の診察で入院が必要とされた場合で、自傷他害のおそれがあるとき。
・ 緊急措置入院:精神保健指定医の診察で入院が必要とされた場合で、自傷他害のおそれが著しく、緊急を要するときに、72時間以内であれば認められる。
・ 応急入院:精神保健指定医の診察で入院が必要とされた場合で、急速を要し、保護者の同意が得られない、かつ任意入院が行われる状態でないとき、知事が指定した病院に限り、72時間以内であれば認められる。


次の用語の定義(あるいは意味)と意義を簡潔に説明せよ。各2点
DOTS
伝播型流行曲線
費用便益分析
乳児死亡率
BMI
<解答例・解説>
DOTS:古野先生「結核の疫学と対策」の講義
Directly observed treatment shortcourseの略。大都市の生活困窮者での服薬コンプライアンスを高める目的で開始された。患者の生活支援と直接服薬確認を行うことにより、治療中断を防いでいる。

伝播型流行曲線:古野先生「感染症の流行」の講義
一次患者以降の患者の発生が潜伏期に対応して多峰性を示す流行曲線。原因不明の疾患がこの種の流行曲線を示す場合は感染性疾患であることが疑われる。

費用便益分析:馬場園先生「医療経済学」の講義
全ての結果を金銭の形で表示しようとする。したがって、様々な結果を金銭の尺度でまとめ上げることができ、医療以外の事業間の比較検討も可能である。

乳児死亡率:古野先生「母子保健」の講義
生後1歳未満で死亡する乳児の割合で、通常は出生1000対で表現される。一般にはこの値が低ければ低いほどその集団(国)の衛生状態がよい、とされる。

BMI:
体重を身長の2乗で割ったもので、22付近で最も死亡率が下がるとされている。肥満の尺度としてよく用いられる。


図の内容を説明し(2点)、これらの動向の背景について考察せよ(3点)。5点
以下の問題は自分で感じたところを書けばいいはずなので解答例省略。

問1)〜3)に解答せよ。
問1) 図1は結腸癌の男女別年齢調整罹患率と死亡率を年次ごとに示している。図の内容を説明せよ。なお年齢調整の標準人口は1985年日本モデル人口であり、率は人口10万対である。5点

問2) 図2は国民栄養調査による成人1人あたりの平均摂取量(グラム/日)を年次ごと(横軸)に示している。図の内容を説明せよ。5点

問3) 2つの図から結腸癌の原因について考察し(2点)、その考察結果を検証するためにどのような調査が必要であるかを具体的に述べよ(3点)5点

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