公衆衛生学 授業後課題模範解答例

清原先生担当分(がんの統計と予防、分子疫学、がん検診の3講義についてのもの。他の講義については全員に配布されたはずなので割愛します。)

がんの統計と予防(11月2日)

解答のポイント:男女間と先進国/途上国の中での部位別がんの罹患数の違い
※ 先進国、途上国のそれぞれについて、全体(ここの挙がっている癌の合計)に占めるその癌の割合を算出し、さらにそれぞれの罹患数の先進国途上国比を算出した上で以下のように考察されています。

・ 先進国でも発展途上国でも多くの部位で男性の方が罹患数は多い。
しかし、pancreasとleukemiaは男女差が極めて小さい→性差が少ないライフスタイルが危険因子(喫煙、飲酒)?性ホルモンの関与が少ない?

・ 先進国/途上国で部位別がんの分布が異なる。
先進国
  男:肺>前立腺>大腸>胃   女:乳房>大腸>肺>胃
途上国
  男:肺>肝>胃>食道   女:乳房>子宮頸部>胃>肺'

1) 途上国に比べて先進国で罹患が多い部位
 大腸、膀胱、前立腺:欧米化したライフスタイル(食生活、性生活など)、職業性曝露
2) 先進国と途上国でほぼ罹患数が同じ部位
 肺がん:喫煙率は先進国では減少傾向、途上国では増加傾向
3) 途上国に比べて先進国で罹患が少ない部位
 胃、肝、食道、口腔、子宮頸部:食生活、衛生状態(含む口腔)など

分子疫学(11月5日)

 症例対象研究における交互作用(上から順に):0.47 0.08 2.66 1.44
 Case-only studyにおける交互作用:0.59 0.19 0.94 1.16

解答のポイント
Case-only studyから算出される交互作用の方が、Case-control studyから算出されるものよりもよりconservativeなようである。環境要因と遺伝要因の交互作用の検討する場合には(環境要因と遺伝要因が独立であることが前提であるが)、対照群(対照群を設定する場合には選択バイアスや調整できない交絡因子を考えなくてはならない)を設定しないでよいCase-only studyを行なえばよいことがわかる。

がん検診(11月11日)

解答の際の必須キーワード:過剰診断バイアス

【結果】参加者のうち肺がんで死亡した人の割合は、検診群でも対照群でも7%で、差がなかった。1000人年あたりの死亡率でみても、検診群は4.4、対照群は3.9と、差がなかった。ところが、検診を行っている期間中に診断された肺がんの5年生存率を比べると、検診群(206例)では35%、対照群(160例)では19%で、検診群の方がよかった。さらに、この肺がん症例の平均生存期間を比べると、進行がんや切除不能例では、検診群でも対照群でもおなじ0.6年だったのに対して、切除した早期がんでは、検診群が16年、対照群が5年と、検診群の方がずっと長かった。

【考察】肺がんの中には、進行が遅く、検診を行わずに放置しておいても、臨床症状を引き起こさず、人の死因にはならないようなものが、ある程度存在する。しかし検診を行うと、本来死には至らないこうした肺がん症例まで、「過剰に診断」してしまう。その結果、こうした「過剰診断」例を含む検診群の方が、対照群よりも、肺がん症例の生存率は見かけ上高くなる。しかし、検診の本来のターゲットである(致死的)肺がん症例については、検診が生存率の改善にむすびつかなかったために、死亡率も低下しなかったという。

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