侵襲医学 平成15年度概説試験

問1 図1をもとに麻酔の基本理念を説明せよ。

通常は「平常範囲」内に抑えられている生体反応が、手術などの侵襲により振幅を広げる。「許容範囲」をこえることは死を意味する。麻酔とは、振幅を許容範囲内に抑えることで生体のホメオスタシスを保つことを目的とする。
(この図に限っていえば上記の内容で概ね正しいと思うのですが、「鎮痛・鎮静・筋弛緩・有害な反射の除去」ということも書いた方がいいのかもしれません)

問2 硬膜外併用脊椎麻酔の適応、禁忌、合併症とその予防について述べよ。
6/11プリント
適応:下腹部以外の手術
禁忌:1)出血性素因のある患者…硬膜外血腫を来たしやすいため
   2)重症ショック、低血圧…末梢血管拡張により血圧が下がるため
   3)感染症…穿刺部位の感染、敗血症など
   4)脳圧亢進、潜在性二分脊椎症などの脳脊椎疾患…硬膜を破ってしまう可能性
   5)重症心不全  6)局所麻酔薬アレルギー  7)解剖学的に穿刺困難な場合
合併症とその予防:1)全脊椎麻酔…症状が現れたら、呼吸・循環の維持等の適切な処置をとれば予後良好。
  2)局所麻酔薬中毒…中枢の刺激症状や痙攣に対しては、それぞれバルビツレート(中
枢刺激の抑制)、スキサメトニウム(痙攣)、ジアゼパムを前投与する。
   3)血圧低下…@輸液 A末梢血管収縮薬の投与 BTrendelenburg体位 C100%O2の投与 D以上で効果ない時はドパミンの持続投与

問3 以下の各小問に答えよ。
  1】〜24】は
  a (1)(2)(3)  b (1)(2)(5)  c (1)(4)(5)  d (2)(3)(4)  e (3)(4)(5)
  から適切な組合わせを一つ選べ。
  25】はa〜eより正しいものを一つ選べ。

1】吸入麻酔薬の導入について正しいのはどれか。
 (1)血液/ガス分配係数が低いほど導入速度は遅くなる。
 (2)吸気の麻酔ガス濃度を高くするほど導入速度は速くなる。
 (3)分時換気量が大きいほど導入速度は速くなる。
 (4)心拍出量が増加するほど導入速度は遅くなる。
 (5)70%亜酸化窒素を併用すると揮発性吸入麻酔薬の導入速度は遅くなる。
 1】d 6/14授業プリント(1)×:遅くなる→早くなる (2)○ (3)○ (4)○ (5)×:遅くなる→早くなる

2】静脈麻酔薬について正しいのはどれか。
 (1)バルビツール酸誘導体はGABAA-Clチャンネル複合体に作用する。
 (2)ケタミンはNMDA受容体に作用する。
 (3)チアミラールの超短時間作用性は、代謝速度が速いことに由来する。
 (4)モルヒネの鎮痛作用は合成麻薬フェンタニルの50倍である。
 (5)ドロペリドールはα遮断作用を有する。
 2】b (1)○(2)○(3)×:代謝速度が速い→脳以外の組織に再分布する
(4)×:モルヒネと合成麻薬フェンタニルが逆(5)○

3】悪性高熱について正しいのはどれか。
 (1)メジャートランキライザーを突然中断した場合に発症しやすい。
 (2)特効薬はスキサメトニウムである。
 (3)ハロタンは誘発薬剤である。
 (4)過去の麻酔で発症していなくても発症の可能性がある。
 (5)体温上昇は早期の兆候ではない。
 3】e (1)?(2)×:→ダントロレンナトリウム(3)○(4)○
(5)○:早期の症状としては、原因不明の頻脈や不整脈であることが多い。

4】麻酔中の呼吸について正しいのはどれか。
 (1)ミダゾラムには呼吸抑制作用がない。
 (2)セボフルランは換気の二酸化炭素応答曲線を左方に移動させる。
 (3)脊髄くも膜下麻酔において頚神経領域が及んでいなければ呼吸抑制は生じない。
 (4)仰臥位での横隔膜の弛緩は機能的残気量を減少させる。
 (5)陥没呼吸は気道閉塞の兆候である。
 答えe
(1)×(2)?
(3)○:C4までやられると呼吸停止 
(4)○ 6/16プリント3ページ 
(5)○ ステップ102ページ

5】肺血流に関して正しいのはどれか
(1)吸入気酸素濃度を増加させると肺血管は拡張する
(2)左側臥位では右肺の肺血流が増加する
(3)肺血管抵抗の算出には平均肺動脈圧、中心静脈圧、心拍出量が必要である
(4)肺血管抵抗の単位はdynes・sec・cm-5である
(5)高炭酸ガス血症は肺高血圧の原因となる 
答えc
1○ 
2× 6/16プリント5ページ
3×?選択肢より
4○
5○ 6/16プリント

6】周術期の肺塞栓について正しいのはどれか
(1)肺酸素化能は障害されない
(2)左房内血栓が原因となる
(3)予防的抗凝固療法は有効である
(4)呼気終末と動脈血二酸化炭素分圧の較差が増大する
(5)卵円孔開存は奇異塞栓の原因となる
答えe
  (1)×…酸素化能は障害されるはず。
  (2)×…下肢の深部静脈血栓が原因では?
  (3)○…ヘパリンの予防投与もある。
  (4)○…Va/Qの不均等(血流量が換気量に比べ減少)→PaCO2↓
  (5)○…その通りです。

7】反射性循環調節について正しいのはどれか
(1)大動脈弓にある圧受容器を介する刺激の求心路は舌咽神経である
(2)血圧の急激な上昇は大動脈体を興奮させる
(3)Bezold-Jarish反射は心臓の化学受容器反射である
(4)頚動脈体の求心路は舌咽神経である
(5)頚動脈体が興奮すると、呼吸が促進される
答えe
  (1)×…頚動脈洞→舌咽神経、 大動脈弓→迷走神経
  (2)×…
  (3)○…授業プリントにあり。
  (4)○…(1)参照
  (5)○…授業プリントにあり。

8】循環のモニターについて正しいのはどれか
(1)肺動脈楔入圧は左心不全で上昇する
(2)前負荷の指標としては肺動脈楔入圧よりも中心静脈圧の方が優れている
(3)心拍出量が増加すると混合静脈血酸素飽和度は低下する
(4)酸素消費量はFickの原理によって算出される
(5)貫壁性の心筋虚血は心電図上虚血部位におけるST上昇として表れる
答えc
  (1)○…左心不全・容量負荷で上昇、血管拡張や容量不足で減少
  (2)×…楔入圧の方が優れる。
  (3)×…飽和度も上昇。
  (4)○…Fickの原理<心拍出量=酸素消費量/(動脈血酸素含量―混合静脈血酸素含量)>
  (5)○…その通り!

9】カリウム代謝について正しいのはどれか
(1)アルカローシスは低カリウム血症の原因となる
(2)インスリン投与による低カリウム血症の原因は細胞内移行である
(3)カテコラミンはカリウム代謝に影響しない
(4)低カリウム血症ではテント状T波が観察される
(5)アンギオテンシン変換酵素阻害薬は高カリウム血症の原因となる
答えb
  (1)○…細胞内移行で低K。
  (2)○…授業プリントにあり。
  (3)×…細胞内移行で低K。
  (4)×…高K(5.0〜6.5mEq/L)で出現。
  (5)○…ACE阻害薬は腎排泄の減少から高Kの原因。

10】酸素代謝について正しいのはどれか
(1)基質準位のリン酸化ではブドウ糖1モル当り38モルのATPが合成される
(2)健常成人の安静時酸素消費量は約25ml/分である
(3)PaO2が50mmHg以下になると脳血管が拡張する
(4)健常成人における安静時の生体内酸素含量は約1,500mlである
(5)エネルギー代謝に伴う水の生成量はブドウ糖よりもステアリン酸の酸化の場合の方が多い
答えe
  (1)×…酸素が無いとき基質準位のリン酸化(ホスホグリセリン酸キナーゼとピルビン酸キナーゼの2段階)ではブドウ糖1モル当り2モルのATPが合成される。
  (2)×…
  (3)○…
  (4)○…
  (5)○…ブドウ糖1モルから6モルの水、ステアリン酸1モルから164モルの水生成

11】低酸素血症について正しいのはどれか
(1)チアノーゼによって早期発見できる
(2)動脈血酸素分圧が60mmHg以下の状態である
(3)脳血管の拡張は動脈血酸素分圧が30mmHg以下になると生じる
(4)動脈血酸素分圧が40mmHg以下になると意識レベルの低下が認められる
(5)低酸素症は低酸素血症と区別して用いられる
答え?
  (1)×…チアノーゼは50mmHg以下にならないと現れず、低酸素血症は60mmHg以下なので早期発見はできない。
  (2)○…定義!
  (3)×…問題10(3)参照。50mmHg以下。
  (4)○…その通り。
  (5)○…その通り。

12】脳血流を増加させる麻酔薬として正しいのはどれか
(1)チアミラール  (2)ケタミン    (3)イソフルラン
(4)亜酸化窒素   (5)プロポフォール
答えd 6/30プリント5ページ
  (1)×…バルビツール酸誘導体で↓↓↓。
  (2)○…↑↑。
  (3)○…↑。セボフルランも↑。ハロタン↑↑↑。
  (4)○…↑。
  (5)×…↓↓↓↓。

13】内頚静脈血酸素飽和度を増加させる因子として正しいのはどれか
(1)赤血球輸血     (2)分時換気量増加   (3)脳酸素消費量増加
(4)吸入気酸素濃度増加 (5)低体温
答えc 6/30プリント7ページ
SjO2増加→Hb増加…(1)○
     脳酸素消費量(CMRO2)低下…(3)× (5)○
     動脈血酸素飽和度(SaO2)増加…(4)○ 吸入気酸素濃度=FiO2
     脳血流量(CBF)増加…PaCO2増加→(2)×
ステップ170ページに「呼吸生理に必要な記号」という項目があるので、目を通しておくと良いと思います

14】脳虚血について正しいのはどれか
(1)高体温は組織障害の増悪因子である
(2)バルビツレートは局所脳虚血による組織障害を軽減する
(3)脳梗塞には極早期再灌流療法が推奨されている
(4)血糖を高めに維持して脳へのエネルギー基質供給を促進する
(5)心臓外科手術では高次脳機能障害の発生は稀である
答えa 6/30プリント
(1) ○…プリント7ページ
(2) ○…ただし全脳完全虚血には無効。
(4)×全脳虚血では糖負荷/高血糖は虚血後脳障害を増悪する。
(5)×

15】覚醒遅延の鑑別診断について正しいのはどれか
(1)チアミラールは超短時間作用性なので覚醒遅延をきたさない
(2)ベンゾジアゼピンの作用遷延はフルマゼニルで拮抗可能である
(3)麻薬の作用遷延はナロキソンで拮抗可能である
(4)鑑別診断として脳血管障害の発生を挙げることができる
(5)低体温はMACを増加させるので、覚醒遅延の原因にはならない
答えd?
1×?
2○ ステップ26ページ
3○ 純粋な麻酔拮抗薬で、呼吸に対してのみでなく鎮痛作用も拮抗される ステップ29ページ
4○
5× 体温が下がるとMACも下がります

16】妊婦の生理学的変化として正しいのはどれか
(1)機能的残気量が増加する
(2)酸素消費量が増加する
(3)うっ血により上気道は狭小化する
(4)陣痛による過呼吸は胎児低酸素血症の原因となる
(5)肺胞換気量は減少する
答えd
(1)×
(2)○
(3)○
(4)○過呼吸によるhypocarbia,alkalemia,それに引き続く低換気が胎児のhypoxemiaをまねく
(5)×増加する

17】妊婦の麻酔について正しいのはどれか
(1)吸入麻酔の導入は遅延する
(2)硬膜外麻酔における局所麻酔薬の必要量は減少する
(3)誤嚥性肺炎のリスクが高い
(4)脊髄くも膜下麻酔における局所麻酔薬の必要量は減少する
(5)母体への全身麻酔薬投与は胎児の呼吸抑制の原因となる

(1)×FRC減少、肺胞換気量増加のため迅速である。
(2)○@硬膜外腔静脈系のうっ血による硬膜外腔、くも膜下腔の狭小化
A神経線維の局所麻酔薬に対する感受性増大
(3)○胃排出時間延長、噴門部弛緩、胃酸分泌亢進→胃内容逆流→誤嚥性肺炎
(4)○(2)と同じ
(5)○? バルビツレート、モルヒネ、ミダゾラムなど前投薬が呼吸抑制を引き起こす

18】輸血について正しいのはどれか
(1)PTが14秒(コントロール10秒)に延長していたので新鮮凍結血漿を輸血した
(2)不適合輸血の死因は静脈内赤血球凝集による肺塞栓である
(3)輸血後GVHDはリンパ球の混入が原因である
(4)大量輸血は低体温の原因となる
(5)緊急事態では、T&A(タイプ&スクリーン)が済んでいる血液を交差試験なしで輸血することができる
答えe 6/29プリント
(1)× 適応:凝固異常、肝機能障害(PT>16sec APTT>50sec fibrinogen<100mg/dl) PTが14sec程度では投与しても凝固機能は改善しない。
(2)× 補体が活性化され、赤血球膜が破壊され溶血が起こることが本態である
(3)○ 輸血用血液中に含まれる供血者のリンパ球が排除されず、むしろ患者のHLA抗原を認識し、急速に増殖して患者の体組織を攻撃、障害することによる。
(4)○ 他に循環過負荷、クエン酸中毒、肺血栓、出血傾向などがある。
(5)○ 

19】SIRS(systemic inflammatory response syndrome)の診断基準に採用されている項目で正しいのはどれか
(1)血清IL-6濃度 (2)CRP     (3)白血球数
(4)体温     (5)呼吸数
答えe 6/23プリント
診断基準:体温 >38℃または<36℃
     脈拍数 <90/分
     呼吸数 <20/分またはPaCO2<32torr
白血球数 >12000/mm3、<4000/mm3または幼若系型>10%
の四項目のうち、二項目以上を満たす場合。

20】小児の特徴として正しいのはどれか
(1)成人よりも小児の方が体重当りの水分量が少ない
(2)上気道で最も狭いのは声門部である
(3)体重当りの機能的残気量が少ない
(4)基礎代謝率が高い
(5)体温調節が不完全である
答えe
(1)×
(2)×声門部より輪状軟骨部のほうが狭い
(3)○
(4)○
(5)○

21】1994年から1998年の「麻酔関連偶発症例調査」の集計結果として正しいのはどれか
(1)「全てが原因」の心停止発生頻度は1万症例につき約4症例である
(2)「全てが原因」の偶発症による死亡率は1万症例につき約7症例である
(3)「麻酔管理が原因」の心停止発生頻度は1万症例につき約0.1症例である
(4)「麻酔管理が原因」の偶発症による死亡率は1万症例につき約2症例である
(5)「麻酔管理が原因」の心停止の原因として、ヒューマンファクタは10%を占める
答え  6/28プリント
(1)× 6.34人。死亡率は3.35人。
(2)○ 減少傾向にあります
(3)?
(4)× 0.10症例。1998年以来ほぼ横這い
(5)× 25.5%。ヒューマンファクタ…手術24%と麻酔管理1.5%
配布されたプリントは1999~2002年の集計結果で、この問題は1994~1998年での集計結果。厳しいです。先生は、出題するとしたらプリント後半の統計の部分とおっしゃってました。

22】脊髄の解剖について正しいのはどれか
(1)脊髄下端は成人ではL1〜L2である
(2)水平仰臥位における脊椎の最高部位はL3である
(3)脳脊髄液は弱アルカリ性である
(4)脊椎管内の脳脊髄液量は120〜150mlである
(5)運動神経は脊髄後根から出ている

答えa 6/11プリント
(1)○
(2)○
(3)○ pH7.35~7.60
(4)× 脊椎管内には約20ml。
(5)× 運動神経は前根から。後根からは知覚神経。

23】区域麻酔について正しいのはどれか
(1)脊髄くも膜下麻酔では分離麻酔が容易である
(2)脊髄くも膜下麻酔では交感神経よりも知覚神経が早く遮断される
(3)局所麻酔薬中毒は脊髄くも膜下麻酔よりも硬膜外麻酔で起こりやすい
(4)全脊髄くも膜下麻酔では意識消失を認める
(5)脊髄くも膜下麻酔後の頭痛は細い穿刺針を用いることで発生頻度が減少する
答えe ステップ123ページ〜
(1)× 分離麻酔…知覚神経と交感神経を麻痺させて、運動神経はそのままにしておく
    硬膜外麻酔では、分離麻酔と分節麻酔が可能です。
(2)× 細い神経ほどはやくブロックされる。自律神経→知覚→運動の順です。
(3)○ 硬膜外麻酔は多量の局所麻酔薬を使う、硬膜外腔は血管が豊富→血中麻酔薬濃度が上がりやすい
(4)○ 誤ってクモ膜を突き破って薬液を注入してしまい、すべての脊髄神経とそれより上位の中枢がブロックされてしまうこと。症状は他に、呼吸停止、脳神経麻痺など。予後良好。ステップ139ページ
(5)○ 頭痛は、穿刺の際の孔から、髄液が硬膜外腔へ漏出するために頭蓋内圧が低下し、これによって脳が下方へ動きやすくなるためと考えられている。ステップ135ページ

24】帯状疱疹について正しいのはどれか
(1)皮疹が出現し、その数日後に痛みが生じてくることが多い
(2)発症部位の皮膚の知覚低下を認めても、痛みが軽い場合には神経ブロック療法の適応にはならない
(3)三叉神経第一枝領域や胸部に好発する
(4)顔面神経が冒されるとRamsey-Hunt症候群を呈する
(5)内臓病変を合併したり、運動神経が冒されることがある
答えe
1× 激しい痛みが生じてから皮疹が出現
2× 早期に治療を行った方が治りが早いそうです。インターネットより
3○ 肋間神経、坐骨神経、三叉神経が侵されやすい 血液ステップ138ページ
4○ 血液ステップ139ページ
5○

25】成人の心室細動に対する初回の体外式除細動において、推奨されているエネル
ギー量はどれか
a 0.2J b 2J c 20J d 200J e 2,000J
答え d
これでだめなら300J、360Jと上げます。

もどる

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送