歯科口腔外科 平成14年度概説試験

まだ肝心の授業が始まっていないので、去年の授業プリントと過去問集の解答、「ハンディ口腔外科学 学建書院」を参考に作成しました。いろいろと至らない点があると思いますが、訂正点があったら教えてください。ちなみに平成15年は卒試が行われませんでした。
毎年大体同じような問題が出ているようですが、過去問を参考に、プリントも(4部しかないことだし)読んでおいたほうがいいと思います。
今年は去年まで「口唇口蓋裂及び顎変形症」の授業をされていた大石先生がこられないようです。だからこの先生の担当分は過去問が通用しないかも…
最後の2枚は相田先生のプリントをまとめた物です。授業開始前から勉強される方は必要かもしれませんが、(多分いないのでは・・・)それ以外の人はプリントアウトしなくていいと思います。

A,B,C,Dの設問につきそれぞれ1枚の解答用紙 を用いること。
用紙は裏面使用可。それぞれの用紙に学籍番号、氏名を忘れないこと。

A. 次の4問題中より3問を選んで解答せよ。
1)口唇裂口蓋裂発症のメカニズムについて2つの説を挙げて説明せよ。
2)口唇形成術の適当な時期、口蓋形成術の適当な時期について簡単に理由を挙げて述べよ。
3)鼻咽腔閉鎖不全症について知るところを述 べよ。
4)下顎枝矢状分割法について知るところを述べよ。

解答
大石先生担当分です。(今年はこの先生の授業はありませんが…)
1) 唇は胎生8週前後、口蓋は12週前後にそれぞれ顔面突起、口蓋棚の癒合により形成される。
まず、唇裂の発生には二つの説がある。1つ目が1874年にHisによって提唱された突起癒合不全説である。なんらかの原因により突起の癒合が障害されるため裂が起こるとする説である。原因としては、両側突起付着部の上皮にアポトーシスがうまく起こらず癒合が障害されるとする考え方がある。
2つ目の説は、1953年にVeau,1954年にStarkによって提唱された、中胚様塊欠損説である。上唇は上皮壁としてはじめから存在しており、この中に、中央、左右と3ヶ所に中胚葉塊が生じ、お互いに上皮壁を通って、発育、癒合して上口唇となるが、どれかが欠損または不足すると、当該位置に破裂を生じるとする説である。まれに見られる破裂部の帯状の癒合部(Simonart's Band) は上皮壁が存在していた証拠であると考える。
次に口蓋裂の発生だが、これには、癒合時期に頭部の幅が広すぎる、口蓋棚が狭すぎる、舌の上方圧が強すぎる、口蓋棚の移動不全などが原因として挙げられている。

2)口唇形成術の時期は生後1.5〜4ヶ月頃(大体3ヶ月)である。手術を受ける家族側は見た目を考えてなるべく早く、手術を行う術者、麻酔医側は全身状態と口輪筋の発育を考えてなるべく遅く行いたいと思うものである。
全身の発育状態を考慮に入れ、
白血球数     10,000以下
ヘモグロビン値  10g/dl以上
体重       6Kg以上
を大まかな目安として行うが、最近は段々手術を早く行う傾向にある。
また、唇裂の幅広いものは、生後2〜4週頃に、全身麻酔下に、裂部を引き寄せ仮留めを行うことがある。(口唇癒着術)
口蓋形成術の時期は、発音のためにはなるべく早く、(遅くなると変な癖がつくため)、顎発育のためにはなるべく遅く行いたい。そのため、最適なのは言葉を話し出す1.5〜2才頃である。

3)鼻咽腔閉鎖不全は口蓋裂患者によく見られ、口蓋形成術後であっても起こりうる。
口腔と鼻腔は口蓋により隔てられているが、後方の咽頭部では交通しており、ここを鼻咽腔と言う。鼻咽腔は正常人では、安静呼吸時、通鼻音発生時などでは弛緩し開放されているが、嚥下、息の吹き出し、鼻音以外の発生時には閉鎖する。
口蓋裂患者ではこの鼻咽空閉鎖運動が障害されているために、発声障害が起こる。以下に示すように口蓋裂患者特有の分かりにくい言葉がある。(口蓋裂言語)
開鼻声…言葉が鼻に抜ける。
異常構音…正しい発音に必要な口腔内圧が不足するので、これを代償するために普通と違ったところで、違ったやり方で代償音を作り発音する。これが固定化し、習慣化する。具体的には、子音の省略・置換、声門破裂音・咽頭破裂音、咽頭摩擦音・喉頭摩擦音、口蓋化構音・鼻腔構音・側音化構音など
また、口蓋裂患者は鼻翼や鼻根部の筋肉を収縮させて呼気の漏出を防ごうとするため鼻渋面という特有の仕草も取る。
治療法としては先ずSpeech aidを装着し構音指導を行い(閉鎖した状態で筋を鍛える)、5〜7才で再手術(口蓋形成術)を行う。これで80〜90%の症例では鼻咽腔閉鎖機能を獲得する。尚、不全が残る場合は最終的に咽頭弁形成手術を行う。

4)頭蓋に対して下顎が著しく前方または後方に位置している下顎前突症や下顎後退症に対して行う術式で、最もStandardなものである。中でも、Obwegeser Dal Pont法が代表的である。
三叉神経第3枝(下顎枝)を避けて下顎骨を矢状方向に切断する(下顎孔上方下側から大臼歯後方の頬側に向けて切断。) その後、前突症では下顎骨体を後方に、後突症では前方にスライドさせて固定する。
本法は口内法であるために@顔面皮膚に瘢痕を残さない A顔面神経下顎縁枝を損傷しない B明視野手術なので下歯槽動脈神経を損傷しない C分割骨片の接触面積が広いので術後の後戻りが少ないなどの利点がある。

解説
この先生は今年授業をされませんが、大切なポイントは同じなのでやっておいて損はないかもしれません。でも今年のプリントもよく読んでおきましょう。
口唇口蓋裂については毎年出題されていますが、内容としては
口唇口蓋裂の発症メカニズム(H14概)
口唇形成術、口蓋形成術:手術の時期、手術の要点(H15概、H14概、H11概)
鼻咽空閉鎖不全症(H14概、H12卒)
下顎枝矢状分割法(H15概、H14概、H13卒、H12卒、H11概)
下顎枝垂直骨切り術(H15概)
顎裂部への骨移植について(H15概、H12概)
口唇口蓋裂について知るところを述べよ(H13卒、H11卒)


B. 次の症例の治療について考察せよ。また治療の経過中に考えられる不快症状とその処置についても記せ。
24歳男性の症例で、咬合不全を主訴に来院した。現病暦では、3日前にスポーツをしていて、他人の頭部が左側下顎角部に当たったという。直後は痛みを自覚したが、特に処置を受けなかった。しかし翌日より左側頬部に腫張が生じ、かみ合わせがうまくいかずに飲食を摂取していたが、開口制限も自覚したため歯科口腔外科に初診した。口腔内には28歯が萌出しており、歯列には偏位や断裂を認めなかった。X線像では、左側下顎智歯が埋伏しており、その根尖から角部に2本の骨折線が走り、後方骨片が外側に転位していた。なお、歯牙の破折や上顎骨、頬骨などには骨折を認めなかった。
(*下線は私が引きました)
解答
竹之下先生担当分
骨片の偏位(ずれ)が大きく、機能障害(咬合手術、開口障害)を後遺するため、外科的手術の適応である。術前管理の後、手術を行う。
やはり、智歯は整復前に抜歯するのではないでしょうか?手術の流れとしては、
切開→骨折線確認→抜歯→整復→術中顎間固定→プレート適合→穴あけ→スクリュー固定→顎間固定解除→縫合
上下顎間を牽引・整復する前に、上下歯列に副木をつけ、歯列間にギャップがあるときは整復もするそうです。噛み合わせが定まると保存的に顎間固定を行うのですが、その期間は4〜6週間です。術後顎間固定のことについて書くのを忘れたので、付け足して置いてください。術後には、他にも機能訓練、開口練習、そしてプレート除去、歯科治療を行うようです。
固定法は今は、チタンミニプレートが主流です。チタンは生体適合性がいいそうです。また、最近は吸収性プレートも使われるそうです。仮骨が形成されるまで(3ヶ月〜半年)は固定し、自然と吸収されるそうです。
治療中の経過中の不快症状に対しては、十分な管理(術後管理など)を行う。術創の疼痛には鎮痛剤、腫脹には圧迫やドレナージを行う。咬合の整復には顎間固定を、感染には抗生剤を投与する。また、栄養管理(下痢や腹痛に注意)や、口腔内衛生保持、機能訓練も重要である。
解説
ここのところ毎年症例問題は出ているみたいです。解答の仕方が難しいです。分かったら教えてください。(H15年概説参照)
この骨折は、上顎骨や頬骨に骨折が見られないので、直達骨折(打撲部分の骨折)、歯列には偏位や断裂が見られず、軟組織にも断裂がなさそうなので閉鎖骨折(単純骨折)、受傷後3日しかたっていないので、新鮮であると考えられます。
ところで、顎顔面骨折で90%を占めるのは下顎骨骨折です。またその中でもこの症例のような外傷性が95%を占めます。10〜20代に多いそうです。
また下顎骨骨折の好発部位としては
関節突起部の頭頚部 25〜30% …直達骨折少ない。見逃さないよう注意!!
下顎角部 20〜30% …智歯(親知らず)のからのライン
下顎体部 30% 
オトガイ部

C. 口腔に発生する嚢胞及び嚢胞状疾患を挙げ、その病態について述べよ。
解答
白砂先生担当分です。H15年も参照してください。
1. 顎骨の嚢胞
1) 歯原性嚢胞:歯に由来する。
(歯原性の上皮の一部が分泌してcystの形成と拡大を起こすものがあり濾胞性歯嚢胞というが、そのうち歯牙を含むものを含歯性嚢胞、含まないものを原始性嚢胞という。)
原始性嚢胞…硬組織(歯冠)の形成が始まる以前の歯胚に嚢胞が形成されたもので、歯胚形成初期の上皮を原基とした嚢胞。よって、歯の硬組織が、まったく見られない。
      X線所見は、嚢胞に一致した類円形の境界明瞭な透亮像がみられるだけである。
含歯性嚢胞…歯冠を含む。埋伏歯の歯冠を含む形で形成される嚢胞で歯のみが抜歯されて後に嚢胞が残留したもの。授業では、歯嚢が何らかの刺激で嚢胞化した物と言っていました。
歯根嚢胞…慢性根尖性歯周炎(歯根上皮に感染、炎症!!)の経過中に歯根肉芽腫を形成し、その中の迷入上皮により歯根嚢胞へと移行する。肉芽組織の中央部に上皮組織に縁取られた歯尖孔と連絡する空洞が成立する。最多。
2) 非歯原性嚢胞:歯に由来しない。
   術後性上顎嚢胞(久保氏嚢胞)…慢性上顎洞炎の術後数年ないし十数年後に上顎
洞など手術部位を中心に瘢痕中に発生。
   鼻歯槽嚢胞…鼻涙管と歯槽の間に出来る。胎生期の鼻涙管の遺残上皮、または鼻涙管の前下端の上皮から発生すると考えられる。(以前は、胎生期の顔面の突起の癒合部の遺残上皮から形成されるとされていた。)
   鼻口蓋管嚢胞…胎生期に存在する鼻口蓋管(後の切歯管)の上皮の残存によって形成される嚢胞。
3) 類嚢胞性疾患:X線上では嚢胞様に見えるが実際は嚢胞ではない。
   単純性顎嚢胞…外傷性の骨嚢胞。
   脈瘤性顎嚢胞…動脈瘤による。
   静止性顎嚢胞(Stafne)…舌下腺に顎骨内側が圧迫、吸収されたもの。顎角部の下顎骨より下方に嚢胞に似た境界明瞭なX線透亮像。
2. 軟組織に発生する嚢胞
1) 粘液嚢胞(唾液腺)…怪我などにより、小唾液腺(口唇腺、口蓋腺、頬腺etc)の導管が傷ついて、唾液                      
の流出障害が起こり、粘膜下に粘液が貯留する(粘液瘤)。また、大唾液腺(舌下腺、顎下腺etc)の排出管に関係するガマ腫もある。
2) 類表皮嚢胞…正中にできる。融合の際に上皮が迷入する。その結果、嚢胞壁が上皮構造をなす。チー  ズ様内容物を含む。                                                                         
(皮脂腺、爪、毛髪などが見られるものを類皮嚢胞と呼び、角化した上皮層のみのものを類表皮嚢胞と呼ぶ。)
3) リンパ上皮性嚢胞…側頚嚢胞とも呼ばれる。胸鎖乳突筋前縁に生じる。
4) 甲状舌管嚢胞…正中嚢胞とも呼ばれる。甲状舌管の遺残上皮から生じる。
           治療としては、Sistrunk手術が行われる。(舌骨合併切除)
 
(参考)平成9年度卒業試験解答
解説
名前の羅列だけでも、点数はもらえるかもしれません。(でも先生が授業中に行っていたことくらいは書いておいたほうがいいかも)
16年度は、白砂先生がこられず、代わりの先生がこられました。その先生が授業で言ったことを中心にまとめました。
類題は、H15概、
同じ問題は、H13卒、H11概

D.う蝕と歯周病各々の病因、発症機序、疾患の本態について述べよ。

解答
相田先生担当分
(1) う蝕
 病因:ストレプトコッカス・ミュータンス感染+スクロースの存在
 発症機序
S.mutans(連鎖球菌)がスクロースをグルコシルトランスフェラーゼによって非水溶性グ
ルカンとフルクトースに、また、インベルターゼによってグルコースとフルクトースに分
解する。非水溶性グルカンは菌の歯面の付着に寄与し、プラークを形成し硬組織の脱灰を
引き起こす。また分解されて生じた糖(フルクトース、グルコース)やそこから生じた菌体
内のグリコゲンが発酵することで生じた酸も、歯の硬組織の脱灰を引き起こす。 一度脱
灰が起こると、小さなものは再石灰化するが、マクロのレベルでは再生しない。
 疾患の本体(?)
このようにして、う蝕が起こり、脱灰が硬組織の外へ進むと歯髄炎、根尖性歯周炎など
が起こる。
治療は、う蝕、脱灰した部分を切除し、合成樹脂(コンポジットレジン)または金属で充填。

(2)歯周病
病因:歯周病関連細菌(P.gingivalisなど)と毒性因子特にLPS
 発症機序:
歯周病とは大まかに歯周炎、歯肉炎がある。歯肉炎は歯周組織の破壊を伴わない歯肉の炎症で若い人に多い。歯周炎は、結合組織、骨の破壊が見られ、40代に人に多い。
歯牙と歯肉の間に歯周病関連細菌を含むデンタルプラークが形成される。この細菌はグラム陰性菌で外膜にLPSを有しこのLPSが歯周組織内のマクロファージに作用することでMMP−1がマクロファージ、線維芽細胞から産生・分泌される。また歯肉の炎症で生じたサイトカイン(IL-8)が好中球を刺激し、MMP-8,9を分泌する。しかし、これらのMMPは活性を持たないラテントフォームである。MMP−1はプラスミンにより刺激を受け、またMMP−8,9は好中球内で産生される酸素代謝産物(ROI)であるО2−やHClOなどによって活性化され、歯周組織を破壊する。
一方、LPS刺激を受けた炎症性細胞(マクロファージ、繊維芽細胞)の産生する様々なサイトカイン(PGE2など)は破骨細胞の前駆細胞に作用しその分化を促すとともに骨吸収活性を増強する。また、これらの因子は骨芽細胞の形成には抑制的に作用する。このようにして歯槽骨の破壊が起こる。
*大切なのは、組織を破壊するのは、バクテリア自身ではなくホストの細胞であるということ!
疾患の本体:結合組織の破壊により、attachment loss(付着の喪失)がおきて歯周組織が後退し、また歯槽骨の破壊も起きて、歯牙の支持が不十分となり歯牙の動揺、脱落が起こる。

解説
毎年出ています。
〈歯の解剖について…〉
歯は大まかに二つの部分、歯冠と歯根に分けられる。
歯冠は口腔内に突出する部分であり、その全表面を鉱質化したエナメル質の層により覆われ保護されている。歯の大部分は象牙質という、骨と同様の化学組成を持つ無機質組織により構成されている。象牙質はその中心に歯髄腔を持ち、歯髄は多くの感覚系線維を含む特殊な結合組織を含んでいる。
歯根は顎骨中の歯槽稜と呼ばれる骨性稜中に埋め込まれている。歯を容れている部分を歯槽という。歯根は薄いセメント質に覆われ、セメント質は歯槽骨に歯根膜と呼ばれる薄い線維層により接着する。
歯槽稜上部を覆う口腔粘膜は歯肉と呼ばれ歯冠と歯根の境界部(歯の頚部)では歯肉は歯の周囲に緊密な保護帯を作る。歯肉の保護帯と歯冠のエナメル質の間にある潜在的隙間は歯肉溝である。歯を取り巻き支持する組織を総称的に、歯周組織という。

歯牙硬組織での代表的疾患は、う蝕であり、これは歯髄炎、根尖性歯周炎へと移行する。
一方、歯周組織の疾患としては、歯肉炎、辺縁性歯周炎が見られる。
一般的に、病変がエナメル質に限局する時は症状が見られないが、象牙質まで達すると症状が出てくるそうである。また歯髄の炎症により、浮腫が起こると、周囲が硬組織なので硬くすぐに歯髄腔の内圧が上るため痛みが生じる。

〈歯周病について〉
1. 歯周炎において歯周組織に何が起こっているか。
歯周炎の病因
歯周病関連細菌(4つ、ただし菌を持っていても100%発症するわけではない)はホスト細胞とそのシステムの活性化により、酵素やその他の分子を産生・放出し、それらが歯周組織を破壊する。これらの活性は炎症性メディエーター(本来は生体防御に使われる)により誘導・調節される。
2. 歯周炎の原因:歯周病関連細菌と病原因子特にLPS
歯周病に関連する細菌
成人性歯周炎:porphyromonas gingivalis , Prevotella intermedia
Bacteroides forsythus , Campylobacter rectus
いずれもグラム陰性細菌、外膜にLPSをもつ
限局型若年性歯周炎:Actinobacillus actinomycemcomitans

LPS(リポポリサッカライド、エンドトキシン、内毒素)
@病原因子としての役割
  A歯周病関連細菌、P.gingivalisのLPSの特徴
    …LPSは本来は生体防御能の賦活化を引き起こす。LPS活性が弱い。
(BLPSの細胞への作用機序)
   …シグナリングカスケード(Mφ上のCD14、Tlr4)
LPS以外の菌体成分:絨毛…Mφに働いてサイトカイン産生誘導

3. 歯周組織破壊の機序:組織破壊活性の発現とその調節
 すなわち、結合組織の破壊と、骨組織の破壊のこと。
 歯肉炎ではこれが起こらない。(attachment loss−)可逆的な変化。全てが歯周炎に移行するわけではない。
(1)組織破壊におけるeffecter molecules:
MMP-1:Mφ、線維芽細胞が産生←菌体性分(LPS)により産生促進。
     サイトカインによる産生の制御、蛋白分解酵素(Plasmin等)による活性化。
     非活性型として産生(ラテントフォーム)→プラスミンによる限局分解→活性化。   
    細胞外基質を破壊。
  MMP-8,9:好中球が産生。
刺激により顆粒から放出するので放出までが早い。(Mφは刺激を受けてから産生するので放出まで時間がかかる)
好中球には、食作用(細胞内殺菌)と組織破壊的機能(蛋白分解酵素群による)があるが、これらにはいずれも酵素代謝物質(ROI)が関与する。すなわち好中球には、健康的側面と、破壊的側面があるのだ。
好中球蛋白分解酵素の酵素代謝産物(ROI:O2−、HOCl)による調節
@ ROIが蛋白分解酵素阻害物質を不活性化する。
A 不活性型の蛋白分解酵素、MMP;matrix metalloproteinase(collagenase,gelatinase)を活性型にする。
 
 (2)骨吸収における破骨細胞
破骨細胞の分化誘導、活性の調節(歯槽骨の破壊) 
  細菌由来の菌体成分(LPSなど)が炎症性細胞(線維芽細胞、Mφ)に作用して、サイトカイン(IL-1、TNF、PGE2)などの産生を引き起こす。菌体成分とそれらの因子は前駆細胞の破骨細胞への分化を促すとともに、骨吸収活性も増強する。それらの因子は骨芽細胞の形成には抑制的に作用する。結果として骨代謝のバランスは破壊のほうへ傾く。
  最近、活性化T細胞が破骨細胞活性化因子、RANK-L/OPG-Lを産生することが明らかになった。

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