歯科口腔外科 平成15年度概説試験

今年は大石先生がやめられて、白土先生に代わられました。そのため「顎顔面の先天的・後天的形態異常」は過去問が通用しないと思います。
授業は、プリントとはかけ離れていたのですが、プリントを中心に、しかしひねくれた問題を出すそうです。「口でいったことも出すかも…」ともおっしゃっていました。
大切そうなところを覚えておけと言っていました。

A,B,C,D,の設問につきそれぞれ1枚の解答用紙を用いること。
用紙は裏面使用可。それぞれの用紙には氏名、学籍番号を忘れないように記入すること。

A.次の4問のうち3問を選んで解答せよ。
1. 口唇形成術について、手術の要点を3つ挙げ、簡単に説明を加えよ。
2. 口蓋形成術について、手術の要点を3つ挙げ、簡単に説明を加えよ。
3. 顎裂部への骨移植について知るところを述べよ。
4. 下顎枝矢状分割法と下顎枝垂直骨切り術について説明せよ(図を用いて可)。


解答
去年までと、先生が変わっているようです。去年は「口唇口蓋裂及び顎変形症(大石)」という授業が行われていたようですが…そのプリントを参考に解答を作成しました。
1.
口唇形成術には、直線切開法、波状切開法、三角弁法、四角弁法、Rotation Advancement Method 、各種の変法がある。口唇形成術を行うに当たってのポイントは
@ 口輪筋の修復…筋の再建をあまり考慮せず、皮膚と筋肉を一緒に切る方法と、皮膚と筋肉を別々に剥離切開し、口輪筋の再建を図る方法がある。
A 鼻の修正…偏位した患側の鼻翼軟骨を周囲組織より剥離し、健側に合わせて整復するが、この処置は積極的に行った方がよいとする意見と、鼻の発育を障害するとして、初回手術時には行わない方がよいとする意見がある。
B 術創の肥厚性瘢痕の防止…皮下縫合を十分に行い、創が開かないようにする。生体反応の少ない縫合糸(ナイロン糸)を用いる。皮膚縫合をなるべく細かい糸で行う。

※口唇癒着術を行うことがある。口唇癒着術とは、唇裂の幅の広いものを、生後2〜4週頃に全身麻酔下に、裂部を引き寄せ仮留めを行うことである。これは顎の発達に有利であるからである。

2.
@筋輪の形成。口蓋帆張筋、口蓋帆挙筋、上咽頭収縮筋、口蓋咽頭筋の修復を行う。これらの筋を修復して筋輪を形成することで、軟口蓋を吊り上げる。
A短い口蓋を伸ばすということである。これには口蓋弁後方移動術(V-Y push back):Veau-Wardill-Kilner's method を用いる。
B顎発育障害の予防である。幼児期における口蓋全体に及ぶ骨膜の剥離は骨の発育に影響を与えるとされる。具体的方法としては、粘膜弁法の工夫(Perko's method) 、二段階手術法(2才時に軟口蓋を、5−7才時に硬口蓋を閉じる) が挙げられる。

3.
口唇口蓋裂では、顎裂部の閉鎖のために、骨移植を行うことがある。
顎裂がある場合には、犬歯が萌出する前(大体9才頃)に、腸骨骨髄より海綿骨を採取して顎裂部へ移植し、顎裂を閉鎖する。
その目的としては、骨移植部への歯の移動や萌出、インプラントの植立、顎間骨や歯列弓の固定と安定化、鼻翼基部の挙上、口蓋瘻孔の閉鎖などが挙げられる。

4.
図はプリントを参照してください。(今年のプリントにあれば…。でもなければテストに出ませんよね。)
下顎枝矢状分割法、下顎枝垂直骨切り術はいずれも顎変形症に対して行われる手術法である。
下顎枝矢状分割法
下顎後退症、下顎前突症で行われる手術である。切離した骨片間の接触面積を大きくするため、下顎枝内面では下顎孔と下顎切痕の間を骨切りするが、外面までは骨切りを行わない。その後、外面でも内面の骨切り線より下で骨皮質のみ骨切りを行う。両者を下顎枝前縁で骨皮質のみを骨切りし連続させたあと、ノミを用いて分割する。
Obwegwser Dal Pont法は下顎体外面にまで骨切り線を延ばしたもので、骨片間の接触面積がより広く取れる。長所としては、
口腔内から手術が出来、頚部皮膚に手術瘢痕を残すことがなく、また顔面神経下顎縁枝の損傷がない
分割した骨片間の接触面積が広く、そのため骨癒合が良好であるので骨片間の癒合不全による術後の後戻りや開咬をきたすことがない。
応用範囲が広く、下顎前突症、下顎後退症のほか、開咬、下顎の非対称などに用いることが出来る。
下顎枝垂直骨切り術
下顎枝を下顎切痕から下顎下縁のかけ、下顎孔の後方で垂直に骨切りする方法である。下歯槽神経の損傷が少ないこと、さらに手術器具の進歩により口内法での手術が可能になったため下顎前突症には比較的よく使われる。
(参考) 最新口腔外科学第4版 各論 P.635〜636

解説
一応、授業で言っていたことで、プリントに載っていないことを書いておきます。でも、私も完全には聞いていなかったので、不十分な点もあると思います。ご了承ください。

〈先天奇形〉
@ 股関節脱臼 A心奇形 B口唇口蓋裂  0.25 B内反足     ……
〈口唇口蓋裂〉
頻度:日本人は0.2〜0.17%(500〜600人に1人)
   アメリカンインディアン>東洋人>白人>黒人 
   手術は年間20〜30人で減少傾向 ただし発展途上国ではまだまだ多い。
   
   口唇裂は 男>女 、口蓋裂は 男≒女
口唇裂の発生要因:突起の癒合不全
口唇口蓋裂の問題点(プリント1枚目)は重要なようです。(特に鼻咽腔閉鎖機能不全)
治療:最近は綺麗になる。体の正中線は瘢痕をきたしやすいので、瘢痕を残さないようにZ-plastyなどしわの線を利用する。
幅広い口唇裂ではHotz床をPrimary Care、術前矯正で用いるそうです。
Millard法で三角弁を用いる話もありました。
また顎裂では、骨移植を行うのですがこれには海面骨骨髄細片を用い、自己骨がベストだそうです(感染の問題) 

〈顎変形症〉
主に下顎の位置によって、顔の印象は変わるそうです。
手術によって見かけ上のかみ合わせはよくなっても、機能(咬合力、接触面積)は1〜2年で7、8割の改善率だそうです(片方の顎で) 上下の顎だと、5〜6割だそうです。…ただしmaximumの測定で
手術後、結構顔が変わるので、手術前とどちらにも心理的問題があるそうです。
外科的顎矯正術として Le FortT型骨切り術、Wunderer法、下顎枝垂直骨切り術、下顎枝矢状分割法について、強調されていたようです。また、顎間固定の話もしていました。
周術期には自己血輸血もしていたそうですが、今は行われていないそうです。
そのほかにも、巨舌に対しPartical Glossectomy をした後、舌尖部の知覚が低下する話、曲がった顔の話、気道の話、dish faceの話などがありました。
〈顎骨延長術〉
骨トランスポート法
骨延長術では熟練した技術が必要で、方向性の3次元でのコントロールは難しいとおっしゃっていました。
〈系統疾患〉
病名と写真をささっと流していました。

B.下顎骨に生じる嚢胞性疾患を3つ挙げ、それぞれの性状と治療法について簡潔に述べよ。
解答
白砂先生担当分です。
顎骨の嚢胞には歯原性嚢胞、非歯原性嚢胞、嚢胞類似疾患が挙げられる。ここでは、下顎骨に見られる嚢胞のうち最も多い歯原性嚢胞3つを説明する。
歯原性嚢胞
歯の疾患あるいは歯の萌出過程に関連して形成される嚢胞の総称で、原始性嚢胞、含歯性嚢胞、歯根嚢胞など、がこの中に含まれる。
@ 原始性嚢胞
硬組織の形成が始まる以前の歯胚に嚢胞が形成されたもので、歯胚形成初期の上皮を原基とした嚢胞である。従って、歯の硬組織がまったく見られない。組織学的には嚢胞上皮に角質層を有することが特徴。(ただし持たないものもある) 無自覚無症状のうちに経過しX線写真で偶然見出されることが多い。嚢胞が比較的広範囲に渡っているわりには、顎骨の膨隆を示すことは少ない。また、二次感染を受けて、疼痛、開口障害、排膿を示すことも少ない。嚢胞の内容は白色の粥状の角化物を包含している。X線所見は、嚢胞に一致した透過像が見られるだけである。
治療法は、嚢胞の全摘が原則。再発例が多いので、周囲の骨及び歯を含めて摘出することが望ましい。
A 含歯性嚢胞
埋伏歯の歯冠を含む形で形成される嚢胞で、歯のみが抜歯されてのちに嚢胞が残留したもので、歯槽部から骨体にかけての部位に存在する。下顎では智歯部、小臼歯部に好発する。臨床症状としては、顎骨の無痛性膨隆、増大し骨皮質の吸収により羊皮様感、波動。内容は漿液性〜粘稠で透明感のある黄色調の液体。当該歯の萌出欠如、歯の傾斜、捻転、歯列不正など。X線では歯冠を含む類円形の透過像が見られる。
治療は、一般には嚢胞の全摘術が行われているが、症例によっては嚢胞開放術が適応されている。また上顎洞内に広がっている大きな嚢胞に対しては、慢性上顎洞炎の手術に準じたものが適応される。開窓術(嚢胞開放術の1つ)による減圧で嚢胞は縮小するので、開窓術→嚢胞の摘出が行われることが多い。
B 歯根嚢胞
顎骨に生じる嚢胞の中でもっとも頻度が高い。慢性根尖性歯周炎の際に生じる根尖部の歯根肉芽腫のなかに、歯根膜の中に存在したMalassezの遺残上皮やHertwig上皮鞘の名残の上皮が入り込んで上皮歯根肉芽腫が形成され、これから歯根肉芽腫が生じるとされる。多くは根尖部の根尖嚢胞で、時に根管側枝からの根側性歯根嚢胞のこともある。
臨床症状としては、原因歯の歯髄死。根尖部の圧迫による不快感、圧痛や瘻孔の存在。骨の膨隆(Gerber隆起)、増大して骨の吸収により羊皮紙様感の出現。X線では、根尖付近の歯根膜腔に移行する類円形の透過像が見られる。

治療法には嚢胞開窓切除術(PartschT法)、嚢胞摘出閉鎖術(PartschU法)、嚢胞摘出閉鎖術+海綿骨移植術がある。嚢胞摘出閉鎖術+海綿骨移植術は、大きい嚢胞で摘出後に骨に出来た空洞を、海綿骨を移植することにより骨に置換できる。

他に、単純性顎嚢胞、静止性顎嚢胞、脈瘤性顎嚢胞などを説明してもいいと思います。
歯医者は聞きなれない言葉が多くて覚えにくいと思いますが、がんばって覚えて下さい。
あと、平成12年概説では、口腔領域に発生する悪性腫瘍の特徴と治療法、顎骨骨折(下顎骨折に限らず)の治療法について出ていました。一応参考までに…

解説
顎骨に発生する嚢胞及び類似疾患には以下のものがある。(治療法も…)
1. 歯原性嚢胞:歯に由来
原始性嚢胞
含歯性嚢胞
歯根嚢胞
2.非歯原性嚢胞:歯に由来しない
術後性上顎嚢胞…上顎洞炎(慢性副鼻腔炎)の根治術の後の上顎洞の瘢痕組織の中に生じる嚢胞で、術後十数年して症状があらわれることが多い。 
        治療法:嚢胞摘出と下鼻道への対孔形成 
鼻歯槽嚢胞…側切歯、犬歯付近の歯肉唇移行部と鼻翼の間の軟組織内に形成される嚢胞。胎生期の鼻涙管の遺残上皮、または鼻涙管の前下端の上皮から生じると考えられている。(鼻涙管と歯槽の間)
      治療法:摘出
鼻口蓋管嚢胞…胎生期の上顎の形成される時に存在する鼻口蓋管のなごりの上皮から生じる。
       治療法:摘出
3.嚢胞類似疾患:X線上では嚢胞状に見える
単純性顎嚢胞…下顎骨骨体に生じる嚢胞で、嚢胞壁は薄い結合組織のみでなり、上皮の被覆がない。打撲などの外傷性機転により骨髄腔内に血腫、出血巣ができ、その吸収によって嚢胞を生じるとされるが、成因は明らかでない。
       治療法:嚢胞腔を開放し、血餅によって充満させ器質化を図る。
脈瘤性顎嚢胞…血液を充満し多胞性の上皮の被覆のない腔によって作られる病巣を特徴とし、穿刺により鮮紅色の血液が多量に吸引されるが、腔の内壁に組織学的には血管壁の構造は見られない。病変内にはそのほか幼弱な骨組織を含んだ結合組織がみられる。(動脈瘤による)
       治療法:出血に注意して、摘出。時に顎骨切除。
静止性顎嚢胞(Stafne)…下顎骨の舌側皮質骨の欠損で顎角部の下顎骨より下方に、嚢胞に似た類円形の境界明瞭なX線透亮像として表れることが多い。X線像は嚢胞に類似するが嚢胞腔は存在せず、骨欠損部は唾液腺あるいは脂肪組織などによって占められている。
           治療法:診断が確定すれば、不要。
以上のうち上顎骨に発生するのは…鼻歯槽嚢胞、鼻口蓋管嚢胞、術後性上顎嚢胞、歯根嚢胞、含歯性嚢胞、原始性嚢胞など
     下顎骨に発生するのは…原始性嚢胞、含歯性嚢胞、歯根嚢胞、単純性顎嚢胞、脈瘤性顎嚢胞、静止性顎嚢胞

毎年、嚢胞の問題が出ていますが、悪性腫瘍の問題も出たことがあるので、そちらもチ
ェックしたらいいと思います。
(参考)ハンディ口腔外科学  学建書院
   最新口腔外科学第4版

C.次の症例の治療について手短に考察せよ。
1.8才男児の下顎骨体部の単純骨折。
2.20才男性で、智歯が埋伏した下顎角部骨折。
3.上下顎総義歯の60才女性の左側顎間節突起部の脱臼・転位骨折。

解答
授業を聞いた限りで、分かることを…
難しいので、自分でプリントを見て考えてみてください。
1.
8才なのでまだ成長期です。歯も乳歯か、永久歯との混合歯列の可能性があり、顎骨もこれから成長する可能性があります。よって発育を考慮しなければいけません。
解答
下顎骨体部に単純骨折が見られる。治療としては手術が行われる。上下の歯列に副木をつけ、歯列間にギャップがあれば、整復しながら、上下顎間を牽引・整復する。その後、咬合が定まると、保存的治療として顎間固定を行う。下顎骨体部の顎間固定は4週間が基本だが、小児の場合は成長期ということを考慮して、短めにする。
2.
授業を聞いたのですが、埋伏した歯をどうするのかよく分かりません。分かったら教えてください。智歯とは親知らずのことなので、抜いてしまうのかもしれません。
解答
下顎骨角部の骨折である。20才なので、成長は終了し、歯も全て永久歯であると思われる。
この症例も1と同じく、術前処置を行った上で、埋没した智歯を抜歯し、整復と骨固定、顎間固定を行う。成長終了後なので、顎間固定は4週から6週間である。
3.
総義歯の老人の骨折です。歯がないので、顎間固定は長めに行えます。
関節突起の骨折では外側翼突筋による骨片の偏位が起こる。このため、骨折側の、下顎の高さが少し上にあがる。このことにより、物を噛む時に、骨折している側が先に当たるようになり、健常な側は噛みにくくなる。
解答
関節突起の骨折は基本的に外科的整復・固定を考えなくてよい。咬合が安定できない、後遺症の恐れがある、顎強直症がある、などで保存的治療ではうまくいきそうにない時、またできるだけ顎間固定の期間を短くしたい時は、外科的治療を行う。後者の場合は、骨面を露出させるrigid fixationを行い、手術後すぐに噛めるようする。この症例では、歯がないので、長期の保存的な顎間固定が適していると思われる。


D.歯周炎ではプラ−ク中の細菌によって最終的には歯周組織の破壊がもたらされる。
 その間に何が起こっているかについて文章で述べよ(図は不可)

略(平成14年概説参照)

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