感染症・中毒 平成15年度概説試験

◎永淵正法:一内科、保健学科
1.以下の設問につき正否(○×)で答えよ。(10点)
@ ウイルス抗体測定で、IgM、IgGのクラスが判定できるのはNTである。
A HI抗体の測定は、既感染のスクリーニング検査として有用である。
B サイトメガロウイルスは骨髄移植時の間質性肺炎、網膜炎、肝炎などと関連がある。
C ツツガムシ病にセフェム系抗生物質が有効である。
D C型肝炎にインターフェロンが有用である。
E 伝染性単核症では、EBウイルスの感染によりトランスフォームした末梢血Bリンパ球を攻撃するCD8陽性T細胞が著明に増加している。
F 単純ヘルペス性口内炎症では、アシクロビルが著効する。
G 伝染性単核症患者に細菌感染症の合併予防目的でアンピシリンの投与が推奨されている。
H ヒトヘルペスウイルス8は突発性発疹の病原体である。
I コクサッキーA群ウイルスは無菌性髄膜炎と関連がある。
(解答)4/27プリントなど
@ NTで上昇するのはNT抗体価なのでクラスは判定できないはず⇒×
☆ NT(中和試験):患者血清と被検ウイルスその他の微生物の混合液を感受性動物に接種して,その血清の抗微生物活性を測定する試験。初感染でNT抗体価の有意の上昇を認めた時は診断価値が大きい。 また型特異性が高いので、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルスの型特異抗体の証明はこのNTで行われている。
A HI抗体価は長く持続する(たとえば風疹で生涯免疫がある場合は8倍以上の価の持続)ので既感染も調べられます⇒○
B ○ 免疫抑制状態にある患者で起こります。他にHIV患者の日和見感染など。
C × ツツガムシ病にはテトラサイクリン系を用います
D ○
E ○ 伝染性単核症では異型リンパ球(CD8+T細胞)の出現が特徴的です。
F ○ 性器ヘルペスにも有効。
G × 禁忌。紅斑性丘疹の頻度が上昇。
H × 本疾患の原因ウイルスは、HHV‐6あるいはHHV‐7が多いです。
I ○ 原因となるウイルスはエコーウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、ムンプスウイルスの順。


◎プリオン病 担当:岩城 徹
1.核内封入体が見られないものはどれか。
a) HIV脳症
b) インフルエンザ脳症
c) 単純ヘルペス脳炎
d) サイトメガロウイルス感染症
e) 亜急性硬化性全脳炎
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e) 
答え(1) CMVの封入体は有名ですね。

2. 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病について正しいものはどれか。
a) 高齢者に好発する
b) ミオクローヌスや舞踏運動などの不随意運動で発症する
c) 脳波で周期性同期性放電がみられる
d) MRI(拡散強調画像)で両側の視床に高信号領域をみとめる
e) 虫垂や扁桃などの末梢リンパ組織に異常プリオン蛋白が蓄積する
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e) 
答え(5)
a)×:平均29歳
b)×:精神症状、感覚障害で発症
c)×みられない
d)○
e)○末梢組織であるリンパ節、虫垂、扁桃にも異常プリオン蛋白が蓄積。

3. プリオン(伝達性海綿状脳症の感染因子)として正しいものはどれか。
a) ホルマリン液で失活する
b) 潜伏期間は感染力価の影響を受けない
c) ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)による煮沸が不活性化に有効である
d) 通常のオートクレーブでは失活しない
e) 紫外線照射で失活する
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e)
答え(3)
(a) ×:ホルマリン・UV・ガス滅菌は無効。
(b) ○
(c) ○
(d) ×132℃、一時間やればOK.
(e) ×

4. 孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病について正しいものはどれか。
 1有病率が牛海綿状脳症の多発地帯で高い
 2平均発症年齢は約20歳である
 3脳に老人斑が多数みられる
 4マウスに接種することにより病気を伝達させることが可能である
 5海馬の萎縮が高度である
答え(4)
1.×これは変異型の記述
2.×62.5±10.8歳
3.×老人斑はアルツハイマー。
4.○
5.×

5. ヒトの感染性プリオン病の原因となったものはどれか。
a) スクレイピーに罹患した羊の肉
b) 角膜移植
c) 脳外科手術における乾燥硬膜の移植
d) 組換え遺伝子技術により作製された成長ホルモン
e) 腎臓移植
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e)
答え(3)
(a) ×ヒツジからウシには感染していますが直接ヒトには感染していないはず。
(b) ○
(c) ○
(d) ×死体からとられたものは原因となることがある。
(e) ×血液を介した感染の危険性はあるが??

6. 病名とその主な病変部位の組み合わせとして正しいものはどれか。
a) 単純ヘルペス脳炎 - 小脳
b) ポリオ - 脊髄前角
c) 牛海綿状脳症 - 延髄
d) HlV脳症 - 大脳皮質
e) 脊髄癆 - 脊髄前根
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e) 答え(3 )
岩城先生のプリントなど
(a) ×:側頭葉と前頭葉底面の壊死、CowdryA封入体。
(b) ○:脊髄前角細胞や脳幹の運動神経ニューロンに感染し、これらを破壊します。
(c) ○:BSE罹患牛の延髄では、神経細胞及び周囲の神経網に空胞が見られる。
(d) 「HIV脳症」とは複数の疾患の総称です。そのうち、HIV脳炎は白質だが、Diffuse poliodystrphyでは皮質も侵される。が、選択肢的に×かと。
(e) ×後根神経節。

7. 正しいものはどれか。
a) Kuruは食人の儀式によって広がったプリオン病である
b) 牛海綿状脳症は日本に発生したことがない
c) 羊のスクレイピーは日本に発生したことがない
d) 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のアミロイド斑はべータ蛋白質からなる
e) プリオン蛋白は正常脳に存在する
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e)
答え(2)
(a) ○
(b) ×:日本でも平成13年9月に最初のBSE感染牛が確認されています。
(c) ×:オーストラリアとニュージーランド以外の、めん羊を飼っている多くの国で発生があります。日本では昭和59年に北海道で初めて発生しましたが、その後、年間数頭以下の散発的な発生に留まっています。
(d) :×
(e) ○

8. 正しいものはどれか。
a) クリプトコッカス症は肺についで中枢神経系に多い
b) ムコール症は糖尿病性ケトアシドーシス患者に生じやすい
c) ヒト免疫不全ウイルスは脳に侵入しない
d) 進行性多巣性白質脳症は麻疹ウイルスによる
e) 成人T細胞性自血病ウイルスによるミエロパチーではウイルス抗体価は低い
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e)
答え(1)
(a) ○クリプトコッカス性髄膜炎を引き起こします。
(b) ○典型的な日和見感染症なので免疫低下状態にある本患者には生じやすいはず。
(c) ×HIV脳症があるでしょうが。。。
(d) ×JCウイルスです
(e) ×患者脳脊髄液および血清中からしばしば高値のHTLV-1抗体が検出される。

9. 正しいものはどれか。
a) 結核菌は乾燥に弱い
b) 結核菌は薬剤耐性が生じにくい
c) 結核性髄膜炎は後遺症が少ない
d) 結核菌はZiel-Neelsen法にて赤く染色される
e) 結核性髄膜炎は脳幹周囲などの脳底部に強い炎症を生じる
1(a)(b)、2(a)(e)、3(b)(c)、4(c)(d)、5(d)(e)
答え(5 )
(a) ×逆。乾燥には非常に強い菌です。
(b) ×たくさん生じているから問題なんですね。
(c) ×知能低下などの後遺症がのこりやすいとされています。
(d) ○
(e) ○

10. 梅毒が原因でないものはどれか。
 1脳ゴム腫
 2進行麻痺
 3ギラン・バレー症候群
 4 Argyll Robertson徴候
 5脊髄ろう
解答:3

◎中毒 担当:金井英俊
1. 経口摂取による中毒の処置として、催吐が禁忌なものはどれか。
1) ガソリン2)タバコ3)パラコート4)漂白剤5)マニキュア除光液
答え(E)
解答群A)1,2,3 B)2,3,4 C)3,4,5 D)1,2,5 E)1,4,5
☆基本的に強アルカリ/強酸、石油類ははかせてはいけません。(石油製品は、気管へ吸いこみ重い肺炎を起こすので)。マニキュア除光液の主成分はアセトンで、小児の誤飲事故が多く問題になっています。ちなみに子供用の玩具マニキュアも溶剤のエタノールでエタノール中毒を起こすので注意が必要だとか。
2. 以下の説明文に該当する中毒物質名を解答群より選びなさい。
1) 乳幼児の中毒原因として最も頻度が高く、特に抽出液は危険である。答え(A)
2) コリンエステラーゼ活性阻害により縮瞳・流涙などの副交感神経刺激症候を呈し、アトロピンやPAMが治療薬である。答え( E )
3) 極めて少量(10-15ml)の服用で致死的となる農薬で、数日で急性腎不全を3-10日で肺線維症をきたすが、有効な治療法はない。答え( C )
4) 地下鉱床からの土壌や井戸水汚染による慢性中毒の集団発生が報告され、早期の嘔吐・下痢と1-2週間後に末梢神経障害をきたし、BALが治療薬である。答え( D )
5) 食物連鎖により蓄積した自然毒で、全身の骨格筋麻痺をきたすが後遺症は少ない。答え( B )
解答群 A)タバコ B)テトロドトキシン C)パラコート D)ヒ素 E)有機リン

◎ 社会的事象としての中毒 担当:槙田 裕之 
1. 次の語句と関係の深い語句を、解答群より選びなさい。
1. PAM
2. サリン
3. 流涙
4. ボーエン病
5. アトロピン
6. 水俣病
7. イペリット(マスタードガス)
8. 筋線維性攣縮
9. イタイイタイ病
10. 有機リン系農薬
解答群
ア)ニコチン様作用  イ)神岡鉱山  ウ)ハンターラッセル症候群  エ)アセチルコリンエステラーゼの再生
オ)ダイアジノン  カ)VX  キ)ムスカリン様作用  ク)びらん剤  ケ)アセチルコリン拮抗作用   コ)ヒ素中毒
一つの薬物がいくつかの重複した作用を示すので選択肢が選びづらいですね。
PAM(プラリドキシム):PAMはコリンエステラ−ゼと結合している有機リンを引き離し、PAM−有機リン結合することにより、有機リンによるコリン様作用に拮抗します。
ダイアジノン:有機リン系の殺虫剤で、ペット用の首輪、あるいはマイクロカプセル化したゴキブリ用残留散布剤として使用されています。
サリン:1)ムスカリン様作用(副交感神経末梢刺激症状)、2)ニコチン様症状がでる。
神経ガス(VXなど):筋線維束痙縮及び痙縮に加え、鼻、目、口、肺、及び腸からの大量の分泌を引き起こします。
1:エ  2:キ  3:カ  4:コ  5:ケ  6:ウ  7:ク  8:ア  9:イ  10:オ

◎ 呼吸器感染症 担当:鍋島 茂樹
1. 関係が深いと思われるものを線で結べ。
           浸潤影・    ・中葉
           間質影・    ・結節影
           肺癌 ・    ・肺尖
 シルエットサイン陽性・    ・びまん性小粒状影
       成人型肺結核症・    ・気管支肺炎
解答:浸潤影−気管支肺炎/間質影−びまん性小粒状影/肺癌−結節影/
シルエットサイン陽性−中葉/成人型肺結核症−肺尖)
※2002年度概説に同様の問題があるのでそちらも見てください。

2.( )内より適切な語句を選び○でかこめ。
代表的な市中肺炎の原因菌として(肺炎球菌・溶連菌・緑膿菌⇒肺炎球菌)があげられる。また、最近は(肺炎クラミジア・嫌気性菌・結核菌⇒結核菌)などによる非定型肺炎が増加しており注意が必要である。肺炎の抗生剤治療を開始するにあたり最も重要なことは(喀疫グラム染色・末梢血白血球数・CRP⇒CRP?)である。院内肺炎は何らかの基礎疾患をもった入院患者が罹患する肺炎であり、原因菌として(グラム陰性桿菌・グラム陽性桿菌⇒グラム陰性桿菌)が多く(抗菌薬耐性・消毒剤耐性⇒抗菌薬耐性)を認めることが多い。

3.53歳の男性。基礎疾患は高血圧症。5日前より咳嗽・喀疲(膿性)があり、2日前より38℃以上の熱がある。来院時体温38.8℃、呼吸数20回/分、脈拍90/分、胸部レントゲンで中葉全体に浸潤影があり、脱水所見は認めない。次の問に答えよ
・重症度分類(呼吸器病学会ガイドライン)で当てはまるものを○でかこめ。
 軽症、中等症、重症⇒軽症
☆下図のガイドラインを参考に。脈拍100以下、脱水なし、陰影の広がりは中葉のみ、のため。
☆ ガイドラインについて:ガイドラインでは肺炎を身体所見,胸部レントゲン所見,検査成績により1)軽症〜中等症,2)重症,および3)特殊病態下に分ける.重症度分類は1)胸部X線写真陰影の拡がり,2)体温,3)脈拍,4)呼吸数,5)脱水の有無を基に5項目中何項目満たすかで分類し,さらに緊急検査で6)白血球数,7)CRP,8)PaO2の3項目の分類を参考にする.
■肺炎の重症度分類
1.胸部X線及び身体所見による判定

判定項目 軽 症 重 症
5項目中3項目以上に該当 5項目中3項目以上に該当
胸部X線像の陰影の広がり 1側肺の1/3まで 1側肺の2/3まで
体温 <37.5℃ ≧38.6℃
脈拍 <100/分 ≧130/分
呼吸数 <20/分 ≧30/分
脱水 (−) (+)

注1)チアノーゼ、意識レベルの低下、ショック状態の症例は上記とは関係なく重症とする。
注2)軽症と重症のいずれにも該当しないものを中等症とする。
(日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」2000より一部改変)

・喀疲グラム染色で肺炎球菌が考えられた。初期治療として適当なものの番号を○でかこめ。
1. 入院してもらいカルバペネム系抗生剤を投与する。
2. 外来で3日間毎日第3世代セフェムを点滴静注する。
3. 外来で去痰剤を投与し、改善がなかったら来院してもらう。
4. 外来でマクロライド系抗生剤を投与し3日後に来院してもらう。
解答4?
☆6/4の講義でもありましたが、治療に際して、肺炎を起こした病原菌にあった抗菌薬による治療が重要ですが、その特定には時間がかかるため、まず始めは推定病原菌に対しての治療(エンピリック治療:empiric therapy)を行うことになります。その後、病原菌が特定されたら、その菌の感受性によって治療薬の変更を検討することになります。また、化学療法の効果判定は治療開始3日後に行うのが原則で、軽症〜中等症の細菌性肺炎では抗菌薬の投与は3〜7日間で十分です。選択されるのはグラム陽性菌に対して広域ペニシリン、マクロライド、陰性菌に対してセフェム系などです。
☆軽症肺炎あるいは中等症肺炎で脱水を伴わないものには外来治療を,重症肺炎あるいは中等症肺炎で脱水を伴うものには入院治療を,重症肺炎のうちショック状態または生命危機にあってはICU管理とする.細菌性肺炎群ではペニシリン系を,非定型肺炎群ではマクロライドまたはテトラサイクリン系薬をおよそ3日間投与し有効性の判定を行い,抗菌薬の続行や変更を判断する.

◎ 消化器感染症 担当:古庄 憲浩 (平成16年度は消化器感染症の講義はなし)
1. 食中毒の3大原因菌は何か書きなさい。
 答え(       サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター       )



2. 29才男性。激しい下痢を主訴に来院した。治療としてニューキノロン系抗生物質の投与が適当でない腸管感染症の原因はどれか。2つ選びなさい。
1) コレラ  2)細菌性赤痢  3)カンピロバクター腸炎  4)腸チフス  5)腸管病原性大腸菌腸炎  6)偽膜性大腸炎
答え(  カンピロバクター腸炎 ・偽膜性大腸炎       )
STEP感染症などから
☆カンピロバクター腸炎:マクロライドがよい。
☆偽膜性大腸炎:本症を起こしやすい3大抗生物質はクリンダマイシン・アンピシリン・セフェム系の3つだが、抗生物質の投与はいずれにせよ控えるべき。

3. 36才男性。1年前の会社の検診ではHBs抗原陰性、HCV抗体陰牲であった。1週間前から感冒様症状と38.8℃台の発熱、徐々に全身懲怠感が増強し、食欲も低下した。3日前に色尿に気付いたが、本日、家人に眼球の黄染を指摘され来院した。
 現症:体温37.2℃、リンパ節触知せず、黄疸あり、肝腫大あり、脾腫なし
 検査:WBC2800/ml、Hb12.5g/dl、Tbil 8.6mg/dl、LDH 1860 IU/l、AST 1860 IU/l、ALT 2160IU/l、ALP 180IU/l、gGTP 64IU/l、CRP0.2mg/dl

本症例について正しいものはどれか。
1) IgG-HA抗体が陽性ならぱA型急性肝炎と診断できる。
2) IgM-HBc抗体が陽性ならばB型急性肝炎と診断できる。
3) HCV抗体が陰性ならばC型急性肝炎は否定できる。
4) 病歴でインド渡航歴があり、E型急性肝炎が疑われる。
5) HCV RNAが陽性であったら、慢性化することは少ない。 答え( 2  )
戸田新p850より

4.B型肝炎について正しいものはどれか、3つ選びなさい。
   1)ワクチン接種により感染予防が可能である
   2)本邦のB型慢性肝炎患者の多くが母子感染により感染したと考えられる。
   3)B型慢性肝炎が劇症化することはない。
   4)B型慢性肝炎患者ではHBe抗原のセロコンパージョンにより血中B型肝炎ウイルス量が増加する。
   5)B型慢性肝炎ではASTやALTが正常化することはない。
   6)B型急性肝炎は性感染症として重要である。     答え(    1、2、6    )

5.腸管出血性大腸菌について過っているものを1つ選びなさい。
 1)腸管出血性大腸菌感染症は、Vero細胞に致死的に働くVero毒素を産出する。
 2)腸管出血性大腸菌感染症の主症状は、血便と激しい腹痛である。
 3)血便を訴えて数日後に溶血性尿毒症症候群や脳症を続発することがある。
 4)感染初期は補液のみの対症療法に徹し、決して抗生物質の投与は行わない。答え(4)
☆1)は最初ひっかけかとおもったら本当でした。Vero細胞といえばもっぱらウイルスのtransfectionを想像してしまいますが・・・ヒトを発症させる菌数はわずか50個程度と考えられており、二次感染が起きやすいのも少数の菌で感染が成立するためだとか。また、この菌は強い酸抵抗性を示し、胃酸の中でも生残します。3) HUS を発症した患者の致死率は1 〜5% だそうです。4) 厚生労働省作成の「一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)」(http://www1.mhlw.go.jp/o-157/manual.html)によると「抗菌剤の使用については(中略)実際の臨床現場の状況を踏まえながら主治医が判断して対応すればよい。」と、なんだかあいまいな記述があるのですが、「決して行わない」とは書いていません。他の選択肢が正しいことも考えて答えはこれにしました。

◎ウイルス感染症総論、輸入感染症担当:林 純
以下の設問について、回答群より選びなさい。
回答群
 a(ア)のみ正しい  b(エ)のみ正しい  c(ア)(エ)が正しい  d(イ)(ウ)が正しい
 e(ア)(イ)(ウ)が正しい  f(イ)(ウ)(エ)が正しい  g全て正しい  h全て誤っている。

1. コレラについて、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答e
(ア) CT産生株によって起こる急性胃腸炎である。⇒○
(イ) 潜伏期は2-3日。⇒○
(ウ) 米のとぎ汁様便。⇒○
(エ) 腹痛が著明である。  ⇒腹痛・発熱なし。×

2.ペストについて、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答h
(ア) ダニによって媒介される。⇒ねずみの血液を吸った蚤によって媒介。×
(イ) 潜伏期は14日。⇒腺ペストで3-7日、敗血症型ペストは局所症状のないまま2,3日で死亡、肺ペストは通例2〜3日であるが、最短12〜15時間という報告例もある。×
(ウ) ペストでは、ヒトからヒトヘの感染はない。⇒×ある。
(エ) ペスト菌は、グラム陽性菌である。   ⇒×陰性桿菌。 

3.マラリアについて、正しい記述の組合せを選びなさい。 STEP感染症p156ほか  解答?
(ア) 熱帯熱マラリアの赤血球感染率は2%以下である。⇒高いので悪性。他の原虫は1-2%。×
(イ) 熱帯熱マラリアでは、赤血球の変形能が亢進、粘着性の低下がみられ毛細血管の栓塞が起こる。⇒×変形能が低下、粘着性は亢進。脳マラリアなど起こす。
(ウ) 四日熱マラリアは数年間感染していることがある。⇒平均数ヶ月だが一年以上経過することもまれではない。○
(エ) オスのハマダラカの媒介により感染する。 :×メス。

4.ヒストプラズマについて、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答c
(ア) 免疫が低下している場合、播種性真菌症となる⇒○
(イ) コウモリの尿で感染する。⇒×選択肢より。糞では感染するが尿ではしない、ということでしょうか。
(ウ) アジアに多い。⇒米など×
(エ) 肺気腫の患者ではヒストプラズマに感染すると慢性感染症となる。⇒○

5.クリミア・コンゴ出血熱について、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答a
(ア) マダニにより媒介される。⇒○
(イ) 致命率は90%以上である。⇒×10-50%。浸淫地域では不顕性感染や出血熱に至らない軽症例も多い。
(ウ) ヒトからヒトヘの感染はない。⇒×
(エ) 病原菌はアレナウイルスである。⇒×ブニヤウイルス科。

6.デング出血熱について、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答g
(ア) フラビウイルスによる感染症である。⇒○
(イ) 人獣感染症の1つである。⇒○ ヒト、サル
(ウ) 粘膜出血がみられる。⇒○
(エ) ヘマトクリット値の上昇がみられる。⇒○ 血漿漏出が進むとヘマトクリットは上昇する。

7.輸入感染症について、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答b
(ア) 熱帯熱マラリアは隔日で発熱する。⇒ ×幅が36-48時間と不規則
(イ) エボラ出血熱の致命率は低い。⇒×80%にものぼる。
(ウ) ペストでは色素変化を起こすため、黒死病とよばれる。⇒×出血性壊死病変のため
(エ) ラッサ熱は草原の地域に多くみられる⇒○? 媒介者はノネズミです。

8.輸入感染症について、正しい記述の組合せを選びなさい  解答b
(ア) ペストの治療には、ステロイド剤が有効である。⇒×ストレプトマイシンが有効。
(イ) ヒストプラズマの治療にはペニシリンが有効である⇒×イミダゾール系の抗真菌剤(ケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール等)、およびアムフォテリシンBが治療薬。
(ウ) マラリアにはクロロキンが第一選択薬である。⇒×? 選択肢より。キニーネでは?
(エ) コレラの治療には輸液が重要である。⇒○ 脱水が激しいですから。

9.輸入感染症について、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答g
(ア) 脳性マラリアとなるのは熱帯熱マラリアである。⇒○
(イ) 酩酊様顔貌は、ペスト感染による意識障害時の特徴である⇒○
(ウ) デング熱は、ヒトからヒトヘの感染はない。⇒○
(エ) コクシジオイデスは雑草を噛んで口腔粘膜に感染することもある。⇒強い感染性を持つので○とおもわれます。

10.持続感染症について、正しい記述の組合せを選びなさい。  解答f
(ア) HIV,HTLV-1,EBVはCD4陽性T細胞にのみ感染する。⇒×EBVはBリンパ細胞に感染。
(イ) 肝細胞癌の大部分はHBV及びHCVの持続感染者から発生する。⇒○
(ウ) ヘリコバクタ・ピロリ感染症は胃・十二指腸潰瘍の原因である。⇒○
(エ) Burkitt腫、上咽頭癌はEBVと関連ある。⇒○

◎細菌・真菌感染症  担当:下野 信行

1)感染症の診断、起炎菌の推定において、重要な点について以下に記せ(8)
a. 症状、鑑別について

b. 基礎疾患に関して
例)○尿路感染症において、VURや水腎症を基礎疾患に持っていることが多い。
○MRSAや多剤耐性緑膿菌感染者は免疫低下状態に置かれている。
○日和見感染症(CMVによる網膜炎)⇒HIV

c. 発症形式に関して
発熱・下痢・悪寒・嘔吐・ショック。
発熱を初症状とする疾患は多い。また腸内細菌やロタウイルスなどの食中毒関連の細菌やウイルスでは下痢で発症することもあるので注意する。菌の種類によってはエンドトキシンショック(グラム陰性菌)などのショック症状をきたすものもあるので。

d. 検査について
○ 検体の取り扱いについて
常在菌は混入させない(尿は冷蔵庫で保存する)病原体を壊さない。(常温で保存すること。) 血液検査の際は医療者の感染事故に注意。また化学療法を行う場合には血液培養検査は化学療法以前に行うこと。
○ 抗体試験
NT/HI/CF/PA/ELISA:各検査法の概要については戸田新細菌学/STEP感染症p21〜

2) 弱毒菌にはどのようなものがあるか例を挙げながら、特徴を述べよ。(4)
○緑膿菌:土壌、水、下水、汚水などの湿潤環境下、あるいはヒトの皮膚や動物の消化管内の常在菌叢に存在。健常時には特に症状を起こさないが、病院内に存在する多剤耐性緑膿菌が手術後、抗癌剤治療中、自己免疫疾患などの免疫低下状態の患者に感染すると致死的な呼吸器症状などを呈することがある。
○大腸菌:ヒトの腸の常在菌。便の常在菌の0.1%を占め、ビタミン類を宿主に提供している。通常の大腸菌は深刻な疾患を起こすことはないが、なんらかの原因で病原性を獲得したもの(病原性大腸菌)では毒素を放出し出血性の下痢症をおこし致死的になるので注意が必要である。
○カンジタ:ヒトの口腔・膣内に常在している真菌。Candida albicansがもっとも多い。Candida albicansは、性交感染、自己感染、産道感染および病院内・家族間水平感染の4つの感染様式で感染する。カンジダは、膣・外陰の常在菌であり、尿路系や直腸内などの下部消化管からも検出されることもある。これらが感染源となるのが自己感染である。また性行為のパートナーが感染源になることもあり、この場合には性感染症として理解される。妊婦が膣・外陰カンジダ症であると児へ産道感染を起こすこともある。鵞口瘡と呼ばれる新生児の口腔粘膜(特に頬粘膜)の感染や、極小未熟児などの場合には先天性皮膚カンジダ症や全身性カンジダ症を発症することもある。鵞口瘡は正常な乳児では1〜2ヶ月以内に無治療でも消失する。 
←胞子の特徴もついでに載せておきます。

3)以下の文章で正しいものには○、誤りには×をつけよ(4)
(×)黄色ブドウ球菌感染症では、抗生物質に耐性であるMRSAが問題であり、保菌者であればすぐに治療を行うべきである。
(×)髄膜炎菌による髄膜炎を疑う場合には採取した髄液は冷蔵して検査室に提出しなければならない。⇒細菌感染を疑うときは菌の死滅を避けるために室温で保存し、ウイルス感染を疑ったのであれば雑菌の繁殖をさけるために冷蔵庫で保存する。
(×)炭疽菌による感染症の約半数が肺炭疽であり、ヒト−ヒト感染に注意しなければならない。
(×)腸管出血性大腸菌は旅行者下痢症の原因菌として知られ、赤痢様の症状を呈する。
⇒旅行者下痢症の原因菌は毒素原性大腸菌です。
(○)腸チフスの症状として悪寒、発熱、比較的徐脈などがあるが、好酸球が消失するのも特徴である。
⇒白血球全体も減少。5/17プリント
(○)レジオネラ菌はクーリングタワーの水の中で増殖し、主として水を介して経口感染する。
⇒24時間風呂で集団感染が起きたのは記憶に新しいですね。ちなみにセラチア菌も院内感染の原因菌として注目されています。
(×)カンジダは呼吸器感染を起こしやすく、肺に空洞を形成しやすいのが治療上問題である。
⇒区域性の気管支肺炎ないしはびまん性の気管支肺炎。
(×)真菌症は抗真菌薬の開発によって、治療も容易となり、患者数も減少してきている。
⇒治療はしやすくなっていますが、患者数はそんなに減っていないとおもいます。「塩酸ブテナロック」とか水虫関連のCMは多いですね。

4)次の言葉に最も関連するものを下記のA-Kから2つずつ選べ。(4)(重複不可)
抗生物質関連性腸炎原因菌 ( B )、( G )
カテーテル関連感染症   ( E )、( F )
食中毒原因菌       ( C )、( H )
呼吸器感染症(易感染宿主)  ( I )、( K )

A.Streptococcus pyogenes  B. Baccillus anthracis  C.サルモネラ菌  D.Clostridium difficile  E. Candida
F.コアグラーゼ陰性ブドウ球菌  G.MRSA  H.カンピロバクター  I.アスペルギルス  K.緑膿菌
☆ Baccillus anthracis:いわゆる炭疽の原因菌。
 Clostridium difficile:偽膜性大腸炎の原因菌。
あとはおなじみの菌ですね。

◎小児科
注:病原体名、病名は、日本語、英語どちらでも可。ただし略号は不可。

問1.本邦において下記の年齢群で細菌性髄膜炎の起炎菌としての頻度が2位以内の菌をそれぞれ列挙せよ。
新生児
(     大腸菌     )(      溶連菌       )
3か月以上の乳幼児
(     インフルエンザ桿菌     )(       肺炎球菌     )
学童
(    肺炎球菌      )(      髄膜炎菌      )

問2.単純ヘルペス脳炎の確定診断を得るために本邦で通常用いられている方法を2つ挙げよ。
○頭部CT所見 (特に側頭葉や大脳辺縁系に浮腫による低吸収域が見られることが多く、本症での特異性が高い。
○脳波測定における周期性一側性てんかん発作波 periodic lateralized epileptiform discharge, PLEDs
などが特徴的ですが・・。作成時点でまだ講義がないので、もし他にあったときには訂正します。
ちなみにH15卒試からの説明を借用すると・・・(中略)、「本症に特徴的な片側の側頭葉病変、けいれん、片側性スパイク(PLEDS)。髄膜刺激症状などの髄膜炎の症状(発熱、意識レベルの低下、項部硬直)も認められる。CRP(正常<0.6)は炎症を示す。髄液の細胞数増加(正常<5)、単核球優位という所見から多核球優位の細菌性髄膜炎は除外される。蛋白増加(正常15-45)。糖所見はない(正常:血糖×2/3、ウィルス性髄膜炎では不変)。治療にはアシクロビルが有効。」

問3次の( )に入る適切な語句を右頁の解答欄に記入せよ。同じ番号が複数ある場合があるので注意すること。
a)(1.  髄液所見 )は、細菌性髄膜炎の治療に用いる抗生物質を選択する際に考慮すべき重要なポイントである。(2.  cefotaxime (CTX)  )などの第三世代セフェムやクロラムフェニコールが最も良好であり、ABPCなどのペニシリン系がこれに次ぐ。(2.  cefotaxime (CTX)  )とABPCは、起炎菌判明までの初期治療薬として併用されることが多い。

b)母子感染は感染時期により大きく(3. 胎内  )感染、(4. 産道  )感染、(5. 出生後 )感染の3つに分けられる。(6. CMV  )の母子感染は、どの時期にもおこるが、臨床的に問題となるのは、ほぼ(3. 胎内  )感染に限られる。(7. 脳  )の石灰化は、(6. CMV  )の(3.胎内   )感染でみられる特徴的な所見である。(8.  クラミジア・トラコマティス  )の(4. 産道  )感染は、生後3週-12週頃にみられる無熱性肺炎の原因となる。(5. 出生後  )感染の多くは、(9.  母乳 )を介した感染であり、(6. CMV  )や成人T細胞白血病ウイルスの他(10. HIV  )がこの経路で感染することが知られている。

c)(11. 先天梅毒 )の患児では、骨病変による痛みのために患肢を動かさず麻痺しているように見えることがあり、これを(12. Parrotの仮性麻痺 )という。

d)急性発疹症のうち、細菌の外毒素でおこる代表的な疾患は(13.  TSS(toxic shock syndrome)  )と(14.  NTED(Neonatal TSS-like exanthematous disease)  )である。

e)Kaposi水痘様発疹症の起炎微生物は、(15. HSV  )である。

f)主に冬季に細気管支炎を引き起こす代表的なウイルスである(16. RSウイルス  )は乳幼児、特に6か月未満の乳児が感染すると短時間のうちに呼吸困難をきたすことがある。

g)(17.  百日咳 )の罹患者は三種混合(DPT)ワクチン未接種の児が大半をしめるが、特に乳児では特有の咳を認めずにいきなり無呼吸状態をきたすことがある。

h)急性咽頭扁桃炎の原因の一つ(18.  連鎖球(A群β溶連)  )菌感染症は感染後急性糸球体腎炎の合併に注意する。

i)(19. b型インフルエンザ菌  )は、急性喉頭蓋炎のほか敗血症など小児に重症感染症を引き起こす。欧米と異なりわが国ではまだワクチンは導入されていない。

j)インフルエンザにおいて近年注目されている合併症が(20. 脳症  )であり、3歳以下に好発し死亡・後遺症例が約半数にものぼる。解熱剤との関連性も指摘されており、インフルエンザに対する(21.  アセトアミノフェン )以外の解熱剤の使用は原則禁忌である。
⇒ http://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0530-4.html 参照

k)結核は小児患者数は減少傾向であるものの依然重要な感染症で肺外結核の比率が高い。予防としてわが国では管針法により(22. BCG  )を接種している。

l) Salmonella Enteritidisによる胃腸炎の原因食品として最も多いものが(23. ニワトリ卵  )であるが、乳幼児では全身感染症を引き起こすこともある。 

m)腸管出血性大腸菌感染症の小児の6-7%に合併する重篤な合併症に(24. HUS  )があり、そのうちの一部は脳症に進展する。

n)主に冬季に流行する(25. ロタ  )ウイルス感染症は白色調の下痢便が特徴的で、乳幼児ほど症状が強い傾向にある。

問4. 次の疾患における発疹の典型的な出現時期 (発熱との時間的関係、年長児の場合)を下の中から選べ。
麻疹( A )  風疹(  B  )  突発性発疹(  D  )  伝染性紅斑( D )  狸紅熱(  B )

A.発熱→発熱+発疹 B.発熱+発疹(ほぼ同時-1日以内のずれ) C.発疹のみ D.発熱→発疹

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