精神医学 平成14年度概説試験

ステップも参考にしつつ、授業プリント、ノートに沿って作成。不審点は細かいことでも、自信がなくてもBBSに書き込んでくださると助かります。

1.57歳の男性。3ヶ月前から食欲低下と不眠が出現した。同時に趣味であった囲碁を楽しめなくなり、仕事の能率も低下してきた。会社を欠勤するようになり,悲観的なことを言うようになったので,家族に伴われ来院した。意識は清明。会話は遅く声も小さい。「皆に迷惑をかけて申し訳ない。死んだほうがましだ。」と訴える。(10点)
1) この疾患を鑑別するうえで重要でない情報はどれか。
   a.血中甲状腺ホルモン低値
   b.インフルエンザ感染
   c.緑内障
   d.インターフェロン投与
   e.パーキンソン症状
<解答>?
<解説>授業を担当された先生が異なるようです。器質性・症候性うつ病の話題は神庭先生の講義ではほとんど出なかったと思います。
食欲不振、不眠、意欲の減退、仕事の能率低下、悲観的な発言、遅い会話とくれば真っ先にうつ病を疑いますが、これに器質的な疾患や、薬剤因がないかチェックするのを忘れてないようにしましょう。具体的には、脳血管障害、頭部外傷、全身性エリテマトーデス(SLE)、甲状腺機能亢進症、副腎皮質ステロイド投与、インターフェロン投与、悪性腫瘍がうつ症状をもたらすことがあります。
以上から最も疑わしいのは緑内障ですが…はっきりわかりません。

 2)この疾患と関連の深い気質・性格類型はどれか。
  1. 粘着気質
  2. 循環気質
  3. メランコリー親和型性格
  4. 執着性格
  5. 依存性格
   a.1,2,3 b.1,2,5 c.1,4,5 d.2,3,4 e.3,4,5
<解答>d
<解説>以下「6月4日、14日 気分障害」授業プリント・ノート参照。粘着基質はてんかん発作を繰り返すと至るとされた、回りくどくて物事にこだわりやすい気質ですが、てんかん患者でもこのような気質に至る例は少ないことから取りざたされなくなりました。循環気質は数ヶ月単位で軽いうつ状態と躁状態が繰り返される状態。メランコリーと執着気質は同じ様な概念です。

3)この患者にみられる症状とその特徴はどれか。
  1. 罪業妄想
  2. 精神運動抑制
  3. 夕方に症状が悪化
  4. 入眠困難
  5. 思考途絶
   a.1,2 b.1,5 c.2,3 d.3,4 e.4,5
<解答>a
<解説>夕方ではなく朝調子が悪く、入眠障害よりも中途覚醒や早朝覚醒が目立ちます。思考は遅くなりますがこれは「思考抑制」といわれ、途絶は統合失調症に比較的特異的です。

4)この患者の治療法として第一に選択されるものはどれか。
  1. クロミプラミン(三環系化合物)
  2. リチウム
  3. ハロペリドール
  4. 電撃痙攣療法(電気ショック療法)
  5. パロキセチン(SSRI)
   a.1,2 b.1,5 c.2,3 d.3,4 e.4,5
<解答>b
<解説>他に四環系抗うつ薬など。副作用の少ないSSRIの方が好まれる傾向にあるようです。

5)この患者を精神保健指定医が診察した結果、入院治療が必要と判断されたが、患者は「会社をクビになるので収入が途絶え治療費を支払えない。」と言って入院治療を拒否した。そのような事実はなく、保護者(妻)は入院治療に同意した。希死念慮はあるが、自傷他害の恐れはない。この患者の入院形態として適切なものはどれか。
   a.任意入院
   b.措置入院
   c.医療保護入院
   d.応急入院
   e.自由入院
<解答>c
<解説>「5/20、リエゾン精神医学」授業ノートの「・自殺企図、自殺未遂、希死念慮」という項目を参照。

2.次の用語のうち、2つを選んで説明せよ。(10点)
  a.DSM−W
  b.振戦せん妄
  c.投影法
<解説>
aは「6/11、少年期・青年期精神障害」、bは「6/15、アルコール・薬物関連障害(プリント2枚目)」、cは「6/16、精神保健・法と精神医学(プリント1枚目)」をそれぞれ参照。
<解答例>
 a:DSM−Wは「診断と統計のための精神障害の手引き Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の第四版で、1994年にアメリカ精神医学会によって作成された。DSM−Wの特徴には「多軸診断」と「操作的診断」がある。多軸診断とは多くの面から、総合的に患者をとらえる、ということであり、操作的診断とは、診断を誰が行うかにかかわらず、あらかじめ設定された項目のチェックを行えば、同じ診断にたどりつける、ということである。具体的にはDSM−Wは5つの軸からなる。1.臨床症状に基づく主要診断、2.精神遅滞と人格障害、3.基礎身体疾患の有無、4.心理社会的・環境的要因の有無、5.機能の全体的評定、の5つである。

 b:アルコール依存からの後期離脱症状(飲酒中止後1〜3日で出現)としてみられる。振戦と自律神経症状(発汗、発熱)で緩徐に発症し、せん妄を起こす。このせん妄は不安・恐怖の色彩が強く、被害妄想を伴う。小動物幻視や情景的幻視などの特徴的な幻覚が現れ、Liepmann現象や職業せん妄が見られることもある。そのままでも3〜7日で消失するが、対策・治療としては以下のようなものがある。まず暗いと幻覚が起きやすいので、明るい個室に隔離し、事故に注意する。Wernicke脳症やKorsakoff症候群に移行するのを避けるため、輸液と総合ビタミン剤大量投与を行い(特にビタミンBが重要)、せん妄には少量の向精神薬(ハロペリドール)を使用する。離脱症状自体の治療には、GABAを増強し興奮性を抑える目的でベンゾジアゼピン系の抗不安薬を投与する。

 c:曖昧な刺激を与え、「何に見えるか」など自由な回答を引き出すことによって行う人格検査。構造化されておらず、評価は難しいが、質問紙法に比べて人格の深部まで観察することができる。この代表は左右対称なインクの染み(10枚ある)を1枚ずつ見せ、何を連想したかなどを問う「ロールシャッハテスト」である。このテストは特に深い情報が得られるとされるが、それだけ侵襲性があるということなので、状態の不安定な患者には行うべきでない。他にも、書き出しだけの文章を完成させる「文章完成テスト」などがある。

3.1)精神科治療において「共同作業の姿勢」を育成する方法について、授業内容に沿って述べなさい。(5点)
  2)上述のことについて、あなた自身の立場から批判的に論じなさい。(5点)
 精神療法・作業療法の分野ですが…授業内容が全く違うようですので省略します。

4.下記の文章の空欄にもっとも適切な言葉を下の語群から選び、その記号を解答欄に記入せよ。(10点)
1)現在のDSM−WにもICD−10にも(@)の大枠がない。DSM−Wでは(A)、(B)などの分類項目がそれに相当する。
2) 強迫症状を呈する患者においては、通常自分の行動が過度で(C)であるという認識がある。
3) 神経症は症状が長期になり、(D)の問題が大きく関わり、環境因が(E)ほど治療がより困難になり(F)精神療法がより必要になる。
4) 神経症の薬物療法には抗不安薬、(G)が主として用いられる。
5) 神経症の薬物療法においては(H)の太枠の上に(I)を使用する。
 語群
 (a)大きい (b)小さい (c)性格 (d)抗精神病薬 (e)支持的 
 (f)精神療法 (g)身体表現性障害 (h)不安障害 (i)睡眠障害
 (j)神経症 (k)精神分裂病 (l)不可欠 (m)不合理 (n)系統的
 (o)抗うつ薬 (p)薬物 (q)電気ショック療法 (r)気分 (s)家族療法
<解答・解説> 平成15年度大問3、「6/7、8 神経症性障害」
1)@j Ag Bh  7日のプリント3枚目。
2)Cm  7日のプリント4枚目、それでもやめることができません。
3)Dc Eb Fn  8日のプリント1枚目。系統的精神療法=森田療法、精神分析療法、行動療法など。
4)Go  8日のプリント3枚目。
5)Hf Ip  「薬で治った」と思うと自分で症状を克服する自信がつきません。

5.下記について正しいものには○、誤っているものには×を記せ。(10点)
 1)( )夜間振戦せん妄は、複雑な意識障害に分類される。
 2)( )意識障害と痴呆の識別には脳波が有効である。
 3)( )乳幼児やネコは多相性睡眠、老人は単相性睡眠を呈する。
 4)( )ナルコレプシーはノンレム睡眠の異常が関係する病態である。
 5)( )フェノバルビタールはベンゾジアゼピン系の睡眠薬である。
 6)( )睡眠は通常であれば120分周期で繰り返す。
 7)( )睡眠段階のうち眼球運動がみられるのはレム睡眠のみである。
 8)( )見当識には、時間、場所、記銘に関するものがある。
 9)( )もうろう状態は脳器質性や身体因性に起こるものもあれば、心因性に起こることもある。
 10)( )K.Jaspersの言う自我意識が障害されると、作為体験や離人症が生ずる。

<解答・解説>「5/21、睡眠障害・器質性精神障害」先生が違うのだと思います。
1)×…せん妄は軽度の意識障害のことです。
2)×?…急激に出現し、よくなることがある(日内変動がある)のが意識障害です。脳波にも違いは出るのかもしれませんが、鑑別にそこまで必要なケースがあるとは考えにくいので×ではないかと。
3)?
4)○?…覚醒、NREM睡眠、REM睡眠を統合する脳の機能障害。
5)×…バルビツール酸系の睡眠薬でてんかんの治療に用いられることがある。
6)×…90分周期、と生理学テキストにあります。
7)?…REM=rapid eye movementなのでレム睡眠で眼球運動があるのは確かですが…。
8)×…人物、場所、時間ではないかと。
9)○…刑罰が決まらない囚人など、解離症状として生じるもうろう状態を「Ganser症候群」といいます。
10)?…K.Jaspersって…。すいません、わかりません。

6.器質性精神障害を呈することが多い身体疾患及び治療薬をそれぞれ2つずつ挙げなさい。
  身体疾患(   )(   )
  治療薬(   )(   )
<解答・解説>「5/21、睡眠障害・器質性精神障害」プリント1枚目。
身体疾患:甲状腺疾患、膠原病(SLEが多い)、肝疾患(肝性脳症)、(脳腫瘍)
治療薬:ステロイド、インターフェロン、向精神薬、(アルコール)
ステロイドは躁状態になることが多く、インターフェロンはせん妄やうつ状態をもたらすそうです。
アルコールは治療薬ではありませんが、薬剤性の精神疾患では最多です。

7.1)アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆、ピック病に関して以下より特徴的な臨床症状を2つずつ選びなさい。
    アルツハイマー型痴呆(   ・   )
    脳血管性痴呆(   ・   )
    ピック病(   ・   )
    1. 視空間失認 2.感情失禁 3.反社会的行為 4.まだら痴呆 5.保続 6.健忘失語

  2)アルツハイマー型痴呆、ピック病に関して脳血流シンチグラフィーにて血流低下を示す部位を以下から2つずつ選びなさい。
    アルツハイマー型痴呆(   ・   )
    ピック病(   ・   )
    1.前頭葉 2.側頭葉 3.頭頂葉 4.後頭葉
<解答・解説>平成15年度大問5参照

8.下記について正しいものには○、誤っているものには×を記せ。(10点)
 1)( )小児の分裂病の発症頻度は成人より多い。
 2)( )言葉の遅れがみられる幼児はまず自閉症を考える。
 3)( )トウレット障害にはリタリンが著効する。
 4)( )注意欠陥性多動性障害にはハロペリドールが著効する。
 5)( )子供の精神科診断には暦年齢より精神年齢を重視する。
<解答・解説>「6/11、少年期・青年期精神障害」
1)×…小児、特に低年齢時の発症はまれです。
2)×…そんな単純な話ではないでしょう。まず年齢を考慮し、それが本当に異常なのか(正常範囲で平均より遅い、というだけではないか)、考えます。
3)×…ごく少量のメジャー・トランキライザー(ハロペリドール)を用います。
4)×…メチルフェニデートです。
5)×…どちらも考慮せねばなりません。

9.以下の文章は精神科を訪れた患者の述べた言葉である。
  (はっきり覚えてないが、精神分裂病に関する文章)
 様々な精神医学的に特徴のある言葉が認められるが、それらについて以下の設問に答えよ。この患者さんについて連想すること、思うことを以下について記せ。(20点)
 1)上記の患者の状態像、観察される精神医学的症候について述べ、それらについて説明せよ。
 2)上記の患者の診断、鑑別診断、そしてその根拠について述べよ。
 3)上記の患者の治療について述べよ。
 4)上記の患者の薬物療法について、一般的に知るところを述べよ。
<解答・解説>平成15年度大問9を参照。

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