精神医学 平成15年度卒業試験

問題は全50問で、28〜50番は38番をのぞいて2問ずつのセットでした。

1 精神障害者の入院に際して、保護者の同意が必要なのはどれか?
A 医療保護入院
B 措置入院
C 緊急措置入院
D 応急入院
E 任意入院
(解答)A 医療保護入院。

2.入院治療が必要と判断される精神障害の患者が精神病院への入院を拒否している。最も正しい対応はどれか?
A医師の裁量権で入院させる
B家族の判断で入院させる
C精神保健指定医にまかせる
D保健所にまかせる
E医療保護入院の形式で入院させる
(解答) C。精神科の入院制度についての問題。患者本人の同意が得られていないので「任意入院」はできない。精神保健法の規定によると精神保健指定医でなければ患者を強制的に入院させることはできないので、入院の必然性も含めて精神保健指定医の判断を仰ぐべきである。

3.間違っているのはどれか?
1、妄想着想は一次妄想である
2、統合失調症の幻覚は、幻聴が主である
3、うつ病の妄想は一次妄想である
4、錯覚と幻覚をあわせて妄覚という
5、機能性幻覚では現実の知覚に並行して幻覚がおこる、
a(1,2) b(2,3) c(3,4) d(4,5) e(1,5)
答え ?
3は二次妄想なので×。他は正しく見えますが…。

4 投影法はどれか
1)簡易精神症状評価尺度 
2)Rorschachテスト 
3)文章完成法
4)Minesota多面人格検査  
5)Zungsうつ病自己評価尺度
選択肢  a12 b15 c23 d34 e45 
(解答) c 2、3。

6 正しい組み合わせを選びなさい 
1. 自殺による死亡者数は交通事故死より多い
2. 過労による自殺も労災と認められている
3. 自殺は20歳台に多い
4. 自殺は女性に多い
5. うつ病は男性に多い
a 12 b 15 c 23 d 34 e 45
(解答)a 1、2。自殺者は年間約3万人、交通事故死は年間約1万人。過労による自殺で労災が認定される事例が挙がっている。

7、次の組み合わせのうち正しいのはどれか。
A躁病―観念奔逸
B強迫性障害―保続
Cうつ病―迂遠
D統合失調症―思考抑制
Eピック病―思考途絶
(解答) A。保続、迂遠は脳の器質的障害、思考抑制はうつ病、思考途絶は統合失調症と関連が深い。

8.次の組合せのうち、誤っているのは?
Aヒステリー―転換
B心気症―詐病
C多重人格―解離
Dパラノイア―妄想
E二人組精神病(folie a deux)―感応
(解答) B。心気症は患者自身が症状を感じており、症状を自覚しないのに偽る詐病とは異なる。

10.57歳の男性。3ヶ月前から食欲低下と不眠とが出現した。同時に趣味であった囲碁を楽しめなくなり、仕事の効率も低下してきた。会社を欠勤するようになり、悲観的なことを言うようになったので、家族に伴われ来院した。意識は清明。会話は遅く声も小さい。「皆に迷惑をかけ申し訳ない。死んだ方がましだ」と訴える。この疾患と関連の深い気質・性格類型はどれか。
 (1)粘着気質  (2)循環気質  (3)メランコリー型性格  (4)執着気質  (5)依存性格
  a (1)(2)(3)  b (1)(2)(5)  c (1)(4)(5)  d (2)(3)(4)  e (3)(4)(5)
(解答) d。症例はうつ病と考えられ、循環気質、メランコリー型気質、執着器質と関連。

11.慢性統合失調患者の社会復帰に関する施設として正しいのはどれか?
aショートステイ
b助産寮
cナイトケア
d福祉ホーム
eデイケア
1abc 2 abe 3ade 4bcd 5cde
(解答) 5。

14番 病態と脳波所見で正しい組み合わせはどれか
1肝性脳症―PSD
2ナルコレプシー―早期REM睡眠
3橋出血―α波
4CDJ―三相波
5点頭てんかん―ヒプスアリスミア
A1 2  B1 5  C2 3  D3 4  E4 5
(解答) C。肝性脳症で三相波、CJDでPSD、West症候群でヒプスアリスミアが認められる。

15.正しいものをひとつ選べ
A.タバコは精神抑制系の薬物である。
B.アルコールは身体依存性がない。
C.我が国では女性のアルコール依存症は減少している。
D.血中アルコール濃度が200mg/dl以上では意識障害を生じる。
E.少量のアルコールでは病的酩酊は認めない。
(解答) D。

16.薬物依存について誤っているものを選べ。
 A シンナーは幻覚剤依存の一種である。
 B 向精神病薬依存は抗不安薬によることが多い。
 C 覚醒剤依存では次第に使用量が増える。
 D 市販の鎮咳薬や解熱鎮痛薬でも依存が生じる。
 E 法律上、麻薬にはコカイン、LSDは含まれない。
(解答) E。コカイン、LSDは麻薬取締法の対象である。

17.神経症性障害の治療でほとんど用いられないものはどれか?
A, 森田療法
B,内観療法
C,家族療法
D,認知行動療法
E,電撃けいれん療法
〈解答〉E  電撃けいれん療法の適応は薬物の効果が不十分な精神分裂病とうつ病である。

18.精神病症状を併発することのある薬物はどれか。
 1 利尿薬
 2 インターフェロン製剤
 3 ステロイド製剤
 4 ビタミン剤
 5 インスリン製剤
A 12  B 23  C 34  D 45  E 15
(解答) B。

19 神経性食思(欲)不振症について正しいものはどれか.
  (1)期待される体重の85%以下の体重が続く.
  (2)食行動の異常はない.
  (3)体重が増加しないことを苦にしている.
  (4)通常無月経が見られる.
  (5)自分がやせすぎていることを気にしない.
A(1) (2) (3) B(1)(2)(5) C(1)(4)(5) D(2)(3)(4) E(3)(4)(5)
〈解答〉C  
神経性食思不振症(anorexia nervosa;AN)の診断基準 (@〜E全て満たすこと)
@発症年齢30歳以下 A標準体重の−20%のやせ B食行動の異常(不食、大食、隠れ食いなど) C体重や体型について歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など) D(女性なら)無月経 E食欲不振及び体重減少の原因となる明らかな器質的疾患が無い。
その他の特徴として、・多毛(−)、恥毛,腋毛正常、うぶ毛増加 ・低血圧、低体温、便秘等の自律神経失調 ・やせ願望。病識が無く、比較的活動的

20.神経性過食症において見られる精神症状はどれか。
1.抑うつ
2.過眠
3.幻覚妄想
4.過活動
5.強迫症状
a.12 b.15 c.23 d.34 e.45
(解答) e。大食、排出行動、強迫症状が認められる。

21.アルツハイマー病においてSPECTで早期より異常が認められる部位はどこか。
1.前頭葉 2.頭頂葉 3.側頭葉 4.後頭葉 5.大脳基底核
A.12 B.23 C.34 D.45 E.15
(解答) B。頭頂葉、側頭葉で早期より代謝低下が認められる。
1と2の選択肢を逆に覚えたかもしれません。

22.正しいものを選べ
Aアルツハイマー病は家族性に発症するものが多い
Bピック病は側頭葉〜後頭葉にかけて萎縮が目立つ
Cアルツハイマー病の初期には着衣失行がみられる
Dびまん性Lewy小体病には抗精神病薬が有効
E進行麻痺は原因不明の変性疾患である
(解答) ? Aのアルツハイマー病は散発性が多い。Bのピック病は前頭葉〜側頭葉にかけての萎縮が目立つ。Cは早期の着衣失行は認めない。Dは抗精神病薬過敏で症状が悪化する事がある。Eは梅毒トレポネーマによる脳炎である。

24 次の組み合わせのうち正しいのはどれか。
1、 三環系抗うつ薬…モノアミン取り込み阻害
2、 抗精神病薬…ドーパミンD2受容体遮断
3、 抗不安薬…ベンゾジアゼピン受容体結合
4、 気分安定化薬…ドーパミン前駆体物質
5、 抗てんかん薬…グルタミン酸受容体刺激
A 123 B 125 C 145 D 234 E 345
(解答)A。1は正確には、モノアミン再取り込み阻害。

25.依存性がないものはどれか。
 1 抗不安薬
 2 抗うつ薬
 3 抗精神病薬
 4 ベンゾジアゼピン系
 5 バルビツール系睡眠薬
A 12  B 23  C 34  D 45  E 15
(解答) Bであると考えられます。

26 抗精神病薬により生じやすい副作用は?
 1 ジストニア
 2 アカシジア
 3 ジスキネジア
 4 低プロラクチン血症
 5 体重減少
A 123  B 125  C 145  D 234  E 345
(解答) A。高プロラクチン血症と、肥満を生ずる。

27 ベンゾジアゼピン系薬の臨床的薬理作用でないものはどれか。一つ選べ
 A 抗不安作用
 B 抗幻覚妄想作用
 C 抗けいれん作用
 D 催眠作用
 E 筋弛緩作用
(解答) B。抗幻覚妄想作用は持っていないとされている。

28、29 症例問題 2002年卒業試験の29番と同じでした。
 38歳の女性。6ヶ月前から誘引がないにもかかわらず、発作的に呼吸が苦しくなり、動悸がして「このまま死ぬのではないか」という恐怖におそわれるようになった。その都度、救急車で病院に搬送されることが頻繁となった。「また発作が起こるのではないかと不安で、ひとりで外出もできない」と訴えて来院した。診察時の態度は、緊張はしているが概ね自然であり、話の内容もまとまっている。発作中の記憶もよく保たれている。身体所見に異常を認めない。この患者にみられるものはどれか (2個)
 選択肢 A 広場恐怖 B 社会恐怖 C 不潔恐怖 D 死の恐怖 E 発狂恐怖
(解答) A、D。発作が心配で外出できない事から、A広場恐怖がある。又、D死の恐怖も見られる。
この症例はパニック障害であると考えられる。

29.この患者に有効なのはどれか。
 1 認知行動療法
 2 抗うつ病
 3 抗精神病薬
 4 抗けいれん薬
 5 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
A 123  B 125  C 145  D 234  E 345
(解答) B。

症例)27歳男性。物事を何度も確認しないと安心できないと訴えて来院した。高校時代に字を書いても計算しても間違いの有無を調べ続けた。その後対象は拡大して鍵やガス栓の確認を何度もするようになった。そのため何をするにも時間がかかり、本人も疲れ、職場も毎日遅刻するようになった。治療を強く希望している。
32.この症例の診断名を答えよ。         
答え) 強迫性障害。

34/35(たぶん文章は過去問どおり)
56歳男性。頑固な不眠と日中の眠気を主訴に妻に伴われて来院した。2年前から熟眠感が失われ日中に疲労を感じよく居眠りするようになった。職場でも仕事の能率低下に気づかれている。妻によると2年前から睡眠中のいびきがひどく、時々呼吸が止まった状態になるという。身長160cm、体重90kg、咽頭に異常を認めない。抑うつ気分、不安はない。
34.この疾患の診断に最も有用な検査は何か。
(解答) パルスオキシメーター。この症例は睡眠時無呼吸症候群と考えられる。

35.この患者にまず行うべき治療法はどれか。
1、イミプラミン投与
2、ベンゾジアゼピン系薬投与
3、メチルフェニデート投与
4、経鼻持続陽圧呼吸
5、軟口蓋の外科手術
(解答) 4。鼻マスクを装着し、気道内に5〜15pH2O程度の陽圧を加える。

36,37
8歳の男児、コミュニケーションがうまくとれないことを訴え、母親がつれて来院した。
乳幼児期に運動発達は正常だが、おうむ返し(反響言語)が多く、友達がつくれず孤立している。特定の対象のみ、がんこに興味を持ち、いつも同じ遊びを繰り返している。環境が少しでも変化すると、不安がって大騒ぎする。児童福祉施設での知能検査はIQ59。
次のうちこの患者にあてはまるものを答えよ。
1人格障害 2行為障害 3多動性障害 4知的障害 5広汎性発達障害
A12 B15 C23 D34 E45
(解答) E。自閉性障害と考えられる。

37 アスペルガー障害は、この患者の病態とどの症状で鑑別されるか。[ ]内に記入せよ。
(解答)自閉性障害と異なり、アスペルガー障害には言語発達の遅れがない。

38.13歳の男子。不登校を主訴として両親に伴われて来院した。中学校入学後間もなく、朝起きたときに腹痛、嘔気および頭痛を訴えて学校も休み始めた。しかし、昼過ぎには症状が消失して元気になる。近医を受診しても特に病気はないと言われた。2ヶ月以上も学校を休んでいて、気持ちがいらだち、勉強の遅れを気にしてイライラしている。適切な対応はどれか。
1)教師が厳しく接する
2)家族と対応を話しあう。
3)遊戯療法、箱庭療法等の非言語的表現を用いる。
4)SSRIを用いる
5)分析療法
(解答) 2)であると考えられます。

39番― 40番
57歳の男性。3ヶ月前から食欲低下と不眠が出現した。同時に趣味であった囲碁を楽しめなくなり、仕事の能率も低下してきた。会社を欠勤するようになり、悲観的なことを言うようになったので家族に伴われ来院した。意識は清明。会話は遅く声も小さい。皆に迷惑をかけ申し訳ない、死んだ方がましだ、と訴える。(93F-36)
問39.この疾患と関連の深い気質、性格類型はどれか。
(1)粘着気質
(2)循環気質
(3)メランコリー型性格
(4)執着気質
(5)依存性格
a.123 b.125 c.145 d.234 e.345
(解答) d。症例よりうつ病と考えられ、循環気質(社交的だが孤独感が強い)、メランコリー型気質、執着気質(律儀で責任感が強い)に関連が有ると考えられる。

40.この症例について正しいものはどれか。
A意識が高度に障害される。
B幻覚を伴う病型がある。
C思考が障害されることはない。

D慢性化することはない。
E体重減少は生じない。
(解答) B。

(41、42でセット)
 22歳男性。不眠を訴えて来院。就職したころから夜寝付けず、明け方近くにやっと寝つき、昼過ぎに起きるようになった。そのため遅刻や欠勤が続いている。母親には協力してもらい朝起こしてもらうが、眠気が強く仕事に集中できない。職場では意志が弱いとよく注意される。性格は真面目で努力家。
41.この疾患の診断は何か。
(解答) 睡眠相後退症候群と考えられます。サーカディアンリズムが24時間より長くなり、就寝が遅くなり、朝起きる事が困難になります。

42 正しい治療はどれか。
1 上司による厳しい指導
2 抗うつ薬
3 ハロペリドール
4 睡眠導入薬
5 高照度光療法
A123 B125 C145 D234 E345
(解答) Cではないかと思われます。1が確信が持てませんが。

(43、44でセット、02年の36の文章と同じ)
19歳の男性。大学入学時から両親の元を離れ、叔父宅に下宿していた。3ヶ月前から「皆が自分の悪口を言っている」、「自分の考えが筒抜けになっている」などと訴え、大学を休んでいた。最近2週間は夜になると徘徊し、時々興奮して部屋の物を壊すため、叔父が強引に精神科医を受診させた。精神保健指定医は入院治療が必要と判断したが、患者は黙っている。
 最も適切な対応はどれか。※94E-1
a. 両親と後日来院してもらい、医療保護入院とする。
b. 幻覚妄想状態なので、任意入院はできない。
c. 叔父の同意を得て、医療保護入院とする。
d. 患者に説明し、任意入院とする。
e.  所轄警察署に連絡して措置入院の手続きをする。
〈解答〉d

44.この患者で予想される症状はどれか。
 1 貧困妄想
 2 強迫観念
 3 妄想知覚
 4 思考伝播
 5 対話性幻聴
A 123  B 125  C 145  D 234  E 345
(解答) E。
(解説)症状、年齢から見ても精神分裂病でしょう。年齢的には破瓜型でしょうか。よって使われる薬物はメジャートランキライザーで主な副作用としてはパーキンソニズム、悪性症候群、あと乳汁分泌も起こすそうです。悪性症候群は他には麻酔やL-DOPAを中止したときなどにも現れる事があります。
 
(45、46でセット)
45.この患者で適切な治療法はどれか。
 1 抗てんかん薬
 2 精神刺激薬
 3 三環系抗うつ薬
 4 持続的気道陽圧法
 5 高照度光照射
A 12  B 23  C 34  D 45  E 15
(解答)問題が不完全なので解答できません。

(47、48でセット)
 32歳男性。痙攣発作で来院した。23歳時、幻覚、妄想および興奮で精神科に6ヶ月入院
し、以後抗精神病薬を飲み続けていた。2ヶ月前より大量の水分を摂取している。診察時、痙攣
はない。血清生化学所見 Na125mEq/l、K4.0mEq/l、Cl90mEq/l、血清浸透圧250mOsm/l(基準275〜288)、尿浸透圧100mOsm/l(基準50〜1300)
47.この病態の原因としてはどのようなことが考えられるか。【 】内に記入せよ。
(解答)大量の水分摂取による低Na血症、それに伴う脳浮腫が考えられる。SIADH合併による水中毒と考えられる。
48.最も適切な処置はどれか。
 A 水分制限
 B ブドウ糖輸液
 C 高張食塩水輸液
 D ジアゼパム静注
 E フェニトイン静注
(解答)A。この他、輸液、電解質補正も必要。

次の文章を読んで問題49/50を答えなさい。
2002年、日本精神神経学会は「精神分裂病」という呼称を「統合失調症」に変更した。そもそも精神分裂病という呼称はブロイラーが提唱したSchizophreniaという病名を1930年代に直訳したものであるがこの疾患の理解が当時と大きく変わってきたことが変更された理由の一つである。また精神分裂病という呼称があたかも人格異常者のような誤ったイメージを与えるため、精神障害者に対する偏見の背景をなすものとして、長年患者家族団体が反対してきたものであった。実際、統合失調症という呼称は患者家族団体の支持を得られたものである。
49 下線部(「この疾患の理解が当時とでは大きく変わってきた」の部分。再現者注)を具体的に説明せよ。

『人格崩壊に至る不治の病』とされていた分裂病が、薬物療法などの進歩によって『多くは寛解・治癒に至る予後良好な疾患』と理解されるようになった。」

50番の問題がないので、解答が出来ません。

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