地球と生命

地球分野 
西教官。3枚のレポート提出を求められた。
テーマに指定はなく、地球、地学に関連していれば自由。参考図書の一覧が配布された。

生命分野
舘田教官。標準的な生物学の試験が行われた。平成13年9月12日実施。

以下は地球分野で提出したレポート。高校時代に調べた液状化現象について。

 地震のニュースを聞く時、よく「液状化現象」という言葉を耳にする。前の鳥取県西部地震の時も、液状化現象が起きたと伝えられた。「地面が液体のようになってしまう現象だ。」としばしば説明されるが、これは一体どのようなしくみで起こる現象で、どのような被害をもたらすのであろうか。そのような疑問を解決するため、『液状化はこわくない−メカニズムと対策Q&A−』(渡辺具能、株式会社 山海堂、1997年)という本を読み、これをまとめながら液状化現象について考察してみようと考えた。

 液状化現象は、地震の発生と共に起こる現象である。一度この現象が起こると、地震による被害は格段に大きくなる。1995年1月の兵庫県南部地震でも、海岸付近やポートアイランド、六甲アイランドを中心として、液状化による大規模な被害が発生した。

 この現象が認識されたのは比較的最近である。そのためまだ現在も、この現象についての研究が完成されているとは言えない。「地震の国」とさえ言われる日本でも、まだ研究途上にある液状化現象とは、どのような現象であろうか。

 まず、液状化現象の歴史を追ってみることにした。日本における地震の記録は非常に古くからあり、一番古いものでは、古墳時代の西暦416年頃に起きた地震の記録が、日本書紀に残っている。また地震に伴う液状化現象も、古いものでは平安時代前期の西暦863年に、越中・越後地方、現在の新潟、富山両県付近で起きた地震によって、地下水が湧き出したという記録として残っている。

 この液状化現象が近代以降、一般に認知されたのは、1964年3月に起きたアラスカ地震が初めてであった。このときはアンカレッジ市内で、液状化による大規模な陥没が起こった。また同じ1964年6月には新潟でも地震が発生した。この地震では液状化により、信濃川の岸に建っていた県営アパートが傾いたり、横倒しになるなどの被害が生じ、また昭和大橋と呼ばれる橋では橋の支柱を支える杭が折れ曲がり、橋桁が落下した。この二つの地震が契機となり、液状化現象の本格的な研究が始まった。

 液状化現象というのは一言で言うと、水を多く含んだ地盤が地震の揺れを受けて、あたかも液体のような動きを示すという現象である。

 はじめ地中の砂は、それぞれの粒がいくつかの粒とお互いにくっつきあい、支え合って地面を構成し、建造物などを支えている。この時それぞれの砂の粒にかかっている力は重力のみである。この重力に対して、砂はお互いに接触し支え合って釣り合いをとっている。ここに地震による震動が与えられると、砂の粒は新たに加えられた力に対し、はじめは粒と粒の間に生じる摩擦力で力の釣り合いを保つ。しかしその摩擦力の限界を超えるほどの強い力が地震によって加わると持ちこたえられなくなり、砂の粒は引き離されてしまう。これが液状化と呼ばれる状態である。この時お互いのつながりを絶たれた砂の粒は一つ一つが水の中に浮かぶ浮遊物のような状態になり、これまで支えていた重力を支えることもできなくなってしまう。その結果、重力のかける圧力に耐えられなくなった水とその中に浮かんだ砂は、それより上にある砂や建築物に押しつぶされ、行き場を失って地上に吹き出すことになる。これが噴砂・噴水と呼ばれる現象で、時には家屋の床下でさえ突き破ってしまう。その後、砂が沈んでいくに従って液状化もおさまっていく。

 しかし、どんな場所でも地震が起こりさえすれば液状化も起こるかと言えば、決してそういうわけではない。液状化が起こるためには、次のような条件が必要になる。

 まずはじめの条件は、その地盤がさらさらとした砂で構成されていることである。たとえば砂よりずっと粒の小さい粘土などは、粒が小さいためにお互いが接触している面積が大きくなり、砂よりも強力な摩擦力が働くため液状化しない。また砂よりも粒の大きな礫などでは、液状化は起こるものの粒1つ1つが大きいため、水の中に浮いた状態はほんの一瞬で終わってしまい、結果的には液状化による被害が発生しない。つまり、粒と粒の間に働く力の強さと、粒の大きさが液状化現象の起こる可能性の判定において重要になるといえる。

 第二に、その砂がゆるく堆積していることが条件としてあげられる。きつく堆積しているとお互いがお互いを支え合う力が強くなり、液状化が起こりにくいためである。

 第三に、地中に水を多く含んでいることが条件となる。どんなに砂ばかりの砂漠のような場所でも、その砂を浮かび上がらせる水がなければ液状化は起こり得ない。しかしながら、水が地下にほとんどないのは砂漠のように乾燥した場所だけである。

 最後に当然ながら、ある程度以上の大きな揺れが加わることも条件としてあげられる。砂の接点の摩擦力を振り切るほどの揺れが起こらないと、地盤が液体状になることはないのである。日本の場合具体的には、震度4より大きい揺れが起こることが最低条件といえるであろう。

 液状化現象のもたらす被害としては、先程述べた噴砂・噴水のほかに、地割れ、陥没、地盤沈下などがあげられる。また液状化の起きた地盤の上に建物が建っていたり、その地盤の中にガスや水道の管が埋めてあると、それらにも様々な被害が生じる。地盤の上に建つ建物であれば、傾いたり、最悪の場合には倒れることもあり、また地中の管などは折れたりすることもある。また、マンホールや浄化水槽が浮上することさえあるのである。

 建物に対する被害についても、もう少し詳しく見ていきたい。地面が液体状になるのだから地上の建物が沈んだり、傾いたりすることは容易に理解し得る。しかし、地中の構造物(たとえばマンホールや浄化槽)が浮上するのは何故であろうか。このことを考えるためには、水中にピンポン球を沈めてもすぐに水面に浮き上がってしまう現象を思い浮かべるとよいであろう。砂を含んだ水の比重は水のみの比重の約二倍、これに対しマンホールや浄化槽は、コンクリートでできているものの中が空洞になっているため、全体的に見た比重は泥水の比重よりも小さくなる。そのため、重い液体の中の軽いマンホールが浮き上がってしまうのである。

 地盤が液状化すると、線路などのように土を盛ってその上に造られた建造物も大きな被害を受けることがある。液状化した地盤は基本的には密度の大きな液体のように振る舞うので、高低差のある場所では、液状化した地盤は低い方に移動しようする。このため線路などを造るために盛られていた土が液状化すると、盛られた土が流れるようにして崩壊してしまうのである。

 このようにさまざまな被害をもたらす液状化現象ではあるが、その中には「善玉」と「悪玉」と呼ばれる、2通りの液状化現象が存在する。「善玉」といっても利益をもたらすわけではなく、被害を及ぼさない液状化現象もあるという意味である。液状化現象が「善玉」になるか「悪玉」になるかは、その地盤に大きく影響される。地盤が比較的疎な場所で液状化現象が起こると、液状化した土壌の中に砂の粒が少ないので、その分摩擦力が小さく液状化現象の被害が大きくなる。これに対して、地盤が比較的密な場所で液状化現象が起こると、液状化した土壌の中に砂の粒が多く、水の中に浮いた状態になってもすぐにほかの砂の粒にぶつかるため抵抗が大きく、液状化現象による被害が小さくなるのである。

 さらに、液状化現象に対する対策について調べてみた。液状化現象対策には主に二通りの方法がある。地盤を改良する方法と、建造物自体を液状化に強くする方法である。

 まず地盤を改良する方法であるが、この中にも様々な方法がある。地盤自体を液状化に強くする方法としては、地盤に振動を与えて地盤の強度を上げる「締固め」法、セメントを流し込んで地盤強化を図る「固結」法、液状化しやすい砂にかえてもっと大きいれきなどの石に置き換える「置換」法など。液状化の発生要因である地下水に対する方法としては、地盤の中にパイプを通して圧力の上がった水の逃げ道を作っておく「ドレーン」法、地下水位を下げる方法などである。1995年の兵庫県南部地震において、ポートアイランド、六甲アイランドなどの埋め立て地で液状化の被害が発生したにもかかわらず、同じ埋め立て地の関西国際空港では被害がなかった理由の一つには、関西国際空港では以上のような地盤改良の工事をしていたことがあげられる。

 さらに建築物に対する施策としては、建造物自体を強くする方法として、建物を地中で支える杭の強度を上げる、杭の本数を増やすなどの方法が、また液状化現象の発生時に建造物に加わる力を軽減する方法として、地中に「シートパイル」と呼ばれる壁を作ったり「矢板」と呼ばれる板を打ち込んだりして、土壌が流動化した場合の土壌の変位を小さくするなどの方法がある。

 前にも述べたとおり、液状化現象の本格的な研究が始まったのは1960年代であり、「善玉」の液状化現象が存在することが確認されたのは70年代、さらに液状化の危険に対する対策が盛んに検討されるようになったのは80年代である。

 しかしながら日本では、1885年から1995年までの約100年間で、液状化現象を引き起こすほどの大地震が約400回起き、69回の液状化が観測されているとの資料がある。つまり液状化現象は3年に2回、日本のどこかで起こっているという計算になる。

 世界的な地震多発国である日本に暮らしている限り、この液状化現象を徹底的に解明し対策を講じていくことが急務であると考えられる。

参考文献 ・液状化はこわくない−メカニズムと対策Q&A− 渡辺 具能  山海堂(1997)

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